びっくりした、突然・・こ、この白竜は、確かハプニカ様の・・・?
俺の前に着地して・・こ、この紫の実が、欲しいのか・・?手を伸ばして渡そうとすると・・・
これって、乗れって事か?俺に乗れと?だ、大丈夫かな・・でも、乗ってみよう。
あれよあれよとスバランの木から外へ・・そんな、急に・・・!!
白竜の行くがまま・・ああ、スバランの木があんなに遠くに・・・
どこへ行くんだろう・・でもまあ、もう戻れないってことは・・・あるかも・・
そんな、何も言わないままハプニカ様やみんなとお別れ?こんなにあっけなく?
それは・・嫌だ・・でも、でも、・・ど、どうなるんだろう・・俺はどこへ・・・・・?
今はさらに厚い服を着ないと凍えそうだ・・白竜は高度を下げていく・・・
思ったより白竜の上は快適だ、ハプニカ様に乗せてもらった時はたまに揺れたけど、
今はまったく揺れないというか・・ひょっとしたら白竜が気を使っている?わ!雲に突っ込む!
3ヶ月ぶりの地上だ・・どんどん近づく・・ん?闘技場が賑わっている?
しかも全ての闘技場が・・またあいかわらず闘いをしているのだろうか?俺の巨像もまだある・・・
飛び降りる俺・・寒い!寒いっ・・・ううう、寒いよおおーーー・・・・・
それよりこのままだと凍死しそうだ・・雪が今、降ってない分まだましかも知れないけど・・・
駄目だったら片っ端から家を尋ねれば・・・扉をノックする・・・
「とにかく、助けてもらえませんか?その・・お金とか持ってないんですが・・・」
確かに長袖とはいえシャツ1枚、身包みはがされたと思われてもおかしくない。
中に入ると赤ん坊の泣き声が聞こえる、お姉さん(と言っておこう)は慌ててそちらの方へ・・
おしめを変えている・・・暖かい室内、でも相変わらず空気は・・・うっ!
「この国、治安は良くなったはずなんだけどね、まだいるのね、そういうの・・」
「でも犯人は他の国の人かもしれないわね、一気に旅行客が増えたから・・」
「実は強盗とかそういうのにあった訳じゃないんです、なんていうか・・その・・・」
って、俺の顔は町中にあるじゃないか、英雄の像として・・やばい!
「いえ、風邪ではないです、どちらかというとお風呂、入りたいかも・・・」
気持ちいい・・せまいけど・・って、お城やあの別荘のお風呂と比べちゃ悪いか。
意識がはっきりする、いかにあのスバランの木の上の空気が特殊だったかよくわかる。
ハプニカ様・・今頃、俺がいなくなった事に気づいて慌ててるのかな・・・?
俺を癒してくれた・・一生懸命に・・3ヶ月も・・・3ヶ月・・ん?待てよ?
元は1週間で逃がしてくれるはずだったんじゃあ・・でも、延び延びになってしまった、
そしてこうして俺は自力で降りてきた・・白竜が来てくれなかったら、あそこにずっと囚われていたかもしれない。
そもそもハプニカ様は俺をこの地上から連れ去って、拉致したんだ!
しかも普通じゃ絶対に逃げられない天然の城壁、いや、天然の牢獄へと・・・
よくよく考えてみると、あの木から飛び降りようとしても白竜が助けてくれる、
って白竜たちが逃げないように監視してるって事じゃないか!?俺、騙されていた!?
よーく考えたらわかる事じゃないか・・でも、考えられなかった・・・
うまく言いくるめられて肉体に溺れさせられ拉致されていた事を、気づかなかった・・・
そこまで頭が回らなかったのも、あのおかしな空気のせいだ、スバランの木が出す、あの・・・
そうか、深く考えようとしても考えられなかった、疑う事ができなかったのは、あの木のせいだ!
どうりで俺の中で危険信号が鳴り響いていたはずだ・・それは最後に残った本心みたいなものだったのだろう。
お城に戻って俺を国王にしたに違いない!!あぶないあぶない・・
4姉妹だってきっと・・そう考えるとハプニカ様、白竜の調教というか操作に最後で失敗したな?
俺を白竜が自分の意志で逃がしてくれたんだから・・白竜に感謝しなくちゃ、それに都合が良い、
ハプニカ様は今、スバランの木の上・・・ここへ追いかけてくるには時間がかかるだろう、
白竜もまだこっちにいるかもしれない、ならなおさら・・・とにかく早く逃げた方がいいかも?
「うちの亭主にお弁当を持っていってほしいの、東3ステージまで。お願いできるかしら?」
「・・まあ、君に何があったか深くは聞かないけど、最近増えた観光客でたちの悪いのいたらすぐに通報するのよ」
「ううん、いいの、ただ治安はものすごくよくなったはずなのにこんな事があって、私も心配で・・」
「じゃ、じゃあお弁当持っていきますね!東闘技場の第3ステージかあ!よおし!色々ありがとうございました!」
「と、闘技場って、いつの話・・あ、行っちゃったわ・・・うーん、誰かに似てるのよねえ、誰かに・・・」
こんなに華やかだったっけ?華やかすぎるくらいだ・・えっと東闘技場は確か・・
ん?この道、昔通った覚えがあるぞ?そうだ、この先には確か・・あった、道具屋街だ、
体力や魔力の回復アイテムが並んでる・・やたら繁盛してる店があるぞ?あそこは確か・・え、ええ?
「はい、いらっしゃい、いらっしゃい、伝説の英雄・御用達の道具屋はこちらだよー」
「この国の救世主・英雄トレオが使ったのと同じエリクサーもあるよー、いらっしゃいー」
奥には・・あのおやじがいる!それと、エリクサーが展示されている?
英雄様には10分の1の値段で売ったけど、みんなは定価で買うんだぞー」
10分の1で売った?10倍だった記憶が・・しかも今の表示価格も普通のレートの倍だし・・
でも売れてる・・すごい勢いで・・あ、売り切れた・・店のおやじも相当儲けてるみたいだなー・・・
白く濁ったエリクサーが不良特売品としてクズみたいにしてワゴンにある・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・決めた!!
よくよく考えれば回復アイテムを売ってもらえた事実はあるんだ、
他の店じゃ売ってもらえなかったかもしれないし・・何よりあの時、俺は悪役に見られてたんだ、
そう思われても仕方ない立場だったし、正体も明かせなかった・・・
この店のおやじが取った行動を責められやしない、仕方がない事だ。
闘技場も全部埋まっていた・・そうか、闘技トーナメントか何かの真っ最中なんだなきっと。
この国の人はつくづく闘いが好きなんだろうな・・俺が像になったのも闘ったから・・・
弱くなった俺を見たらさぞかし幻滅する事だろう、とっととこの国から去らないと。
・・・やっとついた、東闘技場・・入場券は昼の部はまだ売ってるみたいだ、
夕方と夜の部は売り切れ・・昼の部?2回戦とか3回戦じゃなく?
ま、どっちにしろお金持ってないし・・通用口へ・・確かこっちだ。
「あのー・・お弁当を届けてくれと言われたんですが、第3ステージへこれを・・」
「もちろん!守衛さんもこの場所を離れる訳にはいかないでしょ?だから・・駄目?」
「ついでに見ていくといいわ、ティドさんも始まったら控え室に戻ると思うから」
ティドさんって闘うのかな?でもはじまったら戻るって審判?いや違う、
守衛かな?うーん・・ま、行けばわかるか、と控え室から会場を見ると・・・