歴史の語り部としての司馬遼太郎の後継者



 学者ではないけど、インテリが書いた歴史の本を読んだ。寺島実郎『一九〇〇年への旅』は、実際にヨーロッパを旅しながら1900年当時の欧州をふりかえる。舞台となるのは、パリ、ロンドン、ウィーン、ローマ、マドリッド、ハーグ、サンクト・ペテルブルク、ベルリン。旅人は、秋山真之、夏目漱石、南方熊楠、森鴎外、広瀬武夫、明石元二郎、小村寿太郎、川上音二郎、クーデンホーフ・光子。

 1900年を基点とし、幕末から現代までの世界史、とくに日本の外交史が浮き彫りになっている。これまでの歴史の学習で見落としていたことを、いくつも発見した。続編として、アメリカ・太平洋篇が予定されているので、そちらも楽しみ。

 著者の経歴からして、外国のインテリとの交流が多いのだろう。それでも、自分は明治を生きた鴎外や漱石に及ばないのではないかという謙虚さを感じる。くだらないテレビのコメンテーターの解説を聞くくらいなら、この本を読んで歴史をふりかえったほうが、よっぽど考える材料が得られる。学識経験者ということばは、こういう人のためにある。
  • 一九〇〇年への旅 あるいは、道に迷わば年輪を見よ 寺島実郎 新潮社 2000 NDC281 \1500+tax

(2003-09-10)