HS病院薬剤部発行     

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薬剤ニ ュ ー ス

  1994年

10月15日号

NO.162

 

                                            

   副作用通報事例に関する調査報告  

      ***大阪府環境保健部・医薬品等副作用研究会***          

                                         

 今年度大阪府の副作用通報事例数は302例で、最近数年間の報告事例数はやや少ない傾向になってきています。報告される医薬品の種類は毎年少しずつ変化がみられますが、本年度は中枢神経系用薬が最も多く、次いで「薬効の異なる薬剤の複数与薬」(相互作用等)、診断用薬、循環器用薬、抗生物質がこれに次いでいます。

 解熱鎮痛用薬ではボルタレンが最も多く、診断用薬は主に造影剤で、循環器用薬のうち最も多いのはカルシウム拮抗剤でした。抗生物質製剤の内訳としては、セフェム系、ペニシリン系、テトラサイクリン系が多く、また最近は「薬効の異なる薬剤の複数与薬」による副作用例の増加が注目されます。

< <因果関係別事例>>

 確実 24(8、0%) おそらく 248(82、1%) あるいは 30(9、9%)

 計  302 例 {薬剤ニュースNO.53参照:ネット未掲載}

 

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 本年度の報告で特に注目されるのは、ボルタレン坐薬による急性腎不全の死亡例報告されたことです。

 わが国でこれまで報告例のなかったユリノームによる出血傾向、グリミクロンによる筋肉痛、アストモリジンとトミロンの併用によるスチーブン・ジョンソン症候群などの例も報告されています。

[平成5年度大阪府副作用報告ベスト?10]

1.相互作用 2.造影剤 3.解熱鎮痛剤4.Ca拮抗剤(アダラート等)    5.セフェム系6.鎮静・抗不安剤 7.ペニシリン系8.精神神経用剤  9.抗パーキンソン剤10.テトラサイクリン剤、抗てんかん剤

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{解熱剤が発症に関与した可能性の例}                            

 3歳7ヵ月の女児が種々の解熱剤を与薬され、急速死亡に至った例では「ライ症候群」と考えられ、

発症要因としては、アセトアミノフェン、スルピリン、イブプロフェンの相互作用がかえって原因疾

患の治癒を遅らせ、重症化させる可能性のあることを示す症例であり、解熱剤の適応について再検討する

必要のあることを指摘しています。            

{実例}

 当初頭痛および発熱のため、家庭で市販の解熱剤を3回、ついでスルピリン坐薬も使用な経過で、翌日も頭痛、発熱が続くため近医を受診、バナンを1回服用したが、午後からは腹痛を訴え、嘔吐もあり、発熱持続のためイブプロフェン坐薬 を使用、夕方になって突然意識障害をきたし、緊急入院。

 入院後、四肢硬直、バビンスキー反射陽性、呼吸不全、自己呼吸が消失、徐脈発作ののち死亡

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バビンスキー反射
Babinski's reflex

 脳に出血などの異常があるとき、足の裏をボールペンのような尖ったもので軽く縦に刺激すると指をそらすようになります。左足に反応があれば右脳に異常があると考えます。

 正常な場合は刺激で指は内側に曲がります。

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シグナル検出

 薬の種類と有害事象の種類を縦横に取り、更に自発報告の数を縦横に集計し、報告数が多い特定の組み合わせに因果関係があるかどうかを探索的に検討する方法


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副作用情報報告制度

    医療関係者による報告の義務化

2005年4月15日号 No.404

 平成14年7月の薬事法改正により、医療機関からの副作用報告が義務化され、翌15年7月から施行されています。

 副作用による健康被害の拡大を未然に防止するためには、副作用情報を迅速に収集し的確に対処することが重要です。国は副作用情報を収集するために2つの制度を設けています。

 医薬品が市販されると、それを使用する患者数は大幅に増加し、患者の病態も多様化するため、臨床試験では知られていなかった重篤な副作用が発現する場合があります。

 従来から企業に対しては、承認を受けた医薬品、医療用具等について、それぞれの製品によると疑われる、副作用などの発生を知った場合には

1.「使用上の注意」から予測できないものであって症状が重篤な場合は15日以内に
2.「使用上の注意」から予測できないものであって症状が中等度のもの、又は「使用上の注意」から予測できるものであって症状が重篤な場合には30日以内に厚生労働省に報告しなければならない。
           とされています。

 一方、医療機関に対しては、平成9年5月に「医薬品等安全情報報告制度へのご協力について(お願い)」に基づき、医療機関等から直接、医薬品または医療用具等に起因すると思われる副作用情報、感染症情報を広く収集する「医薬品等安全性情報報告制度」を運用してきました。

