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1997年10月1日号 231

間質性肺炎とPIE症候群

シリーズ副作用を考える(2)

   間質性肺炎とPIE症候群は異なる疾患(副作用)ですが患者に指導すべき初期症状の注意点は同じです。

 呼吸困難、乾性咳嗽、発熱が主な症状で患者さんへは坂・階段の昇降時の呼吸困難感と乾性咳嗽等の症状の発現には特に注意するように指導すべきです。
 
 発熱の程度は、微熱から39℃以上の高熱まで症例により異なります。3つの症状が必ずしも随伴しない場合もあります。
 両者とも胸部X線、胸部打聴診、動脈血ガス分析、呼吸機能検査、血液検査、胸部CT、気管支肺胞洗浄肺生検、リンパ球刺激試験(LST)などにより診断されます。

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 急性、亜急性および慢性の発症があり、投与開始後発症までの時間は一定していません。癌化学療法剤では投与終了後に間質性肺炎が発症する例もあります。一般に原因薬剤の中止、治療により回復するが、死亡する重症例もあります。

 間質性肺炎を惹起する薬剤は細胞障害性薬剤、非細胞障害性薬剤の2つに分類されます。メカニズムとしては、1、活性酸素による障害、2、直接的な細胞障害作用、3、免疫学的機序(アレルギー反応)が考えられています。さらにアミオダロンでは4、肺実質細胞内へのリン脂質の沈着も機序として示唆されています。

 一方、PIE症候群の発症機序は、アレルギー反応が関与していると考えられています。

*患者さんが注意すべき症状は、「息切れがする、息苦しくなる、空咳が出る、発熱」です

 間質性肺炎、PIE症候群として原因薬剤が推定できれば薬剤の中止が第一の処置です。軽症例では、薬剤の中止のみで治癒する例も報告されています。ただし、薬剤の種類によっては、一時休薬について慎重な対応が必要な場合も考えられますので、休薬するか否かは主治医の判断に委ねる必要があります。
 
 その他の治療法としては、呼吸管理が一般的ですが、重症例ではステロイド療法(パルス療法など)が行われます。

 リスクファクターとして、1、元に肺病変がある場合、2、高齢者、3、放射線治療、酸素療法との併用等があげられます。

 相互作用として、インターフェロンα製剤と小柴胡湯の併用による、間質性肺炎の発現・増悪が認められており、併用は禁忌とされています。

 薬剤性の間質性肺炎、PIE症候群を予測することは不可能であり、重篤な転帰にいたらないようにするため、胸部X線などによる早期診断と原因薬剤の中止を始めとする早期治療が重要です。

 <薬剤性の肺障害>

 病像から分類すると、間質性肺炎、過敏性肺炎、PIE症候群があり、同一薬剤であっても異なった病像を呈することもあります。

 間質性肺炎が最も発現頻度が高くなっています。

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 今回取り上げた副作用が記載されている採用薬品(内服のみ)

 PIE症候群(PIE:Pulmonary infiltration with eosinophilia )

 テグレトール、ナイキサン、ダントリウム、バリダーゼ、ダーゼン、セフテム、オラスポアDS、ケフラール、セフゾン、メイアクト、トミロン、バナン、ミノマイシン、サラゾピリン、バクタ

間質性肺炎

 アレビアチン、ヒダントール、テグレトール、ボルタレン、ミナルフェン、オークル、ロキソニン、PL顆粒、フルイトラン、レニベース、プレタール、チオラ、バリダーゼ、ダーゼン、イムラン、ブレディニン、エンドキサンP、マブリン散、アルケラン、メソトレキセート、5FU、サンフラールS、ヤマフール、UFT、ラステットS、オダイン、リマチル、リドーラ、小柴胡湯、柴朴湯、柴苓湯、セフテム、オラスポアDS、ケフラール、セフゾン、メイアクト、トミロン、バナン、ルリッド、ミノマイシン、サラゾピリン、イソニアジド、シプロキサン、スパラ、メガロシン、トスキサシン

 副作用が報告されている薬剤例

小柴胡湯:1994〜1996年の間に間質性肺炎88例報告、約2.5万人に一人程度の発現頻度と推定されている。

ミノマイシン:PIE症候群3例の自発報告がなされている。発現頻度は不明、間質性肺炎が国内10例、PIE症候群が国内14例、海外6例(経口)

