まったく異なるタイプの2つのマンガ



 山岸涼子の『アラベスク』は、ロシア・バレエを題材としている。ところどころにバレエの解説が入っていて、理解を助けてくれる。主人公のノンナ・ペトロワが悩みつつもいろんなライバルに巡り合いながら成長していくストーリーだ。若くしてこれだけの作品を書けるのは、やはりすごい。

 後年山岸は、聖徳太子を主人公とした歴史マンガの傑作『日出処の天子』を書いた。その後も歴史に題材をとった作品が多いけれど、女性ではこの作品をしのいだ作家はいないのではなかろうか。

 私が一番好きな作品は、大島弓子の『綿の国星』だ。いつか自分も人間になれると信じているチビ猫、銀色の美形猫ラフィエル、チビ猫を拾ってきた時夫とその家族。この作品のストーリーを紹介しても、何も語ったことにはならない。文字どおり、百聞は一見にしかず、の作品。

 『アラベスク』や『日出処の天子』、そして『ガラスの仮面』のような長編ストーリーマンガはおもしろい。それとは違ったところに『綿の国星』は存在する。マンガならではの表現として。

  • アラベスク 山岸涼子 角川書店 1986 山岸涼子全集10-15巻
     第1部は1971、第2部は1974の連載

  • 日出処の天子 山岸涼子 白泉社 1981-83
     角川書店の山岸涼子全集1-8巻にもあり

  • 綿の国星 大島弓子 白泉社 1978
(1999-07-26)