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1996年6月15日号  201

医薬品副作用情報 No.137

厚生省薬務局

  1.カルベニン注、メロペン注とデパケン、バレリンの 相互作用によるてんかんの発作

2.小柴胡湯による「間質性肺炎」について

3.輸血用血液製剤とGVHDについて

4.「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話等の使用に関する暫定指針」について 1.カルベニン注、メロペン注とデパケン、バレリンの相互作用によるてんかんの発作

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 バルプロ酸Na(デパケン錠、バレリンシロップ)によりてんかんの発作が抑えられている症例に、カルベニン又はメロペンを併用したところバルプロ酸の血中濃度が急激に低下し、てんかんの発作が再発した。カルベニン、又はメロペンの中止により、バルプロ酸の血中濃度は速やかに上昇し、てんかんの発作は消失したとの報告があった。

 バルプロ酸の血中濃度維持はてんかんの発作の抑制に重要であり、カルベニン、メロペン、バルプロ酸Na(デパケン、バレリンS)製剤の使用上の注意の「禁忌」と「相互作用」の項に併用しないことが記載されました。

【禁忌】

*カルベニン、メロペン
 バルプロ酸Na:本剤の併用によりバルプロ酸の血中濃度が低下し、てんかんの発作が再発することがある。
*バルプロ酸Na(デパケン、バレリン)
 カルベニン、メロペンを併用しない。:本剤の血中濃度が低下し、てんかんの発作が再発することがある。

2.小柴胡湯による「間質性肺炎」について

 小柴胡湯による間質性肺炎の発生頻度は、約2.5万人に1人程度と推定されています。平成6年1月以降報告された症例では、肺疾患の合併あるいは既往歴のある患者、又は50〜70歳台の患者に多く発症しており、これらの患者に投与する場合には十分な観察と注意が必要です。

 本剤の服用開始2ヵ月以内に発症する例が多く、小柴胡湯の使用中は、下記の様な処置をとることが必要です。

 *発熱、乾性咳嗽、呼吸困難等の感冒様症状に留意し、このような初期症状があらわれた場合は直ちに中止し、胸部X線により間質性陰影(スリガラス、粒状、網状陰影)の有無を確認する。
 更に、胸部CT、動脈血液ガス分析を実施し確定診断することが望ましい。患者には、発熱、せき、息切れ等の症状があらわれた場合には、一時服薬を中止し、直ちに連絡するように説明する。

 *中止により改善しない場合は、ステロイド剤の投与が効果的です。(重篤な症例ではステロイドパルス療法、呼吸困難を認めた場合は直ちに気管確保し、酸素吸入を行う。)

※輸血後GVHDのハイリスク グループ

 先天性免疫不全症、造血幹細胞移植患者、胎児・未熟児、胎児輸血後の交換輸血例、心臓血管下か手術例、担癌症例の外科的手術例、近親者(親子、兄弟)リンパ腫、造血器腫瘍(白血病等)、強力な化学療法、放射線療法
 
 新鮮血(採血後72時間以内)の血液の輸血


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*サイレース錠(フルニトラゼパム:睡眠導入剤)

 アメリカへの持ち込み禁止。従来は、旅行客が個人使用目的で持参することは可能でしたが、今後は一切の持ち込みができず、税関で没収さ れることになります。

 サイレース錠を服用中の患者への処方に際しては、本剤(フルニトラ ゼパム)以外の睡眠導入薬(ベンザリン、レンドルミン、アモバン等)に変更して下さい。(ハワイ、アラスカも米国です。)


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   日本での脳卒中死亡の減少

幼少期の社会経済要因の向上が寄与

2007年3月15日号 No.448


 脳卒中は日本人の死亡原因の第1位でしたが、1990年から減少し始め、1998年には激減しました。
 脳卒中死亡率が世界一高かった時代と現在では食糧事情が大きく異なることから、幼少期の栄養状態を含む社会経済要因が、脳卒中死亡と関連している可能性が示唆されています。

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 滋賀医科大学福祉保険医学講座での統計学的研究から、脳卒中死亡と全く逆の動きをするのが慎重で、脳卒中死の減少に逆比例して日本人の身長が伸びてきています。

 検討の結果、遺伝的要因を考えない場合、身長には胎児の時期から幼少期にかけての栄養状態など成長に影響する環境要因、特に社会経済要因が深く影響すると考えられ、このことは欧米でも報告されています。

<女性では身長と脳卒中死亡率に負の関連>

 脳卒中と身長の関連については、これまで日本では研究がされていませんでしたが、1980年の循環器疾患基礎調査の対象を19年間追跡した追跡したコホート研究NIPPONN DATA80の一環として実施されました。

