Side B … 日々の鑑賞メモ 走り書き(更新終了)

4月より少しずつ書いてきた本ページですが,「好録音探求」というブログ(FC2ブログ)に移行することにしました。 こちらのページの更新は終了しています。 本ページの内容は,基本的にはこのブログに引き継ぐ予定です。 今後は「好録音探求」の方をご覧下さい。 今後ともよろしくお願い致します。
(記2009/07/25)

(最終更新日2009/07/10)(掲載数49) インデックス

鑑賞メモ


タイトル MIDORI LIVE AT CARNEGIE HALL
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.301
R. シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 作品18
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第8番 変ホ長調 作品30-3
エルンスト:「夏の名残のバラ」変奏曲
ショパン:ノクターン嬰ハ短調(ミルシテイン編曲)
ラヴェル:ツィガーヌ
ドビュッシー:美しい夕暮れ(ハイフェッツ編曲)
サラサーテ:サパテアード 作品23
演奏 五嶋みどり (Midori) (Violin)
ロバート・マクドナルド (Robert McDonald) (Piano)
録音 Recorded live at Carnegie Hall, October 21, 1990
所有盤 D4158 (C)1991 ICM Atrists Video/SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENT (輸入盤)

1990年10月21日のカーネギーホールでのリサイタルを収録したDVD。 五嶋みどりさん,当時18歳とのこと。 以前LDでも発売されていたとのことです。 CDも発売されていますが,モーツァルトのソナタとサラサーテのサパテアード(アンコール)が収録されていませんでした。

かなり昔にNHKで放送され,たまたまビデオに録画していて,宝物のビデオとして長い間楽しんできました。 少し前にamazon.comで見つけ,これだ!と即amazon.comから入手しましたが,なんたることか! リージョン1のためDVDプレーヤで観ることが出来ませんでした。 泣く泣くDVD-ROMのリージョン設定を変更して何とか観ることが出来ましたが, この数ヶ月後に日本でも手にはいるようになり,慌てて買うんじゃなかったと反省してしまいました(^^;。 (音楽DVDでリージョン制限するなよぉ...)

この中での見物はなんといっても技巧が冴え渡るりエルンストの「夏の名残のバラ」変奏曲でしょう。 この演奏を見たいがためにこのDVDを手に入れたと言っても過言ではありません。 五嶋みどりさんの演奏はずば抜けています。 技術的に完璧である上に,音楽として表現する余裕さえ見せています。 技巧が堪能できるということではラヴェルのツィガーヌも同様です。

そして,最後のアンコールのサラサーテのサパテアードも楽しい演奏です。 最初の左手ピチカートを決めた時に観衆から「おぉぉっ」という歓声と拍手がわき上がり, その後の演奏がさらに生き生きとしたものになっていくのもライヴならではですね。

(記2009/07/10)


タイトル バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
演奏 イルマ・イッサカーゼ (Irma Issakadze) (Piano)
録音 2004年8月19-21日,トーランス,メディアハイペリウム・スタジオ(カリフォルニア)
所有盤 OEHMS Classics BVCO 38057-58(88697-39959-2) (C)2008 (P)2004 OehmsClassics Musikproduktion GmbH (国内盤)
発売元:株式会社BMG JAPAN
備考 参考url: 公式Webサイト
名前の表記について,日本語解説書では「イッサカーゼ」となっていますが,多くのサイトでは「イサカーゼ」と記載されています。

私の中では,不本意ながら(^^; グールド新盤に並ぶ愛聴盤になりつつあります。 ピアノの音と録音に惚れ込んでしまった,というのが最大の理由です。 小気味よいハキハキした演奏でとても楽しい,というのがその次の中くらいの理由で, (おそらく)全てのリピートを律儀に行っている,というのがその次の小さな理由です。 「不本意」と書いたのは,曽根麻矢子さんの新盤で感じた胸が苦しくなるようなリズムの崩しがいくつかの変奏でみられたり, 装飾音符でリズムが崩れたりするのがあまり好きではないからです。

どのような環境で録音されたのかはよくわかりませんが,鬱陶しい残響は全くなく, 適切な距離感で非常にクリアにピアノの音を捉えています。 そしてこのピアノの音! 豊潤さはありませんが,音の芯がはっきりとしていて付帯的な響きによる雑味がほとんどなく非常にすっきりしています。 粒立ちもとても綺麗です(解説書によると楽器はカワイ製ということです)。 このあたりはグールド新盤を彷彿とさせます。 オーディオ的なクオリティが優れている分,こちらの方が良いかもしれません。

このような優れた演奏が,ほぼ理想的な録音で現れたことをとてもうれしく思います。 私にとって「録音が好みであること」というのは愛聴盤となるための一つの重要な要素です。 この演奏,このピアノの音をもっともっと楽しみたい! という思いで,リズムの崩しに慣れるべく,日々頑張って聴いています(^^;。

この人の次の録音が何か知りませんが期待しています。 また,このディスクをきっかけに,このような良い音の録音が増えてくること願っています。

(記2009/07/01)


タイトル THE GOLDBERG VARIATIONS: From Glenn Gould plays Bach (DVD)
演奏 グレン・グールド (Glenn Gould) (Piano)
録音 April - May 1981, 30th Street Studio, New York City
所有盤 SIBC 49 (C)1981 Clasart (国内盤)
Manufactured by Sony Music Japan International Inc.

ブリュノ・モンサンジョン監督によるグールドの1981年の2回目の録音の映像作品。 グールドがどのようなピアノで,どのような姿勢でピアノに向かって演奏していたのか,その一部始終が余すところなく収められています。 カメラワークが秀逸で,交錯する両腕の動きがよくわかります。 一般的なコンサートの録画ではまず見ることの出来ないようなアングルを駆使しており, ここにもスタジオ収録のメリットが活かされています。

付録として,インタビューが収録されており,なぜ再録音をしたのか,何を狙ったのか, また,バッハをピアノで演奏することについての考えなどについて語っています。 ごく短いインタビューですが,興味深いです。

この最高の演奏が,最高の録音・最高の映像で残されたことに本当に感謝します。

DVDでの演奏ですが,私が聴いた限りではCDと同じテイクのように思いました。 音質はCDに比べてわずかに鮮明に感じられる一方,ちょっと粗い感じがします。

それにしても,ジャケット写真の格好良さと比べ,映像に出てくるグールドの風貌がちょっとしょぼくれたおじさん風で意外です(^^;。

(記2009/06/28)
(追2009/06/30)


タイトル バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
演奏 グレン・グールド (Glenn Gould) (Piano)
録音 April 22-25, May 15, 19 & 29, 1981, 30th Street Studio, New York City
所有盤 SRCR 9239 (P)1982 (C)1983 Sony Music Entertainment Inc. (国内盤)

今更でお恥ずかしいのですが,グールドのゴルトベルク変奏曲新盤(1981年録音)です。 ご多分に漏れず私もこれが最も好きな演奏です。 演奏については今更何も言うことはありませんが,強いて不満を挙げるなら,リピートの省略が多いことくらいでしょうか。 テンポは意外なほどに整然としていて不自然に感じる揺らぎや『ため』はほとんどないことに改めて気がつきました。 最初に聴き込んだのがこの演奏なので,不自然なテンポの崩しに過敏に反応してしまうのかもしれません。

実は,私がここで取り上げたかったのは,演奏ではなくその録音の素晴らしさです。 スタジオでの録音なので,楽器音を濁す残響はほとんどなく, ドライで粒立ちのはっきりしたピアノの音を適切な距離感でクリアに捉えています。 私にとってはほとんど理想的で,私の所有しているピアノのCD(数は少ないですが)の中でも最も好きな録音の一つです(最も好きだといっても過言ではありません)。 オーディオ的なクオリティは完全に満足レベルにまではなっていませんが,それでもまずまず良いと言えると思います。

こんなに録音が良いのに,その良さに言及したレビューがほとんどないのは不思議でなりません。 それに,こんなに素晴らしい超名盤のお手本があるにもかかわらず,残響にまみれた不鮮明な録音がこれほどまでに横行しているのはなぜなのか,これも不思議でなりません。 この演奏が名盤として君臨しているのは,この録音もそれなりに寄与していると思うのですが,そう思うのは私だけでしょうか? 録音という面でも改めて評価し見習って欲しい,そして,このような好録音が主流になって欲しいと切に願っています。 といってもこの録音が発表されてからすでに30年弱,なんら状況が変わっていないことを考えると,全く望みないですね...

