マンガ家のおしゃべりマンガ家が自分を語るとどうなるだろうか。何とも対照的な本を手にしてしまった。 『わたしたちができるまで』は、3人のマンガ家にそれぞれ50の質問をし、マンガ家はそれに答えるだけでなく、自分の全作品について解説までしてしまう。 岩館真理子に聞いているのが大島弓子で、大島弓子に聞いているのが吉本ばなな。はじめて岩館真理子を読んだのが『私が人魚になった日』だった。これはできそこないの大島弓子だと思った。案の定、彼女は大島弓子に影響を受けたと告白している。代表作の『うちのママが言うことには』も1冊読んでみたけど、やはり私とは縁がなかった。 二人目の小椋冬美については、まったく知らないのでノーコメント。 大島弓子の作品解説を見ると、読んでいる作品がやけに少ないことに気づいた。ほとんど『綿の国星』1作品にノックアウトされていたのかもしれない。「大島弓子選集」を作ったときに、本づくりの楽しさを味わったという。いっときハードカバーにあこがれたこともあるが、ソフトカバーでも美しい本は作れると言い切っている。この作品解説は一読に値する。 3人のQ&Aは少しつっこみ不足だし、読んでも不満が残る。それに対して吉田秋生に対するインタビューをまとめた『無敵のライセンス』は、ここまで語るのかと思うほど、あっけらかんと青春時代についてしゃべりまくっている。 この本を作ったねらいが分からぬまま読み進めたが、どうやら「10代の若者がオトナになる」がテーマのようだ。片想いとか、男の子と女の子に違いとか、親のことなど10代のころに気になってしかたのないことについて語っている。読んでみると彼女の作品に自分の経験がいかに反映しているかよく分かる。 「婦人公論」のような雑誌記事では、読みやすくするために過度に編集されている。それに比べてこの本では、生の吉田秋生が満喫できる。今彼女が原作を書いた『夜叉(YASHA)』がテレビで放映中だ。この機会に一度手にとってみてはいかが。
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