歌って踊っている・・・おしりふりふり、胸をぽよんぽよんさせて・・・
き、きわどい服のバニーもいるなあ、それにしてもこれはいったい・・・?
そうか、きっと闘いと闘いの間のショー・・にしては不自然なような・・・?
ぼーっとダンスに見とれる・・いいな・・これなら、これだけで客がとれる、
会場も満員なはずだ・・・お、第3ステージにかっこいい蝶ネクタイの紳士がいるぞ、
マイク持ってる・・・曲が終わった、会場はやんややんやの大拍手だ。
「ハーイ、オープニングソングは『ダルトギアの花咲く頃』でした、
続きましてはこの曲、ペガサスとバニーガールの共演『空を舞う兎』ドーゾ!」
やはり、バニーの踊りがメインなのか?闘技場ってこんな事もやってたの・・か?
あ、白竜がいる!じゃあやっぱり・・?そばにいる小さな女性・・
「探しました、白竜がトレオ様らしき方を乗せて降りたと見張りから聞いて・・」
でも間違いなく・・・えええ?確かに知ってる方だけど、まさか・・えええええーーー???
「私、シグリーヌ・シルヴィアって名前ですー、でもトレオ様にはあの時のように『バニーさん』でいいですよー」
きりっ、とした表情になりはっきりとした口調で話し出すバニーさん。
トレオ様がこの城を去った直後だそうです、愛する人が去ってしまい、
もう、何もできぬ、何もしたくない、と・・・大臣の皆さんは猛烈に引き止めました、
しかし、ハプニカ様はもうこれは、時間が解決するような問題ではない、
他に心の支えになるものなど絶対にない、と譲りませんでした、そして、
そうと決まった以上、国民に期待を持たせ続ける事はできない、と・・・」
「私はその頃、丁度教会で荷造りをしていました、国を出るために・・・
するとお城から、夕方に重大発表があるとおふれが・・ハプニカ様退位の演説があると・・
それを聞いた私ははじめ喜びました、ああ、やっとトレオ様がわかってくださった、
ハプニカ様にかわって国王に・・てっきりその結婚報告だとばかり・・・」
国民みんながそう思っていたはずです、実際、お城に集まった皆は歓喜の表情に溢れていました、
そこへハプニカ様が表れたのです、隣にはトレオ様ではなく、ミル様を連れて・・・」
低い声で、まるでハプニカ様そのもののような口調で外へ語り出す・・
「世界を救い、この国を救ったあのお方はもう、ここにはいない!!
身も心も傷つき疲れ、愛想を尽かして出ていかれてしまったのだ・・これは私の責任だ!
よって、私は愛するあの方を追ってミルとともにこの国を去る!そしてできれば、あのお方を守り続けるつもりだ!
あのお方を1人にはできぬ、すでに私の親衛隊も、私に愛想を尽かしてあの方を追って飛び出して行った・・皆も私に愛想をつかして欲しい!
私がいればまた、いつ争いがおきるかもしれぬ、だからこそ、争いの種となる私はこの国を去る!
私がいる限り、自由になったあのお方も狙われる可能性がある・・私が王でいる限り・・・
これも私が、そして父がこの国を闘いの国にしてしまった責任だ・・だからこそ、去ってきれいにしたい・・・
あとは皆で・・・決して争いの無い国を、知恵を出し合って作って欲しい・・・
それが、あのお方にこの国を許してもらう唯一の方法だと思うからだ・・・」
一生かかっても・・いや、一生、どんな事があろうと、あのお方を愛し続ける・・
そのために・・この国を去らせてもらう・・我が侭と言われてもかまわぬ!
もう、何にも邪魔されたくない!何も恐くはない!あのお方のためならば!!」
「だいたいこのような演説でした、演説というほどのものではないですが・・
こう言い残すとハプニカ様はミル様と白竜に乗り、スバラン山脈の雲の上へと消えていきました、
残された私達国民はあまりの事にパニックになってしまいました、
英雄も、さらにはこの国唯一の支柱だったハプニカ様とその妹のミル様まで去ってしまった!
