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1997年12月1日号 235

シックハウス症候群とは

 

 近年、住宅が高気密化してきており、また新建材などから発生する化学物質が、室内汚染を起こすことがあります。その室内汚染物質によって引き起こされるアレルギー疾患や化学物質過敏症を含めて「シックハウス症候群」と言われています。

 新築、改築、改装後に引き起こされたり、重症化してくるアレルギー疾患、自律神経失調症、神経痛、うつ状態、更年期障害の患者では、室内汚染が原因となっている場合もあります。
揮発性の化学物質には、建材からと、日常使用している化学物質からとがあります。

{参考文献} 治療 1997.11

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1)建材から出る揮発性物質〜床下からは防蟻剤(白蟻駆除剤)や防腐剤からの揮発性物質が侵入してきます。

2)建材以外の化学物質〜家具からは高濃度のホルムアルデヒドが放出されます。塗料、接着剤からも揮発性ガスが出ます。カーテン、カーペットは防カビ、防炎、防臭処理がされています。防虫剤やトイレの芳香剤のパラジクロロベンゼンによる汚染は人体にもかなりの影響を与えます。

 漂白剤からのガス放出、排水パイプ用洗剤、スプレー剤、殺虫剤、ガスの燃焼物質、ドライクリーニングから帰ってきた衣料、書籍なども発生源となります。

 アトピー性皮膚炎や喘息が問題となっているホルムアルデヒドでヒスタミンの放出が増加することはよく知られています。

 化学物質過敏症とは、化学物質に接触して、一旦過敏性を獲得すると、その後超微量の化学物質に接触して、自律神経などの非常に不愉快な症状が出てくる状態です。その時に、反応する物質の種類がA,B,C,D,,,,と増えてくると、多種類化学物質過敏症となります。
我々は、室内空気ばかりでなく、あまりにも多くの化学物質に取り囲まれています。食品添加物、衣料の防菌グッズのような化学物質が、身体に入ると異物と認識されすべて解毒されなければなりません。

 その異物の総量が身体の耐えうる限界近くにきている時に、最後のとどめを刺すのが室内空気感染です。

[治療法]

1.化学物質の環境からの排除

 換気扇、活性炭入りのエアクリーナー、また室温を40℃ぐらいに上げて揮発性物質を追い出す必要もあります。床下汚染物質の室内への侵入を防ぐためには、床下換気扇や木炭の敷詰めコンクリートをうつことも必要となります。
 また衣食住からくる生体異物の総量を減らす努力が必須です。

2.栄養〜 ビタミン、ミネラルの多い、汚染の少ない食物を摂る。

3.運動療法、温熱療法〜体力の許す範囲で軽く汗ばむ程度の運動をする。また低温サウナや汚染の少ないお湯への入浴。いずれも代謝の亢進を目的としたものです。

化学物質過敏症の症状

・自律神経障害:発汗異常、易疲労性
・精神障害:不眠、不安、うつ状態、不定愁訴
・末梢神経障害:運動障害、四肢末端の知覚異常
・気道障害:のどの痛み、渇き
・消化器障害:下痢、便秘、悪心
・眼科的障害:結膜の刺激症状
・循環器障害:心悸亢進
・免疫障害:皮膚炎、喘息、自己免疫疾患


副作用を考える(6)

ワーファリンによる皮膚壊死

 ワーファリンによって生じる皮膚壊死は、脂肪組織に多く発生し、頻度として乳房、大腿部、臀部、脚の順といわれ、また、男性より女性に多く生じることが多いともいわれています。(男女比1:3)
また、男性では胸や性器等に発生した報告もあります。

 初期症状(太股、乳房、胸、つま先、お尻または性器などに痛みを感じて皮膚が赤くなってくる)に気づいた場合には、すぐに主治医に受診するように指導する必要があります。

<症状>

 初期症状として有痛性の紅斑や潮紅が現れ、次に点状出血が生じ、出血性水疱、黒色変化、皮膚壊死に進行していきます。

<好発時期>
多くは3〜6日、一部の報告では開始から3年あるいは17ヶ月で発症したものや再度与薬例にもみられています。

<転帰>
皮膚壊死の起こってしまった症例に関しては、壊死部分の切除や皮膚移植が行われています。
<機序>

プロテインCへ作用するビタミンKに拮抗することにより、抗凝固作用を現すが、開始初期に一過性の過凝固状態になる場合があり、微小血栓を生じ、皮膚や脂肪組織が壊死に陥るといわれています。このため、使用前にプロテインC活性を確認することが望ましい。また、プロテインC活性の低下するような基礎的疾患を持ち合わせていると危険因子となることが推察されています。

