本を読んでバカになるな『不良のための読書術』は、軽い本なので一気に読んでしまった。「本の雑誌」の読者が好みそうな本である。本の読み方、買い方、借り方、保存法などについて、業界情報をまじえながらおもしろく書いている。私には書店の記述が楽しめた。これにインターネットの本屋さんに関する情報を加えれば完璧だ。 この中で引用されていた次の言葉に驚いた。フランス文学者生田耕作曰く「多数派はいつも間違える」。なんと「多数は常に間違える。多数が気がついたときは、すでに手遅れである。」という経済の経験則と同じことを言っている。生田氏はおそらくフランスの歴史から学んだのだと思うのだけど、結局人間は昔から同じ誤りを繰り返してきたのかもしれない。 一方『読者は踊る』は、さしずめ書評を集めた時評集といったところか。歯切れのいい罵詈雑言が小気味いい。現代的なテーマで、数冊の本を比較対照している。新刊だけでなく、歴史的な価値のある本も落とさずに拾っている。 すぐに分かることは、著者は文学に強く、科学に弱いということだ。しかし不得意な分野でも推薦する本は的を外していない。あっぱれな本である。索引もきっちりついていておすすめの1冊だ。 この2冊の本を比べてみれば、文句なくマガジンハウスの勝ちだ。値段と中身は比例しない。 ところで斎藤氏は初のおめもじなのだけど、立花隆にはやや批判的で、竹内久美子をボロクソにけなしている。なんと竹内と斎藤は同年齢なのだ。竹内がドーキンスの「利己的遺伝子説」を日本ではやらせた張本人であるらしい。そういえば、ドラマ「高校教師」で生物の教師(真田広之)が持ち歩いていた本が、ドーキンスの『利己的な遺伝子』だった。 そこで竹内が書いた『パラサイト日本人』を読んでみた。はっきりいってヨタ話が大半を占めている。これを批判するよりも、これだけおもしろく書ける筆力をほめてあげたい。 ミトコンドリアとATLウィルスの話を図解せずに読者に理解させようなんて、無謀としか言いようがない。こういう内容の出版なら講談社の方がうまいのに。 また日本人の起源については、ジャーナリストの書いた『私たちはどこから来たのか』の方がまともだ。竹内の別の著書について、佐倉統は次のように評している。 話のネタとして楽しんでいるうちは害はないが(中略)行き着く先は教育の崩壊だと思う。
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