♪ダルトギ〜ア♪高地に咲く花〜♪

♪ズバランを舞う♪天馬が恋運び〜♪

♪ガルデスに〜♪白竜が幸せを〜呼ぶ〜♪

♪おお人々は歌い〜♪白銀を舞い〜♪

♪平和な街に春が〜♪春が訪れる〜♪

 

ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ・・・

 

 

あまりの光景に思わず叫んでしまった、

5つのステージ上では沢山のバニーガールが、

歌って踊っている・・・おしりふりふり、胸をぽよんぽよんさせて・・・

き、きわどい服のバニーもいるなあ、それにしてもこれはいったい・・・?

そうか、きっと闘いと闘いの間のショー・・にしては不自然なような・・・?

ぼーっとダンスに見とれる・・いいな・・これなら、これだけで客がとれる、

会場も満員なはずだ・・・お、第3ステージにかっこいい蝶ネクタイの紳士がいるぞ、

マイク持ってる・・・曲が終わった、会場はやんややんやの大拍手だ。

 

「ハーイ、オープニングソングは『ダルトギアの花咲く頃』でした、

続きましてはこの曲、ペガサスとバニーガールの共演『空を舞う兎』ドーゾ!」

 

ペガサスが舞い下りてきた!

そしてバニーガールと踊っている・・・

やはり、バニーの踊りがメインなのか?闘技場ってこんな事もやってたの・・か?

 

「やあ、お弁当を持ってきてくれたのかい?」

「あ、はい、ティドさんですか、どうぞ」

「ありがとう、顔を隠してるけど、知ってる人?」

「いえ、俺はたまたま頼まれただけで・・じゃ、じゃあ!」

「おい、君!!」

 

さすがにここで顔を出したらばれちゃう・・

なにせ俺の巨像がすぐそばにあるんだから・・・

闘技場から逃げる俺・・外へ出る、すると・・・!!

 

「うわ!」

 

出た所に衛兵がズラッと並んでる、10人ぐらい・・・

俺を待ってたみたいだ、2人が近づいてくる、恐い・・

 

「・・・トレオ様でいらっしゃいますね?」

「え?誰の事?」

「本名の方でお呼びさせていただいた方がよろしいですか?」

 

駄目だ、完全にばれてる・・・

 

「国王様がお待ちです、どうぞこちらへ・・・」

「え?国王様って・・・?」

「さあ、こちらの飛竜へ・・・」

 

ドラゴンへと半ば強制的に乗せられる、

国王様って・・・ハプニカ様?もう来ちゃったのか?

びゅーーんとガルデス城へ連れていかれる・・城の屋上へ・・

あ、白竜がいる!じゃあやっぱり・・?そばにいる小さな女性・・

白い服の少女・・ひょっとして、懐かしの・・・・・!?

 

「大変お久しぶりです、トレオ様」

「シャクナさん・・・」

「探しました、白竜がトレオ様らしき方を乗せて降りたと見張りから聞いて・・」

「その・・シャクナさん・・・」

「国王様がお待ちです、どうぞこちらへ」

 

少し微笑みながら俺を誘導するシャクナさん、

懐かしい城内・・衛兵が敬礼している・・もうすぐ玉間だ・・

 

「あの、国王様って・・・」

「トレオ様のご存知な方です」

「ハプニカ・・様?」

「いえ、ハプニカ様の後を受けて女王になられた方です」

「じゃあ、一体誰が・・ミルちゃん?」

 

王間の前についた、この扉の向こうにいるのは・・・?

 

「お連れいたしました・・・」

 

シャクナさんの言葉に扉が開く、

玉座に座っているのは・・・え?まさか?でも・・え、嘘?

でも間違いなく・・・えええ?確かに知ってる方だけど、まさか・・えええええーーー???

 

「御無沙汰ですー、トレオ様ー」

「バニーさん!?!?!?」

 

そうだ、トーナメントでお世話になった、あのバニーさんだ!!

 

「私、シグリーヌ・シルヴィアって名前ですー、でもトレオ様にはあの時のように『バニーさん』でいいですよー」

「バニーさん・・間違いなく、あのバニーさん!?」

「はい、トレオ様がご存知のー、『あの』バニーさんですー」

 

びっくりした・・

あの闘技場といい、この女王といい・・・

一体この国に何があったというのだ???

 

「なぜ、バニーさんが国王に・・?」

「びっくりしましたー?私もびっくりしましたー」

「びっくりするよ!バニーガールの国王だなんて・・」

 

バニー国王・・・前代未聞だ。

きりっ、とした表情になりはっきりとした口調で話し出すバニーさん。

 

「3ヶ月前、ハプニカ様は王位の返上を申しだされました、

トレオ様がこの城を去った直後だそうです、愛する人が去ってしまい、

もう、何もできぬ、何もしたくない、と・・・大臣の皆さんは猛烈に引き止めました、

しかし、ハプニカ様はもうこれは、時間が解決するような問題ではない、

他に心の支えになるものなど絶対にない、と譲りませんでした、そして、

そうと決まった以上、国民に期待を持たせ続ける事はできない、と・・・」

 

