「ミルちゃん!」

「あ〜!おにいちゃん!」

「よかった、無事だった・・・」

 

あっけなく見つかったミルちゃん。

 

「どうしたの〜?」

「いや、戻ってこないって聞いたから・・・」

「あ、言ってたのレンちゃんでしょ?遊んでから行くって言ったのにぃ」

 

ミルちゃんは小さい白竜の子供に乗っている、

遊んでたのか・・う〜ん、とにかく無事でよかった。

白竜ごと近づいてきて一緒に俺へ擦り寄ってきた。

 

「おにいちゃんも遊ぼうよぉ」

「う〜ん、そうだね・・・でも・・・」

 

いかに小白竜といえど、やっぱり告白は2人きりの方が・・・

 

「ミルちゃん、ちょっといいかな・・・ちょっと下で・・・」

 

バサバサバサ!!

 

「うわっ!!」

 

大きい白竜が降りていた!?

これは・・・ミルちゃんの小白竜の母親、

つまりハプニカ様の白竜の奥さんだ、ドッカと座る。

 

「ちょ、ちょっと、白竜・・・」

「あ〜、通せんぼしちゃったぁ」

 

俺が上がってきた木の道を塞ぐ形で座り込んだ・・・

これじゃあ帰れない、いや、白竜の上を登れば・・・

 

「ギエーーーーッ!!」

 

威嚇された・・・どうしよう

 

「おにぃちゃん、どうするぅ?」

「うん、そうだ、小白竜は・・・」

 

バサバサバサバサバサ・・・

母白竜の上に飛び乗って、丸まって寝ちゃった・・・

 

「うーん、いっそ飛び降りる?」

「え〜?こわいよぉ」

「そうだね・・・えっと・・・」

 

・・・・・まあいいか。

 

「ミルちゃん」

「なぁに?」

「聞いて欲しい事があるんだ」

 

屈託の無い笑顔だ・・・

 

「ミルちゃん、ここの生活はどう?」

「楽しいよぉ?どうしてぇ?」

「いや、退屈してないかなぁ、って」

「う〜ん、お城が忙しかったからここの方がいい!」

「でも、その、街で遊べないし、人だって・・・」

 

俺の胸に抱きつくミルちゃん。

 

「ミルはおにいちゃんと一緒の方がいい・・・」

「そんなに?」

「うん、おにぃちゃんがいれば、ミルは他になんにもいらないよぉ」

 

ぎゅうっと抱き包んであげる・・・

 

「ミルちゃん・・・ありがとう」

「おにぃちゃん・・・」

「でも・・・俺、ミルちゃんはここだけにいるべきじゃないと思う」

「どうしてぇ?」

「ミルちゃんはもっともっと、自由に育って欲しいんだ」

 

髪をやさしくなでてあげる。

 

「ミルちゃん、俺と一緒にもっと色んな所へも行こうよ、

海も行きたいし街でデートしたいし、それに今、闘技場はショーのステージになってるんだ、

ミルちゃんと一緒に見に行きたいな、それにミルちゃんにはちゃんとピッタリな仕事とか、

やりたい事だってあるだろうし・・・ミルちゃんのこれから長い人生を、俺だけに閉じ込めるのは、

すごくもったいないと思うんだ、ミルちゃんにも、俺にも・・・ミルちゃんには無限の可能性があるんだから・・・」

 

しゃがんで目線を合わせ、やさしく唇を合わせる・・・

 

「ミルちゃんが俺のために何でもしたいように、俺だってミルちゃんに何でもしたい・・・

ミルちゃん・・・俺と、結婚して欲しい・・・結婚して、強い絆を結んだうえで、ミルちゃんを自由にしたいんだ・・・」

 

じわっ、と涙が溢れるミルちゃん。

 

「ふえ〜〜〜ん、おにぃちゃん、嬉しいよ〜〜〜」

「ミルちゃん・・・ミルちゃん、結婚して・・・くれる?」

「え〜〜ん、え〜〜〜〜〜ん・・・けっこん・・・しますぅ〜〜〜」

 

小さな体でありったけの力で抱きついてくる、

ぎゅううっと・・痛いくらいだ、いや、痛い・・・ててて・・・

 

「ミルちゃん・・・うっ・・・」

「・・・あっ、ごめんなさぁい・・」

「い、いや、いいんだ・・・ミルちゃん、たまには街でデートしようね」

「うん!おにぃちゃん・・ううん、お兄様が行きたいならぁ〜」

「はは、お兄様か、うん、いいよ、ミルちゃん・・・大好きだよ」

 

涙をぬぐってあげると甘えきった、とろけた表情になるミルちゃん、

やさしくキスしてあげる・・・舌と舌でなぞり合う・・心地よい舌触り・・・

告白してよかった、この先ずっと、笑顔でいられるようにしてあげなくっちゃ。

 

「ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

 

な、なんだなんだなんだ!?

