まだスロトがあんな所にいるなんて・・・
途中でシャクナの身に何かが?
それともとりあってもらえなかったのか?
何はともあれ、どうすればいいんだ・・・
うーん・・・お、審判がやってきた。
「えー皆さん静粛に!これより特別ルールを申し上げます!」
特別ルール!?
「準決勝・フレシュ対トレオ戦において、トレオ選手は、
最終警告をしたにもかかわらず、度を越した闘いにより、
フレシュ選手に重傷を負わせました!それに対し協議した結果、
失格までは行かないものの、この戦いについてハンディを加すこととなりました!」
おいおい、またかよ、最後にして・・・
「まず武器の没収」
ひょい、と後ろから武器を衛兵に取り上げられた。
「そしてトレオ選手にかぎり『相手を殺してはならない』というルールの対象から外し、
トレオ選手の生死を問わない事といたします!これはトレオ選手の生死のみであって、
レン様、いや、レン選手に対してトレオ選手が殺そうとする事は決して許されません!!」
そんな・・・ひどすぎる・・・
このルールに観客は熱狂して喜んでいる・・・
ハプニカ様まで手を叩いている・・・そんな・・・そんな・・・
まるで・・・公開処刑みたいだ・・・こっちは素手で・・・あ、レンちゃんだ!
長いながーーい槍を持っている・・・レンちゃん得意の・・・
「これで思う存分やれるですぅ」
セコンドにはミルちゃんと残りの姉妹3人がついている・・・
「レンちゃーん!勝ったらお姉様からご褒美があるよー!」
「レン!この国のためにも、絶対勝たないといけませんわよー!」
「レンー!油断しちゃ駄目よー!じっくりやるのよー!」
「レン!殺していいんだからな!殺さないと勝てない相手だからな!」
「はーーーーーーーーーーい!!!!!」
レンちゃん・・・
大戦では4姉妹で攻撃してる所しか見た事がないが・・・
4人で一番力が劣るといってもそれはかなり高いレベルでの話だ・・・
俺が万全の状態で戦ったら・・・勝てる可能性は結構あったかもしれない・・・
でも、俺の今の状況じゃあ・・・勝ったら奇跡としか言いようがない・・・
何より、殺されるかもしれないんだ・・・!!
「トレオさん、悪く思わないでねぇ、ハプニカ様を殺そうと企むからですぅ」
ええっ!?
「もう知ってますよぉ、だからぁ・・・死刑でーーーす」
俺が・・・?
そんな馬鹿な!!
「おかしな事しようとするとぉ・・・まわり見てぇ」
ステージのまわりでは衛兵たちが槍を持って構えている・・・!!
「新しい王様はもう決まってるんですう、あなたなんか王様にはなれませぇん」
う・・・言いたいことは山ほどあるが、
ここで正体をばらすと・・・スロトが何するか・・・
シャクナは・・・シャクナさんはいったいどこへ・・・!?
「第79回国王杯全ダルトギア闘技選手権決勝戦、レン対トレオ、はじめ!!」
ゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!
ビュン!!
うわ!いきなり俺の横をレンの長槍が!
ビュン!ビュン!ビュン!
おわわ!
よ、よけるのでせいいっぱい・・・
というか、よけきれないぞこれは!!
バキィ!!
ガキィ!!
ボガッ!!
鎧が・・・次々とに砕かれていく・・・
いくつも穴が開いて・・・ダメージが・・・
「あー!ミイラ男みたーい!!」
全身に巻かれた包帯が覗かせる・・・
ううう、何とか勝たなきゃ・・・
そうだ!勝てばハプニカ様に近づける、その時スロトを・・・
よし!絶対に勝とう!これはハプニカ様を守るためでもある!
レンちゃんにはあとでアメ玉でもあげるとして・・・ふんぬ!!
「きゃあっっ!?」
長い槍の刃の部分を強引につかむ俺、
手を切らせながら槍を奪おうとするが・・・
「そうはいきませぇん!」
グサッ!!
「!!」
俺の腕と足を切り刻むレンちゃんの槍!
何度も突き、俺の腕・足の筋がズタズタに切られる!!
「・・・・・!!」
「黙ったままなのねぇ、やせがまん?」
う・・・泣き叫びたいほど痛い・・・
血がぶしゅぶしゅ吹き出してる・・・でも・・・
・・・でも・・・でいや!!
「ああん!!」
間合いを詰めレンちゃんの胸にケリを入れる!!
すぐさま間合いを取り構えるレンちゃん、
それに対し両脇で長い槍の刃の根本を挟む俺!!