シャクナさんも真剣なまなざしで言う。

 

「私はその頃、丁度教会で荷造りをしていました、国を出るために・・・

するとお城から、夕方に重大発表があるとおふれが・・ハプニカ様退位の演説があると・・

それを聞いた私ははじめ喜びました、ああ、やっとトレオ様がわかってくださった、

ハプニカ様にかわって国王に・・てっきりその結婚報告だとばかり・・・」

 

バニーさんが玉座から立ち上がる。

 

「内情を知らなかった私も、これは結婚発表だとばかり・・

国民みんながそう思っていたはずです、実際、お城に集まった皆は歓喜の表情に溢れていました、

そこへハプニカ様が表れたのです、隣にはトレオ様ではなく、ミル様を連れて・・・」

 

窓際に立つバニーさん。

 

「皆よ、よく聞いてほしい!!」

 

低い声で、まるでハプニカ様そのもののような口調で外へ語り出す・・

 

「世界を救い、この国を救ったあのお方はもう、ここにはいない!!

身も心も傷つき疲れ、愛想を尽かして出ていかれてしまったのだ・・これは私の責任だ!

よって、私は愛するあの方を追ってミルとともにこの国を去る!そしてできれば、あのお方を守り続けるつもりだ!

あのお方を1人にはできぬ、すでに私の親衛隊も、私に愛想を尽かしてあの方を追って飛び出して行った・・皆も私に愛想をつかして欲しい!

私がいればまた、いつ争いがおきるかもしれぬ、だからこそ、争いの種となる私はこの国を去る!

私がいる限り、自由になったあのお方も狙われる可能性がある・・私が王でいる限り・・・

これも私が、そして父がこの国を闘いの国にしてしまった責任だ・・だからこそ、去ってきれいにしたい・・・

あとは皆で・・・決して争いの無い国を、知恵を出し合って作って欲しい・・・

それが、あのお方にこの国を許してもらう唯一の方法だと思うからだ・・・」

 

つーーーっと涙を流すバニーさん・・・

 

「ミルも・・私と同じくあのお方を愛している・・・

私達2人は・・あのお方を追いかけて・・もしできれば・・

償わせてもらい・・そして、私の愛をぶつけるつもりだ・・

一生かかっても・・いや、一生、どんな事があろうと、あのお方を愛し続ける・・

そのために・・この国を去らせてもらう・・我が侭と言われてもかまわぬ!

もう、何にも邪魔されたくない!何も恐くはない!あのお方のためならば!!」

 

震えるバニーさん、感極まっている・・・

涙を腕でぬぐいながらこちらを振り返る・・・

 

「だいたいこのような演説でした、演説というほどのものではないですが・・

こう言い残すとハプニカ様はミル様と白竜に乗り、スバラン山脈の雲の上へと消えていきました、

残された私達国民はあまりの事にパニックになってしまいました、

英雄も、さらにはこの国唯一の支柱だったハプニカ様とその妹のミル様まで去ってしまった!

・・・ようやくここで気づいたのです、国民みんなが、何をどうするべきなのか・・・!!」

 

シャクナさんがハンカチをバニーさんに渡すと俺の方を向く。

 

「国民のほとんどが目を覚まして冷静になりました、まあ、中には、

ハプニカ様は責任逃れを言って逃げた、とか、本当はトレオは死んでたんじゃないか、とか・・

しかしハプニカ様を慕っていた国民はハプニカ様の涙ながらの演説を信じて、新しい国を作ろうと、

代表者を出し合って・・これもハプニカ様の残していかれた人徳というものだと思います、

あのトーナメントの事件から日がたっていたのも皆が冷静になれた1つでしょう。そして・・・」

 

再び玉座に座るバニーさん。

 

「残った大臣と国民の代表者で話し合った結果、決して争いの起きない国造りが始まったのです、

闘いが全てと言っても過言ではない国を全て変えるにはどうすればいいか・・・それがこの現状です、

私が国王に選ばれたのも、ハニーガールが国王になれば、嫌でも国は変わるでしょう」

 

シャクナさんがバニーさんのとなりに立つ。

 

「新しい国王になる人もただ国を変えるだけじゃなく、国王に相応しいそれなりの理由が必要でした、

そこであのトーナメントを思い出した時・・どう見ても悪役としか思えなかったトレオ様を、

1度も疑うことなく最初から最後まで助けた人物がいる事に気が付きました・・それがシグリーヌ・シルヴィア様、

トーナメントについていたバニーさんです。国民も納得してくれて、英雄を救ったバニーということで、

なんだか変に盛り上がってしまって・・ハプニカ様を無くした悲しみを打ち消すためだったのでしょうか・・」

 

バニーさんがハンカチを衛兵に渡し、シャクナさんを横目に見ながら話す。

 

「私についてくださる参謀は、シャクナさんをお願いしました、

私がそういう理由で国王になるのであれば、同じようにトレオ様を救ったシャクナさんにも、

同等の地位が必要だと・・私が国王になる条件としてお願いしました。

そしてこの国を、バニー国王による一大娯楽都市にしようということになり、

たくさんあった闘技場はそのままバニーガールショーのステージに、また、

天馬や飛竜も闘いのためではなく、ショーの踊りを教えたり観光客の空輸大増便に・・

宣伝効果もあって1ヶ月で噂は広まり、今では観光客の熱気でこの国の雪が全て解けてしまいそうですわ」

 

シャクナさんもバニーガールの耳をつける・・・

 

「シグリーヌさんのバニー国王によりダルトギアは闘いを捨てました、

とはいっても国が豊になれば将来、狙う国が出ないとも限りません、

それに観光客には、がらの悪い方もいます、普通の方でもお酒が入ると・・

闘いを捨てたからといって武力を無くした訳ではありません、ステージのショーはご覧になられました?

