理屈の好きな野島とセリフのおもしろい君塚



 前にヒットチャートを見ていて不思議に思ったことがある。森田童子の「ぼくたちの失敗」が1993年の20位に入り、90万枚も売っていたことだ。なんで今ごろ。

 先日再放送されたドラマ「高校教師」を見てこの謎が解けた。父と娘のあやしい関係、教師と女子高校生の心中などずいぶん話題になった作品だ。そのドラマの主題歌に使われていたのだ。シナリオを書いた野島伸司が採用したらしい。あらためてベストアルバムを聞いてみた。野島が本当に使いたかった曲は「さよなら ぼくのともだち」ではなかろうか。

 次作「人間・失格」では、「高校教師」の女子校生役だった桜井幸子を今度は教師役で登場させている。おまけに「ぼくは…」なんてまるで森田童子の詞のようなナレーションを桜井に語らせている。野島は、桜井や酒井法子のようなちょっと太目でとろそうな母性を感じさせる女が好きらしい。それにしてもこのドラマ、へたな役者が勢揃いしている。テレビに演技なんて必要ないといわんばかりの配役だ。まあこれもひとつのやり方ではあるが。

 一方、君塚良一脚本のドラマ「ナニワ金融道4」は、またまた楽しませてくれた。できは前作の方がいいと思うのだが、役者を見てくれ。マチキンの社長が緒形拳、被害にあう男が宇崎竜童、解決に手を貸すヨレヨレの弁護士にいしだあゆみ。これで盛り上がらないわけがない。

 この3人で思い出すのは、「阿修羅のごとく」だ。この作品では、くそ真面目な図書館員のいしだあゆみと、うだつの上がらない探偵役の宇崎竜童が恋に落ちるのだ。「お互い女には気をつけようぜ」という緒形拳の最後のせりふが耳に残っている。

 ついでに、「ナニワ金融道」の原作者青木雄二の本が出たので紹介しておく。借金の踏み倒し方などが懇切丁寧に書いてある。タイトルがまたいい。『土壇場の経済学』だって。

 「高校教師」と「ナニワ金融道4」は、とても対照的だ。好みからいえばもちろん君塚に軍配を上げる。ここのところ女性のシナリオライターが増えたけど、まだ少女マンガのレベルには達していない。はじめて「踊る大捜査線」を見たときの新鮮さ、「愛していると言ってくれ」のような鋭い指弾、そんな驚きを体験させてほしい。野島、君塚、三谷の次の世代の人たち、がんばっておくれ。

  • 土壇場の経済学 青木雄二 宮崎学 南風社 1998 NDC338 \1500+tax
     表紙のマンガもこれまた傑作

(1999-05-03)