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  HS病院薬剤部発行     

                                     薬 剤 ニ ュ ー ス 

  1994年

7月1日号

NO.155

 DMARDsとは

    −慢性関節リウマチの治療−

 DMARDsとは、Disease Modifying Antirheumatic Drugsの略で以前は遅効性抗リウマチ薬といわれていたものです。古くは注射金剤がありますが、現在の抗リウマチ薬のほとんどが本来慢性関節リウマチ(以下RA)に使われていた薬ではなくて、他の目的で使われていた薬です。注射金剤は、最初抗結核薬でした。その後出てきたのがD−ペニシラミンですが、これも元々はWill-son病とか、重金属中毒に使われていました。さらにサラゾピリンも潰瘍性大腸炎の薬ということで、それぞれ本来は目的とした疾患は違っていたのですが,その後経験的にRAに効果があることが分かってきました。

{参考文献}

 PTM Vol.6,8(13)jun.,1994

 Pharma Medica 2 1994 Vol.12 NO.2

 医薬ジャ-ナル Vol.29 No.1 1993等

SAARD

slow-acting anti-reumatic drugs

 遅効性抗リウマチ薬〜DMARDと同義

 効果の発現が遅く、用量にもよりますが、通常2〜3ヶ月から半年くらいかかることがあるので、
簡単に無効と判断して止めないことが求められます。

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<DMARDsの種類>

  1,金製剤(GST)〜シオゾ-ル、リド-ラ

  2,SH剤〜リマチル、チオラ

  3,サルファ剤〜サラゾピリン

  4,その他〜カルフェニ-ル

  5,免疫抑制剤〜イムラン、エンドキサン,メソトレキセ-ト,ブレディニンン

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1) 金製剤

 現在一般に用いられている金製剤は、筋注で使用するシオゾ−ルと内服のリド−ラ錠です。

 金製剤の作用機序は、いまだ完全には解明されてはいません。マクロファ−ジにおける酸性フォスファタ−ゼ、βグルクロニダ−ゼなどのライソゾ−ム酵素の抑制、ヒト多核白血球のエステラ−ゼ等の抑制効果を持つこと、そしてプ   ロスタグランジンの合成抑制作用を持つことから、抗炎症作用があることが知られています。

 免疫学的に、金製剤はリンパ球の増殖抑制作用、血中の免疫グロブリン、リウマチ因子レベルの低下作用、補体の不活化そしてマクロファ−ジの活性を抑制する作用などが知られています。

2) SH剤〜リマチル、メタルカプタ−ゼは強いキレ−ト作用を持っており、各種重金属沈着症の治療剤として用いられてきました。その後、チオラ錠をへてリマチルが開発されました。

 薬理作用としては、コラゲナ−ゼ活性の障害、IgMリウマチ因子や免疫複合体の解離、ヘルパ−T細胞機能抑制などの報告があります。

[DMARDsの副作用]

 個々の薬剤によって差はありますが、腎障害(蛋白尿、血尿、まれにBUN、クレアチニンの上昇、急性腎不全、ネフロ−ゼ症候群など)、血球減少、間質性肺炎、などがあげられます。特に急性腎不全,顆粒球減少症、汎血球減少症、間質性肺炎などは前触れなしに突然起こり、生命に係わる点で重要です。

 皮膚のかゆみ、発疹、胃腸障害などは頻度は多いが重篤になることは極めてまれです。一般に効果の強いもの程、副作用も高度なものが多い傾向にあります。

[DMARDsの位置付け]

 NSAIDs(消炎鎮痛剤)の使用が制限され、今やDMARDsはRA治療の中心となっています

 しかし副作用を考慮するとすべてのRAに無批判に与薬すべきとはいえません。RAの10〜20%の患者はDMARDs無しにコントロ−ル可能だからです。

 したがって進行性のRAであることを見極めた上で与薬を考慮すべきだとされています。


リウマチとNSAIDs

出典:治療 2000.7 安保 徹(新潟大学医動物学 教授)

慢性関節リウマチは、顆粒球を主体とした炎症です。細菌感染が無くaseptic(無菌)な顆粒球の炎症は、化膿性の炎症ではなく組織破壊の炎症となります。そして、この治療にNSAIDsやステロイドを使った場合、これらの薬剤は顆粒球を活性化するために、むしろ腰痛や関節炎症、RAの炎症を増強します。

 NSAIDsやステロイドやリンパ球の炎症に対しては一時期抗炎症剤として働きますが、顆粒球の炎症に対しては増悪剤として働きます。

 顆粒球の炎症を抑えるには血流を増やす必要があります。この意味でもNSAIDsやステロイドは血流を低下させる働きがあるので逆効果です。

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 マクロファージの運動性を進化させたものが筋肉です。 老廃物を一時ため置いたものが骨となり、骨と骨を繋ぐ関節もマクロファージ由来です。