(記2009/06/27)


タイトル シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
ロッスム:ヴァイオリン協奏曲 作品37
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第一番 ト長調 作品78
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第三番 ニ短調 作品108
演奏 堀米ゆず子 (Yuzuko Horigome) (Violin)
ジョルジュ・オクトール指揮 (Georges Octors)
ベルギー国立管弦楽団 (The National Orchestra of Belgium)
ジャン=クロード・ヴァンデン・エインデン (Jean-Claude Vanden Eynden) (Piano)
録音 1980年5月30日 ブリュッセル,パレ・デ・ポーザール (ヴァイオリン協奏曲) (ライヴ録音)
1980年11月14,15日 ゲント,ストイヤバウト・スタジオ (ヴァイオリン・ソナタ)
所有盤 PROC-1016/7 (P)1981 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (国内盤)
TOWER RECORDS VINTAGE COLLECTION Vol.8 (タワーレコード企画盤)
備考 参考url: 公式Webサイトタワーレコード

シベリウスとロッスムのヴァイオリン協奏曲は, 1980年にベルギーのブリュッセルで開催されたエリザベート王妃国際音楽コンクール優勝時の最終選考のライヴ, ブラームスのソナタは同年のデビュー録音とのことです。

特にシベリウスのヴァイオリン協奏曲が感動ものです。 コンクールといういわば極限の状況からしか生まれてこないような鬼気迫る渾身の演奏! いろいろと傷があるのは事実ですし,コンクールはスタート点に過ぎないということも感じてしまうのですが, そんなことはこの演奏を聴き進んでいくにつれて吹っ飛んでしまいます。

この協奏曲の録音がまた素晴らしい。 ソロが本当にクリアに捉えられていて,堀米さんの魅力あるヴァイオリンの音を余すところなく伝えてくれます。 ソロの音の捉え方についてはほぼ不満はありません。 オーケストラのフォルテシモで音がつぶれてしまうところが何カ所かあって,これだけが残念なところです。

このコンクールのファイナルでは,このコンクールのために作曲された未知の協奏曲を演奏しなければならないそうですが, それがロッスムのヴァイオリン協奏曲です。 譜読みと練習にどれくらいの時間をもらえるのか知りませんが,こんな難曲を短期間でこれほどまでの完成度で弾けるとは, トップクラスの演奏家の能力は想像をはるかに超えているとただただ感心してしまいます。

ブラームスのソナタは,スタジオ録音だけあってか,非常に良くまとまっています。 堀米さんの豊潤な魅力ある音が堪能できます。 録音は,若干残響のまとわりつきがあり,演出臭さがあって,私の好みではありませんでした。

それにしても,タワーレコード,今回も貴重な演奏の復刻,やってくれました。 今後にも期待します。

(記2009/06/24)


タイトル サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第三番 ロ短調 作品61
マルティヌー:ヴァイオリン協奏曲第二番 H.293
演奏 カトリーン・ショルツ (Katrin Scholz) (Violin)
ゼバスティアン・ランク=レッシンク指揮 (Sebastian Lang-Lessing)
ハンブルク交響楽団 (Hamburger Symphoniker)
録音 Hamburg, Friedrich-Ebert Halle, 3/2000
所有盤 BERLIN Classics 0017112BC (P)(C)2000 edel records GmbH (輸入盤)

サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲は今まであまり聴いてこなかった曲ですが,ショルツ氏の力強くかつ美しい演奏でその良さを再認識しました。 第二楽章などもうこれ以上何を望むことがあろうか,と思うほどその美しさに魅了されます。 さすがです。 録音もショルツ氏の他の盤と同じでまずまず良好です。 マルティヌーは今ひとつ曲の面白さがわかりません。

(記2009/06/05)


タイトル ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ ホ長調 作品22
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
演奏 ウィーン弦楽ゾリステン (Wiener Streicher Solisten)
録音 30-31 May, 1-2 Jun 2002, Angelika Kaufmannsaal (Schwarzenberg, Bregenzerwald, VORARLBERG AUSTRIA)
所有盤 fontec FOCD3499 株式会社フォンテック (国内盤)

解説書によると,ウィーン弦楽ゾリステンは1974年の結成で,ウィーン・フィルの首席奏者を中心として構成されているということです。 編成は3-3-2-2-1の11人構成で,同曲演奏のぎりぎりのミニマム構成というところでしょうか。 アンサンブルの良さ,音の美しさはさすがというところでしょう。 このあたりにミニマム編成の良さが出ています。 でも,あまりにも真っ当すぎて,ミニマム編成の弱さを補うには少し魅力に欠ける気がします。 この編成なら思いっきり室内楽的にもっていくとか,何かやって欲しかったところです。 決して悪くはないし,嫌いでもないのですが。

hmv.co.jpのユーザーレビューで酷評されており, 先入観を持って聴いてしまったかもしれません(値段も高いし...)。 でも「毒にも薬にもならぬ」というところは当たっているかも。

(記2009/06/02)


タイトル グルダ:チェロとブラスオーケストラのための協奏曲
グルダ:ウルズラのための協奏曲
演奏 ハインリヒ・シフ (Heinrich Schiff) (Cello)
フリードリヒ・グルダ指揮 (Friedrich Gulda)
ウィーン・ブラスアンサンブル (Das Wiener Blaserensemble)
以下略
録音 1981/1982 in Wien
所有盤 amadeo 419 371-2 (輸入盤)

チェロとブラスバンドという特異な組み合わせのチェロ協奏曲。 学生の頃,友人宅で聴かせてもらって,ぶったまげたことを覚えています。 もうすっかり忘れていたのですが,ふと思い出して探してみたらすぐに見つかりました。

おぉ!これだこれだ! これはほとんどジャズ(というかロックに近いか), 特に第一楽章がいいですなぁ...わくわくします。 でも他の楽章は今ひとつかな。 終楽章はまるでブラスバンドのマーチだなぁ... それにしても,チェロとブラスバンド,不思議なくらい違和感ないです。

(記2009/05/30)


タイトル モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第三番 ト長調 K.216
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
演奏 フランク・ペーター・ツィンマーマン (Frank Peter Zimmermann) (Violin)
ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮 (Wolfgang Sawallisch)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (Berliner Philharmoniker)
録音 16.1.1995(Mozart), 19-21.1.1995(Brahms)(Live), Berlin, Philharmonie
所有盤 7243 5 55426 2 5 (P)(C)1995 EMI Electrola GmbH (輸入盤)

真面目で爽やかな好青年の演奏という印象です。 キレのある引き締まった正統的な表現がいいですし,音も透明感があり大変美しいです。 ポルタメントはやや多めのように思いますが,使いどころが上手くツボにはまっているので, 上記の印象を損ねることはありません。

録音はEMIにしては良い方かもしれませんが,どこかくすんでいてソロも引っ込みがちなのが残念です。 どちらかといえばモーツァルトの方が若干良いです。 録音がもう少し良ければ愛聴盤になったかもしれないのに...もったいないです。

(記2009/05/19)


タイトル バッハ:ゴルトベルク変奏曲
演奏 チェンバロ:曽根麻矢子 (Mayako Sone)
録音 2008年9月6日〜8日 パリ音楽院スタジオ
所有盤 AVCL-25441 (P)2009 AVEX ENTERTAINMENT INC. (国内盤) (*SACD Hybrid)
備考 参考url: avex-CLASSICSのカタログ

曽根麻矢子さん10年ぶり2回目の再録音です。 まだこの演奏について云々コメント出来るほど聴けていません。 ですが,この演奏は私には生理的に合わないような気がしてきました。 演奏ではところどころでごく微妙な『ため』が入るのですが(例えば1拍目の裏拍や2拍目などに), これがどうも私には駄目なようです。 心の中でリズムを,呼吸を感じながら音楽を聴いているのですが, その『ため』によって感じているリズムと微妙にずれるため,「うっ」と胸が詰まりそうになってしまいます(本当に胸が苦しくなります)。 残念ながら音楽を楽しむ以前に身体が音楽を受け付けてくれません。 それほど大きな『ため』ではないため(西山まりえさんのゴルトベルク変奏曲に比べれば全く普通です), BGMのようにボーッと聴いている時には大丈夫なのですが, 真剣に聴き始めると駄目なのです。

私が日頃聴いているバッハの無伴奏ヴァイオリンや無伴奏チェロでは,もっとはるかに大きな『ため』や緩急が入ります。 しかし,これらで胸が苦しくなることはまずありません。 それらは大抵自然な呼吸や運弓の都合で入るものであり, これは私にも感覚的に理解できますので,問題なく心の中で合わせることが出来るのだと思います。 私は鍵盤楽器演奏の呼吸や演奏の都合などはよくわかりませんが, 今まで少ないながらも聴いた演奏の中ではこのような苦しくなるということは西山まりえさんのゴルトベルク変奏曲以外にはなかったと記憶しています。

私にとって音楽を聴くという行為は,演奏者とのアンサンブルだと思っています。 こういう自然な呼吸から外れる『ため』や間合いが入るとアンサンブルが難しくなってきます。 残念ながら私は曽根さんの演奏とはうまくアンサンブルが出来ません。 こういう聴き方自体が間違っているのでしょうか?(でも身体に染みついた聴き方なのでどうしようもありません...)