 

ぼこぼこぼこっ!!!

 

「あ、あれは・・・卵!?」

「あ〜、3つも産んだ〜〜」

 

・・・・・ボコッ!!!

 

「うわ!さらにすんごく大きいのが!」

「やったぁ!あれって育つ卵だよお」

「本当?有精卵!?」

 

大きいのを大事そうに抱きかかえる母白竜・・・

他の小さいのをいかにもいらないといった感じでこっちへ転がす。

 

「これ・・・まだあったかい無精卵・・・もらっていいのかな?」

「うん!貰って行こうよぉ」

「だね・・・うんしょ・・・中身ぎっしり・・」

 

俺が1つ抱くとミルちゃんは2つ軽がると持つ。

 

「おにぃちゃん、街に遊びに行くなら力も戻さないとねっ」

「そ、そうだね・・ミルちゃんも早く小白竜で街に行けるように・・」

 

バサバサバサバサバサ・・

 

「クエッ!クエッ!」

 

小白竜が降りてきてミルちゃんに懐く、

母白竜も立ち上がった・・そして大卵を抱き、

のっしのっしといて奥の巣へ・・・小白竜もそれに続いていく・・・

 

「うーん、白竜、ありがとう・・・」

「きっと卵をくれるために通せんぼしてたんだよぉ!ありがと〜〜!!」

 

さて、屋敷に戻ろう・・・

 

 

 

「ただいま・・・」

「おかえりなさいませ」

 

卵を台所に置いて部屋に戻ると

シャクナさんがジュースを用意して待ってくれていた。

 

「さあ、どうぞ」

「ありがとう・・・」

 

ごくっ、ごくっ、ごくっ・・・

 

「あ、トレオ様」

「ん?」

「私でしたら喜んで結婚いたしますから」

 

ぶっ!!

 

「けほけほけほ・・・」

「大丈夫ですか?はい、タオルでお拭きしますね」

「な、何をいきなり・・・」

 

びっくりした・・・

 

「トレオ様が皆様に求婚なさってらっしゃると思いまして、

それは結構、労力を使うものです、肉体的にも精神的にも。

トレオ様の事ですから皆さんほぼ同時に求婚なさるでしょう、

そうなるとその労力は大変な物です、それを私めのために負担して欲しくないのです、

ですから、まず私の方からこう言えば、トレオ様を煩わせる必要がなくなりますので」

 

ん・・・残ったジュースを飲んで落ち着く・・・

 

「ぷはあっ・・・ありがとう」

「喜んで結婚させていただきます!!」

「うん・・・シャクナさんがそれでいいなら」

 

ちょっと身も蓋も無いけど、まあいいか。

 

「でも、これだけはシャクナさんにしなきゃ」

「何でしょうか・・・?」

 

おもむろに唇を重ねる・・・

ビクッ、と驚いたシャクナさんだけど、

すぐに俺に身を任せる・・・きゃしゃだけど温かい体・・・

 

ちゅっ・・・ちゅぱっ・・・ちゅちゅっ・・・・・

 

俺はお礼の気持ちも込めて念入りにキスする・・・

ふっと唇を離したのはシャクナさんの方だった・・・

 

「トレオ様、ありがとうございます・・・」

「う、うん・・・」

「私はあくまで末席でかまいませんので・・・」

 

いじらしい、順番なんて決めるつもりないのに。

 

「シャクナさんはシャクナさんだから、他の人と比べる必要ないよ」

「しかし、身分が・・」

「ここでは身分は関係ないよ、みんな同じ俺の大切なひとだから」

 

ハッとした表情になるシャクナさん。

 

「すいません、トレオ様のお心をわずらわしてしまって」

「ん〜・・・シャクナさん」

「はい!?」

「好きだよ」

「・・・・はいっ、私も・・・」

 

赤くなった・・・かわいいな。

 

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