「リリさん!」
「まぁー、どうしたんですかー?」
「その・・・あ、それ!」
「はいー、お城から運んでいただいたミニバイオリンですー」
「楽譜もあるね、練習してたんだ」
椅子の上にバイオリンを置くリリさん。
「おかげさまでー、バイオリンの音色を再び聞くことができましたー」
「うん、そのバイオリン、リリさんがとっても大事にしてたってお城で聞いたから・・・」
「バイオリンも再会に喜んでおりますー」
真っ直ぐに俺を見つめてくれている・・・
「その、リリさん、それだけの腕前があるんだから、もっと多くの人の前で演奏した方が・・・」
「してますよー、白竜の皆さんが喜んで聞いてくださってますー」
「いや、その・・・地上で演奏したら、バイオリニストとしても・・・」
近づくリリさん。
「確かにー、お城では演奏会を開いたりもしてましたー、
でもー、私はー、今はー、聞いていただきたい方はひとりしかいませんー」
「リリさん・・・」
「何万人の民衆よりもー、ひとりの愛する人に聞いて欲しいのですー」
再び演奏するためか、バイオリンに手を伸ばす・・・
「待って!!」
俺の声に手を止めるリリさん、
今度は俺の方から歩き近づく。
「リリさん・・・俺にいつも綺麗な音色を聞かせてくれてありがとう、
それはまるでリリさんの心の美しさ、気持ちの純粋さを表してるようだよ・・
それで、じゃあ俺はリリさんに何を聞かせられるかっていうと、考えたけど、
楽器は駄目、歌も下手、詩も思い浮かばない・・・出来る事といったら心を込める事くらい・・
でも、何も聞かせられなかったら伝わらないよね?だから俺が今できる、せいいっぱいの言葉を聞いて欲しい・・・」
リリさんの手を握り見つめる俺・・・
「リリさん・・・俺と・・・・・結婚してください」
胸の奥から思いのたけを話した・・・
リリさんの表情は驚きと嬉しさと、色んな感情が入り混じって、
さらには涙まであふれ出している・・・
「うれしいですー、旦那様ー」
「リリさん・・リリさんが俺のために毎日演奏してくれるのと同じように、
俺も今日からリリさんのために毎日、愛を語る事にするよ・・・どうかな」
「はいー、よろこんでー、結婚を受けさせていただきますー」
・・・よかった、ちゃんとあらためてプロポーズして・・・
こんなに喜んでもらえるなんて・・俺の胸に甘えるリリさん・・・
その頭を頬擦りしてあげる、髪の香りが心地いい・・・気持ちいい・・・
「旦那様ー」
顔を上げて軽いキスをするリリさん。
俺も応えるように深いキスを求める、
そのまま俺とリリさんは時を忘れる無言の会話に浸っていった・・・・・
「今日の私は幸せですー」
「うん、俺も」
「ではー、次は小川の方へ行ってくださいー」
「え!?」
「私はー、しばらくここでぼーーーっとしていたいのでー」
なんだなんだ?
ま、まあいいか、とにかく促されるまま屋上を降りる、
家を出て小川のほうへ・・・あそこにいるのは・・・やっぱり!!
「ルルちゃん!」
「あっ、どうしたの?一緒に魚獲る?」
「えっと・・・うん、そうしよう」
動きの遅い魚を2人で捕まえる、
ここは天敵がいないからな、あえて言うなら人間くらいか、
だからあまり逃げようとしない、繁殖力も強いし・・・
「ほらっ、ぼーっとしないで、そっち行ったよ!」
「え?あ、来た!よし・・・っと、お、重い!でかい!うわっ!」
どっぼーん!!