録音ですが,大いに期待していたのですが,残念ながら期待外れでした。 「旬の音本舗 福田屋セレクション」に納められていた平均律クラヴィーア曲集の録音と聴き比べると,もう雲泥の差です。 平均律の直接音主体に楽器自体の響きを極めて美しく捉えた録音に比べ,明らかに間接音比率の方が高く, 高域の伸び感がなく音がくすんで全く冴えません。 なぜ平均律であれほど良い録音をしておきながら,ゴルトベルク変奏曲でこの録音なのか,納得いきません。

私のような聴き方をしない人にはきっと何の問題もない好演奏なのでしょう。 私としては,演奏・録音とも残念なCDでした。 辛口コメントで申し訳ありません。 チェンバロは嫌いな楽器ではないのですが,相性が悪いのかもしれません。

(記2009/05/07)

1回目の録音と聴き比べると, この録音までの10年間の音楽的な深まりは明らかで,2回目の録音をされた理由がわかる気がします。 ただ,それと私の好みとは(身体が受け付けてくれるかどうかを含めて)また別の問題です。

上記の感想を書いてからも,なぜ身体が受け付けてくれないのか考え続けています。 いろいろな演奏を注意深く聴いてみると,この演奏に限らずリズムの伸縮は至る所で当たり前のように出てきます。 でも,ほとんどの演奏では胸が苦しくなるようなことは実際には滅多になりません。 何が本当の要因なのかまだわからないでいます。

(記2009/05/14)


タイトル バッハ:ゴルトベルク変奏曲
演奏 チェンバロ:曽根麻矢子 (Mayako Sone)
録音 1998年12月 パリ17区,パロワーズ・リュテリエンヌ・ドゥ・ラサンシオン
所有盤 WPCS 10152 (P)1999 WARNER MUSIC JAPAN INC. (国内盤)

曽根麻矢子さんの1回目の録音です。 2回目の録音に比べると,速めのテンポでストレートに弾ききっているという印象です。 この録音においてもリズムの伸縮はあるものの,胸が苦しくなるようなことはありませんでした。 私としてはこちらの方が好みに合います(身体が受け付けてくれるという点を除いても)。

録音も,若干録音環境の響きの影響か,音色に癖がありますが, 楽器自体の響きを十分に捉えており,高域の伸び感もそこそこあってまずまずです。

(記2009/05/12)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
演奏 ヴァイオリン:カトリーン・ショルツ (Katrin Scholz)
ベルリン室内管弦楽団 (Kammerorchester Berlin) (*Brahms)
ベルリン放送交響楽団 (Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin) (*Sibelius)
指揮:ミヒャエル・ザンデルリンク (Michael Sanderling)
録音 Recording: 27-29.06.06(Sibelius), 02-03.07.06(Brahms)
Jesus-Christus-Kirche, Berlin-Dahlem
所有盤 BERLIN Classics 0016102BC (P)(C)2007 Deutschlandradio/edel CLASSICS GmbH (輸入盤)

やっぱりショルツのヴァイオリンの音は美しい。 でもこのあたりの曲になってくると少しこぢんまりとまとまってしまっている感じもあります。 好きなのは好きなんですけどね。

録音もヴァイオリンの音を美しく捉えていてまずまずなのですが, ちょっと全体にレベルが低めでどこか物足りなさを感じてしまいます。

(記2009/03/08)

前に「少しこぢんまりとまとまってしまっている」なんて書きましたが, よく聴いてみると,実は美しさと強さを湛えた,すごく充実した内容の演奏じゃないか,と思い直して聴いています。

(記2009/05/09)


cover picture
タイトル 『季刊・オーディオアクセサリー』プレゼンツ
旬の音本舗 福田屋セレクション on avex-CLASSICS
所有盤 avex-CLASSICS AVCL-25400 (国内盤)
備考 参考url: avex-CLASSICSのカタログ

オーディオ評論家・福田雅光氏のavex-CLASSICSからのセレクションです。 収録曲は参考url:avex-CLASSICSのカタログをご参照ください。 この類のCDは大抵買ってから「しまった」と後悔することが多いので出来るだけ買わないように心掛けているのですが, ついつい出来心で買ってしまいました(^^;。

収録曲の中では,特に,曽根麻矢子さんのバッハ:平均律クラヴィーア曲集第一巻の録音に興味を覚えました。 すごくゴージャスなというか重厚な音のするチェンバロの音を,直接音主体に極めて解像度高く克明に捉えています。 帯域感も十分にあります。 楽器自体の響きを本当に美しく捉えています。 ちょっときつい感じがあり,また,多少圧迫感がありますが, チェンバロでこんな濃厚で迫力のある音はなかなかないのではないでしょうか。 オーディオマニアに受けそうな録音ではないかと思います。 私としてはもう少し適度な距離感が欲しい気はするのですが,それでもこれならまずまず納得のいく録音かなと思います。

他の収録曲についてはまた機会があれば触れたいと思います。

(記2009/05/01)


タイトル バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲
演奏 指揮:クラウディオ・アバド (Claudio Abbado)
ミラノ・スカラ座管弦楽団員 (Solisti del Teatro alla Scala)
録音 1975年11月,1976年5月 ミラノ
所有盤 TWCL-3020-3021 (P)2006 BMG (国内盤)
TOWER RECORDS RCA Precious Selection 1000 No.19
企画・販売:TOWER RECORDS,制作:株式会社BMG JAPAN

タワー・レコードの企画盤。 モーツァルト管弦楽団との全曲盤が良かったので, その昔にミラノ・スカラ座管弦楽団員と録音したという全曲盤を聴いてみたいと思い探していたのですが, 全然見つからずあきらめていました。 つい先日,タワー・レコード店頭で物色中に偶然発見,意外に身近なところで復刻されていてびっくりしました。 タワー・レコードに感謝です。

演奏は何と言いましょうか,近年多くなったピリオド指向の鮮烈な演奏と比べると,旧世代のほのぼのした(おっとりした)生真面目だけど明るく楽しい演奏だなぁ...と思います。 リズムの感じ方が近年の演奏とは全く異なるように思います。 特に弦楽器。 裏拍までテヌートで均等にきっちりと弾くような弾き方なので,リズミックでなく,推進力もない代わりに, 独特のおっとりしたほのぼの感が出ているのだと思います。 もちろんこれはこれで良いと思います。

解説書には「アバドならではのスタイリッシュなバッハ演奏」なんていうコメントがあるのですが, 私にはとても「スタイリッシュ」には感じられませんでした。 私の感じ方はちょっと他の方と異なるのかもしれません。

なお,第二番,第四番はフルートで演奏されています。 また,第五番のチェンバロは,ピアニストのブルーノ・カニーノ氏が担当してるということです(この人の名前を見ると,ついつい間寛平の「かいーの」を思い出してしまう...失礼!(^^;)。

録音は,背景にうっすらと残響感があるものの直接音が主体であり,各楽器の音が明瞭に捉えられていて, 若干の不自然さはあるものの,まずまず良いと思います。 ただ,第五番のヴァイオリンが少し引っ込みがちであったり,他の曲でもソロが引っ込んで残響が被りがちであるところがあるなど,全てが良いというわけでもないのが少々残念なところです。 オーディオ的には録音レベルも高くこの点は良いのですが,音自体は少し粗さが感じられ, このあたりは近年のデジタル録音のきめ細かさには及ばないという印象です。

(記2009/05/01)


タイトル ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第一番 ト短調 作品26
演奏 ヴァイオリン:カトリーン・ショルツ (Katrin Scholz)
指揮:ミヒャエル・ザンデルリンク (Michael Sanderling)
ベルリン室内管弦楽団 (Kammerorchester Berlin)
録音 23-25.05.04, Jesus-Christus-Kirche, Berlin-Dahlem
所有盤 Berlin Classics 0017712BC (P)(C)2005 edel CLASSICS GmbH Hamburg (輸入盤)

最近贔屓のヴァイオリニストとなったショルツ氏。 このベートーヴェン,ブルッフも期待通りの好演奏でした。 歌心溢れるヴァイオリンの音色は凛としてどこまでも透明で美しく艶があります。 この音色が聴けるだけで私としては大満足です(もちろん演奏自体も堅実で良いですよ)。

