僕「うう・・・ううぅぅぅ・・・頭が・・いた・・い・・・」

 

猛烈な頭痛で目が覚めた、

頭を押さえる・・・わしゃっ、と髪の毛をかく、

その下、頭皮はなんともないが、その奥がズキズキと痛む。

 

僕「やっぱり夕べのは、夢か・・・」

 

舌で前歯を確認する、ちゃんと揃ってる。

嫌な夢を見たもんだ、時間は・・・5時前か、あまり眠れなかったな、

外はあんまり明るくない、いや、逆にもう明るくなりはじめていると言った方が正しいかな?

 

僕「もう1度寝ようか・・・いたたたた・・・」

 

喉がやたら渇いてる、

汗でびっしょりだもんな・・・

起き上がろうとするも力が入らない。

 

僕「こりゃあ、酷い風邪をひいたかな」

 

思い起こせば0時過ぎに露天風呂へ入って、

霧子さんがいたもんだから、結構、寒い中で出たり入ったりしたよな。

北海道は寒すぎて逆に風邪をひきにくいっていうのは嘘だったのかも知れない。

 

僕「汗を拭きたい・・・み、水を・・・」

 

よろよろふらふらと部屋を出る、

霧子さんを呼びたいが、大きい声を出すのもつらい。

ロビーについて、お水を・・・ん・・んぐ・・んぐぐぐ・・・・・・ぷはぁ・・・

 

僕「あー・・・目の奥も痛いや・・・」

 

あたりを見回す・・・うん、普通のロビーだ、

夢の中だとガラスが割られてたりしたけど、別に割れてない、

普通だ、何もなかったように・・・何もなかったんだったら、そりゃそうだ。

 

僕「あ・・・朝日かな?・・・違う、赤い光がいくつもあるぞ?」

 

道路のほうを覗くと・・・パトカーがいくつも!

お巡りさんと霧子さんが立ち話している、何だろう?

さらに消防車、違う、レッカー車も遠くからやってきた・・・わっ!

ボコボコになったワゴン車を吊ってる!事故でも起こしたのかな?

続いて救急車も・・・スリップ事故か、おっかないなあ、テレビでやってるかな?

 

僕「観てみよう」

 

プチッ

 

アナウンサー「午後5時になりました、ここでBSニュースをお伝えします」

 

ええっ、ご、午後ぉ!?

 

アナウンサー「北海道旭川で起きた強盗殺人事件の犯人グループは、本日午前11時過ぎ、

 スリップ事故を起こし車が横転しているのが見つかり、中から全員が凍死して発見されました・・・」

 

ヘリコプターからの画像が見える、午後2時半の映像ってスーパーが出てるけど、

あ!いま、ここのペンションが映った!すぐ近くだ、道の先にはホテル跡があるから間違いない!

じゃあ、夕べの夢は、犯人が近くに来てたっていう予知夢なのか?ううっ、頭がガンガン痛いのが強くなってきた・・・

 

僕「うぐぐぐぐぅぅ・・・」

 

頭をかかえて前のめりになると、

座っていたソファーが後ろへ退く・・・

ころんっ、と下から何かが転がってきた、何だろう?

 

僕「アクセサリーかな?・・・違う、これは・・・・・薬莢!?」

 

つまり、ピストルの撃った弾の殻・・・?

大きさ長さからいってライフルっぽい、なんでこんなものが?

確か夢の中ではこれを撃たれた気がするけど・・・あああああぁぁ・・・頭が、割れるぅぅ・・・・・

 

僕「テレビを消して、部屋に戻ろう・・・」

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

僕「ぁう・・・この頭痛・・・治るのかな・・・?」

 

ベッドに潜り込んだはいいけど、

安静にしててもガンガンと内側から頭蓋骨を叩かれてるみたいだ、

血管の脈動すら敏感に痛みを感じる・・・これってひょっとして脳梗塞とか脳溢血とかじゃ・・・?

 

コンコン

 

僕「ぐぅあ!」

 

ドアのノック音すら響いてきた!

 

霧子「あのー、おかげんはいかがでしょうか?」

僕「霧子さん、あ、頭が痛くて痛くて・・・」

霧子「はい、朝から辛そうにしてらしたので」

 

ふと外を見ると真っ暗、

時計は・・・7時半か、頭は痛いけどお腹が空いた、

丁度、霧子さんはおかゆを作って持ってきてくれている。

 

霧子「先に汗を拭きますねー」

僕「あ・・・自分でやるから、いい、です」 

霧子「いえー、病人なんですからー・・・明日にはお医者様がいらっしゃいますー」

 

やっぱり霧子さんから見て、かなり酷い状態みたいだ。

でも時間的に今夜の診察は無理か、駅前の小さな病院に無理してでも昼間、行きたかったな、

寝てたし霧子さんも忙しそうだったから無理か、不便だ・・・とりあえず頭痛を止める麻酔だけでも欲しい。

 

僕「汗より先に、あた・・・まの、頭痛の、鎮痛剤があったら・・・」

霧子「お食事の後にした方が良いと思います、では脱がせますね」

僕「え?ぶわっ!そんな強引に・・・はぁぅ・・・・・ぁ・・・気持ちいぃ・・・」

 

