まだ寝ぼけた体のまま街を走り抜ける、 

頭がぼーっとしてる・・・力が入らない・・・でも・・・ 

ハプニカ様のために、自分のために、この闘いを制覇しなければ! 

 

東闘技場についた、時間は7時40分、間に合った・・・ 

手続きを早々に済ませる、本人の確認でちょっと手間取ったが、 

控え室に入ってベットの下の鎧を装着して・・・ガチャガチャガチャ、と・・・ 

 

「それではまもなく1回戦が始まりまーす、皆さんそれぞれのステージへどうぞぉ」 

 

昨日のバニーさんの合図に外へ出る、 

息つく暇もないや・・・お、重い・・・鎧が・・・ 

こんなに重かったっけ・・・そうそう、こんなに重いんだった・・・ 

 

俺は東闘技場の第3ステージ、第2試合だ、 

朝から満員の会場・・・この熱気に目がさえてきた、 

いよいよ真剣勝負がはじまる・・・俺の生涯最高の戦争になるはずだ! 

 

「ハンナン選手、ドーレ選手、ステージへ!」 

 

2人の戦士がステージに上がる、 

第1試合・・・スタジアムの大時計が8時を指した瞬間、 

大きな銅鑼が会場に鳴り響いた、いよいよはじまった!!! 

 

・・・・・ふむ、 

本選だけあってそれなりにレベルは高いものの、 

そんなに大したもんじゃない、この程度の相手なら楽勝だ、 

鎧の重さも全然ハンディにならない、倍ぐらい重くても大丈夫だろう、 

なんてぼーっと観ているうちに・・・・・終わった、ドーレの勝ちだ、こんなもんか。 

 

「次、トレオ選手、ダバダ選手、ステージへ!」 

 

よいしょ、よいしょとステージへ上がる、 

相手のダバダ・・・気の毒だが10秒で片づけよう、 

かっこいい顔しやがって・・・今に見てろよちくしょう 

 

「はじめ!!」 

 

審判の声に前へ進む俺、 

その次の瞬間、敵が・・・消えた? 

いや、上だ!と見上げた瞬間、剣が兜に! 

バッと素早くよける俺、なんて素早さだ!剣を交える、 

つ、強い!何て強さだ!おいおい、さっきの試合は何だったんだ!? 

 

一方的に攻められる俺、 

話が違う強さだ!こ、こんなに強いとは・・・ 

う、やられる・・・桁違いだぞこれは!?ぐ・・・ぐぐ・・・ 

よ、鎧の重ささえなければ・・・ぐ、ぐはぁ!や、やばい!これはぁ! 

こいつ、殺気といい腕といい素早さといい、普通じゃない!絶対に・・・こいつは何者だ?

 

ガキィィィィィ!!! 

ぼかっっっ!!!!! 

 

「ぐふううう!!!!!!!」 

 

腹にとてつもない圧迫感と激痛が・・・ 

て、敵のパンチが・・・鎧を突き破って腹に!! 

ば、馬鹿な・・・うぅ、気持ち悪い・・・ぐふっ!血が口から出た・・・ 

こいつ・・・ダバダとかいうやつ、不気味に笑ってやがる・・・顔を近づけてきた・・・ 

兜の前の隙間から・・何か小さな声で喋ってきたぞ・・・何だ・・・? 

 

「・・・お前も運が悪かったな・・・明日までおねんねしてな」 

「ぐふっ・・・き・さま・・・」 

「俺たちにはハプニカ暗殺の大事な仕事があるんだ、手早く済ませてもらう」 

「な、何だと!!!」 

「起きた時にどうなってるか楽しみにしてるんだな・・・じゃあな」 

 

ボグッ!!! 

 

「ぐがあ!!」 

 

もう一方の腕で剣を握ったまま俺の顎を殴るダバダ、 

兜の下半分が砕け、顎の骨が曲がる・・・痛い・・・苦しい・・・ 

そのままステージに大の字で倒れる・・・普通ならここで気絶だろう・・・・・ 

しかし、俺はすっくと立ち上がった、ハプニカ様を暗殺だって!?冗談じゃない! 

こんなやつ・・・本気の本気の本気の本気の本気で倒してやる!!!!! 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 

 

驚くダバダを殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!倒す!殴る!まだ殴る!!! 