オーケストラはハイドンモーツァルトに比べると少し編成を大きくしているようですが, ショルツ氏の美しい音に合うのはやっぱり小編成のすっきりしたオーケストラの音かなと思います。 ハイドンやモーツァルト並みの編成なら,他にないもっと独自性のある演奏になったんじゃないかと思うのですが, ベートーヴェンやブルッフでは変ですかね...やっぱり。

ちなみにベートーヴェンのカデンツァは,第一楽章がヨアヒム,第三楽章がクライスラーです。

録音は,ヴァイオリンのソロは若干響きを伴っているものの,鮮明かつ透明感ある音で捉えられていてかなり良いと思います。 オーケストラの方は残響の影響を受けて少し明瞭感が失われていますが,それほど悪くないです。

(記2009/05/01)


タイトル グリーグ:ホルベルク組曲 作品40
グリーグ:二つの悲しい旋律 作品34
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
演奏 オルフェウス室内管弦楽団 (Orpheus Chamber Orchestra)
録音 Performing Arts Center, State University of New York at Purchase, 12/1986
所有盤 Deutsche Grammophon 423 060-2 (P)1987 Polydor International GmbH (輸入盤)
備考 参考url: オルフェウス室内管弦楽団 公式Webサイト

長い間愛聴盤として聴き続けてきた演奏です。 これを凌ぐ演奏が出てくるなんて到底考えられない,なんて本気で思っていました(今はそこまでは思っていませんが)。 この演奏の良いところは強烈なアクセントを伴いながら抜群のアンサンブル力で疾走するその推進力にあると思います。

録音は,響きが楽器音に被って鮮明さが失われて少し冴えません。 素晴らしい演奏だけに少々残念に思います。

(記2009/04/26)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
演奏 ヴァイオリン:アンネ・ゾフィー・ムター (Anne-Sophie Mutter)
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン (Herbert von Karajan)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (Berliner Philharmoniker)
録音 1981年9月22日,ベルリン,フィルハーモニー
所有盤 F35G 50051(400 064-2) (P)1982 ポリドール (国内盤)

ムターがまだ十代の時の録音です。 これも購入当時評判が良かったということで購入した記憶があります。 長い間愛聴盤でしたし,今でも好きな演奏の一つに挙げられます。 それにしても濃いですねぇ。深いヴィブラートをかけてこんな濃い音を出す人,最近あんまりいないような気がします。 表現は至ってストレートなのですが,この音色のためにずいぶんとこってりとした印象を受けます。 まだまだ隅々まで気配りが行き届いていない感はありますが, 速いパッセージの鮮やかさ,トリルの粒立ちの綺麗さ(とにかく細かくて揃っている)など,技術面でも際立っており, 聴き応えが十分にあります。

録音も,響きを過剰に取り入れることなく比較的バランスの良い音の捉え方のように思います。 すごく良い訳ではありませんが,印象は悪くありません。

(記2009/04/26)


タイトル チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
グリーグ:ホルベルク組曲 作品40
グリーグ:2つのノルウェーの踊り 作品63
演奏 指揮:ユーリ・バシュメット (Yuri Bashmet)
モスクワ・ソロイスツ (Moscow Soloists)
録音 Recorded in Berwald Halle, Stockholm, Sweden, March 20-22, 1989
所有盤 RCA Victor RED SEAL 60368-2-RC (P)(C)1990 BMG Music (輸入盤)

チャイコフスキーの弦楽セレナーデの感想です。 それにしても巧い! ものすごく巧い! バシュメットは団員を完全に統率し,団員はその細かな要求に完璧に応えています。 アンサンブルの精度の高さは超一級,一体感は気味悪いほどです。 「どうだ!巧いだろう!」とでも言っているかのような巧さを鼻にかけた演奏がすごく嫌みですなぁ(^^;。

弱音を巧みに活かし,フォルテやアクセントはここぞというところだけで使われているため, 全体を通してどことなく静かに進行していく印象を受けます(静寂感というか...この雰囲気を上手く言い表せないのですが...)。 曲を大きなフレーズでとらえ,すごく息の長い起伏を持たせています。 グッときて欲しいところでスーッと入ってきたりして何度も肩すかしを食らいますが,慣れるとこれが快感に変わってきます。 他の多くの演奏とは全く違う,かけ離れたところに位置する演奏に思います。 この曲をこの演奏から入った人は他の演奏を受け付けられなくなるかも... それは幸運なのか不運なのか... なんて思ってしまいます。

録音はちょっと距離感があって鮮明さが足りないかなと思います。 取り立てて悪いというということはありませんが,良い印象でもありません。

(記2009/04/24)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
演奏 ヴァイオリン:マリー・アニク・ニコラ (Marie-Annick Nicolas)
ピアノ:アンドレア・ボナッタ (Andrea Bonatta)
録音 Enregistrement réalisé en octobre 1993 au Théâtre de Poissy.
所有盤 VALOIS V 4709 (P)(C)1994 AUVIDIS FRANCE (輸入盤)

愛聴盤です。 バッハの無伴奏ヴァイオリンが素晴らしかったニコラ氏のブラームスです。 いつもお世話になっているK.N.さんから欧州土産としていただきました(有り難うございます)。 日本でも入手不可能ではありませんが,あまり見かけないCDで,あることすら知りませんでした。

それにしてもこのブラームスは本当に魅力的だなぁ... 気持ちの込め方がすごく上品で,繊細にコントロールされた音色が美しく瑞々しい。 演奏上どうしても入ってしまうポルタメントでさえ品があって音楽的。 ずっとこの音に浸っていたいと思ってしまいます。

響きを抑え,すっきりと楽器音を捉えた録音もこの演奏を一層引き立てています。

(記2009/04/21)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
演奏 ヴァイオリン:カトリーン・ショルツ (Katrin Scholz)
ピアノ:ゲラルド・ファウトゥ (Gerald Fauth)
録音 Recorded on June 28 & 29, 1994 at Studio Domovina, Prague.
所有盤 VICC-166 (P)1995 ビクター・エンターテインメント株式会社 (国内盤)

ハイドンのヴァイオリン協奏曲モーツァルトのヴァイオリン協奏曲が最高に良かったショルツ氏。 CDの棚を眺めていて,ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全集を発見してあっと叫んでしまいました。 その昔,いつの間にか手に入れていたようです。 すっかり忘れていました。 といいますか,意識にありませんでした。 たぶん買ったときはショルツ氏に注目していなかったのでしょう...じゃあなんで買ったんだ?...(^^; 。

解説書を見ると,1989年の第4回日本国際音楽コンクールで第一位だったとか(このときの第二位が諏訪内晶子さん!)。 こんなことさえ知りませんでした。

それで演奏の方ですが,もちろん悪いはずがないのですが, ハイドンモーツァルトでの輝くような音楽にはまだまだ至っていないという印象です。 未だ原石の状態とでも言いましょうか。 今の彼女のブラームスを聴いてみたい! ぜひ再録音を! と切に願います。

(記2009/04/21)


タイトル チャイコフスキー:「くるみ割り人形」組曲 作品71a
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
演奏 指揮:サー・ネヴィル・マリナー (Sir Neville Marriner)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ (Academy of St Martin in the Fields)
録音 London, 2/1982
所有盤 Philips 411 471-2 (P)1982 Phonogram International B.V. (輸入盤)

弦楽セレナーデの感想です。 1968年の録音と比べると, 基本路線は同じものの,意欲あふれる若者から少し落ち着きのある大人になったというような感じで, 少し角が取れてソフトな印象になっています。

録音は,残響の取り込みがやや多くて音色が少々くすんでおり,許容範囲ではあるものの,若干印象は良くありません。

1968年の録音とどちらが好きか微妙なところですが, 録音の良さも含め,1968年の方がどちらかといえば私の好みに合います。

(記2009/04/20)


タイトル チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ ホ長調 作品22
シベリウス:悲しきワルツ 作品44の1
演奏 指揮:サー・ネヴィル・マリナー (Sir Neville Marriner)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ (Academy of St Martin in the Fields)
録音 1968年(Tchaikovsky),1970年(Dvorak),1978年(Sibelius)
所有盤 UCCD-7041(468 741-2) (P)1969,1970,1980 Decca Music Group Limited (国内盤)
発売元:ユニバーサル・ミュージック株式会社

チャイコフスキーの弦楽セレナーデの感想です。 もう文句の付けようのないくらい完成されているという印象です。 小細工なしのストレートな表現で,スタンダード中のスタンダードと言ってよいのではないでしょうか。 まさに百戦錬磨,覇気があり,自信に満ち,最高の音楽をやろうという気概が感じられます。 中編成の小気味よさ,見通しの良さ,音の締まりと,大編成のような響きの厚みを兼ね備えているところも良い点です。 強いて言うなら第二楽章が少しやかましく,もう少しエレガントさが欲しいなというところはありますが, 元々そういう指向の演奏ではないのでしょう。