背中を拭かれながら自分の胸を見る、

夢の中だとナイフで刺されたんだけど、

そんな傷なんてもちろん無い、ただ鼓動が凄く速い。

 

霧子「脇の下も・・・夜遅くには濡れタオルで拭きにきますね」

僕「そこまでしてくれなくても・・・あ、ありがとう、ございます・・」

霧子「いいえ、私の責任もありますから・・・夜遅くに慌てさせてしまって・・・」

 

うん、慌てちゃったよな露天風呂で。

でもそれって僕が勝手に慌てちゃってたんだから、

霧子さんは悪くないのに・・・本当に良い人だなぁ・・・ぅぅ・・頭痛がまた酷く・・・

 

僕「って、ここから下は自分で拭きます!」

霧子「あら、そうですか、そうなさりたいのでしたら、どうぞー・・・」

僕「はい・・・ふぅ・・・結局、今日は筆を持てなかったなぁ・・・」

 

1日でも描けないと気持ち悪い、

でもさすがにこの状態じゃ無理だ。

今は体調を回復する事に専念するしかない。

 

霧子「はい、お食事です、あ〜ん」

僕「あ・・・あ〜〜〜・・・」

霧子「と、その前に、ふ〜ふ〜しますね」

 

なんだか、ちょっとからわかれてないか!?

いや、霧子さんの事だから、真面目にやってるんだろう、多分。

 

霧子「ふぅ〜〜・・・ふぅ〜〜・・・はい、あ〜ん」

僕「あー・・・ん」

霧子「・・・熱くないですかー?お水はこちらですよー」

 

保母さんと幼稚園児みたいだ。

恥ずかしいけど、頭がガンガン痛い僕にとっては、

気が紛れる良い癒しになってくれてるような・・・ん・・・おいしい。

 

霧子「はい、もう1口いきましょうか、ふぅ〜、ふぅ〜・・・」

僕「だ、大丈夫ですよ、さすがにおかゆくらいは持て・・・いててててて」

霧子「まあ大変!じゃあ、こうしますから、落ち着いてください」

 

と、おかゆを置いて僕の頭を引き寄せた霧子さん、

大きすぎる胸の中へ顔が埋もれる・・・あふぅ・・・心地いいぃ・・・

ガンガン痛む頭をやさしくなでてくれる、それだけで魔法みたいに痛みが退いて行く・・・

 

僕「ん・・・んん・・・・・んっ・・・」

霧子「力を抜いてくださいね・・・しばらくはこうしていましょう」

僕「・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・」

 

まるで母親のように甘えさせてくれてる・・・

物理的には何の治療行為にもなっていないはずなのに、

こうしてるだけで、頭痛が治っていくような気がしてくる・・・。

 

霧子「明日、札幌から来るお医者さんが、痛みをちゃんと取ってくれますから・・・」

僕「はぃ・・・さ、札幌からってそんな、めちゃくちゃ遠い・・・」

霧子「しっかりした、ちゃんとした、専門医の方でないと、心配ですから・・・」

 

そんな、訳のわからない病気にかかってる筈もないのに・・・

まさか本当はやっかいな病気でそれを隠してるとか?一晩でそこまではわからないよな・・・

確かに普通の風邪にしては頭の痛みが尋常じゃないけど・・・あぁ、癒されすぎて眠くなってきちゃった・・・

 

霧子「・・・そろそろお食事の続きをしましょうか」

僕「はい・・・ん・・・頭痛も楽になってきました」

霧子「はい、あ〜ん・・・お口も拭きますね、はいお水・・・」

 

メイドさんって、ここまでやってくれるんだ・・・

照れくさいけど、感謝しないといけないよな、心配してくれてるんだから。

 

僕「ありがとう・・・」

霧子「いえ、私の方こそ、ありがとうございますっ!」

僕「え?な・・・なにが?」

霧子「あの、その、それは・・・ご宿泊いただいてっ」

僕「そ、そう・・・うん、ここなら、また泊まりたいよ」

 

あくまでもサービスって事か・・・

でも、ここまで心のこもったサービスならいいな、

夏は予約でいっぱいなはずだよ、東京に戻ったら友人知人に知らせよう。

 

霧子「はい、あ〜〜〜〜〜ん・・・」

僕「んぐんぐ・・・・んっ・・・・・痛みが和らいだら食欲が出てきたよ」

霧子「まあ、ではフルーツもお持ちしますね、その後で鎮痛剤を」

 

ずっと看病してもらいたくなっちゃうな、

病気でなくても・・・それじゃあ介護じゃなくなっちゃうか。

元気になったら何かお礼したい・・・でも今は休もう、それが霧子さんへの僕ができる事だ。

 

僕「そういえばニュースでやってたけど、強盗殺人犯が・・・いだだだだだ!!」

霧子「落ち着いて!今はお食事だけに集中してくださいませ」

僕「はい・・・・・んぐっ・・・食べると痛みもやわらいできました・・・」

 

今夜は何も考えず、おとなしく寝よう・・・・・。

 

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