俺はひっくり返って水びたしになってしまった・・・
「大丈夫?ごめん、無理だったみたいね」
「うん、俺もごめん、転んじゃって」
「ううん、私が悪いんだから・・ほらシャツ脱いで!体拭くから!」
持ってきてたタオルで背中を拭いてくれる・・・
「ズボンも脱いで!パンツも!」
「こ、こっちは自分でやるからいいよ!」
「今更何言ってんの!ほらほら!」
ルルちゃんの強引さに負けてしまった・・・
うぅ、いくらずっとHした相手とはいえ、はずかしい・・・
「ほらほら・・・こっちはもう見慣れたものなんだから」
「・・・ごめんね、ルルちゃん、魚も持ち上げられない程、弱くて・・・」
「だから、私が悪いんだから!あんなの無理、って私を怒ってよ!」
「そんな・・・どう考えても俺が弱い・・・」
「弱くなんかないって!!」
ゴシゴシゴシ!!
「痛い痛い!強い!」
「あ!ごめん・・・擦りすぎちゃった」
「・・・ヒリヒリする・・・」
すまなそうにしょげるルルちゃん・・・
しまった・・・そうだな、俺の想いを伝えなきゃ・・・
「・・・ルルちゃん」
「・・・・・な・に?」
「うん・・・もう俺、自分が弱いなんて言わない」
背中のルルちゃんがおでこを肩甲骨あたりにつけてきた・・・
「ルルちゃん言ったよね?俺は強いって・・・
俺、自分で弱い、弱くなった、って言う事で逃げてたと思う、
それに自分を弱いって言えば言うほど、本当に弱い人間なんだと思う、
自分の力を知るのは大事だけど、それより自分が認めて欲しい人が、
強い、って本心から思ってくれれば、それはきっと強いんだと思うし、強くなれると思う。
俺はルルちゃんが強いって認めてくれるんなら、認めてくれている限り強いんだろうし、
強くなれない体であっても、強くなる、元の体を取り戻す、って思い続ければ強くなれると思う、
そうやって出来た強い心は、誰にも負けず、愛する人を守り続ける事ができる・・・
ルルちゃんが昔言ってくれた言葉の意味が、最近ようやくわかったんだ、だから・・・だから・・・」
ぎゅうっと背中を抱きしめてくれるルルちゃん・・・
「だから・・・ルルちゃんのために強くなりたいから・・・
この先、一生、そばにいて欲しい・・・俺と結婚して欲しい・・・・・・」
背筋にルルちゃんの涙雨がぽたぽたとかかる・・・
「・・・・・ありがとう・・・アナタ・・・」
「ルルちゃん・・・」
俺の肩から顔をのばすルルちゃん、
それに応えようと首を曲げ唇を重ねる俺・・・
心と心が通じ合ったキスに唇がじんじんと震えた・・・・・
「うふふ、アナタ、顔が真っ赤」
「ルルちゃんだって・・・」
「風邪ひくよ?魚は私一人で持っていけるからサ、戻ってお風呂入ってきなよ」
「あ・・・そういえばそうだね、わかった」
「出たらアナタの部屋でよ〜く休むんだよ」
素直にいう事を聞いて屋敷に戻る、
体が冷え切らないうちにお風呂に入らないと・・・
心は温かいんだけど・・・まだドキドキしてるけど。
「はーっ、いいお湯だった」
「おかえりぃなさぁい!!」
風呂上りの俺を部屋で迎えていたのは、
元気いっぱいなレンちゃんだった、いつのまに・・・
「頭もっとぉ拭いた方がいいですよぉ」
「あ・・・ありがとう」
わしゃわしゃわしゃ・・・
「耳掃除もしてあげるぅ」
「あ・・そうだ、それよりレンちゃんに渡す物があるんだ」
「えー?なぁにぃ?」
俺はお城から持ってきた荷物の1つを出す・・・
「これ、覚えてるよね?」
「あ、これぇ・・・優勝カップぅ・・・」
「うん、そうだけど、よく見て」
レンちゃんがプレート部分に顔を近づけ、読み上げる。
「えーっとぉ・・・・・・第79回こくおぅ杯・全ダルトギアとーぎ選手けん・・・
ゆぅしょぉ・・・レン・・・トレオ・・・え〜〜〜〜〜っ!?」
「そう、優勝は俺と・・・レンちゃんだよ」
目を輝かせるレンちゃん!
