僕「じゃあ家に、ペンションに戻れるのは10時前くらい・・・」
霧子「そうですわね、帰ったら遅い朝食を・・・ではホテルへ行きましょう」
部屋へ入ると・・・ツインルームだ、なんだダブルベッドじゃないんだ、
まあ、予約したのが出発前だとすると僕がインキュバスにならなかった可能性もあるからなぁ・・・
霧子「さて、疲れてしまいましたから夕食にしてお風呂に入って寝ましょう」
僕「うん、今夜電車に乗ると思ってたから駅弁とか思ってたけど・・・」
霧子「1階のファミリーレストランが11時までですわね、そちらにしましょう」
僕「うん・・・あ、汗かいちゃってるな、お風呂を軽く先にする?」
霧子「それも良いですが、おそらく11時までということはラストオーダーが10時半くらいまでかと」
霧子「ファミリーレストランで刺激のあるものといえば・・・何でしょう」
僕「さあ、激辛カレーとか焼肉とかは無さそうだね、ステーキかラーメンなら・・・」
やっぱり人目が気になる・・・もちろんジロジロ見られたりはしてないんだけど。
ペンションでは平気で甘えられるけど、こういう場所は慣れない以前に、恥ずかしすぎる・・・。
僕「そ、それもいいから!霧子さん疲れてるんだから、落ち着いて食べて!」
霧子「さあどうでしょう、今の規模に不満はありませんが、ただ・・・」
霧子「いつか、あのホテルを復活させたいという願望は持っていますわ」
僕「そっか、でもスキー場が潰れちゃった訳だから、どうしようもないよね」
僕「いつでも復活できるように?霧子さんが今でも管理を任されているんだよね」
霧子「はい、温泉もあちらから引いていますから定期的に掃除を、頻繁にではありませんが」
僕「で、空いてる客室とかを物置に使っていると・・・贅沢な倉庫ですね」
霧子「人がいないと朽ちるのも早いですから、夏の間だけロビーとお風呂をライダーハウスとして開放していますの」
そこまでして・・・霧子さんの夢なんだろうな、あそこの再建が。
何とかしてあげたい、僕に出来る事なら・・・それにはまずペンションをもっと繁盛させなきゃ!
閑散期でも人が埋まるようにして、部屋も増やし従業員も雇えるようにして、そしていつかは・・・!!
霧子「でも、買うだけならお金さえあればできますが、買ってからが大変ですわよ?」
僕「う・・・まあ現実的にはそうだよね・・・じゃあ買ってからも維持できるように、頑張ります」
サキュバスとか淫魔なんていう現実離れしたものが本当にあったんだ、
僕だって絵空事や話の種に虚勢張ってるんじゃないって事を、証明していかなくっちゃ。
霧子「そうですわね、一口でしたら・・・ご一緒に呑みましょう」
・・・うん、やっぱりこういう、落ち着いた大人の新婚であるべきだな、霧子さんとは。
ちょっとほわほわでぼけぼけな部分もたまにあるけど、それも含めて完璧な女性だと思う、
そりゃあ100年200年も生きていれば人間を遙かに凌駕できる学習時間を持っているだろうけど・・・
このまま待たせるのは晒してるみたいで可哀想・・・ハンバーグを一切れ・・・ぽいっ
霧子「ん〜〜〜・・・ソースがもう少し・・・デミグラスの仕上がりがもう一息ですわね」
見事に返り討ちにでもあったような・・・やっぱり霧子さんが何枚も上手だ!
と同時に、霧子さんって、本当に、完璧なだけじゃなく、やさしい、かわいい人なんだなぁ・・・
何も魔物だからって人間を貶めたりしないのは、それこそ過去の反省なのかも知れない。
服部先生の教えだと、命令口調をされなければ我が侭言っていいんだよな?
これが『一緒にお風呂に入りなさい!』とかだったら絶対断っちゃいけないし断れない、
なんだか便利な暗黙の了解だ、これも先人の知恵ってやつかも?鼻歌交じりにお湯を出す霧子さん、
あー洗ってあげたい気もするけど、広さがなぁ・・・東京でもう一泊、自腹でいいからラブホに泊まるべきだったかも?
それとも霧子さんがサキュバスで僕がインキュバスだからか・・・
女性のラインというよりも、もっとこう・・・あ、ドアが閉じられちゃった。
あの感じだと本当だろう、今はまだ全細胞がインキュバスの完全体になってないだけで、
徐々に実感させられていくのかな、インキュバスになる体の変化、
もう僕は霧子さんに身を任せるだけだ、心配してもしょうがない、成る様にしか成らない。
多分、あそこに入って行っても霧子さんは喜んで受け入れるだろう、
そしてラブラブのまま・・・新婚さんだから当然だ、普通ならそういう流れになるだろう、普通なら。
とてつもない恐怖と快感で犯される感覚を植えつけられて、とても自分からはできない!
だからといって、されないのも我慢できなさそう、まさに危険な感覚、禁断の実に毒された体だ、
するのはできない、でもされずにはいられない、インキュバスとはそいうもの、そう教えられてるようだ。
魔物と餌なら話は違う、いや、餌なら餌らしく獲物にされに飛び込んで行かなきゃって気もするけど、
インキュバスになって間もない、いや、まだ100%なっていない僕では、何ともはや・・・でも、でも、行かなきゃ・・・まずい?
そうなれば僕だって迷うことなく足を震えさせながらも飛び込むだろう、
でも何も言ってこないって事は任せると・・・試すとかじゃなく、僕の好きなようにって事か。
いや、本当の我が侭を言うなら、自分からじゃ行けませんから襲ってください、かな?
あー、うだうだ悩むくらいなら霧子さんに直接聞こう!そろりそろりとお風呂の方へ・・・
そうなったらなったで、ほんのちょっと残念というか寂しいのは、それこそ我が侭なんだろうな。
霧子「どうぞ・・・では私は先に眠らせていただきますわ、朝も早いですし」
霧子「あなたも夜更かしはいけませんから、早く寝てくださいませ」
霧子「はい・・・おそらくあなたにとって、今夜は1人で眠る最後の夜でしょうから」
そう考えると、確かに今夜は何も無い方がいいな、はは、ははははは・・・・・。