と同時に僕の上半身がすっかり温かさに包まれているのがわかる、
こめかみを押さえながら顔をあげると・・・霧子さんが僕を抱きしめたまま、寝てる!?
いつからだろう、昨日は意識朦朧だったから、気付いてなくてもおかしくない。
う〜・・・まだ頭はクラクラするものの、昨日の激痛から二日酔い程度にまで治まってきてる。
あ、霧子さんの姿、いつのまにか寝間着に・・・しかも、パジャマまでメイド風だ、まあ透け透けのネグリジェとかじゃなくて良かった。
霧子「んっ・・・・・お客様ぁ・・・午後の・・紅茶でございます・・・」
うっ、膀胱がそろそろヤバイ、ついでに大腸も・・・さっさとトイレに入ろう。
そういう癒しのオーラを持っていそうだから・・・喉も渇いてる、ロビーで水だ。
僕「・・・・・あった、んぐ・・んぐ・・んぐ・・んぐぐ・・・・・ぷはぁーっ」
僕「これか?『強盗殺人犯4人、全裸で謎の凍死』凄い見出しだな」
エンジンが切れて凍死、これはわかる、でも、全員が衣服を車内に脱いでおり、って・・・
専門家のコメントが載ってる、東京砂丘病院の羽生園綾麗院長のコメント、ってすごい名前だなおい。
僕「なになに・・・雪山ではまれに遭難者が全裸で発見される珍しい事が起きるが説明はつく、
体温が下がりすぎると血液が早く流れすぎ、暑さを感じて服を脱ぐ行動は専門用語で
paradoxical undressingといい、一種の幻覚のようなもので、犯人たちは精神的に追い詰められた事もあり、
集団催眠のような形で全員が服を脱いだのではないか、奇異に見えるがありえない話でもない、か・・・」
・・・・・あれ?よく考えてみれば、夢に出てきたのも4人だよな?
で、実際に見つかった死体も4人・・・一致する・・・あたた、まだ頭が急にズキンとくる。
まあ、このくらいの数字なら、合ってもおかしくないけど・・・そういえば夕方に見つけた薬莢ってまだあるかな?
僕「確かこのあたりに・・・ない、このソファーの下から出てきたんだよな?」
よく探してみるけど、そんなものは最初からなかったかのよう・・・
見つけた時にポケットにでも入れておけばよかった、もしやあれも夢?
そんな筈は・・・眼鏡の件といい、なーんか違和感・・・まあ、夢で折れた歯とか出てきたら決定的だけど・・・
あの胸の中に戻るのは勇気がいる、でも、このロビーだって結構寒いぞ。
そっとそっと近くへ・・・寝顔もセクシー、と同時にかわいくも感じる。
別に悪くはないけど意外だ、もしくは違法な薬でも吸って・・・そんな訳ないか。
僕「眼鏡かけたまま寝たら、寝返りで曲がっちゃいますよ・・・」
僕「んんん・・・・・ふぁああぁぁ・・・おは・・・あつつつつ・・・」
霧子「まだ頭痛が残ってらっしゃるようですわね、でも今日はお医者様がお見えになられますから」
あとはホットミルク・・・思わずお腹がぎゅるるるる、と鳴った。
霧子「多めに作ってありますから、昨日はおかゆ1食だけでしたので」
僕「ん・・・んぐ・・・むぐむぐ・・・おいしいっ!すっごくおいしい!」
あ、こっちなんかローストビーフが!一気に昨日の食べてない分もいただいちゃおう!
霧子「あんまり急いで食べると喉が詰まりますから・・はいミルク」
僕「あり・・・んぐぐ・・っがっ・・・むしゃむしゃ・・・とうっ!!」
霧子「お食事は逃げませんから!お昼も多く用意します、お夕食は・・・鍋なんかいかがですか?」
栄養をしっかり取れば風邪も明日には治るだろう、そうだ、1時間くらいなら、
絵の続きをやっても平気かな?お医者さんにちゃんとした鎮痛剤を貰えば・・・そうだな。
僕「じゃあお昼には来れるのかな・・・時間があったらちょっと出るよ」
僕「絵の続きだけど・・・ほら、丸一日、描いてなかったから、さすがに2日連続は・・・」
僕「う、うん、まあ・・・大丈夫だよ!逆に絵の続きを始めたら、気が張って頭痛も治まるかも」
霧子「ご無理はなさらないでください、あの・・・軽い頭痛でも、甘く見るのは危険だと・・・」
霧子「は、はひっ!?は、はわわ、は、はいいっ、なんでしょうかぁ!!」
僕「わかりやすすぎる反応ですね・・・僕の症状、心当たりがあるんですね!?」
僕「正直に教えてください、僕は一体、どうなってるんですか!?」
霧子「はい、実は・・・本当のことを申し上げますと、おとといの夜・・・」
僕「露天風呂で霧子さんに鉢合わせした時ですよね?そのあと、何があったんですか!?」
霧子「夜中の2時くらいでしょうか、西の方角から眩しい光が見えたんです」
霧子「いえ、もっと上、オーロラが輝く空から、大きな大きな流れ星が・・・」
霧子「私も最初そう思いました、でもそれが段々とはっきりしてきて、気がついたときには、このペンションの真上に・・・!」
霧子「外へ出て見上げると、キーンと高い音を響かせた、葉巻型のUFOが浮いていたのですわ!」
霧子「そして、スポットライトのような光がペンションの中へ入っていったかと思ったら、なんと・・・屋根を通り抜けてお客様が吸い込まれていったのです!」
霧子「はい、絵にしますと・・・すらすら・・・こんな感じですわ」
霧子「宇宙からの電波が頭痛を引き起こしているのだと思います!」
霧子「まあ、お客様ですわ、きっとお医者様です!ふざけるのはこれくらいにしましょう」