吾妻ひでお日記吾妻ひでお『うつうつひでお日記』は、『失踪日記』発売直前までのマンガ日記で、続編ではない。楽しいエピソードにあふれた作品でもないのだが、楽しく読んだ。 自費出版本に載せた第1話が、今からふりかえると転換点になっている。アル中病棟を退院して、薬を飲みつつ社会復帰をめざす日々。あやうさの漂うイラスト風の日記が、しだいにマンガらしくなっていく。出版のあてのない3部作も完成する。その後の成功を知っているから、かろうじて安心して読める。 家ではテレビを見て、本屋で立ち読みし、レンタル・ショップでマンガを借り、図書館で雑誌を読み、小説やCDを借りて帰る。それでも、少ないとはいえ仕事はある。1日に2冊読むこともあったとか 「だめだこの日記って ただの引きこもりの 読書感想文だ!」(p46)と叫んでいるが、これで不安さえ襲ってこなければ、幸せを絵で描いたような生活ではないか。 世間に見捨てられた作家にも、新井素子は本を寄贈してくれる。さすがにご近所。 つい貸し出し期限のある図書館の本を先に読まねばという強迫観念にかられて買った本やもらった本後回しになってしまう(p16)そうそう。本を買うと安心してしまい、積読になりがちだ。ゆえに、私も図書館をよく利用する。 大森望氏が、私の名前を出して「萌え」の元祖だと言っていた 俺は「萌え」などという気持ち悪い言葉は知らん(p183)このセリフを聞いて安心した。 実際 なぜむかしは「夜の魚」のようなキ○ガイ漫画を描けたのか分からない(p183)今の画風がいちばん。 ところどころインタビューがはさまっている。『失踪日記』出版後、仕事量が増えたかの問いに、 仕事の依頼が来たことは、うれしいことはうれしいですよ。でもそれまでと比べて作品の内容がそんなに変わったわけじゃないのに、『失踪日記』がウケたことで仕事が増えて、なんかヘンだなあって気持ちがあって…。まぁ、依頼してきた編集の方が分かってないって言うのもあるんでしょうけど、だったらなんでその前に仕事くれないんだって、そういうウラミの心もあったりして(笑い)(p198)すっかり吾妻ひでおとおしゃべりしてしまった。なはは。
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