待っていてとは言われたものの、

さすがに食事直後では失礼だと歯を磨きに行った。

戻るとすでに霧子さんと、白衣を着た女医さんが待ってくれていた。

 

僕「あ・・・おはようございます」

霧子「お医者様の、服部先生です」

女医「初めまして、札幌砂丘病院の服部真亜子と申します、では座ってください」

☆服部真亜子☆

ベッドに腰をかけて服部先生と向かい合う、

美人だ・・・ウェーブのかかった長い髪に、大きな眼鏡。

霧子さんに負けないくらいの大きな胸、白衣が邪魔で膨らみをよく見れないのが残念だ。

 

女医「それでは診察をさせていただきます」

僕「はい、変な頭痛が2日くらい続いてまして・・・」

女医「ではまずは、上半身を脱いでください、そして背中から」

 

言われた通りに脱いで、

ベットに上がり正座して背中を見せる。

冷たい感触がぴとっ、とついた、聴診器をあてているのだろう。

 

女医「次はこちらを・・・この体温計を挟んでください」

僕「はい・・・いつつ・・・頭痛に波があるみたいです」

女医「では深呼吸をして・・・はい・・・吸って・・・吐いて・・・」

 

胸にも冷たい感触・・・

服部先生、美人だけど、なんていうか、かっこいいタイプだ、

働く女っていうか、そう思うとちょっと性格きつそうかな?逆に怒られてみたいかも。

 

女医「はい、では口をあけて・・・」

僕「はい・・・あててて・・・頭が・・・」

女医「んー、我慢して口を大きく、はい、あーん・・・」

 

続いて目じりを下げられ、じーっと見られる。

瞳を見つめられる・・・服部先生の目に吸い込まれそうだ・・・

かっこいい彼氏や旦那さんがいそうだ、プロゴルファーとかプロスキーヤーとかの。

 

ピピピピピッ

 

霧子「体温計を・・・まあ、37度1分」

女医「では目を瞑ってください、良いと言うまで明けては駄目ですから」

僕「はい・・・こうですか?」

 

頭に手のひらの感触が・・・

おでこにも・・・あ、何か暖かい、

ぽわーんと、赤外線でもあてられてるみたいだ、

でも手からはそんなものは出ないよな?体温が高いのかな?

続いて後頭部に・・・何だか心地よい、「手当て」って言うだけの事はあるな。

 

女医「最後に・・・痛かったら言ってくださいね」

僕「はい・・・・あう!首の後ろがちょっと・・・」

女医「ここですか?この筋ですか?このあたりですか?」

 

首の後ろや付け根を揉まれている、

痛くて気持ちがいい、頭痛が解きほぐされるよう・・・

今度は両手でつぼを押すように、うなじを上から下へ・・・

 

女医「・・・そうですね、間違いないでしょう、原因がわかりました」

僕「あの、もう目を開けていいですか?」

霧子「それで、お客様の病気は、何だったのでしょうか!?」

 

取り出したカルテにメモを書きながら答える。

 

女医「偏頭痛の原因は、頚椎捻挫です」

僕「ええっ!?く、首ですか!?」

霧子「それって、ムチウチ症ですわよね?」

 

シップを取り出した女医さん。

 

女医「頭痛以外に、目まいや吐き気はありましたか?」

僕「あ、目まいならかなりあります、吐き気は・・・食事あまり取れてなかったから」

霧子「お客様、頭をどこかにぶつけたりなさったのですか?」

僕「いえ全然・・・普通に寝て、起きたら頭がガンガン・・・でも首が痛いって自覚は・・・」

霧子「頭痛の方が酷いと首の痛みが隠されてしまうものです、お仕事は何をされているのですか?」

 

首の後ろにシップが貼られた、ち、ちべたい・・・

 

僕「風景画を・・・ですから外でずっと座ってます」

女医「それですね、絵を描かれる時、景色とキャンパスを交互によく見るでしょう」

僕「ええもちろん、でも腰が疲れたと思うことはあっても、首は特には・・・」

女医「それも腰にばかり気が行っていたからでしょう、長年の疲労の蓄積ですね」

僕「それって、こんなに急に来るものなんですか!?」

 

冷やしたタオルを後頭部にあててくれる霧子さん。

冷静に淡々と説明する女医さん、カルテにさらに何かを書いている。

 

女医「こちらの温泉では、よく首まで浸かりましたか?」

僕「ええっと・・・あ!あの夜は、出たり入ったりしてたから・・・」

女医「では首は冷えて、硬くなっていたのでしょう、それでおそらく寝違えたと思われます」

僕「寝違え・・・確かに酷い悪夢を見たから、首を激しく振っててもおかしくは、ないです」

女医「それでグキッといってしまったのでしょう、筋が痛んで、炎症も起こしていると思われます」

 

