戦いだけではなく、もっともっと、恋について勉強しておくべきであった・・・
もう後悔してもはじまらぬが・・せめて、せめてそなたへの想いの伝え方を・・・」
「・・ハプニカ様にはそんなの必要ないですよ、凛としたハプニカ様は、それだけで皆の心を引き付けます・・・」
「私には、そなたの心さえあれば、他にはいらぬ、他のものの心より、そなたの心だけが欲しいのだ・・
ここならば、そなたに守ってもらったり、そなたを守ったりする必要などない、完全に隔離された空の孤島だ、
あとはそなたの、今度は心を癒すのみ・・体がここまで治ったのだ、私が責任を持って、そなたの心を癒しきってみせる、
どうか、どうか私にもう1度だけ機会を与えてもらえぬか、我が侭で贅沢な願いである事はわかっておる、無礼な事も・・
だが、そなたのいない地獄に私はどうしても耐え切れぬのだ!どうか、どうか私に、哀れみを、与えてやって欲しい・・・・・」
ガクガクと震え、脅えている・・精神的に相当追いつめられてるようだ・・・
そ、そんなにも俺の事を!?これってもう、本当に、俺を愛しているとしか・・・
これが偽りであれば、相当な演技だ、いや、今までだってずっとそうだったかも、
ハプニカ様の反応があまりにも大戦の時のイメージとかけ離れ、感情を露にしすぎるぐらいだった、
俺の前で号泣したり、また俺に数々のHな事をしたり、あまりの事にこれは演技だと思わないと、
自分の中で説明がつかなかったが、今になってようやく、一連のハプニカ様の反応が、本気かもしれないと思えてきた・・・
だとすれば、俺の前だけで全てをさらけ感情を出していた事になるような・・・それも恐いほどの念だ。
・・・や、やっぱり信じられない、でも、ハプニカ様は現にこうやって自ら国を捨て、安全な場所へ俺を・・・
「ハプニカ様、もう泣かないでください・・ハプニカ様らしく、してください・・・」
「・・・そうか、わかったぞ、そなたは、そなたの思う私、が良いのであるな・・・」
「それがそなたの望みであったか・・・そういえばあの夜もそう言っておったしな・・・ようやく、今になってやっとわかった」
「ああ・・だが、もし子供ができても安心しろ、私がここで立派に育ててみせるからな」
白竜の声もほとんど聞こえなくなり、風による葉音が聞こえてくるだけ・・・
そんな木の上の別荘では暖かな食卓が広がっていた、俺の前に並べられたサラダや木の実、果物・・・
全てスバランの木から取れる物だという、そしてこの魚は・・・!?
「ん?それか、この木の中の川にも独特の魚が泳いでおってな、網で簡単に掬えるのだ」
それにこの木の実の量、本当に1つの木から成っているのが信じられない種類の多さ・・・
味はどうだろう・・全て美味ってハプニカ様は言っていたけれども・・・・・
「ここの食事に慣れると下での食べ物が物足りなくなるほどだ、濃厚な味わいであろう?」
「はい、どれもこれも地上にない味でとても美味・・いくらでも食べられそうです」
「そうか、実はいくらでもあるぞ・・どれ私もいただくとしよう、ミルも落ち着いて食べるがよい」
いや、ずっとこうだったはずだ、地上で、お城のみんなに世話してもらっていた時・・・
本当に暖かな「家庭」だったような気がする、それもただの家庭ではなく「新婚家庭」だったような気が・・・
それを素直に感じられなかったのは俺がずっと疑心を持っていたからだ、みんなに対して。
じゃあ、信じていたら・・・もっと素直になっていたらどうだろう・・・
そうしたら、みんなを悲しませずにすんでいた・・・のか?いや、でも・・・
う、ここに来てからどうも変だ、なんていうか、ずっと夢心地な空気とでも言おうか、
心のモヤモヤが晴らされるというか、癒されるというか・・スバランの木が出す空気の影響かもしれない、
自然と俺は身も心もほぐされていっているようだ、ハプニカ様やミルちゃんのおかげもあるんだろうけど・・・
「そうだ、6つあった大きいベットを組み合わせたらこうなった」
「ん・・・確かに広々として良いな、我ながら良い考えであった」
「どうしても一緒に寝たくてな、ミルもそうせがむので、3人一緒に寝るにはベットを集めた方がと思い・・気がつけばこうなった」
「そうなのぉ、1つのベットに3人は狭いからぁ、いっぱいあればいいなぁって」
「ミルはともかく、そなたに喜んでもらえて嬉しいぞ、運んだ甲斐があった」
大変だっただろう・・・そこまでして俺と一緒に寝たかったのか・・・
ハプニカ様に申し訳が無い気持ちが出てくる・・俺も手伝いたかった・・・
「ミル!!・・・そうであったな、すまぬ、そなたに一声かければよかったな」
まずい事を言ってしまったかもしれない、嫌味のように聞かれたかも・・・!?
