偉人さんに連れられて



2月17日の「視点・論点」で、詩人の荒川洋治が「偉人伝」について語っていた。

20年ほど前に15人の偉人の生涯を比較した結果、偉人とされる人には共通点があることがわかった。
家か貧しい。
田舎で育った人が多い。田舎に住む祖父母に預けられ、親元を離れることで世界を知った。
親のどちらかが無理解。たとえば、ピアノが好きなベートーベンは、母親にピアノのふたを閉められた。読書好きなリンカーンは、父親に「本のことなんか考えるな」と言われた。
障害や逆境を乗り越える。
学校がきらい。
偉人は偉人伝を読む。
では、偉人伝を読むことの効用は、
子どもは、人間への興味がわき、自分との親近感をいだく。
もはや偉人になる可能性の薄らいだ大人が読んでもいいものだ。
マリー・キュリーはお金よりも時間をほしがった。
どこまで偉人と自分は共通していて、どこから違ったのか。それを考えるのも楽しい。
ところが、人物に対する評価が一様ではなくなり、偉人伝は読まれなくなった。人の活動範囲が広がり、面としてとらえられるようになったからだ。

でも、断片ではなく、人生の全体が書かれているのが偉人伝の良さである。しかも写真ではなく挿し絵で。

ここまでが番組の要旨。

伝記を読むことの効用について、
「自分が偉人でないことを知ること」(呉智英)
「偉人になりきってしまうことで生きていく力が得られる」(太田光)
という2つの説がある。

斎藤美奈子『紅一点論』は、伝記のヒロイン像について考察している。

最後に、私のおすすめ伝記本を。
藤原正彦『天才の栄光と挫折‐数学者列伝』(新潮選書)

(2006-02-20)