♪愛が〜あれば〜何でも〜できる〜♪

♪愛が〜あれば〜乗り越え〜られる〜♪

♪あなたは〜ペガサス〜私が愛した天使〜♪

♪あなたは〜ドラゴン〜私が愛した勇者〜♪

♪愛があ〜れ〜ば〜〜結ばれる〜〜〜〜〜♪♪

 

パチパチパチパチパチ・・・・・

 

「以上、第3幕・天馬と飛竜の恋、でした!

それではここで30分の休憩に入らせていただきます

なおVIP席の方には夕食が運ばれますのでお席の方で・・・」

 

ショーの前半が終わった、

さすが関係者から貰ったチケットだ、かなり前の席・・

とはいえ、さらに前でワインを飲みながら見てるテーブル席のVIP客が目に入り、

ちょっとうらやましく思える・・いや、結構うらやましい・・おなかすいたな・・・

お城に戻れば食事出してもらえるけど、俺はもう普通の身分なんだから、

売店で何か適当な食べ物を買ってそれで済まそう、

お城の食事は豪華すぎて困るから丁度いい断りになる・・

ついでにパンフレットも買おうかな、と席を立ち上がると・・・

 

「・・・いかがでしたか?」

「シャ、シャクナさん!?」

「もう、なかなか戻ってらっしゃらないと思ったら・・」

「どうして、ここが?」

「大変だったのですよ、色々と」

 

俺の手を引いて闘技場・・いや演劇場のロビーへと連れ出すシャクナさん、

人ごみをぬって衛兵が立つ豪華そうな入口へと・・赤いじゅうたんが引いてある・・

 

「ちょっと、こっちはVIP席のロビーじゃ?」

「はい、一般のロビーですと聞かれるとまずい話もありますので・・」

 

きらびやかなVIP用ロビー、

みんなおめかしして・・俺のこんな格好、地味すぎて浮いちゃうな、

召し使いらしい人だってちゃんとしたタキシード・・え?さらに奥へいくの?

 

「うわ!さらに厳重な入口、衛兵もこんなに・・・」

「ここは貴賓席です、この中なら何を話しても大丈夫ですよ」

「金のじゅうたん・・宝石の飾り・・目がチカチカする・・・」

 

ぐいぐい引っ張られて中へ・・

躊躇しても今や少女以下の力しかない俺はシャクナさんの思うがまま連れられる。

お城の来客室と遜色ないほどのゴージャスな貴賓席用ロビー、メイドさんがいっぱい・・

 

「あちらへ座りましょう」

「う、うん、ふかふかの椅子・・壁絵が綺麗だなあ、これはドラゴン・・」

「ここならトレオ様の正体がばれても平気な地位の方ばかりですからご安心ください」

「つまりお城の中と同じって事か・・」

「はい、とはいっても今日は来賓のお客様2家族だけのようですので」

 

こんなに広いのに・・

まあ、毎日やってるみたいだし、

それだけの地位にいると忙しくてあまり来れないのかも。

 

「トレオ様、あのような席にいらしてびっくりいたしました」

「チケット貰ったから・・シャクナさんはどうしてあの席だって気付いたの?」

「その事ですが、トレオ様が服をお返しした御婦人がお城に慌てていらっしゃって・・」

「え?あのおば・・お姉さんが?なんで?」

「謝礼のコートが高価すぎたうえに王家のマーク入りでしたから、びっくりなさって・・」

 

メイドさんがジュースを2つ持ってきた、

それをいただきゴクリと飲んで再び話をする。

 

「びっくりって・・高価すぎて受け取れない、とか?」

「というより、問い合わせのようでしたわ、あのお方は誰?っていう」

「なある・・・そんなにびっくりしなくても」

「本当に受け取っていいのかと・・こう言っては何ですが、盗品の可能性も疑ってらっしゃったようで」

「あ・・・そうか、俺みたいなのがあんな高価な物をプレゼントしたら、そりゃあ疑うよな」

 

ちょっと悪い事しちゃったな・・・

でもバニーさん、いや、シグリーヌ様がこれをって・・

 

「それで、あの御婦人にトレオ様へお渡ししたチケットの席を教えていただきまして・・

第1幕の途中からコッソリ警備させていただいてたのですよ、実は」

「そうか、どうりで立ち見客がこっちに密集してたと思ったら」

「御婦人にはしっかりご説明させていただきました、トレオ様の事をお聞きになって、

震えてらっしゃいましたので落ち着くようにシグリーヌ様直々にお礼を言わせていただきましたわ」

「そ、それは・・・よけい気絶しちゃうんじゃ・・・」

「ですからその件はもう心配ならさなくって大丈夫です」

 