 

「ストップ!ストップ!トレオ、ストップ!!」 

 

審判の声に我に帰る、 

ダバダは・・・のびている、白目をむいて気絶している・・・ 

勝った・・・完膚無きまでに勝った・・・倒す事ができたぞ・・・!! 

 

「トレオさん1回戦勝ちー!!」 

 

右手を上げられた俺はその場に倒れ込む・・・ 

そのまま控え室のベッドに運ばれる・・・ダバダの奴も・・・ 

しまった・・・手加減しとくべきだった・・・暗殺についていろいろ聞き出さないと・・・

 

「ひどい怪我・・・」 

 

バニーさんが俺の顔を覗き込んで言った、 

どれだけひどいかはその表情で読み取れる・・・ 

俺は砕けた顎を無理に動かして話す・・・・・ 

 

「そ、僧侶を・・・プリーストを・・・」 

「は、はい・・・でもお金は・・・」 

「い・ちばん・・・高いの・・・で・・・」 

 

バニーさんが外へ出ると、 

数分して白い僧侶服に身を包んだ1人の少女がやってきた。 

 

☆シャクナさん☆

「まぁひどい・・・では・・・」 

 

鎧・兜を脱がせてくれて、 

ぽーーーっと治癒魔法をかけてもらう・・・ 

砕けた顎が再生していく・・・血だらけの腹も・・・ 

 

「・・・・・ふぅ、とりあえず止血と再生をしましたが・・・」 

「あ、ありがとう・・・いた!いたたた・・・」 

「動いてはいけません!まだ仮に癒しただけですから・・・しっかり休まないと」 

「休むって、いつまで?」 

「最低でも1週間は・・・」 

 

おいおい、このあと2時間半たてば2回戦なのに・・・ 

 

「あの、僧侶さん、お名前は?」 

「はい、シャクナです」 

 

バニーさんが後ろから顔を覗かせた。 

 

「シャクナ様は王室に出入りしてるほどの高名な方なんですよ、 

本大会にフリーでついてらっしゃる中で一番のプリーストです! 

そのお方がこう言ってらっしゃるんですから、棄権なさった方がー・・・」 

 

王室に出入り・・・ 

でも俺の顔を見てもどうこう言わないって事は、 

正体は気付いてないのだろうか・・・ 

 

「その、シャクナ様は、王室に?」 

「そうは言っても3ヶ月に1度だけですが」 

「そう・・・あの・・・大事な話があるんだ」 

 

俺はシャクナの耳元でさっきのダバダについて話した。 

 

「あ、暗殺!!」 

「そう、気をつけるようにハプニカ様に言って欲しい・・・」 

「そうですか・・・わかりました、お伝えします」 

「すぐに行ってくれ、まだ仲間がいるようだ」 

「はい!」 

 

急いで出て行くシャクナ、 

あれ、治療費は?・・・・・まぁいいか、 

後で払おう、それより次の闘いだ、えっと・・・・・ 

 

「バニーさん」 

「は、はい」 

「これ、お金・・・」 

「先ほどの治療費ですか?」 

「ううん、買い物をしてきてほしいんだ」 

 

?という表情のバニーさんにお金の入った袋を渡す。 

 

「鎧と兜、壊れちゃって・・・新しいの買ってきてほしいんだ」 

「まさか!まだ闘うつもりですか?」

「もちろん!この鎧みたいに体と顔がすっぽり隠せるやつを・・・」 

「無理です!棄権なさらないと」 

「大丈夫、少しでもやばくなったらちゃんと棄権するから・・・」 

 

バニーさんは少し考え込んだあと、 

お金を持って外へ出ていった・・・ありがたい、 

まだハプニカ様暗殺を企む奴が勝ち進んでる可能性が高い・・・ 

・・・・・・・・・・許せない・・ハプニカ様の命を狙う奴がまだいたなんて・・・ 

とにかくいろいろと探る必要があるかもしれないが・・・肝心の俺がこの状態では・・・いてて・・・ 

 

「トレオさ〜ん」 

 

バニーさんご戻ってきた・・・あれ?手ぶらだ?

と思ったその後ろからいかつい男が・・・う、うわ、鎧だ、でかっ! 

ムキムキした男がどでかい鎧と兜をかついできた・・・俺がさっき着てたのの2倍はあるぞ! 

