偉大なる国アメリカ



 アメリカに住んだことがあれば、アメリカに対して明確なイメージを持てるだろう。しかしそうでない人間にとっては、かつて住んだことのある人の意見が参考になる。

 寺島実郎は、10年以上の滞米生活の経験にもとづいて『脅威のアメリカ 希望のアメリカ』を書いた。
アメリカの友人に学んだ最大のものは、筋道の通った異論に敬意を払うことの大切さだった。価値ある友人とは、寄りかかる存在ではなく、適切な距離で真摯な議論ができる存在である。(p181)
 そんな寺島氏には日米関係がどのように見えるのだろうか。
 アメリカとの半世紀以上にわたる同盟関係で醸成してきた「過剰依存」と「過剰期待」のパラダイムの中で、日本人には「アメリカについていくしかこの国の選択はない」という思考がこびりついている。そして、アメリカが主導する「不条理な戦争」にさえ拍手を送る卑しい国に成り下がりかけている。
 「現実主義」の名の下に、「アメリカしか日本を守ってくれない」として思考停止状態にある日本に求められるのは、自らをごまかさない強い意思であろう。(p180)
 これがアメリカ好きの人の意見である。「トラウマとしてのアメリカ」というとらえかたは、岸田秀と同じである。

 150年間にわたる日米関係をたどってみると、いくつもの発見があった。たとえば1893年にアメリカは海兵隊を動員してハワイ王朝を倒し、1898年には併合してしまった。この事件に関して100年後の1993年に米国議会は謝罪決議を行っていたのだ。日本では首相が謝罪するだけだから、よっぽど潔い。

 批判するにせよ賛美するにせよ、まず相手のことを知らなくては話にならない。本書は、アメリカを知るうえでの基本書である。
(2004-02-19)
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