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医薬品副作用救済制度

1993年8月15日 No.135

 医薬品が市販されるまでには、多くの安全性・有効性に関する試験が積み重ねられ、市販後においても医薬品副作用モニター制度等により安全対策が講じられています。しかし万全の注意を払って使用した場合でもまれに副作用による健康被害の発生が経験され、現在の科学水準では副作用の発現を完全に防止することは困難であるといわれています。  
 こうした副作用による健康被害を迅速に救済する目的で昭和54年に「医薬副作用被害救済基金」が設立されました。昭和62年には保健医療の分野でのニーズに応えるため、新医薬品や新医療機械等の研究開発を積極的に進めていくことになり、法律の改正により「医薬品副作用被害救済・研究振興基金」に改組し、また、昭和64年から血液製剤によるエイズ患者等の救済に関する受託事業も行っています。    

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 救済基金の給付は、健康被害を受けた本人(死亡した場合はその遺族のうち最優先の者)が請求書に診断書などの必要な書類を添えて基金に直接行う事になっています。

 因果関係等の証明のため医師の診断書が必要で、副作用の治療を行った病院が2カ所以上の場合はそれぞれの病院の担当医師が診断書を作成することが必要です。

 また診断書は、給付の種類及び発生した副作用の症状により様式が異なっており、それぞれの種類・症状に応じたものが必要となります。なお請求書、診断書などの用紙は基金に備えてあり、患者や家族の申し出に応じて無料で送付されています。

<<下記の医薬品は対象から除外されています。>>

癌やその他特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品

 ・抗悪性腫瘍剤 ・免疫抑制剤

 ・血液製剤(血漿分画製剤を除く2004年4月より生物由来製品感染等救済制度が設立されました。)

※ こちらにも関連情報があります。副作用救済制度(1998年)


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肺高血圧症とは

2008年10月1日号 No.484


 肺高血圧症とは、肺動脈圧の上昇を含め、やがて右心室不全にいたる進行性の病態の総称です。

 安静仰臥位での平均肺動脈圧が25mmHgを超える場合(慢性閉塞性肺疾患:COPD、特発性間質性肺炎といった肺疾患、睡眠時無呼吸症候群、肺胞低換気症候群では平均肺動脈圧が20mmHgを超える場合)には肺高血圧と診断されます。

 1990年前半には、肺高血圧症は稀な疾患でしたが、その予後は極めて不良で、5年生存率50%以下とされていました。

 肺高血圧の自覚症状は労作時呼吸困難、易疲労感、動悸、胸痛、失神、咳嗽などです。しかし、初期の肺高血圧症では無症状のことが多く、自覚症状が出現した時にはすでに高度の肺高血圧症となっている場合が多く見受けられます。

 平均肺動脈圧は右心カテーテルによる測定値で、外来診療での肺高血圧症のスクリーニングでは心エコーが用いられます。

 心エコーでは右室側からの心室中隔の圧排像と三尖弁逆流から測定した収縮期肺動脈圧(40mmHg以上)をもって肺高血圧症の存在を推定します。

<薬物治療>

 1990年以前の肺高血圧症の治療は、利尿剤、ジギタリス製剤、Ca拮抗剤、ワーファリン錠による抗凝固療法が主でしたが、これらの有効性を検討した臨床試験数はあまり多くありません。

 ベラブロスト(ドルナー錠)は、日本で開発された初の経口プロスタサイクリンアナログで、1995年より比較的軽症の肺高血圧症患者で用いらています。海外での臨床試験の結果では、6分間歩行による運動耐容能の短期改善効果は認められますが、肺血行動態や予後の改善は確認されませんでした。

 このため、ドルナー錠は現在米国の肺高血圧症治療ガイドラインから削除されました。

 1990年以降、エポプロステノールを皮切りにエンドセリン受容体拮抗薬、フォスフォジエステラーゼタイプ5(PDE5)阻害剤などの肺高血圧症に対する臨床試験が行われ、その有効性が報告されています。

 新たに登場した肺高血圧症治療薬は、静注用フローラン(エポプロステノール)、トラクリア錠(ボセンタン水和物)、レバチオ錠(シルデナフィル)などで、いずれも当院では未採用です。

 これらの薬剤は非常に高価で上記の薬剤を1年間した場合の薬剤費は、フローラン(10ng/kg/min)で630万円、トラクリア錠4錠/日で638万、レバチオ錠2錠/日で129万で、フローランではさらに高用量で用いられることが多く、さらに2〜4倍の薬剤費(1.260〜2,520万円)かかる計算になります。