 

「これしかないそうです〜」 

「はは・・・頑丈そうだね」 

 

ドスン、と鎧を置くと男はすたすたと去っていった、 

バニーさんは心配した様子で僕の顔を伺っている。 

 

「よいしょ・・」 

「むっ、無理しない方が」 

「もう行かないと・・・次は北闘技場だよね・・・」 

「そうですが・・・」 

「うう・・・重いけど・・・着れないことは・・・ない・・・」 

 

時間をかけて何とか鋼の鎧・兜を身につける、 

もう時計は10時をすぎた、いざ次の戦場へ・・・!! 

 

「あのー」 

「バニーさん、いろいろとありがとう」 

「移動用の天馬が表に用意されていますので」 

「それは知らなかった、ずいぶん楽になるよ、次にここに来るのは・・・準々決勝か、あとでまた!」

「はいー、御武運をー」 

 

まだ痛む体に気合いを入れて、 

東闘技場を出ると天馬が俺を待ち構えていた、 

俺は操縦役の細身の男に参加証を見せて乗ろうとしたが、しかし・・・

 

「おいおい、ちょっとやめてくれ!俺の天馬がつぶれちまうだろ!」 

「あ・・・申し訳ない・・・それじゃあ、えーっと」 

「そのクソ重い装備を外してくれ!誰かやとって鎧だけ運ばせればいいだろ!!」 

 

・・・・・まずい、 

鎧を外して移動したら、 

正体がばれてしまうかもしれない・・・ 

ただでさえ全国民が注目している大会のはずだ、 

どこで誰が見ているかわからない・・・体の古傷だけでもばれる可能性が・・・!! 

 

「わかった、歩いて行くからいいよ」 

「お、おい、歩くって、遠いし混んでるぞ」 

「丁度良いトレーニングになるさ!」 

 

俺はやけくそになってそう言い放ち、 

逃げるようにして鎧をガチャガチャ鳴らしながら、 

2回戦の会場である北闘技場へと向かった・・・うぅ、無理しちゃったなあ・・・ 

 

重い・・・ 

苦しい・・・ 

体が痛い・・・ 

でも、でも・・・ 

これを乗り切らないと・・・ 

 

人ごみをかき分け、 

次の闘いの場へ急ぐ、 

はぁ、はぁ・・・ぜぇぜぇ・・・ 

時間は・・・思った以上にかかる・・・ 

間に合うかな・・・間に合わせなきゃ・・・ひぃ、ひぃ・・・ 

 

・・・・・つ、ついたぞ、やっとだぁ・・・ 

時間は・・・やばい!10分前だ!早く手続きを・・・ 

受け付けに入って・・・・・よし、控え室はあっちだ!! 

え?もうステージへ?息つく暇もないとはまさにこの事だ、 

俺はそのままの格好で剣をぎゅっと握り締めながらステージへと進む。 

 

「ルックス選手、トレオ選手、ステージへ!」

 

汗をだらだら流しながらステージへ上がる、 

目の前の敵・・・ルックスという奴・・・こいつ・・・

またかっこいい顔をしているが・・・さっきのダバダの仲間かもしれない、 

ハプニカ様を暗殺しようとする・・・だとしたら、かなり手強いはずだ・・・ 

こんな状態で俺、勝てるのか?いや、勝つしかない、全てはこのダルトギアとハプニカ様のために!! 

 

第2回戦・・・スタジアムの大時計が11時を指した瞬間、

大きな銅鑼が会場に鳴り響いた、俺はその場で身構える!!!

ルックスもその場に立ってこちらを睨んでいる・・・互いに動けない!! 

 

「う・・・鎧が重過ぎて・・・動けないのかも・・・」 

「・・・・・そっちが来ないならこちらから行くぞ!」 

「わっ、来た!!!」 

 

飛び掛かってきたルックスを、 

体が勝手に反応してかわし、条件反射で剣を切り付ける、 

そしてそのままの流れで攻撃を繰り返す、重い鎧ながらいざ戦闘モードに入ると、 

やはり今までの経験と真剣な状態で身の重さなど忘れでしまう・・・そしてそのまま・・・ 

気がつくとあっという間にルックスが横たわっており、僕は勝ち名乗りを受けていた・・・やった! 

 

「・・・・・ふぅ、相手が弱くてよかった・・・こいつは違うな」 

 

そう思うと気が抜けたためか、 

一気に体を疲労感が襲う・・・とりあえず控え室に行こう。 

 

もどる めくる