みんなの広場
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 アクセスされた方々との交流の場です。今月も次の3項目を取り上げました。先月の「みんなの広場」は「11 改訂履歴とみんなの広場(バックナンバー)」に移しました。
 7月は、前半は暑い日が続きましたが、後半は暑さも収まり、時期相応の陽気なので助かっています。
 朝顔は垣根仕立て・鉢仕立て共に青、紫色など見事に咲いています。
1. 今月の追加内容など
 1.1 今月の追加内容
  今月追加した内容の、ご紹介です。
 1.2 新聞の記事から
  今月は「霊魂が漂う季節」と題する山下柚美さんの記事を載せました。
2. 7月のトピックス
 7月の主なトピックスをご紹介します。
 2.1 白ギス釣り
  15日、兄に誘われて大森から船で白ギス釣りに行きました。
 2.2 清泉女子大学本館
  23日、絵画のスケッチの候補として、五反田にある清泉女子大学本館を見に行きました。右の写真は、建物の正面を木の間越しに撮ったものです。
3. 来月の予定
 今、来月に向けて計画していることを、お知らせします。

1. 今月の追加内容など
 1.1 「今月の追加内容」
 「8 ウォーキング」に追加した「62 フランス旅行」は先月(2013.6)旅行したボルドー〜ツールーズとパリ、ジベルニーの記録です。
 「8 ウォーキング」「11 フランス周遊」の「8) ジヴェルニー」に「フランス旅行に戻る」を追加したのは、前項で、この頁を再利用したためです。
 「11 興味あるリンク」には、「1 役にたつホームページ」に「1.25 清泉女子大学」と「1.26 東京湾遊漁船協同組合」を追加しました。前の項はこのページの2.2項の、後の項は同じく2.1項の記事との関連です。

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 1.2 新聞の記事から
    「霊魂が漂う季節」 
山下 柚美
 ついさっきまで明るく青みがかっていた空が、どろりと墨を加えたような暗さを増している。夕方から夜へと変化していくこの時間帯のことを、私たちの祖先は「逢魔が時」と名付けた。魔に逢うなんて、ずいぶんおどろおどろしいことばだ。辞書には「大禍時」が転じたとあるが、もっと怖い。不意に魔性に出会いそうな、大きな禍いが起こりそうな怪しい時間帯だと、多くの人が感じてきたのだろう。
 でも、今日の私はちょっと違った。暗闇は「魔」「禍」に出会う恐ろしい時間ではなかった。
 蛍を待っていたからだ。
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 東京都文京区の関口にある椿山荘の庭園は、都心には珍しく豊かな湧水がある。秩父山系から自噴する地下水や隣の邸宅を水源とする幽翠池(ゆうすいち)もあり、水車の回る音、滝の音、せせらぎの音が涼しげだ。
 耳を澄ませて蛍を待った。初夏の日は長く、なかなか暮れきらない。午後七時半頃、やっと夜のとばりが降りた。湿った草むらの中で金緑色の小さな光が瞬き始める。
 かすかに光り、また消え、光る。呼吸しているかのように。しばらく明滅を繰り返したその光は、ある時ぐんと輝きを増した。そして、一気に暗闇の中へと舞い上がった。
 柔らかな円弧を描く光。かと思うと、空気の流れに乗って水平方向へすすっと移動していく。一段高い枝の方へふわりと上昇し、重力に引き寄せられるように落ちていく。
 「もの思へば沢の蛍も我が身より あくがれ出づる魂かとぞ見る」
 あの蛍は、男への思いにふける私の身から彷徨(さまよ)い出てきた魂ではないのか――。和泉式部はそう詠んだ。
 予測できない不安定な軌道が、よけいに、誰かの魂のように見えるから不思議だ。
 この歌の下敷きには「遊離魂(ゆうりこん)」の思想があるといわれる。人や動植物の魂が、体から離れて彷徨うことを言う。死んだ時だけではない。生きた体からも魂は彷徨い出ていく。私たちの祖先はそうした霊魂観を、自然なものとして受け取ってきた。現代の私たちも、千年前の歌に共感して自分の魂を蛍に重ねてみたりする。「遊離魂」という感性は、人々の中にちゃんと生き続けている。
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 この庭園は遠い昔、椿が美しい「つばきやま」という景勝地だった。目白台地の崖線にあり、江戸時代には松尾芭蕉も隣に棲んでいた。「椿山荘」と命名したのは明治の政治家、山縣有朋だ。私財を投じて作り上げた庭と屋敷は、その後男爵・藤田平太郎の手に渡った。戦争でかなり焼けたそうだが、戦後に高級総合宴会場として開業した。一時期は外資系ホテルと提携していたが、今は「ホテル椿山荘東京」という名称になっている。
 二万坪にも及ぶ起伏のある庭園は、大都会の幽谷だ。樹齢五百年のご神木、重なりあって繁る枝々、その間から見え隠れする石仏、三重塔、茶室。独特な雰囲気に惹かれて、ホテルや結婚式場に人がやってくる。でも、かつてここに能舞台があったことは、あまり知られていない。
 「益田鈍翁や団琢磨、椿山荘の主だった藤田家と三井家一族の舞台でも、毎月素人の能が催された。能には『子方』(子役)がつきものだから、私もその度に招かれてお相伴になった」と白洲正子は自伝に書いている。子供だった白洲がここでどんな能を舞ったのか詳細はわからない。でも、そもそも能という芸自体が、さまよえる霊魂と深く関係していることはたしかだ。二百数十番ある謡曲の大半は、すでにいない人が主役となる夢幻能なのだから。
 「主人公はおおむね幽霊で、生前この世に思いを残して死んだ人びとが夢うつつの間に還(かえ)ってきて、恋の想(おも)い出を語ったり、犯した罪をざんげしたりします」と『能の物語』の中で白洲はかみくだいた解説をしている。
 それは、他の演劇には見られない能の特徴的な構成と言ってもいいのだろう。「遊離魂」の表現を得意とする芸能に、四歳の時に取り憑(つ)かれ夢中で稽古してきたという彼女は、日本の女性で初て正式な能舞台に立つ人でもあった。
 椿山荘の闇に漂う蛍見ながら、この人の霊は今、どこを彷徨っているのだろうと思う。東京という舞台の上でその霊を追いかけてみたい、とも思う。
 関東では他の地域より一ヵ月早く、七月半ばにお盆に入る。地獄の釜の蓋があき、先祖の霊が帰ってくる。霊が迷わないよう迎え火をたき、「家はここよ」とサインを出す。考えてみれば実にユニークな年中行事だ。霊を迎え入れ、数日間飮食をともにして、ちょっと切ない思いとともにまた送り火であの世へと送出す。
 たとえ肉体を失っても、居なくなった人とどこかでつながっている。やりとりや行き来がでる、という感覚が、私たちの中にはたしかにある。お盆が相変わらず二十一世紀の今に存続しているのは、「遊離魂」いう独特な感性のおかげかもしれない。
「椿山荘の蛍は、人工飼育したものを放っただなんでしょ」
 知人は私のノスタルジツクな口調を揶揄(やゆ)して笑った。そりゃそうだ。蛍が自生する環境なんて、東京の大半からすでに失われている。でももし、椿山荘の木々が伐採され湧水が枯れて、土地が平らに整地されてしまったら? 沢の蛍の幻想的な風景を楽しむことはできなくなる。魂に思いを馳せることも無くなるだろう。そう思うとこの風景がかけがえのないものに思える。
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 たとえ土地は所有できても、風景は誰か一人の物ではない。過去と未来、あの世とこの世。暮らしの記憶、居なくなった人の記憶、土地の記憶、すべてを含んでいる。私たちが今見ている風景は、幾重にも積もった時の層の上にある。人に履歴があるように、風景にも履歴がある。
 ノスタルジーに浸るのではなく今を生き抜く知恵として、目に見えない風景を繊細に感じ取りたい。そのためにも、私は「五感の力」を磨きたいと思った。

