『バッテリー』にはまる乙女たち



「クローズアップ現代」に、あさのあつこが出演した。テーマは、もちろん『バッテリー』(教育画劇、角川文庫)。発行部数が800万を超え、読者の7割は20代〜40代の大人の女性たち。番組では、世代別に読者の作品への想いを紹介していた。

かつてイラストの仕事をやっていた人は、才能の限界を感じてやめてしまった。小説の中の「本気」ということばに刺激され、ふたたび絵を描きはじめている。

友だちと骨と骨でぶつかるような高校生活を送った女性は、今派遣や臨時雇いの仕事を転々とこなしてる。職場ではあたりさわりのない人間関係で、満たされない気持ちがある。ピッチャー巧とキャッチャー豪のやりとりが、かつての濃密な友人関係を思い起こさせる。

私が『バッテリー』を読んでたのを知っていて当該年代でもあるひとりに、番組の感想を聞いてみた。

答えは、自分には必要ない本だと。なぜなら、好きなことは趣味でやってるし、職場では本音で話してるから。たしかに、好きなことに熱中するあまり寝かしつけるのに苦労するし、上司や同僚とぶつかり落ち込むこともよくある。最近では、聞く耳持たない人には言うのをやめたそうだが。

番組で話していた読者たちの「本気」とはニュアンスが異なるような気もするのだが、そういう飾り気のないところが長所なんだろう。でも、豪のように何でも聞いてあげるからなどと言ったおぼえもないのに、速球を投げつけられるのはちとつらい。受け損なうと怒られるし。もうぬかに釘になるしかない。

『バッテリー』が名作であることは間違いない。そしてこの作品にはまる人にも好感がもてる。ただ、気質的には川原泉作品の方が近いかな。

(2007-08-08)