2、デザインのプロセス

 

デザインのプロセスと言っても、決まったやり方があるわけではありません。
そこで、具体的な例として、私自身がデザインした「5と言ったらサツマイモ」(ジャマイカの昔話)の場合を紹介します。
発想の貧困さを暴露するようで恥ずかしいのですが、何かの参考になれば、という思いです。皆さんも、私とは別に、この本の登場人物達をデザインしてみて下さい。

 

〈台本を続む〉

 

最初は、ともかく台本を読みます。台本というのは御存知のように上演用の脚本の事です。「5と言ったらサツマイモ」は、曵田宏という人が書いた本です。この人は、もと保育者で、現在は、組み木パズルや積木などの木工作家です。

さて、この本の登場人物は

アナンシ(少年)
5(まほう便い)
ウサギ(のおじょうさん)
へビ(のおじさん)
アヒル(のおくさん)

の5人(?)です。あらすじを書きましょう。

5という名前の魔法つかいがいた。魔法つかいは、この“5”という名前が嫌いだった。ある日、「5と呼んだものはサツマイモになってしまえ」という呪いを掛ける。
少年アナンシは、村一番のいたずら者。この呪いを利用しようと考えた。
袋を道端に5個並ベ、通る人(?)達に数えさせる。
「元気なウサギのおじょうさん。オイラの替りに袋を数えて下さい」
「いいわよ。1、2、3、4、5!アレー」
ウサギはサツマイモになってしまう。
次は蛇のオジサン。蛇は何故か風邪ひいてズルズルしているが、
「ズルズル1、2、3、4、5!」
やはりサツマイモにされてしまう。
最後にやって来たのが、とてもおしゃべりなアヒルのオバサン。
「袋を数えて!」
「1、2、3、4、それからわたしの触ってる分」
「1、2、3、4、それから、わたしの乗ってる分」
「1、2、3、4、6!・・・」
呆れたアナンシは、
「袋はこうやって数えるンだヨ。いいかい、1、2、3、4、5!アレ〜ッ」
サツマイモになってしまった。
実際は、このあと、アナンシ、ウサギ、蛇の呪いは解け、魔法つかいも“ゴハン”と名前を改めて、メデタシとなります。

台本を読んでみて分る事が幾つかあります。

舞台がジャマイカである事。アナンシがいたずら好きの少年である事。5が魔法つかいでちょっと幼児的な性格(荒神的でもある)である事。ウサギは類型的な“元気なおじょうさん”。ヘビも類型的な“スローモーなオジサン”。アヒルはもう少し性格の肉付けがされていて、「おしやべりでバイタリティーがあって、おせっかいで、少し人を煙に巻く」処があります。
この他、この台本では、人も魔法つかいも動物達も特に区別していない事に気付きます。すべて登場人物と言って良いのです。
また、アナンシは何度かアヒルのおくさんに、「もっと良く目を開いて!」と言っています。これは、アヒルをデザインするときのヒントのひとつになります。

   

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