〈演出家と話し合う〉

同じ台本でも、演出によって全く違う作品になります。演出家は、美術、脚本、音楽、照明、演技、などの各セクションをひとつのイメージにまとめ上げるのが仕事です。
演出家がどんな作品にしたいか、どんな風に上演したいか、それを聞くのは大切な事です。「5と言ったら…」の演出は、ひとみ座の篠崎早苗です。

「全体として、パアーッと明るい感じにしたい。」
「もとは立絵人形(ぺ−プサート)で上演されていた作品なので、その軽さやリズムを生かしたい」
「照明は当てるだけで、変化はつけない」
「2人〜3人位でも上演出来るようにしたい」
「人形は木彫の彫りっ放しに直接色付けする」

などが、演出の意向でした。舞台(ケコミ)の間口は約一問(180cm)で、すわりづかいです。

 

〈下調べをする〉

台本を読んで演出の意図を聞いても、いきなりスケッチ・ブックに向かうわけではありません。
まず、地理的な条件や風俗、自然条件などを調ベてみます。
これは、何も学問的に正確な考証をする為ではなく、イメージとか雰囲気を捉えるきっかけが欲しいからです。
私など、“ジャマイカ”と言われても、地理的な位置や人種、どんな衣服を着ているか、など全くピンと来ませんでした。
ジャマイカはアメリカ大陸の東、カリブ海にあります。キュ―バのすぐ南です。
熱帯で“美しく青い”海に囲まれ、“美しい緑”の島です。本来、アラワク族の島でしたが、彼らは今、一人も居ません。多数を占めるアフリカ系の黒人と少数の白人・混血が住んでいます。
街の看板や人々の衣服などは、独得の原色を多用した極彩色です。
レゲエサウンドが有名で、これをやる人はアミヒモみたいな特異な髪型をしています。
その他、ブル―マウンテン、熱帯植物、熱帯くだもの、など。

それから、へビの全く居ない島という記事には驚きました。台本には、蛇が出て来ます。
が、これは植民地時代の英国人がインドからマングースを移入して、絶滅させた為だそうです。昔は沢山、へビが居たようです。(と、何故か安心してしまう・・・)
ジャマイカに関する資科は余り多くはなく、やっと以上のような事を知る事が出来ました。さて、

すぐに、ひとつの疑間が湧きました。

「『5と言ったら…』の話は、アラワク族の話なのか、それともアフリカ系黒人の話なのか??…」「世界の民話」(実業之友社)で原典の訳も調べましたが、分かりません。
ただ、原典ではアナンシが悪人の大人である事、魔法つかいが魔女である事、5と言ったら死んでしまう呪文である事、最後にアナンシも死んでしまう事、などが分りました。
結局、アラワク族に関しては、何も調べようがありませんでした。

 

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