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対症療法(症候治療)のもつ意味

1993年10月15日号 No.139 

          関連項目:対症療法とクオリティオブライフ(QL)

     医学の歴史は傷病の苦痛を取り除くことから始まりました。つまり、対症療法は医の原点ともいえます。

 病気の原因が究明されるにつれ、原因療法が重んじられるようになりましたが、今なお、対症療法は医学の中で大きな価値を持っています。

 ひとたび発病するれば慢性かつ不治の病が多く、また過去の病の後遺症をひきずって生きている人が増えている現在、傷病を自分の生活に取り込んで生きて行く人達が、質の高い生活ができるように求められています。そのためには対症療法も必要となります。

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1)診断ができない場合:いずれ診断がつけられるとしても、その前に苦痛を軽減したい場合。

2)原因が特定されていない場合 & 原因が特定されていても原因療法が確立されていないばあい。

3)原因療法以前に、症状の軽減が生命維持のために不可欠な場合 &、症状の軽減が原因療法の遂行に好影響を与える場合、原因療法の成功には時間を要し、その前に症状軽減の要求が高い場合

4)いずれ自然治癒する軽症状であって、かつ原因療法の方がむしろ患者の負担を強いるので、対症療法を主体にすれば良い場合 & 原因療法で取り除ける苦痛は一部であって、他に対症療法が苦痛の除去に欠かせない場合。

5)後遺症

<対症療法の注意点>

*薬剤の副作用を伴いやすい、*疾患の重症度を不明確にする(マスキング)
*診断へのアプローチが遅れる

<対症療法を行なう上で考慮すべきこと>

1.有益性、患者の満足度
2.即効性
3.持続性
4.治療の簡便性
5.治療が患者に与える苦痛の程度
6.費用便益効果
7.副作用

<対症療法が支援する患者の生活>

1.呼吸、2.飲食、3.排泄、4.睡眠、休養、5.移動、6.清潔、衣服、体温の保持
7.安全の確保、8.レクリエーション、9.コミュニケーション、10.学業生活、11.自己実現

こちらに記事もご覧下さい。対症療法とクオリティオブライフ(QL)


<<用語辞典>>

スポロトリコーシス

 出典:臨床と薬物治療 2001.4

 Sporothrix schenchiiによる慢性の感染症。病変は主に上肢や顔面などの露出部に出現します。
秋から冬にかけての発病が多く、男性に多く見られます。

 原因菌は土壌、木材、植物などの自然界に存在し、皮膚の小外傷に菌が感染します。

 侵入部位に増殖性の潰瘍を生じ、ついでリンパ管に沿って救心性に、飛び石状に皮下結節を生じます。この結節は自潰して増殖性潰瘍となるリンパ管型、原発巣にとどまる固定型、全身汎発性に皮下結節を生じる播種型、皮膚外の内蔵侵襲を伴うものなどがみられます。

 治療はヨードカリウム(KI)、イトリゾール、ラミシール錠、温熱療法などがあります。


飲酒と血圧
アルコール(飲酒)と血圧の関係

 最も低い飲酒量で影響が現れるものとしては循環器疾患、特に脳卒中があります。
飲酒量が日本酒換算で毎日2合を越えると発症率が上昇することが報告されています。

 脳卒中の発症や死亡などの影響の多くは飲酒による血圧上昇を介していると考えられます。

 脳卒中を脳内の血管が閉塞する脳梗塞(約7割)、脳実質内での出血を起こす脳出血(約2割)、脳動脈の動脈瘤破裂によるくも膜出血(約1割)について型別にみた場合には、脳梗塞と比較して出血性疾患である脳出血やくも膜下出血での関連が強いことが示されています。

 一方、虚血性心疾患死亡率は飲酒習慣を持つ者は持たない者に比較して相対危険度が低くなっています。ただし、多量飲酒者では虚血性心疾患予防作用は減弱します。

 飲酒による血圧の上昇にも関わらず虚血性心疾患の死亡率がむしろ低くなる理由として、飲酒習慣が動脈硬化の進展に予防効果を持つHDLコレステロール値を高めることが関連しています。また、脳卒中では血圧の寄与が最も大きいのに対し、虚血性心疾患では多因子が影響していることも関連しています。

 現在のところ血圧がなぜ飲酒習慣で上昇するかは現在のところ明らかではありません。また、酒の種類差も認められず、アルコールの量そのものが血圧の上昇に関連していると思われます。

 節酒により血圧上昇効果は改善され、約2合減らすことで、平均で最大血圧5mmHgの低下が期待できます。

   出典:日本薬剤師会雑誌 2002.2

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アルコール(飲酒)と血圧の関係は定説よりも強力


 過去の観察研究から、過度の飲酒は高血圧の危険因子の1つであることが示されていますが、これらには食事、喫煙、運動レベル、社会経済状況などの交絡因子が存在している可能性があります。