ぽたっ、ぽたっ、と唾液が零れ落ちてシーツを汚す・・・あぁ、意識が白く・・なる・・・
やさしく手で頬や首筋、うなじをなでながら・・力が抜ける・・腕がぶらーんと・・・はぁぁ・・・
カクン、と首の力が抜ける俺・・なおも上になりむしゃぶるハプニカ様、唾液がどくどくと注がれる・・・
気持ちいい・・・心地よい快感・・このまま・・もう・・どうにでもして・・・・・
「おにいさまぁ・・好きぃ、だぁい好きぃ・・・うふふふふぅ・・・」
翌日、遅い朝食を食べ終えた俺はハプニカ様に誘われて別荘の屋上へ出た、
別荘自体が3階建てとはいえどかなり高い建物なため、塀のようになっている木の淵の外が見渡せる、
そこは360度、雲の海・・・本当にここは海に浮かぶ島のようだ、懐かしい・・・
俺は生まれ故郷のモアス島と思い出す、この雲の海に飛び込んでしまいたいほどに・・・
この絶景に心を奪われているとハプニカ様はそっと設置されてある大き目のハンモックに腰を下ろした。
ギシッ、ギシッと縄の音が揺れ、心地よいゆりかごのように・・・
モアス島とともに沈んだ母を思い出すようだ・・ハプニカ様の胸、やさしい香り・・・
「その安らいだ表情・・そなたは今まで、私に心から信頼した表情を見せてもらえなかった気がするのだ」
「ああ・・だが今、はじめてそなたの心から安らいだ表情を見た気がするのだ・・」
本当に俺を愛しているのか?本当は俺を心から愛してはいないのでは?と・・・
いくらハプニカ様や4姉妹たちと愛欲の宴を繰り広げても、心からの信頼、安らぎは無かったのかもしれない。
でも・・でもハプニカ様がこう言うということは、俺は今、ハプニカ様を信頼している・・・?
確かに俺はハプニカ様の胸の中でこうして素直に甘えている、この素直さは確かにはじめてかも・・・
「ああ・・それともこうして何も言わずただ、幸せに浸っているだけでも私は良いが・・」
時が止まっても良いと感じた、一生忘れないと誓った、あの人生最高の幸せ・・・
やわらかくも暖かい日差しの木陰でハプニカ様に愛でてもらっている・・・
まさに恋人同士のように・・まるで、まるで夢の世界のようだ・・・・・
少女の頃から白竜と遊んでいたこと、教育係に淡い恋心らしきものを抱いていた思い出・・・
はじめて武術大会で優勝した時の喜び、戦争が起きて母が殺された事、父や兄を止められなかった後悔・・・
楽しい事も悲しい事も、幼いときの事から俺と会ってからの事まで、何から何まで話そうとしてくれる・・・
地上にいた時はここまで話を聞く時間はなかった、本当に忙しそうだったから・・・
こう一生懸命、ハプニカ様に話してもらうと想いが伝わってくる・・俺への・・想いが・・・・・
やがて夕方になった・・スバランの木には沢山の白竜が戻ってくる・・・
そう、恐くさえ感じていた白竜も今や天使に見える、ハプニカ様にしてもそうだ、
完全無比の強い女性だと思っていたのに、こんなに甘い甘い女性だったなんて・・・・・
「でも・・その、幻想的すぎて・・幸せすぎて・・少し恐いです」
「ええ、その、ひょっとしたら俺はあの時・・実は目を覚ましていなくて、ずっと夢を見続けているんじゃないかと・・」
「そうです、ここがまさしく天国のような環境だから・・ひょっとして実はもう死ん・・・」
「夢であるものか・・そなたは今、現実に私の胸の中にいるのであるぞ・・・」
「夢ではない・・このぬくもり、夢にしてたまるものか・・夢で終わらせてたまるものか・・・」
ハプニカ様に抱きしめられる感触がいつもに増して心地よい・・・
ハプニカ様の想いが俺に伝わってくるようだ・・素直にそれを感じる・・・
この楽園では、俺はハプニカ様を・・・疑う事が、もう、できないかもしれない・・・・・