メタルカプターゼ:間質性肺炎4例、PIE症候群 国内3例、海外1例。発現頻度は不明

UFT:間質性肺炎12例

ダントリウム:PIE症候群国内1例、海外9例


{参考文献}薬事時報社 重大な副作用回避のための服薬指導情報集


インターフェロン製剤と間質性肺炎

1993年2月1日号 No.123

医薬品副作用情報 No.118


 インターフェロン(IFN)製剤(この時の記事ではα製剤)の使用により、間質性肺炎が発現したとする症例が報告されています。
これらの報告のうち大部分が小柴胡湯などすでに肝障害を起こすことが知られている漢方製剤が併用されている症例です。したがって、IFN製剤の使用に際しては小柴胡湯等との併用は避けることが必要です。(現在では禁忌)

 薬剤性肺障害の中で重篤な進行性疾患として間質性肺炎があり、原因薬剤としてはブレオマイシンなどの抗癌剤、金製剤、小柴胡湯などが知られています。病変は進行性で、胸部X線上の変化に先立ち、乾性咳嗽、動脈血酸素分圧の低下等を認めます。間質性肺炎が疑われた場合には、直ちに使用を中止するとともに適切な処置を行う必要があります。

 IFNで間質性肺炎を発現した症例で、併用されている薬剤の内、発現に関与したと考えられる薬剤として、小柴胡湯が最も多く(65%)で、類似製剤である大柴胡湯、柴苓湯を含めると74%になります。他はボルタレン、ガスター、インダシン等でした。

 IFNでの間質性肺炎の特徴としては、すでに間質性肺炎を起こすことが知られている小柴胡湯等の漢方製剤が使用されている症例が多いことが挙げられます。しかし、小柴胡湯がIFN使用の1年以上前から継続していた症例もあり、これら長期間服用されている症例については、小柴胡湯等が単独で間質性肺炎の発現に関与しているとは考えられていません。またIFNのみの中止で症状が回復した症例もあり、これらの症例では小柴胡湯等の関与はほとんど無いと考えられています。

 しかし、これまでの報告から見ると、併用期間の問題があるとはいえ小柴胡湯はIFNとの相互作用による間質性肺炎の発現や増悪については重要な要素になっていると考えざるを得ないとされています。


KL-6
(Krebs von denLungen-6)


 新しい診断法として注目されているKL-6は、U(2)型肺胞上皮細胞で作られる抗原で、肺胞腔内や間質性中の毛細血管へ遊離されていきます。従って間質性の病気(特発性間質性肺炎・過敏性肺炎・放射性肺炎など)で高値を示すしますが、間質性でも炎症性でもない病気(肺気腫や気管支拡張症など)でも高値を示すことがあります。

 またKL-6は肺胞上皮細胞だけでなく、乳管上皮細胞や膵管上皮細胞にも分布しているため、膵癌・乳癌のような肺癌以外の疾患でも高値を示します。

 このようにKL-6は間質性肺炎に特異的ではなく選択的ですが、その選択の幅は血沈やLDHに比べて狭く、鋭敏です。

 KL-6はステロイドにより病態が落ち着くにつれて下がってきますので、治療で予後を判定する1つの指標となります。また放射性肺炎の場合、放射線照射を受けた後に膵臓炎を起こしたグループでは高値を示し、肺臓炎を起こさなかったグループは変化が見られませんでした。従ってKL-6は放射線肺炎の発症の指標となります。

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 間質性肺炎は、特発性間質性肺炎や薬剤性肺炎など150種以上もの疾患からなる疾患群で、病勢把握のマーカーとしてKL−6が保険適応を持っています。

 間質性肺炎やレジオネラ肺炎等の患者ではKL−6が高値を示し、結核患者の肺活量低下の指標となります。またARDS患者の後期相で上昇するなど予後不良の予測因子となります。

 KL−6はSP−AたSP−Dと異なりステロイドの影響を受けにくい特徴があり、炎症マーカーとは異なります。例えば、炎症マーカーが正常でもKL−6高値の場合、組織修復は不十分で線維化が進行する。逆に炎症マーカー高値でもKL−6正常であれば、線維化は進行しません。

 さらに画像所見より早く、病勢変化をとらえることもKL−6の特徴です。

 肺癌治療で放射線やイレッサを飲んでいるような患者では、KL−6を定期的に測定し早期診断につなげるようにすることも可能です。
 

        出典:OHPニュース 1999.11 等

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