事実を直視する



 岸田秀の『日本がアメリカを赦す日』では、国家という人間集団を、あたかも個人であるかのように扱い考察している。

 ペリー来航から日本人の内的自己と外的自己の分裂が始まった。これが従来の主張だった。『起源論』で、このような分裂は日本建国のころからすでにあったと修正した。本書ではもう少し話をすすめ、アメリカの対日行動の不思議さを解明している。

 なぜゆえに、ペリーは日本を脅迫し、排日移民法を作り、ハル・ノートを突きつけ、本土空襲を行い、原爆を投下し、日本を占領し、東京裁判を行ったのか。著者は、その原因をアメリカが持つインディアン・コンプレックスに求めている。

 アメリカ人は、銃でインディアンを大量に殺したという過去の歴史を正当化している。それゆえに、心理的に銃を禁止することができない。彼らは日本人にインディアンの亡霊を見て、過敏な反応と的外れの言動を繰り返す。それと同じような行動を他の国に対してもとるので、テロを招いていると。
インディアン・コンプレックスを克服する方法は、幼児期のトラウマのために神経症になっている患者を治療する方法と同じです。インディアンに関するすべての事実の隠蔽と歪曲と正当化をやめ、すべての事実を明るみに出し、それに直面し、それとアメリカの歴史、現在のアメリカの行動との関連を理解することです。
 これが岸田秀が提示する処方箋である。本書で示された荒っぽい解説のほうが、アメリカを分析的に解明しようとする本よりも、ずっと納得できてしまう。「なぜアメリカ人は嫌われるのか」という問いに答えるものでない限り、どんな詳細な解説もないのと同じである。
(2003-02-07)
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