 これまでの、医薬品や医療用具の品質、有効性安全性を「市販前」に評価するところに重点を置いた薬事規制から、製品が市場に出た後の安全対策により一層充実させる必要性が高まってきたことにより、副作用情報の収集も強化されることが求められており、これが医療機関報告義務化の第一の理由です。

<医療機関報告の対象となる副作用情報>

1.死亡 2.障害
3.死亡又は障害につながる恐れのある症例
4.治療のため病院又は診療所への入院又は入院期間が延長される症例。
5.1〜4までに掲げる症例に準じて重篤である症例
6.後世代における先天性の疾患または異常
7.当該医薬品(医療用具)によると疑われる感染症による1〜6までに掲げる症例等の発生の恐れのあるもの。
8.当該医療用具の不具合の発生のうち、1〜6までに掲げる症例等の発生の恐れのあるもの
9.1〜7に示す症例以外で、軽微ではなく、かつ、添付文書等から予測できない未知の症例等の発生
10.当該医療用具の不具合の発生のうち、9に掲げる症例の発生のあるもの。

<報告者>
医師、歯科医師、薬剤師、薬局開設者 その他医療に携わる者のうち業務上医薬品又は医療用具を取り扱う者。

<報告の方法>

 所定の用紙(薬剤部にあり)により、FAXまたは郵送(住所、電話番号は所定の用紙に記載されています。)

 国は平成9年6月までは、全国3,000のモニター医療機関の医療関係者から報告を収集する「モニター報告」制度に基づき副作用等の報告を収集してきましたが、平成9年7月からは、報告者をすべての医療機関の医療関係者に拡大した「医薬品等安全性情報」に切り替えました。

{参考文献}  日本病院薬剤師会雑誌 2005.4


医薬品トピックス    カレーの薬効(1)


<<用語辞典>>

アストロサイト

グリア

<グリア>

 中枢神経系を構成する非神経系の支持細胞の総称

 神経の支持、栄養、代謝などの様々な働きを持っています。

 アストロサイト(星錠膠細胞)、オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)、上衣細胞、ミクログリア(小膠細胞)より構成されます。

<アストロサイト>

 比較的大型で、多くの細い突起を細胞体から放射状に出し、星状となっています。この突起の中には細胞骨格の中間径フィラメントであるグリア線維性酸性蛋白質が存在しています。血液脳関門(BBB)の形成やシナプス機能の調節など、脳機能の発現のために重要な役割を果たしています。

<オリゴデンドロサイト>

 細胞体は小さく卵円形で、核は丸く細胞質が少ない細胞。中枢神経系で隣接する神経の軸索数本を包み込み、ミリエン(髄鞘)を形成しています。このミリエンにより軸索が絶縁され、軸索の電気的容量は減少し、神経の伝導速度は増加します。

 出典:ファルマシア 2003.2

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 脳の神経系はニューロンとグリアから成り立っているにもかかわらず、これまで脳機能を語るときには常にニューロンが主役で、グリアは脇役でした。しかし、最近グリア細胞の1つであるアストロサイトに驚くべき機能が備わっていることが明らかになってきました。

 生体の多くの組織には再生よる修復機構が備わっていて、その中心的役割を担っているのが体性幹細胞です。しかも誘導刺激を受けると特定の細胞に分化する特性を持っています。

 動物実験で、神経幹細胞を海馬アストロサイトと共に培養すると、ニューロンの新生が10倍も促進されることが見出されています。さらにそのメカニズムを検討した結果、アストロサイトにより成体神経幹細胞の増殖が2倍に増加し、さらにニューロンへ分化する速度が6倍に上がることが明らかにされています。

 なお、脊髄由来のアストロサイトはニューロン新生を引き起こさず、むしろ成体幹細胞をグリアに分化させてしまいます。したがってどの部位由来のアストロサイトが作用するかがニューロン新生の重要なカギと言えます。

 アストロサイトの機能はそれだけではなく、アストロサイトがなければ、成体神経幹細胞から新しく生まれたニューロンは成熟したシナプスを形成することが出来ません。

 このようにアストロサイトは従来考えられていたよりもはるかにアクティブに脳神経系を統御していることが明らかになっています。

 今後、神経幹細胞の分化誘導の詳細が明らかにされることで、パーキンソン病など神経の再生を必要とする疾患の克服に貢献するものと期待されています。

           出典:ファルマシア 2003.1

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