「やるですねぇ」
「・・・・・」
膠着状態・・・
互いに動けず槍を自分のものにしようとふんばる・・・
うう・・・俺は出血がひどく・・・こうなると不利だが・・・
ハプニカ様のために・・・ハプニカ様・・・あれ?ハプニカ様の方が変だぞ?
何かさわがしい・・・あれは・・・スロトが・・・衛兵に・・・取り押さえられてる!!
やった!やったぞ!
スロトが取り押さえられてる!!
これで・・・これでハプニカ様は安全だ!
よーし、あとはレンちゃんに勝つだけだ・・・
こうなったら・・・いちかばちか・・・えーーーーーい!!
「きゃあああ!!」
俺は長槍を放しめいっぱい蹴り上げる!
槍が反対側へ大きくはじかれたと同時にレンちゃんに跳びかかった!
重い鎧とボロボロの体力からは考えられない渾身の、まさに最後の力で・・・!
しかし!!
ガキッ!
反対側を向いた槍の柄の部分が俺の兜に引っかかる!
クルッ!!
兜がくるりと180度回転し俺の目の前が真っ暗になった!!
「らっきぃい!!」
ビュン!!
大きく槍を反転させる風と音、そして・・・
グサッッッ!!!
槍が・・・俺の体を・・・貫いた・・・・・!!
そのまま・・・槍ごと横へ投げ出される俺・・・
ステージの外へ・・・放り投げられてしまった・・・!!
「そこまで!優勝者・レン!!」
歓喜の渦に包まれる会場・・・
俺はステージ外でなんとか立っているが投げ出された衝撃で兜が取れてしまった・・・
見上げるとそこには丁度、ゴンドラから身を乗り出すハプニカ様の顔が・・・
「へっへーん、これでハプニカ様にも誉めてもらえるですぅ」
顔を上げると審判に片手を上げてもらっているレンちゃん、嬉しそうだ・・・
・・・・・負けた・・・
俺の・・・負けだ・・・・・
再び見上げ、真上のハプニカ様を見る・・・
・・・目の前が真っ赤でどんな表情かわかんないや・・・
「トレオさん!!」
シャクナさんがあわててやってきた・・・
「ごめん、負けちゃった・・・」
「トレオさん!トレオさん!トレオさん!」
バニーさんも・・・
「うっ・・・」
バニーさん、気絶しちゃった・・・
レンちゃんもステージ上からやってきた・・・
「・・・え?嘘・・・ええ?え、えええぇぇ???」
「いやぁレンちゃん、ゆ、優勝・・・お、めで・・とう・・・強かった・よ・・・」
「ぇぇぇ・・・そんな・・・そ・・・そんな・・・ぇぇぇ・・・!?」
見上げてハプニカ様に声をかける。
「ハプニカ様・・・ぶざまな姿をお見せした事をおわび申し上げます・・・
優勝したらプロポーズしようと思いましたが・・・ご覧のとおりです・・・
・・・私は・・・・・去ります・・・・・」
歩こうとした瞬間、膝が落ちる、
ああ、ハプニカ様の前から消えようと思ったのに、倒れるなんて・・・
と思ったが倒れない・・・下を向くと・・鎧を・・・槍がささったまま貫いていて・・・
倒れようにもつっかかって倒れられない・・・おびただしい量の血が流れてる・・・
ははは・・・これは・・・びっくりするはずだ・・・真横へ倒れる俺・・・
「・・・アハ、アハ、ハーッハッハッハッハッハ!アハハハハハ・・・」
薄れゆく意識の中・・・
ハプニカ様の笑い声が聞こえる・・・
「アハハハハハ!見ろ!見ろあれを!アーッハッハッハッハッハ!!!」
笑われてる・・・ぶざまだなあ・・・かっこわるい・・・
俺って情けないよ・・・最後の最後で・・・愛する人を・・・
手に・・・できなかっ・・・・・た・・・・・
「アハハ・・・ハハ・・・なん・・・わ・・・が・・・愛・・・ハーハハハ・・・・・」
闇の中にいる。
俺は・・・死んだのだろう。
ああ、人間、欲張るとろくな事がないというか・・・
身分不相応なハプニカ様に手をだそうとしたばかりに・・・
でも・・・ハプニカ様の命を守れたんだから・・・本望だよな・・・
「・・・まて」
「お前は・・・ジャイラフ!」
目の前にハプニカ様の父・ジャイラフがいる!
「・・・待ってくれ」
「そっちは・・・ジャヴァー!!」
今度はハプニカ様の兄・ジャヴァー!
2人とも大戦でハプニカ様が自ら倒した敵・・・!!
「頼む・・・こちらには来ないでくれ」
「ああ・・・お願いだ・・」
「!?」
な、なんなんだ!?
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