ぐんぐんぐんぐん空を昇り、

ちょっと前までマリーさんが手を振っていたお城がもう豆粒のよう・・・

俺の背中にはシャクナさんが、ぎゅうっと抱きついている。

 

「シャクナさん、寒くない?」

「いえ・・・トレオ様の背中があたたかいから・・・」

「そう・・・」

 

ちょっと照れる・・・

 

「うわ!角度が上がってきたからしっかり捕まってて!」

「はいっ!トレオ様となら、どこまででも!」

 

木の根元まで来た、後はそのまま行くだけだ!

さすがに直角にはならないよう白竜も気を使ってか

幹を旋回しながら昇っていく・・・もうすぐ・・・もうそろそろ・・・出た!!

 

「懐かしい・・・木の上だ」

「トレオ様、あんな所に大きな家が!」

「うん、あそこにみんな住んでるんだ・・・」

 

屋上に人影が見える、

あの長い髪と高い身長は間違いなくハプニカ様だ、

白竜は真っ直ぐにそこへ向かって降りて行く、近づいてくる・・・

 

バサバサバサ・・・

 

みんなも出てきた・・

屋上に降りて伏せる白竜、

俺は手綱を離すと荷物も持たずに飛び降りた!

 

「ハプニカ様!」

 

そのままハプニカ様の胸に飛び込む!

ああ、ほんの数日会わなかっただけなのに、

懐かしい・・・恋しい・・・心地良い・・・会いたかった・・・・・

 

「ど、どうしたというのだ?」

「ハプニカ様・・・好きです・・・大好きです・・・」

「なっ、何があったというのだ!?」

 

驚いてるみたいだ・・・

 

「ハプニカ様と離れてみて、一人でじっくり考えて、ようやくわかったんです、

俺が愛すべき人、俺が本当に愛する人に、どうするべきかという事を・・・

もう俺は迷いません、ハプニカ様、好きです、愛しています、どうか、今までの無礼を、

許してください・・これからはどんなことがあっても、ハプニカ様の、そして、

みんなのそばを勝手に離れたりしませんから・・・もう疑ったりもしませんから・・・」

 

ぎゅううっ、と抱き返してくれるハプニカ様、

腕は震え、俺の肩にぽたぽた暖かい滴が・・これは涙・・・

 

「ううぅ・・・そなたから・・そのような言葉が聞けるとは・・・

私は・・・どう感謝していいのか・・・謝るべきは私の方であるのに・・・」

「ハプニカ様・・・感謝するなら白竜にしてあげてください・・・

白竜が俺に気づかせてくれたようなものですから・・・」

 

振り返って見ると、

シャクナさんや他のみんなが荷物を降ろしている。

全部降ろすと白竜はこちらへ歩いてきてハプニカ様に擦り寄った・・・

 

「白竜よ、ご苦労であった、そなたをパートナーに持てて誇りに思うぞ」

「・・・・・クエッ」

 

満足そうな鳴き声とともに離れ、

バサバサと飛び上がる白竜、そのまま木の上へ・・・

家族の待つ巣へと戻っていった・・・そうだ、あれを渡さなきゃ。

 

「ハプニカ様、左手を出してもらえますか?」

「な・・・なんだ?どうした?」

 

俺は涙を拭いているハプニカ様の左手をそっと取る、

そしてポケットからあの箱を取り出す、中には2つの指輪・・・

 

「それは・・・!」

「ハプニカ様・・・俺、もうハプニカ様を守る力はありません、

でもハプニカ様が俺に、本当にそばにいて欲しいというのであれば、

私はハプニカ様の望む限り、そばにいようと思います・・・ですから・・・

その・・・その印に・・・俺と・・・結婚してください」

「・・・・・!!!」

 

涙が際限なくぼろぼろ流れ落ちるハプニカ様、

そっと左手の薬指に指輪をはめてあげる・・・

 

「もし、了承してくれるなら・・・俺にも・・・はめてください」

 

残った指輪の入った箱を渡すと、

しばらく見つめたのち、俺の左手を取り、

ゆっくり、ゆっくりと指輪をはめてくれた・・・

 

「嬉しいぞ・・・そなたと・・・こうし・・て・・・」

 

言葉に詰まり泣き続けるハプニカ様、すると・・・

 

ぱちぱちぱちぱちぱち・・・・・

 

まわりから拍手が!?

 

「おめでとうございます」

「おめでとうですー」

「おめでとっ!二人とも」

「おめでとうございますぅ」

「お姉さま、良かったですねっ」

「トレオ様、ハプニカ様、おめでとうございます」

 

みんな祝福してくれている・・・

俺はそっとハプニカ様の顔を持ち上げ、

涙でグシュグシュの目を見つめ、唇を重ねた・・・

 

 

 

 

 

「では、本当に・・・いいんですか?」

「ああ、私としても歓迎する、その方が良い」

 

ハプニカ様の部屋、

俺は甘いひとときを終えて話をしていた、

その内容は今後のこと、そう、これからそれをしに行く・・・

 

「それでは早速、行ってきます」

「なあに、心配する事はない、皆、自然に喜ぶであろう」

「はい・・・では・・・・・」

 

 

 

部屋を出て、まずは居間へ行く、

そこではララさんが洗濯物をたたんでいた・・・

 