・・・シップを貼ってもらってから、頭痛が治まってきたみたいだ。

 

女医「口をあけたときに頭痛が酷くなった事で、確信しました」

僕「じゃあ、どうすれば良いんですか?」

女医「首を楽にさせると良いですね、枕を質の良い物に代えるとか」

霧子「わかりました、新しいのをご用意させていただきますわ」

僕「そんなわざわざ・・・霧子さん、すみません」

 

そっか、霧子さんの胸の中に顔を埋めたら頭痛が治まったのは、

頭がクッションに包まれて首が楽になったからなのか、凄く納得。

 

女医「あとは、もう急性期と呼ばれる安静期間は過ぎているようですので、毎日マッサージをして下さい」

霧子「では私が毎日してさしあげますわ」

僕「それはさすがに自分でやります!自分でやってもいいんですよね?」

女医「いえ、しっかりやっていただかなくては交感神経の圧迫を取り除けないので、人にお願いしなくてはなりません」

僕「じゃあ東京に帰ったらマッサージ通うか・・じゃあこの頭の痛みは1週間くらいで治まるんですね?」

 

さらにすらすらとカルテに何かを書き続けている、

確かこういうのってどこかの外国語で書かなきゃいけないんだっけ?

 

女医「そうですね、マッサージをできれば朝と夜に欠かさなければ痛みは出ません、2年は続ければ治るでしょう」

僕「にっ、にねん・・・2年間揉み続けないといけないんですか!?」

女医「慢性の肩こり、首のこりからきている訳ですから・・・1日でも怠ると頭痛がまだ現れるでしょう」

僕「そっか・・・そんなに酷い状況だったんだ」

女医「ヘルニアや亜脱臼の手前ですから、しかしまだ治るだけでも良かったと思います」

 

やばいな・・・保険とかきくのかな。

 

霧子「私、毎日マッサージをしますから!お任せください!」

僕「ええっ!?でも、そんなに宿泊費は・・・」

女医「では1ヵ月後、また診断させていただきに来ますね」

僕「ちょ、ちょっと待ってください!1ヵ月後はもうここにはいないかと・・・」

女医「もしその場合は、札幌砂丘病院か、東京砂丘病院か、全国の砂丘病院で、ほぼ無料で治療できるように手配いたしますので」

 

片付け始める女医さん。

霧子さんは早速、僕の首の後ろをもみもみし始めている。

気持ちいい・・・霧子さん、揉むのもすんごい、気持ちよすぎるぅ・・・

 

女医「そのまま1時間はベッドで寝て安静にしていてください」

霧子「お見送りいたしますわ、お客様は寝てらしてください、あとで続きをしますから」

僕「はい、わかりました、ありがとう、ござい、ました・・・」

 

そっか、確かに重い症状だけど、頭をよぎった酷い病気じゃなくて良かった。

霧子さんと女医さんは何か目で合図してる、そして2人してドアの方へ行った。

 

女医「それではお大事に」

僕「わざわざ、ありがとうございました」

霧子「では迎えの車を呼びますのでしばらくロビーで・・・」

 

うーーーん、職業病、か・・・辛いなぁ。

気付かないうちに首に負担がかかってたんだな、

通院費大変そうだ・・・そういえば今の、この診察ってお金どうなってるんだ?

 

ひらっ・・・

 

僕「あ!紙が落ち・・・」

 

バタンッ・・・

 

僕「行っちゃった・・・」

 

落としたのって、さっき何か書いてたカルテだよな?

紙が落ちるときに見えたバインダーからいって間違いない、

大事な診断書なんだから、忘れていってもらっては困る、追いかけよう。

 

僕「そういえば、保険証って見せてないよな?一緒に持っていった方がいいな」

 

出張費なんかもかかってるだろう、

代金ってどうなってるんだ?まさか霧子さんが非保険料で実費!?

すごい金額になっちゃう!それは出させられない、安静と言われたけど行かなきゃ!

 

僕「んしょ・・・財布は・・・あった、保険証も・・・あれ?お札やけにしわくちゃだな?」

 

まさか盗まれ・・・てはいないよな、

だったら無くなってるはずだし、でも1度抜いて戻したみたいな感じだ、

ということは僕がやったのか?まあいいや、さあ、あとはカルテを拾ってと・・・

 

僕「何語で書かれてるんだろ・・・え?な、な、なんだこりゃあ!?」

 

これがカルテ!?☆

これって、あれだよな?

棒が一本あったとさ・・・

コッペパンふたつくださいな・・・

あっというまにかわいいコックさん・・・

あの女医さん、綺麗な顔してクールにこんなの描いてたのか!?

 

僕「しかも最後の方なんて、ずいぶんと適当だし・・・」

 

さすがにこれを届けるのは気が引ける・・・

まあいいや、診察料の事もあるんだし、行こう!

 

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