ああ見えて結構ハードなダンスなんですよ、しかもあの踊りの基礎にはこの国で昔から教えられる、

武術が隠されていますから・・飛竜や天馬との舞いも同じです、飛竜での闘いの特訓、また天馬そのものを鍛える事にも・・

いざとなればもう立派な戦力になります、まったく全て力を無に帰した訳ではないのです」

 

なるほど、ショーのダンスも立派な戦闘訓練を兼ねてるんだ、意識してなくても。

 

「すごいやバニーさん・・確かにこういう国にすれば華やかさが国全体に溢れて、

嫌な過去を忘れさせられる・・・争そいごとは起きないね、起こす気になれないや、

さらに万が一、戦争が起こってもバニーさんや飛竜・天馬はたっぷりと鍛えられている・・本当にすごいよ、

よく思いついたね、とても普通の国民とかでは考え付かない・・・バニーさんが考えたの?」

 

「いえ、私ではありません」

「じゃあ・・シャクナさん?」

「と、とんでもありません・・・」

「じゃあ、大臣?・・わかった!ハプニカ様か、俺と地上で別れた後の4姉妹が・・」

「いえ、大臣はあくまでもシグリーヌさんの命令に動くだけですし、

ハプニカ様は何も残さず去って行かれ、親衛隊の皆さんは戻られてからは、

トレオ様を追いかけるために、ずっと白竜に乗ろうと格闘なさって、私達の相手はまったくしてもらえませんでした、

助言を求めたのですが、もう関係無いと、お城にも入らずただ白竜に夢中で・・・」

「じゃ、じゃあ、この筋書きは一体誰が!?」

 

「それはワタシよ!!!」

 

玉座の後ろ、奥から張りのある女性の声が!

聞き覚えのある声だ・・奥から出てくる人影、体が細い・・

まさか・・でも、間違いなく、彼女は・・トーナメントで対戦した、あの!!

 

「マリー!F・マリーじゃないか!」

「久しぶりね、トレオさん」

 

マリー・・白く簡素な服にしなやかな身を包んでいる・・

うぅ、色っぽい声・・あの控え室での変態色仕掛け調教を思い出して勃起しちゃった・・

首には鎖付きの首輪をはめている・・鎖の先は繋がれてないんだけど・・

 

「マリーがなぜここに!?」

「償うためよ、この国と、アナタにね」

「私が説明させていただきます・・」

 

微笑むマリーの横からシャクナさんが語りはじめる。

 

「マリーさんはトーナメントが終わった数日後、トレオ様と闘った怪我からようやく意識を取り戻しました、

本来なら謀反の罪で死刑なのですが、実はマリーさんはハプニカ様と遠くない血の繋がりがある、王族の1人なんです」

「ええっ!?マリーさんが、このダルトギアの王族!?」

「はい、実は先の大戦中も、もし城が焼け落ちた場合に備え、この国を滅ぼさず血脈を守るために隠れてらっしゃったそうです」

 

マリーさん・・ただのあぶない人じゃなかったんだ。

 

「しかし、マリーさんはいつのまにかスロト等の暗殺部隊に洗脳されてしまっていて・・・

それでハプニカ様の命を狙ってしまったそうです、今ではすっかり洗脳も解け、改心なさっています」

「そうだったんだ・・よかった」

「普通なら死刑でもこの国では王族は全ての罪が免除される掟になっています、ですからマリーさんも、

罪に問われる事はありません、それでも極刑にするならば実行できるのはハプニカ様かミル様のみ・・

しかしハプニカ様は、マリーを許す、と・・マリーはその地位をスロトにただ利用されただけで、

立ち直れば必ずこの国に必要な人間となる、それよりもハプニカ様自身がトレオ様に許していただけるかが一番重要だと」

 

ハプニカ様、そんなに俺の事を・・!?

 

「とはいえマリーさんは重罪を起こした事に変わりありません、スロト等、首謀者はハプニカ様の精神が元に戻られた直後、

すぐにギロチンにかけられましたが、マリーさんだってトレオ様を瀕死にさせた・・まったく無罪放免にはできません、

城内でもマリーさんを生かす事に反発が強く、国民だって決して許さないでしょう、そこで・・」

 

シャクナさんを遮るように前に出るマリー。

 

「そこでワタシのコレって訳よ」

 

じゃらっ、と首輪に付いた鎖を持ち上げる。

 

「ワタシの今の地位はね・・・奴隷なのよ」

 

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