ジャズにもCD化の波


ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」

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レコードに代わる新しいオーディオソフトとして、コンパクトディスク(CD)の普及はめざましい。クラシック音楽を筆頭にCDの浸透は進んでいるが、このごろジャズの旧譜のCD化が急ピッチで進んでいる。分厚いジャケットやレコド針からもれる摩擦音を大事にするジャズファンにもCD化の波が押し寄せてきているようだ。
 ジャズ旧譜のCDは、プレスティッジ、リバーサイド、ブルーノート、ECM、バープ、サボイ、マーキュリーなどのレーベルのカタログから順次発売されている。カタログを持つレコード各社が一斉にCD化に取り組み始め、月刊誌「スイングジャーナル」が六、七月号で誌上キャンペーンを行うほどの盛況ぶりだ。発売されているのはソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」、ビル・エバンスの「ポートレイト・イン・ジャズ」、アート・プレイキーの「コンプリート・バードランド」、ミルトン・ジャクソンの「オパス・デ・ジャズ」など、評価の定まうた名盤ばかりである。多くは一九五〇年代の黄金期のジャズで、原盤に含まれるノイズは残るが、モノラル録音でも広がりのある音が楽しめる。
 もっとも旧譜のCD化ラッシュの背景には、ここ十年来続いたジャズの復刻盤ブームが一段落したという事情もありそうだ。先月未発売された「レイ・ブライアント・トリオ」(キング)というレコードは、"最後の幻の名盤"と銘打っているが、制作担当者によると、いったん廃盤になった名演を発掘する作業はほとんどやりつくされたという。日本フォノグラムから最近出た復刻盤全集「ザ・コンプリート・キーノート・コレクション」もマニア向の性格が強い。レコード会社としてはこれからはCDに着手せざるを得ないというわけだろう。
 世界有数のカタログを持つ日本のジャズレコード市場はますます豊富になっているが、聴衆の方はそれらをどう聴くだろうか。
(出典 日経新聞S61.7.11 文化往来)

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[Last Updated 10/31/2000]