 このような高額な薬剤費が、日常診療の中で無視できない問題となっています。医療経済上の費用対効果の側面から評価した併用治療も、今後重要な課題になると考えられます。

 しかし、新薬の登場により、肺高血圧症患者のQOLは明らかに改善され、コントロール可能な疾患になりつつあります。

 また抗悪性腫瘍剤のイマチニブ(グリベック錠)肺血管内増殖細胞への直接作用により血管平滑筋や内膜の増殖を消退させ、血管リモデリングを改善させたことが報告させ、次世代の肺高血圧症治療薬としての期待が高まっています。

  {参考文献}日本病院薬剤師会雑誌 2008.9


<医学用語辞典>

 マグネット・ホスピタル

 マグネット・ホスピタル(magnet hospital)とは、人材確保の観点から医療界でいわれる「良い病院」に対する形容詞です。  医療従事者(または患者)が自然と集まる魅力的な病院を意味します。

 全米看護師資格センター(ANCC)が質の高い看護サービスを提供している病院をマグネット・ホスピタルとして認定したことに由来します。

 背景としては、米国の病院が利益を重視しすぎた結果、看護部門が崩壊しつつある現状があるようです。マグネット・ホスピタルを認定することで、看護師の減少を食い止めてきた側面もあります。

 日本では、医師不足で崩壊の危機にある地域医療おいて、若手医師がキャリアアップのために研修したいと考えるような病院として、この言葉が使われています。

{参考文献}日本病院薬剤師会雑誌 2008.8


<<用語辞典>>

ミオキミア(ミオキミー)
myokimia
同義語:筋波動症

 ミオキミアは筋の小部分が自然にくり返し収縮し、しかも隣接する部位が入れかわりたちかわり収縮して、あたかも虫が蠢(うごめ)くように見えるものです。一見,筋線維束攣縮に似ていますが、活動電位はこれと異なり、1回の収縮に際して運動単位が数回連続発射します(反復放電)。

 筋電図上で見ると、幾つかの運動単位がバラバラに放電する様子が記録されることがあり、これは外見上近接する筋の小部分がバラバラに収縮をくり返す所見に対応するものです。
ミオキミアの発現機序は明らかでなく、特発性に生ずるもののほかに、顔面にあらわれる顔面ミオキミアは、脳幹の腫瘍や脱髄疾患によることがあります。

    リドーラ錠の副作用


ターナー症候群
Turner's syndrome

同義語:卵巣形成不全ovarian hypoplasia

 性染色体異常により性腺形成異常、低身長、種々の形態異常(奇形)を伴います。

 出生女児数1,000人に1人くらいの発生率です。卵巣形成不全(索状卵巣)により第二次性徴が欠如し、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症となります。

 低身長は全症例にみられ平均身長は約135cmです。外表奇形は翼状頚、外反肘、第4中手骨短縮、高口蓋、新生児のリンパ腫などです。大動脈狭窄症、慢性甲状腺炎の合併が知られています。知能障害は伴ないません。

 女性ホルモンの周期的使用による治療が行われますが、低身長症には最近成長ホルモンが使用されることがあります。(Henry Hubert Turnerはアメリカの内分泌学者,1892‐1970)。


SPD
supply processing and distribution

 SPDは、病院内の物品を対照に、物品・物流管理を一元的に行い、合理化・効率化・管理精度の向上を図ろうとする考え方であり、主として経済性の向上を目的としています。

 SPD導入により、在庫品目の整理・縮小及び不良在庫の削減、業務の標準化・省力化が期待されます。ここで一元管理とは、例えば、各病棟がそれぞれ独自に物品管理と業者への発注を行っているような場合に、管理部署を定めて発注・納品・在庫などの管理を一括して行うことを言います。

 医薬品では、既に従来から、大多数の施設で薬剤部(薬局)で一元管理がなされています。しかし、薬剤師による管理が病棟を含む施設全体に行き届き、かつ、使用と保険請求との差の把握と評価がなされている施設は多くありません。

 本来、病棟での医薬品の管理は薬剤師が行うべきものですが、人員不足などの要因から実施が困難である場合が多く、そのため、病棟での医薬品の請求・充填。数量管理業務を看護師が行っている場合が多く見受けられます。

 看護師業務の軽減や効率化の名目で、医薬品を他の物品と同様に扱い、外部委託を導入するケースがあります。

 近年、院内物品・物流管理をSPD業者に委託する施設が増加しています。外部委託の対象はこれまで診療材料が主でしたが、最近では、人件費抑制や保険請求漏れの減少、および院内全体の在庫抑制の観点から医薬品にも導入されつつあります。外部委託SPDの医薬品への導入では、医薬品の適正使用を推進することが薬剤師職能の本分であることを十分に勘案し、慎重に対応する必要があり有ります。

    出典:OHPニュース 9月号付録 H13.9.15 

 

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