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持効性製剤の長所と問題点

1990年10月15日号 NO.74

 

 

 近年、各種薬剤の開発・改良が進んでおり、特にDDS:drug delivery system design等を応用しての開発が盛んとなっています。その中でも特にコンプライアンスの面から、鎮痛剤や降圧剤等で、服薬回数の少ない持効性の薬剤の開発が目立ちます。

 しかしこれらの新規薬剤は、臨床で使用する場合に注意を要する例が多くなっています。
特に高齢者や合併症を多く有する症例などでは、持効性の利点が同時に欠点となって現れることも多く見受けられます。

<持効性薬剤の問題点>

・老齢者や肝機能障害などの血中アルブミン濃度の減少している症例では、副作用の発現頻度が増大する。

・持効性剤への変更時に、用法・用量の指導を徹底しないと過量に服用してしまう可能性がある。

・各種薬剤を同時に与薬されている症例では、組織への蓄積や相互作用を考慮する必要がある。

・他に1日3回服用する併用薬がある場合、「かえって煩わしい」と特に老人に評判が悪い。(15人中12人までが不便を感じているという調査例がある。)

・硝酸剤(ニトロ製剤:狭心症治療剤)では耐性が生じやすい。また降圧剤では受容体の数に異常が生ずる現象も見いだされている。(ダウンレギュレーション)

 慢性疾患患者は持効性製剤を服用する機会が多くなってきており、「1日の服用回数が少なくなる。特にお昼ののみ忘れを気にしなくていい」ことなどから、おおむね歓迎されているようです。

 しかし持効性製剤による24時間薬漬け現象は、生体のホメオスタシスに変調を来す恐れもあるので、朝は持効性、版は普通錠と使い分けることも考慮されています。これは今後の検討事項であり、持効性製剤の利点と欠点を良く理解しておく必要があるといえます。

<持効性製剤の利点>

1.服用回数が少ない。
2.薬剤コンプライアンスが良い。
3.服用量が少ない。
4.一定の薬物血中濃度が得られやすい。
5.局所の副作用が少ない。
6.薬剤に対する抵抗が少ない。(患者の薬剤に対するイメージの改善)


<<医学用語辞典>>

CPAOA
cardiopulmonary arreset on arrival
来院時心肺停止

CPA
cardiopulmonary arrest
心肺停止

      出典:日本病院薬剤師会雑誌 2001.9等

 患者が医療施設に到着した際、完全な意識消失と心拍動停止、呼吸運動停止があるが、心肺蘇生により救命の可能性のあるものをCPAOAと言います。

 死は心拍動、呼吸、脳卒中という3つの機能の永久的かつ不可逆的停止とされています。しかし、脳卒中、特に脳幹部機能の停止は、心拍動、呼吸運動と同様な基準で判定できません。そのため、実際は心拍動と呼吸運動の永久的かつ不可逆的停止を死としています。そして、通常は3つの機能が停止する過程にはじかんさがあります。

 ところが、3つの機能が停止していてもそれが、永久的かつ不可逆的でない医学的事象があり得ます。これがCPA(心肺停止)で、来院時にCPAの状態となっているのがCPAOAです。

 CPAOAと同じ意味で、DOA(dead on arrival)が使用されていましたが、救急医療の現場では、来院患者は原則として蘇生の対照で、dead(死亡)ではないという意味で最近はCPAOAが使われています。

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AED
automated external defibrillator   こちらの記事もご覧下さい。→自動体外式徐細動器(AED)使用上の注意

 体外式自動徐細動器

 AEDは取り扱いが簡単で、メインテナンスも不要。また、それほど効果でないため救急救命センターや救急病院が近くにない地区で多くの医療機関と救急車に常備されるのが望ましいと思われます。

