毎日ハプニカ様は唇が切れるほど指笛で呼んだり、無理矢理乗ろうとしたり、
ミルちゃんが1から調教している小白竜が調教しきるのを待った方が早いかもしれない、
と思ったが大人の白竜になって地上まで降りられるほど成長するのはあと10年かかるとか・・・
とにかく、4姉妹が加わっての楽園の日々はまだ続く事になった。
「私が服を編んでいるのを見たら、ハプニカ様もきっと必死になって編むでしょね」
「ふふ、ハプニカ様はこういうの不得意ですけどね、私が来れてよかったですわ」
「でも・・・その、ハプニカ様よりもどちらが上手か、とかは考えたくないな・・・」
「わかりますわ、私だってハプニカ様のそばにずっと御仕えしておりましたから・・・」
「さあ終わりましたわ、では髭を剃らせていただきます、横に・・はい、私の膝枕に頭を・・・」
・・・少し聞いてくださいませ、私、旦那様に言い尽くせないほどの感謝をしています、
その無数の感謝の中の1つに・・・私に旦那様を愛するチャンスを与えてくだすった事があります、
それもハプニカ様と対等に・・・私は物心ついた頃からダルトギア皇族に尽くすよう教えられ、
9歳でハプニカ様の元へ付くようになりました、ハプニカ様にはその時から可愛がっていただいて、
まるで妹のように・・・実の妹であるミル様とは歳が10も離れておりますから、実際はミル様よりも、
私の方がハプニカ様の妹のようなものでした、そうしてずっとハプニカ様を尊敬し、お守りし、追いかけ・・・
ハプニカ様のために一生捧げる事を私は誇りに思い、それは当然だと思っていました、そして戦争が始まり、
私は妹たちとハプニカ様の側へ・・・私はハプニカ様の護衛とともに、もう1つの大きな役割を背負いました、
ハプニカ様を命懸けで守り続けるのは当然ながら、それでもハプニカ様が倒れてしまう事もありえます、
その時こそ、ハプニカ様のそばに一番長くいて、ハプニカ様の遺志・武術を一番受け継いでいる私が、
ハプニカ様の変わりになって闘いを続ける・・・ミル様は魔道師ですからハプニカ様の代わりはできません、
ですから私は第2のハプニカ様となる運命、そういう人生・・でもこれはハプニカ様に近づけても、決して
超える事はできないのです、ハプニカ様に学び、ハプニカ様が完璧であり、ハプニカ様に仕えているから・・・
しかしそんな私にも、ついにハプニカ様と対等に闘える時が来ました、それが旦那様、貴方なのです、
貴方の心を巡っての恋の闘い・・・ハプニカ様と私、どちらが旦那様を手に入れる事ができるのか、
どちらがより愛していただけるのか・・・対等とはいっても、ハプニカ様の方が99%有利でしょう、
私がハプニカ様に勝てる確率は1%ぐらい・・でもハプニカ様と競っているんですもの、それだけで、
私は嬉しいのです、それと同時に今までのどんな戦争より、一番真剣に、必死に闘えますわ、不思議です、
あれだけ死の恐怖と闘った戦争よりも、旦那様を奪われる方が恐いんですもの、この恋の闘いの方が、
戦争での生死を懸けた闘いより、もっと生死を懸けられる・・・それが嬉しいのです、ハプニカ様も、
当然、命を懸けて旦那様の心を狙っています、今までも隙あらばずっと狙っていたはずですわ、
そして私も・・・ハプニカ様は恋愛が苦手と申しましてもあの頭脳と学習能力、順応性、美貌、心、
全てを兼ねそろえております、時間があればあるほど恋愛にも強く、やがてすぐに無敵の強さを、
手に入れるでしょう、だからこそ私も負けないよいうに・・・こうしで旦那様を愛していると、
ハプニカ様への嫉妬心が沸いて、それが私を、ハプニカ様と闘っている実感として感じさせてくれます、
あのハプニカ様、一生追いつけないと思っていたハプニカ様と今、正しく対等に闘っている・・・
そのチャンスをくださって旦那様に、心から感謝し、必ず旦那様に愛していただくつもりです、
ハプニカ様よりも・・・ですから私の残りの人生は、旦那様に一生捧げるつもりでいます、一生・・・
どうか、どうか私の愛を受け取ってください、そしてできれば、ハプニカ様とずっと、競い合っていきたい・・
旦那様の元で・・・ハプニカ様と一緒に・・・・・永遠に・・・・・・・」
ララさんの言葉が本当なら、俺にふられる事は、まさに死を意味する・・・
はは、お、おおげさだなあ・・でも、ちっとも大袈裟に思えない・・・はは・・・
「うわ!おっきいハープ・・・でも埃まみれだ、リリさんも・・・」
「大変だったでしょう、こんなに重い物を・・・それよりお風呂に入らないと」
「いえー、今すぐにー・・少しでも早くご主人様にこの音色をー」
「私が一番得意なのは楽器ですー、ご主人様へ私の気持ちを伝える一番の方法なんですー、
少しでも早くご主人様へ私の気持ちを伝えたくてー・・ですからー、すぐに修理しますー」
弦を補修じはじめるリリさん、埃まみれのまま・・・あれ?手に包帯が?