 マクロファージは血球細胞群と血管内皮細胞を生み出しているので、これらが一体となって運動器官が進化しました。このため、これらの運動器官の神経支配や血流系の支配はオーバーラップしていて、筋肉が疲労して血流が障害されたときは、筋肉のみならずその領域の骨と関節も血流障害に陥り障害を受けます。血流障害はその領域の交感神経緊張状態にさせ、必ず顆粒球増多を招きます。これが、ついには関節や骨に異常が起こってくるメカニズムです。

 これらの運動器官の組織障害を治療させようとする生体反応が痛みを作ります。 このような痛みはプロスタグランジンやアセチルコリンによって生じます。したがって痛み自体を治療の対象とすることは完全に間違っています。

 RA(他の自己免疫疾患も)免疫抑制の病気で、顆粒球が過剰増加し、過剰活性化して関節を破壊していきます。

 患者がウイルスなどの感染によって急性炎症が始まり、その後顆粒球を主体とした慢性炎症に移行したものがRAです。

 顆粒球の活性化は交感神経の支配下にあるので、慢性期に入ったRA患者は脈拍が多いのく、いつも疲れた状態となります。


ミノサイクリン(ミノマイシン)の抗リウマチ作用

    出典:医薬ジャーナル 2000.3

 ミノサイクリンは、静菌作用を持つ抗菌薬として広く使用されていますが、多様な抗炎症作用と
免疫抑制作用を持つことが知られています。

 コラーゲン活性、ホスホリパーゼA2活性、フリーラジカル産生などを抑制することから、慢性関節リウマチ(RA)でみられる種々の炎症過程を阻害する効果が期待できます。

 しかし、抗菌作用による菌交代減少、色素沈着などの長期使用に伴う副作用の発現が危惧されます。


リウマチ熱

急性関節リウマチ

出典:薬局 2001.3

 小児に発症することが多い。
 関節と心臓に病変を来たす炎症性疾患。
 細菌(A群溶連菌)による上気道炎が先行して、その後に発熱、関節痛、関節炎、心内膜炎、小舞踏病、皮下結節、輪状紅斑など多彩な臨床症状がみられます。

 診断にはジョーンズの基準により、症候と検査成績から診断されます。

 最近、発症は低下しているという報告もあります。

<治療>

サリチル酸や副腎皮質ホルモンあるいは抗生物質が使用され、予後は良好であることが一般的です。しかし再発したり、心臓の弁膜症を引き起こしたりして心不全を呈することもあります。

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分子相同性
molecular mimicry


病原体の菌体成分の一部が自己抗原とよく似ている場合、病原体の侵入によって起こった免疫応答が自己に対して向けられ、その結果、病態が形成されることがあります。(交叉反応)

その代表がリウマチ熱です。リウマチ熱では、咽頭にA群β溶連菌感染が起こると数週後に心筋炎が起こり、心臓弁膜症の原因となります。これは溶連菌の菌体成分(M蛋白)が心筋成分と共通の抗原性を持つためで、このような現象を分子相同性と呼びます。

   出典:治療 2002.6


 

リウマチ性疾患

    出典:治療 2002.6

 リウマチ性疾患とは、運動器(関節、筋肉、骨、靱帯、腱など)の疼痛とこわばりを呈する疾患の総称です。

 関節を構成するのは、骨、軟骨、滑膜、筋肉、靱帯などで、そのいずれかに病変があっても患者は「関節が痛い」と言われます。ですのでリウマチ性疾患には多様な疾患が含まれます。

 膠原病は、その主たる症状が関節痛であることから、臨床的にはリウマチ性疾患に、免疫学的には自己免疫疾患に、病理組織学的には結合組織疾患にそれぞれ分類されています。

 病因は、遺伝的素因、免疫学的要因、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されていますが、詳細は不明です。

 リウマチ性疾患は、病因別に10の群に大別されます。疾患により病因も異なり、1.免疫異常(SLEなどの膠原病)、2.感染症(細菌性関節炎など)、3.内分泌、代謝異常(痛風、偽痛風など)、4.腫瘍(多発性骨髄腫、肥大性骨関節症など)、5.退行変性(変形性関節症など)、6.遺伝的素因の関与(強直性脊椎炎など)、7.遺伝子異常(Marfan症候群など)、8.外傷(外傷性関節炎、Charcot関節症など)、9.炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)、10.アレルギー などに分けられます。


シェアード・エピトープ

 HLA-DR共通のアミノ酸配列のことで、DR4,DR10,DR14の第3超可変域にみられます。

 自己免疫現象を高頻度に伴う膠原病では、患者集団で健常集団に比してHLA遺伝子の頻度が著明に増加しているものがあります。

 特に慢性関節リウマチ(RA)患者では、DR4,DR1の一部のサブタイプを持つものが増えていて、これらのDR分子はβ鎖の第3超可変域の一部アミノ酸70から74番にアミノ酸1文字コードでQRRAAないしQKRAA配列を共有しています。

 このアミノ酸配列をシェアード・エピトープと名付けられています。


   エピトープ〜抗原決定基

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