有痛性筋痙攣
腓返り(こむらがえり)
筋クランプ
1993年3月15日号 No.126
有痛性痙攣とは、突然不随意に骨格筋が、痛みを伴い痙攣を起こすもので「こむらがえりとして知られています。(腓:ふくらはぎのこと) {参考文献}医薬ジャーナル 1993.3 |
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{各種原因疾患と治療}
・テタヌス〜破傷風菌の感染により激しい筋クランプを来す。
・stiff-man症候群〜体幹・近位筋優位の筋硬直を来たし、木彫り人形のような堅い体型を取る。中枢神経起源と考えられる。
*ジアゼパムが有効(無効の場合は、デパケン、バレリン等)
・全身のこむらかえり病〜全身の有通性筋痙攣、脱毛、下痢を三大徴候とし、脊髄の介在ニューロンの異常が推定されている。
*ダントリウムが有効といわれる。急性増悪期には、Caと生食の混注や高Na療法が有効とされる。
・nerve or root compression〜頸椎、椎間板ヘルニアのなどの筋クランプ
この場合、疼痛はクランプによるものの他に、根性痛などの関与も考えられる。
*テルネリンとダントリウムの併用が奏功したとの報告がある。
・肝硬変〜筋クランプの頻度は高く31〜88%とされている。
Caその他の代謝異常、ビタミンD3代謝異常、末梢神経障害などが発症因子として考えられている。
*アロフトが有効、他にダントリウム、ビタミン剤等
・Hemodialysis cramp〜反復性の筋クランプは維持透析患者の半数近くに認められ、反復性の頭痛とともにquality
of lifeを損ねている。
*50%ブドウ糖1ml/kgが良いと言われる。
◎ 筋弛緩剤以外としてテグレトール、アレビアチン等の抗てんかん剤、ワソラン、アダラート等のCa拮抗剤等が筋クランプに有効とされている。漢方薬として、芍薬甘草湯が頓服的に使用される。
<<筋クランプを呈する疾患>>
1.正常者〜夜型、熱型、激しい運動中・後、妊娠後期
2.脊髄・上位中枢神疾患、テタヌス、書痙、Stiff man症候群、運動ニューロン疾患、全身こむら返り病等
3.末梢神経疾患、多発ニューロパチー
4.筋疾患〜糖尿病、脂質代謝異常によるミオパチー、AMPdeeminase欠損症、ミトコンドリアミオパチー、、甲状腺中毒ミオパチー。
5.その他〜肝硬変、Hemodialsis水・電解質代謝障害(脱水、下痢、利尿剤、低Na血症など)、アルコール、アジソン病、癌、胃切除後
6.薬剤性〜β刺激剤、β遮断剤、アダラート、ボンゾール、タガメット、ルネトロン等
7.家族性〜常染色体優性、X染色体劣性
追加記事
「こむらがえり」はいわゆる「痛みを伴う筋肉のつり」ですが、生理的にしばしば見られる状態であるにもかかわらず、その病態は必ずしも明らかではなく、定義も曖昧である。有痛性筋痙攣は、正常健康人においても過労、運動疲労時、睡眠時にときに認められる症候です。
[病態]
運動疲労時にしばしば経験する、生理学的な「足のつり」を含めて様々な原因があります。水、電解質異常、尿毒症、糖尿病、熱中症の際の熱性クランプ、運動ニュ−ロン疾患、全身こむらがえり病、一部の筋疾患、肝硬変、妊娠、下肢動脈閉害による間歇性跛行などでみられます。
有痛性筋痙攣の原因、病態の詳細は未だ不明な点が多いとされています。
[処方の実際]
基礎疾患を検索し、それに対する治療を行うのが原則です。
下肢の症状に対しては用手的に筋を受動伸展すると軽快することが多い。
症状が持続あるいは頻発するようであれば、予防的に抗痙縮剤、抗痙攣剤を用います。
抗痙縮剤には、中枢神経系に選択的に作用し筋弛緩効果を現す中枢性筋弛緩薬(ミオナ−ル、テルネリン、ムスカルムなど)と筋肉に直接作用する末梢性筋弛緩薬(ダントリウム)があります。
抗痙攣薬・抗不安薬であるホリゾンにも筋弛緩作用があり、有用なことが多い。
臨床効果には個人差があるが、一般的には軽症例にはミオナ−ル、中等症にはテルネリン、リオレサ−ル、重症例にはダントリウムを使用することが多い。
単独投与が原則であるが無効例では多剤を併用することがあります。
有痛性強直性痙攣に対してはテグレト−ルが有効です。
全身こぶむがえり病に対してはステロイドパルス療法、stiff−man症候群(下記)には、血漿交換やステロイド療法、肝硬変にはタウリンが有効であったという報告もあります。突発的に生じた症状で患者の苦痛が強い場合、ホリゾンの筋注あるいは、静注で対応することもあります。
{参考文献}治療,78.増刊号
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スティフマン症候群
stiff‐man syndrome
MoerschとWoltmanによって提唱された,文字どおり骨格筋が激しい固縮あるいは痙攣を生じ,硬く動かなくなる症候群。
成人に発症し、初期には発作性に局所性の筋痙攣spasmを生じ、次第にそれが全身に広がり,かつ収縮が持続する固縮状態となり、歩行やその他の動作が困難となります。原因は不明で,経過は緩徐です。
代謝障害による脊髄性の運動障害として、独立した病態である可能性があります。
PET
positron emission tomography
陽電子放射断層撮影
PET薬剤は、陽電子放出核種を薬剤の分子内に置換または組み込んだ構造となっていて、細胞内での生合成反応やエネルギー代謝反応などを介して集積します。
PET画像はCT,MRIに代表される形態画像とは異なり、生体内の生理・化学的情報を定量的に描写することができる代謝機能画像です。
癌細胞は、ブドウ糖代謝が盛んなため、ブドウ糖によく似た構造式にフッ素の同位元素を標識した18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)を注射し、その集まり方を画像化して診断する方法。FDGの放射性半減期は短く110分
・FDG注射液:癌診断に有用 2005年8月発売
FDG;2-デオキシ-2-〔18F]フルオロ-D-グルコース
FDGを用いたPET検査は糖代謝を利用したもので、現在最も広く行われています。
FDGは糖代謝が亢進している細胞からは正常細胞より多くの放射線が検出されます。
*FDG−PETの保険適用疾患
てんかん、大腸癌、悪性リンパ腫、虚血性心疾患、頭頚部癌、転移性肝癌、
肺癌、脳腫瘍、原発不明癌、乳癌、膵癌、悪性黒色腫
<医療機関において調剤されるPET検査薬等の取り扱いについて>
平成17年9月28日、医政指発第0928004号
診療に用いるために院内で合成されたPET薬剤が陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室に持ちこまれた場合には、放射性同位元素等による放射線の障害の防止に関する法律ではなくて、医療法によって管理されることとなっています。
出典:日本病院薬剤師会雑誌 2006.5