「一緒に優勝だぁ!」
「そう、今の国王に頼んで彫り直してもらったんだ」
「うれしぃ〜〜〜!!」
ぎゅうっ、と抱きしめてる・・・
「ハプニカさまに見せてきますぅ」
「待って!レンちゃん、その前に大事な事があるんだ」
「ん〜?なぁにぃ?」
かわいい・・・
こんな少女にこれから俺は・・・
「レンちゃん、覚えてるかな、あの闘技トーナメント」
「うん!忘れてないですぅ」
「それで・・・優勝すると、出来うる限りの望みを叶えてもらえるっていう」
「ん〜〜・・・そうですぅ」
「それで・・・俺の望みを聞いて欲しいんだ、俺の優勝した望みは・・・」
膝をつき、レンちゃんと目線を合わせる・・・
「望みは・・・レンちゃんと結婚したい」
「!!!」
ゴトッ、と優勝カップを落とした・・・
みるみるうちに表情が崩れ泣き顔に・・・
そのまま俺の胸にすごい勢いでとび込んできた!!
「ほんとに・・・ほんとにぃー?」
「うん・・・本当だよ・・・いいかな?」
「もちろんですぅ!ゆめみたぁい!!」
めいっぱい喜びを体で表現してくれるレンちゃん、
これだけ喜んでくれると、こっちも嬉しくてたまらない。
「うれしぃ!うれしぃ!うれしぃよぉ!!」
涙を飛び散らかして・・・
体中の嬉しさが暴走してるみたいだ。
俺がちゃんとしっかり、全部受け止めてあげないと・・・
「レンちゃん・・・レンちゃんをお嫁さんにしたい・・・」
「んっとぉ・・・んっとぉ・・・んっとぉぉっ・・・」
ヒックヒック、えぐえぐと泣いてる・・・
でも必死に何かを言いたそうにしている、
落ち着けてあげないと・・・背中をやさしくさすってあげる・・・
「・・・・・レンもねぇ、お願いがあるのぉ・・・」
「お願い?」
「うん、優勝した、私が優勝した時のお願いぃ」
「何かな?俺でよければ叶えてあげるよ」
「・・・叶えられるのは・・・っ・・・だけぇ・・・」
唇を重ねてきたレンちゃん、かわいいキス・・・
舌が俺の口の中でチロチロと泳いでるみたいだ・・・
それを包み込むようなキスで応えてあげる・・・そして・・・
「・・・んっ・・・レンのお願いもねぇ・・・おんなじぃ」
「一緒?」
「うんっ・・・レンの・・・ご主人様・・・に・・レンの皇子様になってぇ」
「はは・・・うん、レンちゃんの皇子様になってあげる」
「けっこんしてぇ・・・」
夢中で激しく甘えるレンちゃん・・・
気が済むまで、ずっとこうしてあげよう・・・
「ご主人様ぁ」
「なんだい?」
「ご主人様はレンの皇子様、夫だけどぉ、みんなの皇子様でもあるんだよぉ」
「みんなって・・・ハプニカ様とかだよね?」
「うん!レン、ちゃんとわかってるからぁ」
結構ちゃんとわかってくれてるんだな・・・
「あー、そうだぁ、ご主人様ぁ、ミルちゃんわぁ〜?」
「え?ミルちゃん?」
「うん・・・戻ってこないのぉ、白竜さんとこ行ったままぁ」
「え?それほんと?」
「うん・・・探してきてくれるぅ?」
それは大変だ!
「うんわかった!」
「レンはおうちの中さがすねぇ」
「じゃあ、行ってくるよ!」
家を出て、ハプニカ様の白竜の巣へと向かった・・・
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