目の前をガチャガチャと豪華な料理が通り過ぎて行く、

2つのワゴン・・来賓客用の豪華ディナーか、ぐうっ、とお腹が鳴りそうだ。

 

「そうだ、お弁当とパンフレット買いたかったんだ、シャクナさん、俺、一般のロビーへ戻るよ」

「そんな!もうすぐトレオ様のお食事が来ますから・・終わったらお土産も出ますから」

「だって俺のチケットは普通のだし、こんなすごい席で見る訳には・・」

 

ぎゅっ、と俺の手を掴むシャクナさん。

 

「・・・私の隣で・・私と一緒に観覧していただけないでしょうか?」

 

見つめられる・・・

綺麗でまっすぐな目・・・

瞳の中へ吸い込まれそう、クラッとくる・・

まるで魅了(チャーム)の魔法にかけられたみたいだ、

胸にドキッと刺激がはしる、さ、逆らえない・・でも、でも・・・

 

「でも、俺、せっかくもらったチケットを無駄にする訳には・・」

「そうですか・・では、こうしましょう!」

 

チケットをひょいっ、と取り上げ近くのメイドを呼ぶシャクナ。

 

「あなた、名前は?」

「は、はいっ、キャルと申します!」

「キャルさんに1つ指令を与えます、このチケットで客席へ行ってショーを楽しんできてください」

「はいっ?わ、私めがでございますか?」

「そうです、いつも大変でしょうから今日は特別に、最後まで楽しんできてください」

「でも、仕事が・・」

「今日は平日で来賓の数に比べてあきらかにメイドが余っています、それにこれは命令です」

「・・・シャクナ様がそうおっしゃられるなら・・」

「キャルさんですね、後でメイド長やバニー大臣には心配無く伝えておきますから」

「あ、ありがとうございます・・」

 

俺のチケット、近くのメイドさんにあげちゃったよ・・

 

「さ、トレオ様、これでチケットは無駄にはなりませんでした」

「う、うん、じゃ、じゃあ、お言葉に、甘えるよ・・ありがとう・・・」

 

ぎゅっ、と腕を組まれ立たされる、

貴賓観客席の方へぐいぐいとまたもや強引に・・

そうそう、シャクナさんって結構強引というか真は強い女性だったっけ。

 

「こちらにいたしましょう」

 

広い広いガラス貼りの観覧席、ちゃんとその外にはゴンドラ席がある、

寒かったり暑かったりすればガラスの内側でテーブルに座って食事しながらでも観れるし、

外へ出てより近くで観たければゴンドラへ・・どっちにしてもステージを見下ろす絶景席だ。

 

「そろそろ食事が来るはずです、座って待ちましょう」

 

真ん中の一際大きいテーブルに座る、

ちょっと離れた席では他の来賓家族2組が、

すでにおいしそうな鶏肉を頬張っている・・いいなぁ

 

「ようこそいらっしゃいました」

 

その声に顔を向ける、

綺麗で上品なメイド熟女が深々と頭を下げている・・・

 

「わたくし、当中央演劇場メイド総長のペネルクと申します」

「あ、はい、すいません、俺、いや、私、その、急に、来てしまって・・」

「わたくしどもは急なお客様に備えてすぐに食事や接待の準備が出来るようしておりますので、

何もご心配やお心を痛めるような事はありません、どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」

「ありがとう・・でも休憩時間に来ちゃって迷惑かなって思っちゃって・・」

「シグリーヌ様や大臣の皆様等が仕事を切り上げていらっしゃる事もありますので、

急なお客様は珍しい事ではございません、例え最後の1秒でもご覧にいらしていただければ、

その1秒のために最高のおもてなしをさせていただくのがわたくしどもの仕事でございます」

 

すごいなあ・・・

あ、ワインが来た、

まず俺に注がれる・・シャクナさんがメイド長に話し掛ける。

 

「ペネルクさん、メイドのキャルさんに、トレオ様の一般席チケットをお渡しして

観覧するよう命じました、トレオ様がチケットがもったいないとおっしゃるので」

「それはそれは・・トレオ様ありがとうございます、キャルには最後まで観覧したら、

御褒美をあげる事にしましょう、トレオ様とシャクナ様のお心づかい、感謝させていただきます」

「そんな、大袈裟だなぁ・・」

「とんでもない!トレオ様のためにキャルが指令を実行していますもの、

明日にでも昇進と臨時ボーナスとバカンス休暇を与える事にいたしますわ」

 

何もそこまで・・・わ、ワイン飲もう・・・

1口飲んだ所でやっと食事が来た、かなり豪勢だ!

