日本と日本人の起源とは『対話 起源論』で、岸田秀氏は、サル学の山極寿一、歴史家の岡田英弘と網野善彦、社会哲学の今村仁司、「大航海」編集長の三浦雅士の5人と対談している。いつものように「人間は本能の壊れた動物で、本能の代理として自我を作った。その自我の支え、位置づけのために家族が必要になった」と述べている。 今村氏のご意見を拝聴するのは初めてだが、かなり過激な発言が続く。 ヨーロッパでは16世紀にブレーキ(タブーや束縛)が壊れた。中でもモンゴル史・満州史が専門の岡田氏の話が一番刺激的だった。 アメリカについては、 アメリカ対外国という観念がないと指摘し、中国については、「中国人は夷狄の雑種である」と言いきっている。 日本と朝鮮のアイデンティティの起こりは、新羅の統一にあり、それまでは中国文明しか東アジアには存在しなかったという。国家は実在するものではなく、理念そのものという主張に思わずうなずいてしまう。 ついでに網野氏との対談を併読してみると、古代日本のありかた、百済と日本の関係などが分かったような気になれる。そして網野氏が言うように、安易に日本人という呼称は使えないのだろう。日本人の起源という考え方自体も再考の必要がある。その時の名称はやはり日本列島人なのか。 岡田氏の中国の話がおもしろかったので、新著『現代中国と日本』を読んでみた。読んでいるとどっかで聞いた話が出てきた。なんとこの本に収められている「東アジアにおける日本人のイメージ」は読んだことがあったのだ。なんだ私の好みはたいして変わっていないということか。 ともかく序章の「現代中国と日本」は、中国の歴史が簡潔に述べられていておおいに参考になった。高校の歴史の教科書でかなりいびつな歴史像を身につけてしまったので、これまでもそれを修正する努力を続けてきた。しかし、中国や朝鮮の歴史のイメージがうまくつかめずに困っていた。これでやっと網野氏の示す中世の日本史像とつながりそうな気がする。
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