BLS
basic life support

一次救命処置

 CPA(心肺停止例)に対して一般市民誰もが出来る初歩的な心肺蘇生法で、気道確保、マウスツーマウス法による人工呼吸、心臓マッサージなど

ACLS
adovanced cardiovascular life support

 二次救命処置

 ACLSとは救急器具を用いて行われる気管内挿管を通した人工呼吸、ボスミンやキシロカインなどの薬物の使用、電気細動、開胸心マッサージ、病態や原因疾患などを考慮した専門的な救命的治療までが含まれます。

 通称ACLSは救急救命センターをはじめとする救急病院で複数のスタッフからなるチーム医療が行われます。

CPR
心肺蘇生法
cardio‐pulmonary resuscitation

 呼吸・循環に急変が起こったとき、とりもなおさず、速やかに行う処置が心肺蘇生です。

 まず意識があるか否かを確かめ、意識がなければ舌根沈下は必発と考え、下顎挙上・頭部後屈を行い、同時に上気道の分泌物があればこれの排除にも留意します。この上で呼吸があるかどうかを確認しまする。もし呼吸がなければ人工呼吸を行います。(口対口またはバック‐マスクなどの器具による)

 人工呼吸の上で頚動脈など大きな動脈が触れない状態では心停止を疑い、心マッサージを行います。心マッサージを行いながら心電図を観察して、心室細動なら電気的除細動(カウンターショック)を行います。もし心マッサージに反応しない場合または細動波が小さい場合にはアドレナリンなどのカテコールアミンを用います。

 心マッサージはとりあえず閉胸式心マッサージを行い、効果がなければ開胸式マッサージを行います。また心停止が起こると代謝性アシドーシスが起こるのでまず重炭酸ソーダ(メイロン)を用いるとされてきましたが、最近はルーチンには使用しません。pHの低下は主に呼吸性アシドーシスによるものなので、適切な換気を行えばpHの正常化へつながることが多いからです。

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ユニバーサルACLSアルゴリズム

 治療 2002.3 増刊号


 心拍停止への薬物治療の第1選択は、ボスミン(エピネフリン;アドレナリン)です。
1アンプル(1mg)を静注し、3〜5分ごとに同量を繰り返し注射します。

 CPR施行中の血管路は末梢静脈でかまいません。しかし側注するごとに20ml程度の生食などで回路内をフラッシュすることを忘れてはいけません。

 ボスミンの大量使用の有用性を指示する科学的根拠はなく、現在では奨められていません。

 ボスミンの気管内与薬も有効です。またガイドライン2000に新しくピトレシン(バゾプレシン)が登場しています。バゾプレシンは抗利尿ホルモンですが、非アドレナリン作用の血管収縮作用も持っています。半減期が10〜20分と長いため、ピトレシン40単位の1回静注が奨められています。(日本では保険適応外)

 抗不整脈薬としてキシロカインの評価が低くなり、変わりに塩酸アミオダロン注(日本では未発売)の有用性が大きく取り上げられています。

* 従来から蘇生薬としてメイロン注(炭酸水素Na)が頻用されてきましたが、その救命率改善効果は疑問視されています。

 メイロンは抗K血症や代謝性アシドーシスの時に限り使用します。

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橋中心髄鞘崩壊症

CPM:centoral pontine myelinolysis

CPMは、急性に出現する橋中心部の対称性の脱髄病変で、脳橋部を中心とした周辺の髄鞘が変性を来たし、四肢麻痺と仮性球麻痺を起こし、意識障害と異常な精神症を呈する疾患として報告されています。

CPMは、慢性アルコール中毒患者に多く見られるほか、低栄養状態、嘔吐、下痢、熱傷、利尿薬、水中毒、腎不全、肝不全、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、種々の病態に伴って低Na血症が時に起こることがあります。この低Na血症の急激な補正が重要は発症要因とされます。

 神経・精神症状の重症度は、無症状から昏睡に至るまで様々です。昏睡を含む意識障害、せん妄や錯乱、閉じ込め症候群など精神状態の異常も出現します。病理的には。炎症を伴わない脱髄疾患で、診断にはT2強調MRIが有用です。

   出典:日薬医薬品情報 Vol.14 No.7(2011.7)

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