「これはー・・ゆうべ木を削って笛を作ってたのですがー、失敗してー・・・
でもまた作り直してますからー、笛の音色ももうすぐお聞かせできますー」
「私が急ぎたいのですー、ご主人様に1音でも多く私の奏でる音色をー・・・
これが私の武器ですからー、でもご主人様が聞きたくないというのでしたらー・・
でもそうなると私は何もできなくなってしまいますー、困ってしまいますー、くすん」
「そんな!絶対聞くよ!絶対聞くからさ、リリさんがお風呂入ったあとに・・」
「かっこよかったなー、ブルジュでの闘い、他の奴とは違うと思ったよ」
「ううん、まだまだ誉め足りないよ!そういえばセルフ様とアナタが2人で・・・」
窓辺でぼーっとしている俺にずっと過去の闘いを誉めるルルちゃん。
「あ!ごめんごめん、そうそう、そうだった、大変だったでしょ?」
「ルルちゃん、誉めてくれるのは嬉しいんだけど・・あまり思い出したくないんだ」
「そう?でも自信持ってよ、あれだけの事を成し遂げたんだからさ、
力が無くなっちゃっても英雄の歴史は無くならないんだから、もっと誉められるべきだよ」
「ねえアナタ、強くなくなったから強いって言われたくないって言ってたでしょ?
でも、強くなくなっても強いよ、心は強さを取り戻せるからさ、そうすれば、
私たちの気持ちも、もっと素直に受けてもらえると思うんだ、だからアナタの心を癒し続けるよ、一生」
「それにしてもまた言っちゃうけど、あのトーナメントは本当に強かったよ、
正体隠さずに闘ってたら、見てた女は全員惚れてたよ、でもそうなるとライバル増えちゃう」
「勝ちだよ!アナタの勝ち。あんなルールないよ!本当にひどい・・・
私はアナタの優勝って決めたから、嫌だろうけど私の中では絶対優勝だから」
「・・決勝の後のこと深く思い出しちゃ駄目だよ、アナタが優勝して終わった、
引き替えに力を無くしちゃったけど・・でも英雄の中の英雄になったんだから、
何でも望みが叶うぐらいのさ。何か望みはない?地上には戻れるように頑張るけど」
「なっ!・・・そ、そうそう、武闘トーナメント・・・見たかったなあ」
「う、うん、ああいう華やかなトーナメント、じっくり1回戦からちゃんと観客として、
見れてたら本当に楽しかっただろうなーって・・暗殺部隊さえいなければ」
「もちろんあの時は自分が参加したかったんだけど、今となっては見てみたい」
ん?ルルちゃんとレンちゃんが向かい合って、間のミルちゃんが引いて・・?
ミルちゃんの合図とともに激しくぶつかり合うルルちゃんとレンちゃん!
そういえばルルちゃんも優勝経験あったっけ、ララさん、リリさんも。
それだけ本気の闘いだったんだ、ミルちゃんが治癒魔法かけてる・・・
起き上がった!大丈夫みたいだ、よかった・・ルルちゃんが館の中へと引き上げる、
レンちゃんも・・あれ?玄関の前に腰掛けた、ミルちゃんはまだそのままだし・・・
じっくり見てる余裕なんてなかったもんな、それが剣を交える・・・木の棒だけど。
レンちゃんは本来の武器は長槍なんだけど剣でも素早く的確さで勝負する、
それとは違ってララさんはパワープレーでもちろん速さもあって、
リリさんにしても無駄な動きが無く互角にやりながら一撃必殺を狙ってるようだ、
これは見ごたえがある・・どっちが勝つんだろうか?わくわくするなあ・・・
「あ、ルルちゃん!上がってきたんだ、頭打たれてたけど大丈夫?」
俺のとなりに来るルルちゃん、汗をかいてる、激しい戦いだったから・・・
「お姉様ー、やりますわねー」「リリ、あなたもなかなかですわっ!」
おお、レンちゃんが押している!?必死になって、攻めているっ!!!
ララさんはそれを一生懸命受けていて攻め返す余裕がないのか?後ずさりしてる、
このままレンちゃんが押し切ったりなんかすると、ひょっとして、ひょっとするかも!?
「ご主人様ー、負けてしまいましたー、お姉様は強かったですー」
「リリさん!怪我大丈夫?そ、それと、見て!レンちゃんが、ほら!」
「まあー、お姉様さすがですー、レンにまず好きなようにさせてますねー」
よくわからないや、昔なら気配というかオーラでわかったんだろうけど、
今の俺は力を無くして、そういう戦争で研ぎ澄まされた感覚まで無くしてしまったのだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ・・」「ほらレン!腰が入ってませんわよ!」
確かにララさんがレンちゃんに稽古をつけている、という気がしてきた、
そうだよな、長女と四女、実力の差は歴然・・・ん?レンちゃんが大きく身を引いた!?