 身長と脳卒中死亡との関連を分析した結果、男女とも身長が高いほど脳卒中死亡率は低いという負の関連が認められました。しかし、年齢を調節すると、男性では負の関連は有意ではなくなりましたが、女性では年齢を調節しても負の関連は有意なままでした。

 今回の検討で、男性では身長と脳卒中死亡率との間に有意な関連は見出されませんでした。これは、男性では脳卒中死亡の危険因子でもある喫煙や飲酒などの生活習慣を持つ人が多いため、身長による影響が出にくいと考えられます。

 ※ NIPPONN DATA80より

 脳心血管疾患の既往歴がない男性3,969人、女性4,955人を対象。平均年齢は男女とも50歳
平均身長は男性162.3cm、女性150.1cmでした。最長19年間の追跡調査中に脳卒中死亡が男性158人、女性132人で、

内訳は
男性で脳梗塞97人、脳出血37人、その他24人
女性で 〃 69人、 〃 26人、 〃 37人

 まず身長が男女とも年齢と強い逆相関を示したことから、身長5cm上昇と脳卒中の各危険因子との関連を検討したところ、収縮期血圧と糖尿病の有病率は背が高いほど低く、総コレステロール値は男性で背が高いほど高く、女性では背が高いほど低いという結果でした。

 しかし年齢を年令調整するとこれらの関連は弱まり、身長と各危険因子との間に負の関連は見られませんでした。

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 今回の研究結果では、今の子供の身長を伸ばせば将来、脳卒中による死亡率が減らせると考えるのは誤りで、“身長”は単に背の高さそのものを意味しているのではなく、胎児期から、幼少期にかけての栄養状態などを反映した結果ととらえるべきと指摘されています。

 日本人の脳卒中死亡の減少には、血圧管理の向上に加え、成人期の身長に影響を与える幼少期の生育環境要因や栄養状態の変化に寄与していると示唆しています。

   出典:メディカル・トリビューン 2007.2.22  滋賀医科大学福祉保険医学講座 賽澤 篤


<医学トピックス>

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<<用語辞典>>

ウレミックトキシン

 ウレミックトキシンは尿毒症の症状を引き起こす物質の総称です。 最近の研究では、ウレミックトキシンは腎不全の状態下で腎不全全進行から透析合併症の原因・増悪まで含めて広く関わる生体障害因と捉えられてきています。
 通常、ウレミックトキシンの単一物質がある尿毒症症状に対応することは希で、多種の物質が共同で毒性を示していると考えられています。

<ウレミックトキシンと考えられている物質>

 水、Na、K、H+、P、Al、尿素、蓚酸、インドキシル硫酸、PTH β2ミクログロブリン、硫酸イオン、Mg、クレアチニン、メチルグアニジン、 グアニジノコハク酸、メチル化アルギニン、ホモシステイン、pクレゾール、フェノール 馬尿酸、フランカルボン酸、尿酸、プソイドウリジン、メチルアミン類、ポリアミン類 cAMP、ミオイノシトール、3−DG、AGEs、中分子量物質、Na利尿ホルモン 種々のペプチドホルモン、リボヌクレアーゼ、補体フラグメントBa,D因子 顆粒球抑制蛋白(GIP)、脱顆粒球(DIP)、科学走抑制蛋白、peak2a

*インドキシル硫酸

 腸管内で食事蛋白由来のトリプトファンから、大腸菌などの腸内細菌によって生成されたインドールが体内に吸収され、肝臓で硫酸包合によりインドキシル硫酸が生成されます。

 インドキシル硫酸は、腎臓から尿に排泄されますが、慢性腎不全患者ではその腎クリアランスが低下することにより、血清インドキシル硫酸濃度が増加し、慢性腎不全を進展させます。

   出典:三共資料


PCA
patient‐controlled analgesia
患者管理鎮痛(無痛)法

 患者自身の判断でボタンを押すと、あらかじめ設定された量の鎮痛薬が投与される方法

 静脈内や硬膜外腔へ注入する方法があります。
PCAに使われる器材はコンピュータ内蔵のものから、ゴム製のバルーンなどを利用したきわめて簡単なものまでさまざまです。

 これまで手術後の痛みに関してはいわゆる「疼痛時指示」というかたちで長年行われてきていて、患者にとっては必ずしも満足のいく疼痛管理pain controlであったとはいえません。

 今までは、患者の訴えを看護師が聞いて、医師へ連絡し指示をあおぐ、あるいは医師の指示を看護師が判断して実行するという時間的な遅れがでます。PCAは患者自身が痛い時に自分で判断して鎮痛薬をすぐ使用できる利点があり、今後さらに普及していくと思われる.

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PCA
posterior cerebral artery
後大脳動脈

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