 

「あ、もうあと10分しかないや、急いで食べなきゃ!シャクナさんも早く!」

「そんなに急がなくても・・食事しながらでも観れますから・・・ねえ、べネルクさん」

「はい、ずっと中でお酒をたしなみながら観覧なさるお方もいらっしゃいますわ」

 

もぐもぐ・・・おいしい・・・

よく考えたらスバランの木の上では魚肉以外の肉って食べなかったよな、

白竜の卵は別にして・・そう考えるとここにハプニカ様たちも招待したいなあ。

 

「おいしいおいしい!これならすぐに食べ終わっちゃうよ」

「あまり急いで食べると体に悪いですよ」

「平気平気・・シャクナさんはゆっくり食べてていいからね」

 

そうしているうちに第4幕がはじまった、

ここは休憩明けの喜劇みたいだ、かなり愉快。

 

「ぶわっは!あはははは・・・は・・あ、食べ物とばしちゃった・・・

ご、ごめん、こんな高級な席で・・マナーも何もなくって・・・あきれちゃった?」

「わ、私も教会の出といってもそんなに大きくありませんでしたから、いまだにマナーは・・」

 

メイド長・ペネルクが俺の口をナフキンでふいてくれる。

 

「細かい事はお気になさらなくても結構でございますわよ、おほほほほほ・・・」

 

さすがにちょっと顔をひきつらせてる・・・

家じゃないんだ、もうちょっと落ち着こう。

 

 

 

「ふう、ごちそうさま・・デザートも全部食べちゃった」

「私も・・劇も第4幕が終わって丁度、最終幕のようです」

「本当?じゃあゴンドラに出て見よう!」

 

外へ出る・・・

上から見るとたいまつの灯かりが劇場全体を包んで綺麗だ、

前の方の席へ・・あ、これは玉座?そうだ、懐かしい、これって確か、

闘技トーナメントの時にハプニカ様が座っていた場所だ、

ここから俺とレンちゃんの闘いを見てたんだっけ・・・ちょっと涙が・・

 

「トレオ様、こちらへどうぞ」

「ありがとうシャクナさん、さすがに玉座は座れないから隣のこのへんが丁度いいよ」

「・・・トレオ様、シャクナ様、パンフレットでございます」

 

ペネルクさんから渡してもらう・・

次の第5幕がすなわち最終幕、タイトルは・・・

『トレオとハプニカの物語』え、ええーーーっ!?

 

「シャクナさん、これって・・」

「たまたまです、本日の劇は恋愛がテーマですので、最後は国民全員が知っている、

あの絶対忘れてはならない悲劇の恋の物語を劇にしているんです」

 

そうなんだ、知らない間に・・・

会場を見渡す、あそこは確か俺が座ってたあたり・・

いたいたメイドさんだ、メイド服でお茶かなんか飲みながら・・ちょっと浮いてる。

 

「さあ、はじまります・・・」

 

ぎゅっ、と俺の手を握るシャクナさん、

顔を見ると赤らめて視線をステージへと逃がした、

俺も劇を見なきゃ・・でも、手はぎゅーっと握られたまま・・恥ずかしい。

 

灯かりが増えステージが明るくなる、

出てきた1人の男、司会者のあのおじさんだ。

 

「それでは只今より最終幕・トレオとハプニカの恋、

この劇を遠く旅出たれてしまわれたトレオ様とハプニカ様に捧げます、

切なく悲しいあの悲劇、繰り返さないためにもこの劇をしっかりと目に焼き付けましょう!ドーゾ!」

 

司会が引っ込んで・・・

大きな甲冑に身を包んだ人が出てきた、

剣を持って・・あれはまさしく、あの時の、俺だ!

その反対側、高い高い櫓に灯かりがともる、そこにいるのは長髪の女性・・

ハプニカ様の役だろう、長身な所とか豪華な服装とかもそっくりそのままだ。

 

緊迫に満ちた笛の音が鳴り響く、

やがて音が小さくなって・・・観客も本当に静かだ。

と、甲冑の男が大きな剣を突き上げて大声を張り上げた。

 

「俺は戦う!!

愛する女王のために!

そして、世界の平和のために!!!」

 

ワーワーワーーー!!

 

なんだなんだ!?

一斉に四方八方から兵隊がやってきた!

そしてステージへ上がる・・・すごい数だ、何百人もいるぞ。

 

「シャクナさん!何がはじまるの?」

「伝説の999人斬りですわ、ご覧ください」

「ええ?じゃあ、あれ全部1人で相手を・・・!?」

 

主役の男が構える、

999人の兵隊も静かに構える!

静寂が会場を包み、そして・・・・・!!

 

ゴーーーーーン!!!

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