録音も,古い録音のためか高域の抜けが若干悪いのが残念ではあるのですが, 音の捉え方が良いのでそれでも十分に鑑賞に堪えます。

同曲における一つの理想の姿がここにあると思います。 ファーストチョイスにも十分お薦めできる内容です。

(記2009/04/20)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ヨアヒム:ヴァイオリン協奏曲第二番 作品11
演奏 ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ (Christian Tetzlaff)
指揮:トーマス・ダウスゴー (Thomas Dausgaard)
デンマーク国立交響楽団 (Danish National Symphony Orchestra)
録音 Danish Radio Concert Hall, Copenhagen, Denmark
30.XI & 1.XII.2006(Brahms) & 23-24.III.2007(Joachim)
所有盤 Virgin Classics 50999 502109 2 3 (P)(C)2008 EMI Records Ltd./Virgin Classics (輸入盤)

テツラフ氏の演奏は何となく苦手です。 意図が読めないというか何というか... このブラームスの協奏曲ですが,最初はいいのですが,表情が唐突に変わったりして何となくついて行けない感じです。 第二楽章など美しさと歌心に溢れていて惹かれるところもあるのですが, 全体としての印象はやっぱり少し違和感が残るかなと。

録音も残響が多めでヴァイオリンの音が冴えず,不可とまでは言いませんが,あまり良い印象ではありません。 残念です。

(記2009/04/18)


タイトル チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
チャイコフスキー:フィレンツェの思い出 作品70
演奏 指揮:ジェラール・コルステン (Gerard Korsten)
ヨーロッパ室内管弦楽団 (The Chamber Orchestra of Europe)
録音 Berlin, Philharmonie, Kammermusiksaal, 3/1992
所有盤 D 110467 (P)1993 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)

ヨーロッパ室内管弦楽団のチャイコフスキーの弦楽セレナーデ,これは絶対に良いに違いない!と大いに期待して聴きましたが, 期待に違わぬ素晴らしい演奏でした。 絶妙で緊密なアンサンブルに加え,パートとしてきっちりと揃っていながらも奏者一人一人の主張がそれぞれ聴こえてくるような, そんな溶け合い過ぎない弦楽器の音色がとても魅力的です。 オーケストラ,各奏者の主体性の集合体として見事な音楽が形作られています。

一点だけ...弦楽セレナーデの第二楽章のトリルを皆で揃えるのはやめて欲しかった... しかもヨタっている...これは絶対に変です! トリルを揃えられるなんて,それはそれですごいのですが(^^;。

録音ですが,残響を控えめにして弦楽器の美しい音を明瞭に捉えています。 なかなか良いです。

(記2009/04/018)


タイトル ハイドン:ロンドン・トリオ 第一番〜第四番
ハイドン:ディベルティメント 作品100 第二番,第六番
演奏 フルート:ジャン・ピエール・ランパル (Jean-Pierre Rampal)
ヴァイオリン:アイザック・スターン (Isaac Stern)
チェロ:ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ (Mstislav Rostropovich)
録音 1/9, 10/'82 Vanguard Studios, NYC
所有盤 38DC 42 (P)1982 CBS Inc. (輸入盤)

愛聴盤です。 ロンドン・トリオは,アマチュア初級者でも手の出せるくらいの譜面のやさしい曲集ですが, この短いシンプルな曲にハイドンのエッセンスが凝縮されているような感じがしてとても好きです。 この珠玉の曲集がモダン楽器による演奏で,しかもかなりよい録音で残されたというだけでもう感謝感激です。 (一方,カップリングのディベルティメントは曲としてあまり面白くないです)

演奏者はそれぞれの楽器を代表するような巨匠ですが, ラフというかお気楽というか,これが私の好きな室内楽の雰囲気を醸し出しています。 こんな演奏からもベテランの芸,味わいが感じられます(こんな演奏だからこそ?か?)。 というか,理屈を並べても野暮というもの,素直に楽しみたい。

ホールではなくスタジオで録音されているのも,身近な雰囲気を出すのに一役買っています。 これも演奏と録音がとてもマッチしている好例,室内楽はこういうのがいいですねぇ,やっぱり。

(記2009/04/09)


タイトル モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第三番 ト長調 K216
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
演奏 ヴァイオリン:ジュリアン・ラクリン (Julian Rachlin)
指揮:マリス・ヤンソンス (Mariss Jansons)
バイエルン放送交響楽団 (Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)
録音 Recorded at Stadthalle Germering, Germany, 12-14 February 2004
所有盤 2564 61561-2 (P)2004 Kunstagentur Warner (C)2004 Warner Classics (輸入盤)

ブラームスのヴァイオリン協奏曲の感想ですが... 野性味溢れる演奏で,うーん,私の聴きたいブラームスとはちょっと違うかなと思います...

(記2009/04/08)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ブラームス:ハンガリー舞曲集より14曲
演奏 指揮・ヴァイオリン:ジョゼフ・スヴェンセン (Joseph Swensen)
スコットランド室内管弦楽団 (Scottish Chamber Orchestra)
録音 Recorded at the Usher Hall, Edinburgh, UK, from 7th-9th July 2003
所有盤 LINN CKD 224 (P)(C)2004 Linn Records (輸入盤)

ヴァイオリン協奏曲の感想です。 ブラームスとしては珍しい弾き振りです。 決して下手ではないのですが,技巧で魅了するタイプではないと思います。 この演奏のいいところは「ヴァイオリンってこんなに魅力的な音を出す楽器だったんだ」と再認識させてくれるところかなと。 音がつぶれる寸前の弓使いながら,すごく美しいというか魅惑的な音を出しています。 キレは今ひとつでやや線が細いものの,この個性豊かな音色が光っています。 この一所懸命さも何となく微笑ましくて好きです。 これはなかなか良かった!

録音は悪くないのですが,ちょっと音の捉え方が濃い感じがします。 もう少しすっきり感が欲しい。 そして,その割にヴァイオリンの音が少し弱いのも残念です。

(記2009/04/08)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
演奏 ヴァイオリン:ユリア・フィッシャー (Julia Fischer)
チェロ:ダニエル・ミュラー・ショット (Daniel Müller-Schott)
指揮:ヤコフ・クライツベルク (Yakov Kreizberg)
オランダ・フィルハーモニー管弦楽団 (Netherlands Pilharmonic Orchestra Amsterdam)
録音 Yakult Hall, Beurs van Berlage, Amsterdam (December 2006, Violin Concerto; December 2005, Double Concerto)
所有盤 Penta Tone Classics PTC 5186 066 (P)(C)2007 Penta Tone Music (輸入盤)

ヴァイオリン協奏曲の感想です。 拍の頭で一切溜めることなく切り込んでいくので,前に前に転ぶように曲が進んでいきます。 勿体ぶったところが全くない,推進力ある強気の曲運びが潔いです。 若さの特権を使い切ったような(?)勢いのある演奏です。 かわいい顔してやってくれますねぇ。

録音も悪い印象はありませんが,若干ソロが小さめで, もう少しヴァイオリンにフォーカスしていてもいいんじゃないかという気がします。

(記2009/04/08)


タイトル ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77 (23:57/9:16/8:37)
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
演奏 ヴァイオリン:ニコライ・スナイダー (Nikolaj Znaider)
指揮:ワレリー・ゲルギエフ (Valéry Gergiev)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (Wiener Philharmoniker)
録音 Recorded December 12-19, 2006, Musikvereinssaal, Vienna, Austria
所有盤 RCA RED SEAL 88697103362 (P)2009 (C)2008 Sony Music Entertainment (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイトhmv.co.jp

ファーストインプレッションです。 聴いたのはブラームスの協奏曲です。 スナイダー氏は1997年のエリーザベト王妃国際コンクール優勝者で,メニューインが「イザイの後継者」と絶賛したとのことです。 恥ずかしながらこのCDを見つけるまで名前すら知りませんでした。

紳士的というか随分と謙虚な印象を受けます。 音色はさすがに美しく叙情的で,技術的にも完璧,優等生の演奏と言えると思いますが, 推進力には乏しくあまり躍動的ではありません。 第一楽章の23:57というのはやや遅めですが,聴いた感じはそれ以上に後ろに引っ張られる感じがしてもどかしいところがあります。 出来は相当良いと思うものの,私としてはこの点だけが不満として残ります。

録音はまずまずで,長めの残響はあるものの,くぐもった感じはそれほどありませんので印象は悪くありません。 ただ,音像がやや遠めで,残響の影響もあって楽器の肌触りが感じられにくいのはやっぱり私の好みではないです。

(記2009/04/08)