「あの、ララさん」

「あ、はい、何でございましょうか?」

「その、聞いて欲しい事があるんだ・・・」

 

手を休めないララさん、

俺は座って、かまわず言葉を続ける。

 

「俺、もう心に決めたんだ、地上に降りて、考えさせられる事があって、

そこで色々思い出して・・・俺、実はみんなに甘えてたんだと思う、ああいう事があってこんな体になって、

それを、みんなの愛に応えない事で、あたりちらしてたんだと思うんだ、心の奥では、許さないけどもっと償え!って

みんなに命令していたみたいな・・・それって酷いことだよね、みんなの俺に対する苦しい気持ちを考えると。

まるで自分が傷ついた分、みんなに傷つく事を強要してたみたいで、それって男として恥ずかしいし、戦士としてもそう。

みんなが一番悲しむ、俺がいなくなるって事を必死でやろうとして・・・留守にしていた間、みんな心配してたと思う、

突然いなくなって、もう帰ってこないかもしれないって・・あれは俺も白竜に連れ去られたようなものなんだけれど、でも、

みんなと別れて地上でアバンスかどっかで一人で暮らそうって考えがあったのも確かなんだ、地上についた時、正直言って、

やった、逃げることが出来た!って喜んでたし・・・でも、みんなと別れて、そしたら急になんだか恋しくなって、

それは毎日受けた快感の禁断症状、中毒っていう部分を考えても、あきらかにそれ以上のものがあったんだ、みんなに対して・・・

ハプニカ様は本当に、真剣に俺を愛してくれている、それはもちろんララさんやみんなだってそうに違いない、っていう事を、

地上で思い知らされた、実感した・・・だから俺はもう、みんなとは離れたくないし、みんなの想いに応えたいと決めた。

ララさん、言ったよね?俺を、いままでのどんな戦い以上に命を賭けて愛してくれるって。それを受け止めるためには、

俺だって命をかけないと失礼だし、受け止めきれないと思う。そして受け入れると決めた以上、俺も覚悟を決めたんだ、

それで、ここへ戻ってきてまず、真っ先にハプニカ様にプロポーズしたんだけど・・その、俺、告白する順番がどうであれ、

第一王妃とか第二王妃とか、愛する人にランクを付ける事なんて出来ないんだ、もちろんまったくの平等っていうのは

不可能だと思うし、長くつきあっていくうちに偏りも出来ちゃうかもしれない、でも、でも一度俺と一緒になってくれるって

決めてくれた女性は、必ず一生、幸せにしてみせる・・それが何人であったとしても・・・だから、だからララさんに、今、

はっきりと言わせてください、これはハプニカ様も了承していますが、それに関係なく聞いて欲しい・・ララさん・・・ララさん・・・」

 

つばを飲み、一呼吸置いて、立ち上がる俺。

 

「ララさん・・・俺と結婚してください」

 

ぎゅうっと洗濯物を抱きしめるララさん、

そこにポツリ、ポツリ、と涙の粒が落ちる・・・

 

「・・・・ぅ・・・うれし・い・・・」

 

服を投げ出し俺の胸に飛び込み泣きじゃくる、

そっとその体を抱きしめてあげる・・・ララさんも抱き返す・・・

 

「・・うっ、嬉しいですわっ、そのような言葉をいただけるなんて・・・うぅっ・・・」

「ララさん、ララさん・・・」

「旦那様の方から、このようにきちんと求婚していただけるなんて・・・夢のようです」

「その、こういう事は、きちんと言っておいた方がいいと思いまして・・・ララさん・・・」

「あぁ・・・旦那さま・・・」

 

ララさんの顔をやさしく持ち上げる、

ここでしてあげる事は1つだ・・・と、

唇を近づけようと思った矢先、ララさんの方が唇を寄せてきた!?

 

んちゅっ・・・ちゅ・・・んちゅちゅ・・・・・

 

互いに目を閉じて浸るキス・・・

心に響いてくるキスな、暖かい・・・

情熱的すぎて熱いくらいだ、いつまでも終わらなさそうな・・・

 

「・・・・・んふっ、旦那さま・・・」

「ふぅ・・・ララさん、いきなり・・・」

「旦那様からプロポーズしていただいたのですもの、次は私からですわ」

 

干し終わったばかりの綺麗なタオルで口を拭いてくれるララさん。

 

「私の気持ち・・・受け取ってくださいますのですね?」

「うん、一生・・・幸せにしてみせるよ」

「私だけではなく、みんなの愛も受け入れてくださるのですわね?」

「もちろん、そのつもりだよ」

「ふふ・・・覚悟してくださいませ」

「えっ!?」

「1人と愛し合ってると他の皆の嫉妬も同時に受け入れなければならないのですわよ?」

「そ、そうだね・・・みんなと愛し合うからには、仕方ない事だから・・・」

 

俺の覚悟に満足そうなララさん、

手で涙を払って微笑みながら言う。

 

「では、次へ行ってくださいませ」

「次?」

「はい、確か・・・屋上にいたと思いますわ」

 

後ろに回りポン、と背中を押すララさん。

 

「さあ、私が嫉妬しないうちに!」

「あ・・・はい、じゃあ、行ってきます」

 

言われたまま部屋を出る・・・

屋上か、多分いるのは・・・きっと・・・・・

 

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