 最近(2008年)英国で、それらの交絡因子を含まないアルコール分解酵素の遺伝的変異から、飲酒と血圧の関係を研究した結果が発表されました。

 体内に摂取されたアルコールは、アセトアルデヒドを介して酢酸になり体外へ排出されます。アルコールの分解に係わる酵素は、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ2(ALDH2)です。

ALDH2の変異を持つ人(お酒に弱い人)と変異を持たない人(お酒に強い人)との血圧を比較したところ、お酒に弱く飲酒量が極めて少ないかゼロの人に比べて、お酒に強い人の血圧が著しく高いことが分かりました。

   出典:メディカル・トリビューン 2008.4.3

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2005年9月15日号 No.414

酒は心血管疾患には百薬の長?


 適度の飲酒が心血管疾患のリスクを低下させることは、疫学的に示されています。
飲酒の効果として、血液凝固作用の抑制やフィブリン溶解作用など、様々な因子が関与していると考えられますが、最大のリスク低減効果はHDLコレステロールの増加によるものです。

 夕食時に40gアルコール相当のウィスキー、対照として水を17日間飲みつづけた被験者から採取した血清を用い、その成分とコレステロール搬出能を評価した結果、アルコール摂取群でHDLコレステロール、リン資質、apoA-I濃度の有意な増加が認められました。

 また、マクロファージからのコレステロール搬出量は、アルコール摂取群の血清を添加した場合のほうが非摂取群のよりも高いという結果が出ました。

 このことから、適度の飲酒によってHDL新生に関わる膜トランスポーターであるABCA1依存的なコレステロール搬出が増強されることが示されました。

 飲酒と死亡率は老若男女を問わずJカーブの関係があると多くの研究で報告されています。
 
 全くアルコールと飲まない人と比べ、少量から中等度の飲酒で死亡率が低下します。しかし、大量の飲酒では死亡率は急激に上昇します。これをJカーブ効果と表現しています。

 アルコール依存症患者の2/3は突然死しており、平均死亡年齢は男性52歳、女性50歳という恐ろしい結果が出ています。この突然死は完全断酒により抑制できるとの報告もあります。

 飲酒はストレスを改善するという実験結果がありますが、問題は飲酒して不安が取れてもそれは長くは続かず、酔いが覚めると元に戻ってしまうということです。そのため、長期的に飲みつづけ依存症になる危険性があります。

 しかし、量をわきまえた適切な飲酒であれば、かなり効果的にストレスを抑え、心血管疾患のハイリスク群の予後で、約25%の死亡リスク低下を見とめたという結果が報告されています。


<アルコールと不整脈>

 一般に飲酒後には末梢血管は拡張し、心拍数が上昇します。また、アルコール依存症を対象とした調査から、33%の頻度不明で頻脈性不整脈の発症を認められ、アルコール依存状態が恒常的な頻脈を惹起していることが示されました。

       {参考文献}治療 2005.8、ファルマシア 2005.4
           Beulens I.W.et al,J.Lipid Res.,45.1716-1723(2004)


リドカインジレンマ

 ジアゼパムやフェノバルビタールが無効な痙攣重積症例で、リドカインの持続静注は有用ですが、リドカインの減量や中止によって痙攣発作が再発する場合のこと。

 難治性新生児痙攣でリドカインジレンマにフェニトインが有効との報告あり。→ 月刊「薬事」 2003.9 p158


AED:automated extermal dfibrillator
自動体外式徐細動器

ふたを開けると音声でそれ以降の操作を指示してくれる。

平成16年7月より、非常時に一般市民がAEDを使用しても、医事法に違反しないという報告書が出されています。

*次の4つの状況下では、AED使用時に注意が必要です。

1.8歳未満〜日本では認可されていない。

2.水中か水辺〜救助者が感電しないように注意する。
        パッドの装着前に前胸部をしっかり拭く

3.ペースメーカーやICDを付けている。
   ペースメーカーやICDの真上に電極パッドを貼ると、徐細動の電流がブロックされてしまいます。ペースメーカーやICDから2.5p以上離してパッドを貼る。

4.AEDパッドを付けてる皮膚の表面に経皮的添付薬剤かその他のものを付けている。
 ニトロダームTTSなどは電流をブロックするので、パッドの装着部位に貼ってあるものははがします。
 ニトロダームTTSなど金属で覆った薬剤に気づかずにパッドを上から貼り放電した場合、皮膚に火傷することがあります。

 ニトロダームTTSなどの添付薬剤を取り除き、AEDを貼る前にその箇所をきれいに拭き取る必要があります。

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