タイトル ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
演奏 ダヴィド・オイストラフ (David Oistrakh) (Violin)
レフ・オボーリン (Lev Oborin) (Piano)
録音 Recorded: Le Chant du Monde, Paris, 1962.
所有盤 468 406-2 (P)1964 Philips Classics (P)(C)2001 Philips Classics (輸入盤)

LP時代からの愛聴盤です。 言わずと知れた名盤中の名盤ですね。 当時,評判が最も良かったのでこれを選んだ記憶があります。

この全集が愛聴盤である理由が大きく二つあります。 一つはこの演奏が持つ室内楽的な雰囲気で,もう一つは録音の良さです。

私の「室内楽」のイメージは,自分たちが自分たちの楽しみのために演奏する, あるいは仲間内で演奏者を囲んで一緒に楽しむ,といったものです。 こういう場合,自ずとコンサートで演奏するのとは弾き方が変わってきます。 そして,この演奏からは,そういった雰囲気を,そしてそこからくる楽しさ,優しさ,暖かさを感じるのです。 私が他の演奏から受けるオイストラフという「巨匠」のイメージとは少々違うように思います。 コンサートで聴く室内楽ももちろんいいのですが,やっぱり室内楽はこういう風に楽しみたい。

そして,この録音がまた秀逸! 古い録音なので高域の抜けが悪くすっきりしないところはありますが, 邪魔な響きは全くなく,絶妙の距離感で楽器音を捉えています。 演奏とその音の捉え方が素晴らしくマッチして最高の音楽を届けてくれます。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは,私としてはこの全集1セットあればそれでもういい,そう思ってしまいます。

(記2009/04/01)


タイトル リコーダー協奏曲集
マルチェッロ:ソプラノ・リコーダーのための協奏曲 ニ短調
ヴィヴァルディ:ソプラニーノ・リコーダーのための協奏曲 ハ長調 RV.444
テレマン:ソプラノ・リコーダーのための協奏曲 ヘ長調
ノード:ソプラノ・リコーダーのための協奏曲 ト長調 作品17の5
演奏 リコーダー:ミカラ・ペトリ (Michala Petri)
指揮:ケネス・シリート (Kenneth Sillito)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ (Academy of St Martin in the Fields)
録音 1984年6月8-10日,ロンドン,ヘンリー・ウッド・ホール
所有盤 Philips 32CD-211(412 630-2) (C)1985 Phonogram International (国内盤)
発売元:日本フォノグラム株式会社
備考 参考url: 公式Webサイト

愛聴盤です。 この中ではノードの協奏曲が楽しくて最も気に入っています。 ヴィヴァルディのソプラニーノ・リコーダーの協奏曲も収録されていますが, こちらは同じくハ長調のRV.443に比べると, 曲としての魅力が少し足りないかなと思います。

録音はこれも先に紹介したリコーダー協奏曲集とほぼ同等の好録音です。

(記2009/03/28)


タイトル リコーダー協奏曲集
ベイベル:ソプラノ・リコーダーのための協奏曲 ハ長調 作品3の1
ヘンデル:アルト・リコーダーのための協奏曲 変ロ長調 作品4の6
バスタン:ソプラノ・リコーダーのための協奏曲第二番 ニ長調
ジェイコブ:アルト・リコーダーのための組曲
演奏 リコーダー:ミカラ・ペトリ (Michala Petri)
指揮:ケネス・シリート (Kenneth Sillito)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ (Academy of St Martin in the Fields)
録音 1982年6月20-30日,ロンドン
所有盤 Philips 32CD-433(411 056-2) (C)1983 Phonogram International (国内盤)
発売元:日本フォノグラム株式会社
備考 参考url: 公式Webサイト

愛聴盤です。 一番最初に買ったミカラ・ペトリのアルバムがこれです。 LPの時代でしたので,もう20数年前になります。 なぜこれを買ったのかもう覚えていませんが,このアルバムがきっかけでファンになったと記憶しています。 この中ではベイベルの協奏曲が短いながらも愛らしくていい作品で好きです。

録音は先に紹介したリコーダー協奏曲集とほぼ同等の好録音ですが, ほんのわずかに残響の取り込みが増えて鮮度が落ちているように感じます。 ほんのわずかですのでほとんど問題ないのですが。

(記2009/03/26)


タイトル リコーダー協奏曲集
ヴィヴァルディ:ソプラニーノ・リコーダーのための協奏曲 ハ長調 RV.443
G.サマルティーニ:ソプラノ・リコーダーのための協奏曲 ヘ長調
テレマン:アルト・リコーダーのための協奏曲 ハ長調
ヘンデル:アルト・リコーダーのための協奏曲 ヘ長調 作品4の5
演奏 リコーダー:ミカラ・ペトリ (Michala Petri)
指揮:アイオナ・ブラウン (Iona Brown)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ (Academy of St Martin in the Fields)
録音 日本語解説書の記載:1979.6.26-27, Henry Wood Hall
オリジナルの解説書の記載:London, 7/1980
所有盤 Philips 32CD-42(400 075-2) (C)1980 Phonogram International (国内盤)
発売元:日本フォノグラム株式会社
備考 参考url: 公式Webサイト

愛聴盤です。 しかも半端じゃない,座右のディスクと言っていいくらいです。 ヴィヴァルディはもう何百回も聴きました。 元気を出したいときに聴きたくなります。

完璧な技巧に加えて純粋無垢で透明な音色,もう何も言うことはありません。 やっぱり特に素晴らしいのはソプラニーノ・リコーダーで演奏されるヴィヴァルディですが(曲もいいし演奏も最高!), 続くサマルティーニの協奏曲も親しみやすいメロディーが印象的な佳作ですね。

録音がまた良くて,残響はほとんど邪魔にならず,リコーダーの澄んだ音色を余すところなく捉えているほか, バックの弦楽器も明瞭かつ自然な音で捉えられています。 もう30年近く前の録音なんですねぇ...昔のフィリップスの録音は本当に良かった...(←年寄り臭い!)

(記2009/03/26)


タイトル ベートーヴェン:交響曲第七番 イ長調 作品92
ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
演奏 指揮:ラファエル・クーベリック (Rafael Kubelik)
バイエルン放送交響楽団 (Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)
録音 1970年3月31日〜4月1日(Beethoven),1970年(Weber),ミュンヘン,ヘルクレス・ザール
所有盤 ORG 1007 ※音楽之友社 レコード芸術企画盤 (国内盤)
「レコード芸術 名盤コレクション 蘇る巨匠たち」 ドイツ・グラモフォン原盤による

愛聴盤です。

スタンダードな佳演。 特徴ある演奏が多数出てきている昨今においても輝きを失っていませんし, スタンダードであるが故に何度聴いても色褪せず飽きることもありません。

録音がこれまたなかなか良くて私の好みです。 残響は最小限に抑えられ,各楽器が直接音主体で明瞭に聴こえてきます。 このような素晴らしい演奏が良い録音で残されたことに感謝です。

LPの時代に最初に買った最初のベートーヴェン第七番が確かこの演奏で, レコード芸術の企画盤として出たときに「これだ!」と思って買った記憶があります。 今現役盤があるのかわからないのですが,入手できて幸運でした。 そのすぐ後に録音された9つのオーケストラとの全集の第七番(オーケストラはウィーン・フィル)も聴いてみましたが,こちらの方が好きです。

(記2009/03/22)


タイトル バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲 BWV1046-1051
バッハ:三重協奏曲イ短調 BWV1044
演奏 指揮:ラインハルト・ゲーベル (Reinhard Goebel)
ムジカ・アンティクヮ・ケルン (Musica Antiqua Köln)
録音 1986年6月(BWV1046-1048), 1987年2月(BWV1049-1051), 1987年6月(BWV1044) ケルン
所有盤 ARCHIV POCA-3068/9(469 082-2) (P)1987 Polydor International GmbH (国内盤)
発売・販売元:ユニバーサル・ミュージック株式会社

古楽器の演奏の中でもとりわけその過激さで有名ですね。 確かにテンポが速く鮮烈です。 第三番の終楽章,第六番の第一楽章などはべらぼうに速すぎて別の曲かと思ってしまうほど。 低弦の刻むリズムが極端に攻撃的でマシンガンを撃ちまくっているような感じさえ受けます(^^;。 これはちょっと...と思うところも多くあります。 すさまじいテンポに良くこれだけ一糸乱れずアンサンブルが出来るものだと感心しますが(でも肝心のソロがついていけていないところもある), 速すぎて何を弾いているのかようわからんのはやっぱりやり過ぎじゃないのかな... でも何度も聴いているとだんだん毒されてきて快感に変わってくるのが恐ろしいです。 しかしよく聴くと決して過激さばかりではないというのはわかる気がします。