・・・ようやくここで気づいたのです、国民みんなが、何をどうするべきなのか・・・!!」
「国民のほとんどが目を覚まして冷静になりました、まあ、中には、
ハプニカ様は責任逃れを言って逃げた、とか、本当はトレオは死んでたんじゃないか、とか・・
しかしハプニカ様を慕っていた国民はハプニカ様の涙ながらの演説を信じて、新しい国を作ろうと、
代表者を出し合って・・これもハプニカ様の残していかれた人徳というものだと思います、
あのトーナメントの事件から日がたっていたのも皆が冷静になれた1つでしょう。そして・・・」
「残った大臣と国民の代表者で話し合った結果、決して争いの起きない国造りが始まったのです、
闘いが全てと言っても過言ではない国を全て変えるにはどうすればいいか・・・それがこの現状です、
私が国王に選ばれたのも、ハニーガールが国王になれば、嫌でも国は変わるでしょう」
「新しい国王になる人もただ国を変えるだけじゃなく、国王に相応しいそれなりの理由が必要でした、
そこであのトーナメントを思い出した時・・どう見ても悪役としか思えなかったトレオ様を、
1度も疑うことなく最初から最後まで助けた人物がいる事に気が付きました・・それがシグリーヌ・シルヴィア様、
トーナメントについていたバニーさんです。国民も納得してくれて、英雄を救ったバニーということで、
なんだか変に盛り上がってしまって・・ハプニカ様を無くした悲しみを打ち消すためだったのでしょうか・・」
バニーさんがハンカチを衛兵に渡し、シャクナさんを横目に見ながら話す。
私がそういう理由で国王になるのであれば、同じようにトレオ様を救ったシャクナさんにも、
同等の地位が必要だと・・私が国王になる条件としてお願いしました。
そしてこの国を、バニー国王による一大娯楽都市にしようということになり、
たくさんあった闘技場はそのままバニーガールショーのステージに、また、
天馬や飛竜も闘いのためではなく、ショーの踊りを教えたり観光客の空輸大増便に・・
宣伝効果もあって1ヶ月で噂は広まり、今では観光客の熱気でこの国の雪が全て解けてしまいそうですわ」
「シグリーヌさんのバニー国王によりダルトギアは闘いを捨てました、
とはいっても国が豊になれば将来、狙う国が出ないとも限りません、
それに観光客には、がらの悪い方もいます、普通の方でもお酒が入ると・・
闘いを捨てたからといって武力を無くした訳ではありません、ステージのショーはご覧になられました?
ああ見えて結構ハードなダンスなんですよ、しかもあの踊りの基礎にはこの国で昔から教えられる、
武術が隠されていますから・・飛竜や天馬との舞いも同じです、飛竜での闘いの特訓、また天馬そのものを鍛える事にも・・
いざとなればもう立派な戦力になります、まったく全て力を無に帰した訳ではないのです」
なるほど、ショーのダンスも立派な戦闘訓練を兼ねてるんだ、意識してなくても。
「すごいやバニーさん・・確かにこういう国にすれば華やかさが国全体に溢れて、
嫌な過去を忘れさせられる・・・争そいごとは起きないね、起こす気になれないや、
さらに万が一、戦争が起こってもバニーさんや飛竜・天馬はたっぷりと鍛えられている・・本当にすごいよ、
よく思いついたね、とても普通の国民とかでは考え付かない・・・バニーさんが考えたの?」
「じゃあ、大臣?・・わかった!ハプニカ様か、俺と地上で別れた後の4姉妹が・・」
「いえ、大臣はあくまでもシグリーヌさんの命令に動くだけですし、
ハプニカ様は何も残さず去って行かれ、親衛隊の皆さんは戻られてからは、
トレオ様を追いかけるために、ずっと白竜に乗ろうと格闘なさって、私達の相手はまったくしてもらえませんでした、
助言を求めたのですが、もう関係無いと、お城にも入らずただ白竜に夢中で・・・」
まさか・・でも、間違いなく、彼女は・・トーナメントで対戦した、あの!!
うぅ、色っぽい声・・あの控え室での変態色仕掛け調教を思い出して勃起しちゃった・・
首には鎖付きの首輪をはめている・・鎖の先は繋がれてないんだけど・・
「マリーさんはトーナメントが終わった数日後、トレオ様と闘った怪我からようやく意識を取り戻しました、
本来なら謀反の罪で死刑なのですが、実はマリーさんはハプニカ様と遠くない血の繋がりがある、王族の1人なんです」
「はい、実は先の大戦中も、もし城が焼け落ちた場合に備え、この国を滅ぼさず血脈を守るために隠れてらっしゃったそうです」
「しかし、マリーさんはいつのまにかスロト等の暗殺部隊に洗脳されてしまっていて・・・
それでハプニカ様の命を狙ってしまったそうです、今ではすっかり洗脳も解け、改心なさっています」
「普通なら死刑でもこの国では王族は全ての罪が免除される掟になっています、ですからマリーさんも、
罪に問われる事はありません、それでも極刑にするならば実行できるのはハプニカ様かミル様のみ・・
しかしハプニカ様は、マリーを許す、と・・マリーはその地位をスロトにただ利用されただけで、
立ち直れば必ずこの国に必要な人間となる、それよりもハプニカ様自身がトレオ様に許していただけるかが一番重要だと」
「とはいえマリーさんは重罪を起こした事に変わりありません、スロト等、首謀者はハプニカ様の精神が元に戻られた直後、
すぐにギロチンにかけられましたが、マリーさんだってトレオ様を瀕死にさせた・・まったく無罪放免にはできません、
城内でもマリーさんを生かす事に反発が強く、国民だって決して許さないでしょう、そこで・・」