「嫌だって言っても無理矢理ついていくからな、もう決めたんだ」
「お守りしますぅ、街は危険でいっぱいですぅ、任せてくださぁい」
「ちょっと、君たちはハプニカ様を守る仕事があるじゃないか!」
「確かに私たちの家系はずっとこの国に仕える血を保ってまいりましたが・・・」
「身の回りの事は全部任せてくれよな、仕事も私たちでするからね」
「ハプニカ様には国民がついてますわ、私ども姉妹の役割は終わりにしてまいりました」
「ちゃんとミル様にお伝えしてきましたー、ハプニカ様にもお手紙をー」
「私たちの人生は私たちできめるよ、それに、じゃあ貴方は誰が守るんだ?」
「わかっております、これは私1個人としての判断であり、素直な今の気持ちです」
「もうハプニカ様とは関係ないよ、単なる女だから、好きになった男を追いかけるだけだから」
「お姉様たちには負けないのぉ、いっちばん好きになってもらうんだからぁ」
しかし目は輝いているような、顔をほんのり染めているような・・・
剣を装備してはいるが、単なる街娘にしか見えない格好だ、荷物もそんな感じ。
・・・確かにこの4人と一緒に旅立てば心強い、どこへ行っても安全だろうし、
また、身の回りの世話から何から全て面倒観てくれるだろう、でも・・・でも・・・!!
「お断りするよ、俺は1人で旅立つ、君たちはここに残ってほしい、
やっぱり俺に同情してるとしか思えない、俺がここを出て行く理由の1つに、
みんなを苦しめたくないんだ、俺がいると国民は、あの事件を思い出してしまう・・・
俺がどう思っていたとしても、俺がいる限り、ずっと罪の意識にさいまなれるだろう、
あの大きい像だってそうだよ・・・あれがある限り、みんな苦しい思いをするんじゃないかな・・・
だから、1日でも早く忘れてもらうために、俺はこの国を出るんだ、それが、
この事が起こってしまった原因である俺の出来る事なんだ、俺自身も忘れたいから・・・
それはこの城にも言える事なんだ、もちろん君たちにも・・・君たちを、もうこれ以上苦しめたくない、
俺がいれば、または、俺の側にいれば、君たちをずっと苦しめる事になるし、俺も心苦しい、だから・・・」
「別に私たち4人が代表して償おうというのではありません、もっと単純な事ですわ、
貴方様を、心の中から本当に、深く深く愛しているのです、この気持ちに偽りはありません、
そして、その愛さえあれば、お互いに愛し合えば、苦しみなどすぐに忘れてしまいますでしょう」
「もう何を言っても信じていただけないならー、あとはついていくしかー・・・
いつかわかっていただけたらー、必ず幸せになれますー、私もー、貴方もー」
「辛いことに目を背けてばかりいたら、また同じ事の繰り返しになっちゃうよ、
辛いんだったら癒させてよ、癒してみせるからさ、それで私たちも幸せになるんだから」
「私はぁ、貴方のことぉ考えるとぉ、胸がきゅんきゅんきゅんってなっちゃうんですぅ、
でも一緒に寝るとぉ、とっても胸が気持ち良くなるのぉ、これって愛ですぅ、絶対ぃ・・・」
「それは承知しておりますわ、ですから好きになっていただくだけです」
「私たちでー、いえー、私がー、お守りしますからー、ずっとー・・・」
「1度や2度ふられたからって、あきらめる女じゃないから、私は」
「さよならしませぇん、ぜったいにぃ、さよならじゃないですぅ」
ミルちゃんやシャクナさんにもお別れの挨拶をすればよかったかな・・・
いや、別れがつらくなるだけだ、伝言なんかも残さない方がいいだろう、
さらばガルデス城、さようなら、ハプニカ様、さようなら、みんな・・・ありがとう・・・・・
この国を出るまではちゃんと顔を隠しておいた方が良いだろう・・・
冬が目前に迫った朝の道を歩く・・・街の中に俺の像がそびえ立っている、闘技場前だ・・
懐かしい、バニーさんは元気だろうか、いろいろと思い出してしまう、マリーに調教された事まで・・
うっ、思い出すと軽く勃起してしまいそうだ、さっさと行こう・・・バニーさん、さようなら・・・・・
町外れに出た、ここからふもとへ通じる道を下れば国を出られる・・・
最後にもう一度、お城をよく見ておこう、と振り返る、おおきな城だ・・・
・・・って、あれ?俺から少し離れて4人の人影が・・・距離を置いて歩いてきてる!?
目が合った!気まずそうな4人・・・やっぱりついてきちゃってたんだ、あの4姉妹・・・
「私たち、もう帰る所がないからさ、どうしようかなーって歩いてただけだよ」
「そうだよ、やりたいようにやってるだけだからさ、もちろん私たちがどうするのも自由なんだし」
俺にはイルカや鯱と触れ合う方が、やっぱりいい・・・そうだな、海へ行こう。
どうしよう・・・そうだ、確かもう少し歩いた所に・・・あった、宿だ!
「ああ、もう寒くなってきたからね、みんな天馬でひとっとびさ」
かといって俺の持ち金は、さかのぼればあのトーナメントでシャクナさんに全部支払った、
今、持っている物で金になりそうなのは・・・な、ないよな、モアスのメダルももうないし・・・
どうしよう・・・かといってこんな寒い場所で野宿はつらい・・・ここは一軒家だし・・・
「実は・・・お金がなくなっちゃって・・あの、働かせてもらえませんか?」
「出来ることなら親切で泊めてあげたいけど、うちは宿屋だからね、それはどうしてもできないんだよ」
「こちらこそごめんよ・・・そうだ、確かいらなくなった毛布が・・・」
「すみません、今夜、宿の方を用意していただけますでしょうか?」
「会えて嬉しいですぅ、あれぇ?どうしたんですかぁ?困ってませんかぁ?」
「その、おばさん、お客さんが来たんだし、働くってことは・・・」
「はっ!あなた様たちは、ま、まさか、ハプニカ王妃様の、親衛隊じゃあ!?」
「気にすることないよ、この宿だって苦しいんだろ?もらってよ」
「何言ってるんだい失礼な!親衛隊の皆様が出してくださるんだよ!!」
「はい、それではお部屋にご案内させていただきますわ・・・ちょっとアナターーーーー!!」
4姉妹、本当に嬉しそう・・・俺はなーんか、はめられた気分・・・
そして隣り合わせの部屋へ・・・広い部屋だ、1人じゃもったいない・・・
・・・・・って、これって彼女たちの思うつぼなんじゃあないか!?
こうやって、こんな事が繰り返されていくうちに、俺がどんどんそれを受け入れていき、
ついには彼女たちの思うが侭になってしまう・・・まさに、言いなりに。
このままいけば自立する必要がないんだから・・・そして完全にそうなった時、
彼女たちが国へ、ガルデス城へ帰りたいと言ったら!?俺は・・・一緒に!??
そうか、そうに違いない、いや、多少違うかもしれないけど、でも、そんなところだろう、
じゃあ、どうすればいいんだろう・・・彼女たちをちゃんと断ち切らなきゃ・・・そうだ、けじめをつけよう。
「あの、今回は宿代を出していただきまして、ありがとうございました」
「そ、それで、俺、何もお返しする事ができません!本当に何もないので・・・」
「・・もしそれを本気で言うんだったら、私たちは貴方様に死ぬほど借りがあるよ」