録音は響きを多く取り入れているので私の好みではありません。 オーディオ的には悪くないとは思いますが。

(記2009/03/14)


タイトル ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集
ハ長調 Hob VIIa:1, イ長調 Hob VIIa:3,ト長調 Hob VIIa:4
演奏 ヴァイオリン:ソニグ・チャケリアン (Sonig Tchakerian)
パドヴァ・ヴェネト管弦楽団 (Orchestra di Padova e del Veneto)
録音 Auditorium Pollint, Padova - (Italy) - 2 - 2001
所有盤 ARTS 47611-2 (P)(C)2002 ARTS MUSIC (輸入盤)

1980年の第27回パガニーニ国際コンクール第三位,1988年のミュンヘン国際音楽コンクール第三位という実績をお持ちのようです。 確かに上手いのですが,私の聴きたいハイドンとはちょっと違うように思いました。 変に力強いというか,力が入りすぎているというか... 緩徐楽章はのびのびと歌っていて良いと思うのですが。 バックまでつられてその弾き方に合わせてしまっているように思います。

(記2009/03/12)


タイトル シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
演奏 ヴァイオリン:ギル・シャハム (Gil Shaham)
指揮:ジュゼッペ・シノーポリ (Giuseppe Sinopoli)
フィルハーモニア管弦楽団 (Philharmonia Orchestra)
録音 1991年12月 ロンドン All Saints Church, Tooting.
所有盤 POCG-1683(437-540-2) (P)1993 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (国内盤)

技巧は完璧。 細かいパッセージまで音の一粒一粒まで明瞭に聴こえてくるのには驚きました。 ただ,大見得を切りながら力でねじ伏せるように曲を運んでいくので, ちょっと私の聴きたいシベリウスとはイメージが違うと思いました。 もう少し繊細さと情緒感が欲しい。 それでもやっぱり超一級の演奏であることは認めざるを得ないかなと。 逆にチャイコフスキーの方が丁寧に進めていっているようで, こちらこそシベリウスのような演奏の方が似合ってるんじゃないかと思うのですが。

録音は,オーケストラに対して不自然なくらいにヴァイオリンにフォーカスしており, コンサート会場ではこんな風にはきっと聴こえないだろうな,と思いつつも, 録音の場合はこれくらいはっきりとソロを捉えてくれていた方が好ましいと思います。 ヴァイオリン協奏曲の録音としてはかなり好きな方です。

(記2009/03/11)


タイトル ワーグナー:管弦楽曲集
歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
楽劇「タンホイザー」序曲とヴェーヌスブルクの音楽
歌劇「ローエングリン」第三幕への前奏曲
楽劇「ヴァルキューレ」ヴァルキューレの騎行
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲
楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
演奏 指揮:ジェイムズ・レヴァイン(James Levine)
メトロポリタン・オーケストラ(The Metropolitan Orchestra)
録音 1991年5月,6月,1995年5月 ニューヨーク
所有盤 UCCG-5046(442 8562) (P)1993/1997 Deutsche Grammophon GmbH (国内盤)
発売元:ユニバーサルミュージック株式会社

レヴァインのDG録音は,響きを抑え直接音主体に各楽器がすっきりと明瞭に聴こえてくるものが多いので結構好きです。 このワーグナーの録音もなかなかいいと思います。 演奏は派手でダイナミックながら癖がなく聴きやすいところがいいのですが,ちょっと陰影に欠けるというか, 何か物足りなさを感じることもあります。 でもこのワーグナーはレヴァインに合っていると思います。

(記2009/03/11)


タイトル バッハ:平均律クラヴィーア曲集
第一巻 BWV846-869,第二巻 BWV870-893
演奏 ピアノ:エフゲニー・コロリオフ(Evgeni Koroliov)
録音 Recorded in Frankfurt/Main, 1998-99(第一巻)
Recorded in Frankfurt/Main, 2001(第二巻)
所有盤 (第一巻)TACET 93 (P)(C)2000 TACET (輸入盤)
(第二巻)TACET 104 (P)(C)2002 TACET (輸入盤)

「平均律」と日本語訳されていますが,オクターブを対数等分割したいわゆる現代の「平均律」ではなく, 「ほどよく調律された」別の調律法のことであることを,恥ずかしながらつい最近知りました(なるほど原題はそういうことだったのか...)。 バッハの平均律,最初は面白さがわからなかったのですが, 最近になって少しだけその楽しさがわかってきた気がします。 こういう音楽に面白味を感じてきた自分がちょっとうれしかったりします(^^;。

平均律クラヴィーア曲集はグールドの第一巻を持っていただけで,それもあまり聴いてこなかったので, 自分にとってまだまだ馴染みのない曲集です。 演奏の善し悪しなどまだまだわかりませんが,コロリオフ氏の演奏は至極真っ当で癖がない印象で安心して聴けます。 平均律は当面この1セットがあれば私としては十分という感じです。

録音はまずまず良好ですが,もう少し輪郭をはっきりとクリアーに捉えて欲しかったなと思います。 TACETは優秀録音で有名で,このCDも優秀録音とのもっぱらの評判のようですが, 私の好みとはちょっと異なるようです。

(記2009/03/11)


タイトル バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
ヴァイオリン協奏曲 イ短調 BWV1041
ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 BWV1042
二つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
演奏 ヴァイオリン:サイモン・スタンデイジ(Simon Standage)
指揮:トレヴァー・ピノック(Trevor Pinnock)
イングリッシュ・コンサート(The English Concert)
録音 1983年3月 ロンドン
所有盤 ARCHIV POCA-2535(410 646-2) (P)1983 Polydor International GmbH (国内盤)

ハイドンのヴァイオリン協奏曲同様, 爽やかで気持ちの良い演奏です。 やはりソロの線が細く弱いのですが,これが逆に軽やかさにつながっているのかなと。

録音もハイドン同様まずまず良いのですが, 若干距離感があって鮮明さ,透明感は劣るように思います。 でも,この頃のピノックの録音は好感が持てるのが多いですね。

(記2009/03/11)


タイトル ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集
ハ長調 Hob VIIa:1, ト長調 Hob VIIa:4, イ長調 Hob VIIa:3
演奏 ヴァイオリン:サイモン・スタンデイジ(Simon Standage)
指揮:トレヴァー・ピノック(Trevor Pinnock)
イングリッシュ・コンサート(The English Concert)
録音 Recording: London, Henry Wood Hall, 11/1987
所有盤 ARCHIV 472 316-2 (P)1989 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)

スタンデイジ氏のヴァイオリンはちょっと線が細くソロとしての主張が弱いのですが, 音は大変美しく,また,バロック楽器らしすぎず,どちらかというとモダン楽器の方が肌に合う私でも楽しんで聴けます。 録音も嫌な響きはほとんどなくすっきりしていて好印象です。

(記2009/03/10)


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演奏:
録音:
タイトル モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ヴァイオリン協奏曲第一番〜第五番,協奏交響曲K.364
演奏 ヴァイオリン:ジュリアーノ・カルミニョーラ (Giuliano Carmignola)
モーツァルト管弦楽団 (Orchestra Mozart)
指揮:クラウディオ・アバド (Claudio Abbado)
録音 Recording: Bologna, Salone Bolognini, 11/2007
所有盤 ARCHIV 00289 477 7371 (P)(C)2008 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)

評判のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集, アバドとカルミニョーラの参加しているブランデンブルク協奏曲を聴いて, 遅ればせながら聴いてみることにしました。 ピリオド楽器による演奏でピッチもA=430Hzとのことです。

それにしても自由奔放に跳ねまくる。 これぞピリオド・アプローチ!なのかどうかは見識のない私にはわかりませんが, 私はこの演奏を聴いてフィドラーの大道芸を見ているかのような錯覚を覚えました(^^;。 バロック音楽とのつながりを改めて認識したとのレビューをWeb上でいくつか見かけましたが, 私はこれを聴いて,バロック音楽とフィドルの伝統音楽との接点を感じました。 こんな風に感じるのは私だけでしょうか?