<治療法>

1、初期症状に気づいた時点で、直ちに服薬中止することが大切
2、皮膚壊死が生じた場合には、ヘパリンへの変更など抗凝固療法の見直しとともに、皮膚移植の検討が必要。
3、ビタミンK、プロスタサイクリン、プレドニンで回復した例も報告されています。

{参考文献}重大な副作用回避のための服薬指導情報集1


窓口Q&A

Q:赤ちゃんが薬を飲まない のですが、巧く飲ませる方法
はありますか?

A:赤ちゃんが薬を飲まないときには、少量のアイスクリームに混ぜ込んで与えると
以外に簡単に飲んでくれます。
試してみて下さい。冷たい舌ざわりが薬の嫌な味を消してくれます。


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血管新生療法

2006年5月1日号 No.428

 重症虚血症例に、虚血周辺の比較的健常な組織からの血管新生や側副血行の発達を人為的に促進し、虚血組織を修復し壊死を軽減させようとする試みがなされています。

 これらは治療的血管新生(therapeutic angiogenesis)と呼ばれ、虚血解除だけでなく組織の機能を回復させることを目的としています。

          {参考文献}日本病院薬剤師会雑誌 2006.4

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 虚血部位に血流を回復させるという意味での広義の血管新生には、3つのコンセプトが含まれています。

1)狭義の血管新生(neovascularization)
 既存の血管より内皮細胞が進展し毛細血管を形成するプロセス。

2)動脈形成(arteriogenesis):すでに存在している血管のチャンネルが急激な血流の途絶などに伴いリモデリング形成を起こし、側副血行路を形成する場合

3)骨髄細胞由来の流血中に存在している内皮細胞前駆細胞から生じる血管発生型の血管新生(vasculogenesis)

 治療的血管新生療法は、この3つのプロセスを利用して虚血を改善することを目標としています。しかし、これらの血管新生は病的な状態とも密接に関連しており、例えば腫瘍の増殖や転移巣の拡大、または増殖性糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチの骨膜炎などに対しては病的に働くことが知られています。

 病的な血管新生と、虚血臓器にみられるような半ば生理的な血管新生の病態が同じものであるのか、あるいは異なった機序で起こるのかは完全には明かにされていません。少なくとも血管新生の正または負のコントロールは多くの疾患の治療に寄与するものと考えられています。

 これまでの研究で、血管新生の過程は様々な液性・細胞性因子の正の因子・負の因子の巧妙な作用バランスによってコントロールされていることが明らかにされています。

 現在、心血管領域では血管新生に対する正の因子:VEGF(血管内皮増殖因子)、bFGF,HGFなどの遺伝子や蛋白質を利用した基礎的・臨床的研究が急速に進んでいます。

 現在、血管新生療法としては、血管新生因子蛋白療法、血管新生因子遺伝子療法、骨髄あるいは抹消血中の血管内皮前駆細胞を用いた細胞療法の3種類がおこなわれています。

<問題点>

 本療法の主たる対象は冠動脈疾患患者や末梢閉塞性動脈硬化症患者ですが、他の病気(悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチなどの患者ではそれらを悪化させることが予測されるため、本療法を行う前にこれらの病態が無いことを確認しなければなりません。

 本療法を行う対象患者は重症虚血性疾患で、治療効果の判定が痛み(胸痛や下肢虚血に伴う痛み)の軽減にプラセボが効果を発揮することが良く知られているため、ごく軽度の血流改善も組織の虚血改善に劇的な効果がでますが、客観的な評価方法の確立が血管新生療法を確立したものにするには必要と考えられています。


<NST関連用語解説>   血液検査:アルブミン値はこちらです。
 

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