やました・ゆみ 作家。 1962年東京都生まれ。著書にエイズ患者を描いた「ショーン」(小学館ノンフィクション大賞優秀賞)や「年中行事を五感で味わう」など。
(出典 日本経済新聞 2013.7.21)

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2. 7月のトピックス
 7月の主なトピックスをご紹介します。
 2.1 白ギス釣り
  東京湾遊漁船協同組合が、初心者向けに釣り教室を開いています。昨年はイカでしたが、今年は白ギスでした。大田区の平和島に船宿「まる八」の桟橋があり、そこから船が出ます。希望者にはJR大森駅前まで、バスで迎えに来てくれます。船は木更津まで行き、そこで釣りを始めました。釣り竿や仕掛けも貸してくれるので、服装のほかは何も準備は要りません。午後の1時頃まで釣って30匹位釣れました。捌き方も教えてくれるので、天ぷらにしたらとてもおいしく食べられました。
 2.2 清泉女子大学本館
  JR五反田駅から御殿山に向かって国道317号を進み、東五反田3-18と19の間を左折すると、坂を少し登った左側に清泉女子大学があります。受付で資料をもらって緩やかな坂を登ると左手に本館があります。これが旧島津公爵邸で、英国人A.J.コンドルが明治35(1906)年に設計を委託し、大正4(1915)年に竣工しました。建物は地上2階、地下1階で、1階は島津家の公式エリア、2階はプライベート・エリア、地下はボイラー室、倉庫などに使われていたようです。
 この辺り(清泉女子大学のある東五反田3-16)を島津山というようですが、もともと島津家が3万坪の土地を持ていたのが8千坪を残して周辺部を売却したためです。

3 来月の予定
 3.1  「5 本の紹介」
  橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司共著「おどろきの中国」(講談社現代新書)を載せたいと思います。
 3.2 ボランティア
  最近行っている特別養護老人ホームでの絵画ボランティアをご紹介したいと思います。
 3.3 リンク集
  「興味あるリンク」を、少しずつ追加したいと思っています。

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[Last Updated 8/31/2013]