いずれにせよ,このようなある意味型破りな演奏が出てくること,世の中で受け入れられていることは, 喜ばしい傾向かなと思います。

(記2009/03/08)


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演奏:
録音:
タイトル バッハ:ブランデンブルク協奏曲第二番〜第五番
演奏 ベルリン室内管弦楽団 (Berlin Chamber Orchestra)
音楽監督・ヴァイオリン:カトリーン・ショルツ (Katrin Scholz)
録音 Recorded at Jesus-Christ-Church, Berlin on December 3,4 & 5, 2007
所有盤 Victor VICC-60672 (P)2008 edel records GmbH/Victor Entertainment, Inc. (国内盤)
備考 参考url: Victor Entertainment

ハイドンのヴァイオリン協奏曲で突如として私の贔屓のヴァイオリニストとなったショルツのブランデンブルク協奏曲とあらば, もう聴くしかありません。

モダン楽器による颯爽としたブランデンブルク協奏曲です(第二番と第四番はリコーダーが使われています)。 淀みも曇りもなく,ひたすらキレよく爽やかに弾ききっています。 そうかと思えば,子供がおもちゃ箱の中を「何かいいものが出てこないかな」とがちゃがちゃとかき回しているような, そんな茶目っ気,微笑ましさ,ワクワクする気持ちも感じます(なに言ってんだかよくわかりませんが...(^^; お恥ずかしい...)。

録音も,多少作為的なものを感じるものの,ソロ,バックとも明瞭に捉えていて好印象です。 リコーダーの音がやや大きめにはっきり聴こえるようフォーカスされている感じで, こういうマルチマイクの合成のような音作りが不自然さの要因になっているかもしれませんが, 残響に濁らされた不明瞭な音を聴かされるよりずっと良いと思います。

(記2009/03/04)


タイトル モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ヴァイオリン協奏曲第一番〜第五番,アダージョK.261,ロンドK.373,ロンドK.269
演奏 独奏・指揮:カトリーン・ショルツ (Katrin Scholz) (Violin and direction)
ベルリン室内管弦楽団 (Kammerorchester Berlin)
録音 Berlin, Christuskirche, 10, 11/1997
所有盤 BERLIN Classics 0184002BC (P)1998 edel records GmbH (C)2006 edel CLASSICS GmbH (輸入盤)

ショルツをもう一つ。 ハイドンのヴァイオリン協奏曲があまりに良かったので,モーツァルトもきっと良いはずだ!と思って聴いてみました。 結果,当たりでした! ハイドンと録音時期は異なりますが,受ける印象はほとんど同じで,音色の輝きに惹きつけられます。

録音もハイドンのヴァイオリン協奏曲とほぼ同じで好印象です。 小編成オーケストラの見通しの良いバックも明瞭に捉えています。

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲には数多の名盤があると思います。 それらを凌ぐとまではもちろん言いませんが,モダン楽器による奇を衒わない正統路線の演奏として高い水準の演奏ではないかと思います。 演奏も録音も良いので,愛聴盤候補になりました。

なおカデンツァは,第一番〜第三番がショルツ自身,第四番・第五番がヨアヒムとのことです。

(記2009/03/04)


タイトル ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集
ハ長調 Hob VIIa:1, ト長調 Hob VIIa:4, イ長調 Hob VIIa:3
演奏 独奏・指揮:カトリーン・ショルツ (Katrin Scholz) (Violin and direction)
ベルリン室内管弦楽団 (Kammerorchester Berlin)
録音 Jesus-Chistus-Kirche, Berlin-Dahlem, 30.06./01.07.2003
所有盤 BERLIN Classics 0017652BC (P)(C)2003 edel CLASSICS GmbH (輸入盤)

ヴァイオリンの音色がものすごく魅力的! 惚れ込んでしまいました。 清らかでふくよかで甘美だけど品を失わない... モダン楽器の魅力がいかんなく発揮されています。 バックのオーケストラも引き締まっていてアンサンブルも良いと思います。

録音がこれまた良くて,多少の響きを伴っていますが,ほとんど楽器音を濁していません。 美しいヴァイオリンの音が全く自然に伝わってきます。 響きを取り入れるならこういう風にやって欲しいと思います。 (もちろんもう少し響きを抑えて欲しかったとは思っています)

演奏の美しさ,録音の良さから,ハイドンのヴァイオリン協奏曲集の中で最も気に入った一枚になりました。

愛聴盤です。

(記2009/03/04)


タイトル バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
二つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
ヴァイオリン協奏曲 イ短調 BWV1041
ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 BWV1042
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ハ短調 BWV1060
演奏 ヴァイオリン:ユリア・フィッシャー (Julia Fischer)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ (Academy of St Martin in the Fields)
録音 St Paul's Deptford, London, 2-4 June 2008
所有盤 DECCA 478 0650 (P)(C)2009 Decca Music Group Limited (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

この類のCD,何かすごく爽やかな演奏が聴けるような気がしてついついふらふらっと手を出してしまいます(^^;; その意味でこのCDは期待通りでした。 表現に特徴があるとか個性的であるとか,そういったことはほとんどなく, なぜ今バッハなのかな?と思うところはありますが, そういったことを抜きにして,音楽として純粋に素直に素晴らしいと思える内容です。

録音もまずまず良好です。 楽器音がそれなりにきちんと捉えられていますし,オーディオ的に見ても不満はありません。

(記2009/03/03)


タイトル ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
Op.95, Op.128, Op.130, Op.131, Op.132, Op.133, Op.135
演奏 コロラド弦楽四重奏団 (Colorado String Quartet)
録音 May 26, 2004(Op.95), May 31-June 2, 2005(Op.130/133), December 16-17, 2005(Op.127), May 25-26, 2006(Op.131), May 26-28, 2004(Op.132), June 2 and December 18, 2005(Op.135). All performances recorded in the Sosnoff Theater of the Richard B. Fisher Center for the Performing Arts, Band College, Annandale-on-Hudson, New York.
所有盤 PARNASSUS PACD 96042/4 (P)(C)2008 Parnassus Records (輸入盤)
備考 参考url: Parnassus Records

コロラド弦楽四重奏団は女性4名で構成され,ニューヨークを拠点に活動されており, 結成25周年の記念としてこの録音をしたとのことです。

この団体は明るく明快な音楽が持ち味なのかなと思います(音を短めにはっきりと切るところからそう感じるのか?)。 これがベートーヴェンの後期にふさわしいかどうかは人によって感じ方が違うと思いますが, 最初は少し違和感を感じたものの,悪くないと思い始めてきました。 技術的にも,アンサンブルにも不満は特にありませんが, 旋律を弾いていないときの1st Vn.が遠慮しすぎなのか引っ込みすぎてちょっともどかしいところがあります。

録音も,多少の残響はあるものの直接音比率が高く,明瞭感があり音色も自然で悪くありません。

(記2009/03/02)


タイトル バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲
演奏 モーツァルト管弦楽団 (Orchestra Mozart)
音楽監督・指揮:クラウディオ・アバド (Claudio Abbado)
ジュリアーノ・カルミニョーラ(ヴァイオリン), ミカラ・ペトリ(リコーダー), マリオ・ブルネロ(チェロ), アイロス・ボッシュ(コントラバス), ラインホルト・フリードリヒ(トランペット), オッターヴィオ・ダントーネ(チェンバロ), 他
録音 2007年4月21日 イタリア,レッジョ・エミリア,ヴァーリ市立劇場
所有盤 Euroarts 2056738 (輸入盤) (DVD)
備考 参考url: hmv.co.jp

ミカラ・ペトリが演奏しているところを見たくて手に入れたDVD。 私は特にアバドのファンというわけではありませんし,モーツァルト管弦楽団もどんな団体か全然知りませんでしたので, 正直言って演奏自体は全然期待していませんでした。 でもこれは本当に素晴らしかった! 演奏もいいし録音もいい! 大きな大きなうれしい誤算でした。

この演奏,いわゆる「ピリオドアプローチ」らしいです(その言葉の意味するところを正しく理解しないまま使っています...)。 ピッチは440Hz付近かなと思います。 楽器はモダンとピリオドが入り交じっているように見えて何となく統一感がありません。 しかし,この演奏の面白さはそんな楽器や奏法云々を越えたところにあるように思います。 変な言い方ですが,それぞれの奏者の芸人魂を感じます。 とにかく理屈抜きに楽しいんです。 音楽が生き生きと躍動しています。

録音がこれまたすごくいい! ホールでのライヴ録音ですが,奏者の前にマイクが立てられていて楽器の音が明瞭かつ自然な音で捉えられています。 響きは多少あるものの,音楽を全く邪魔していません。 (普通に録音すればこんな風に録音できると思うのですが,なんでみんなこんな風に普通に録音してくれないのかなぁ...と愚痴を言いたくなる今日この頃...)

演奏はもちろんのこと,録音も含め,何枚か持っている同曲の演奏の中で最も気に入った一枚になりました。 あまりに気に入ったので,音声トラックをCD化して日常的に聴いています(実は映像の方はほとんど見ていないんです。CDでもぜひ発売して欲しい。絶対に買います!)。 アンコール(第二番第一楽章)ではミカラ・ペトリがリコーダーをソプラニーノ・リコーダーに持ち替えて演奏しています。 ペトリのソプラニーノ・リコーダーが好きな私にとってこれもちょっとしたプレゼントでした。

(記2009/03/01)

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