夜9時を回り新千歳空港についた、

さあ、ここから女満別空港・・・ってあれ?

 

僕「飛行機が・・・・・もうない!」

霧子「ええ、明日朝7時55分からですわ」

僕「じゃあ家に、ペンションに戻れるのは10時前くらい・・・」

霧子「そうですわね、帰ったら遅い朝食を・・・ではホテルへ行きましょう」

僕「あ、予約してあるんだ、さすがさすが・・・」

 

空港近くのそこそこなホテルへ入る、

部屋へ入ると・・・ツインルームだ、なんだダブルベッドじゃないんだ、

まあ、予約したのが出発前だとすると僕がインキュバスにならなかった可能性もあるからなぁ・・・

 

霧子「さて、疲れてしまいましたから夕食にしてお風呂に入って寝ましょう」

僕「うん、今夜電車に乗ると思ってたから駅弁とか思ってたけど・・・」

霧子「1階のファミリーレストランが11時までですわね、そちらにしましょう」

僕「うん・・・あ、汗かいちゃってるな、お風呂を軽く先にする?」

霧子「それも良いですが、おそらく11時までということはラストオーダーが10時半くらいまでかと」

 

じゃあ夕食が先でいいや。

 

僕「じゃあ降りよう、今のうちに刺激のあるものでも食べよう」

霧子「ファミリーレストランで刺激のあるものといえば・・・何でしょう」

僕「さあ、激辛カレーとか焼肉とかは無さそうだね、ステーキかラーメンなら・・・」

 

今夜は後の事とか考えず、食べたいものを食べよう!

 

 

 

霧子「はい、あ〜ん」

僕「あ、あーーーん・・・」

霧子「いかがですか?」

僕「う、うん、おい・・・しい」

霧子「では次はチキンを・・・」

 

ミックスグリルを1つ1つ丁寧に食べさせてもらう、

やっぱり人目が気になる・・・もちろんジロジロ見られたりはしてないんだけど。

ペンションでは平気で甘えられるけど、こういう場所は慣れない以前に、恥ずかしすぎる・・・。

 

僕「も、もう大丈夫、あとは自分で食べるから」

霧子「そうですか?ではお口を拭きますね」

僕「そ、それもいいから!霧子さん疲れてるんだから、落ち着いて食べて!」

 

ふう、まさかこういう意味で刺激が強い夕食になるとは・・・。

 

僕「・・・ペンション、霧子さんは、大きくしたいですか?」

霧子「さあどうでしょう、今の規模に不満はありませんが、ただ・・・」

僕「何か引っかかる事でも?」

霧子「いつか、あのホテルを復活させたいという願望は持っていますわ」

僕「そっか、でもスキー場が潰れちゃった訳だから、どうしようもないよね」

 

個人でどうこうできるスケールじゃないし。

 

霧子「一応、半廃墟ですがそれなりに整備はしていますの」

僕「いつでも復活できるように?霧子さんが今でも管理を任されているんだよね」

霧子「はい、温泉もあちらから引いていますから定期的に掃除を、頻繁にではありませんが」

僕「で、空いてる客室とかを物置に使っていると・・・贅沢な倉庫ですね」

霧子「人がいないと朽ちるのも早いですから、夏の間だけロビーとお風呂をライダーハウスとして開放していますの」

 

そこまでして・・・霧子さんの夢なんだろうな、あそこの再建が。

何とかしてあげたい、僕に出来る事なら・・・それにはまずペンションをもっと繁盛させなきゃ!

閑散期でも人が埋まるようにして、部屋も増やし従業員も雇えるようにして、そしていつかは・・・!!

 

僕「決めた、10年であのホテルを買い取れるようにします!」

霧子「まあそれは・・・夢のようなお話ですわね」

僕「頑張って絵もいっぱい売って、いつか必ず!!」

霧子「でも、買うだけならお金さえあればできますが、買ってからが大変ですわよ?」

僕「う・・・まあ現実的にはそうだよね・・・じゃあ買ってからも維持できるように、頑張ります」

 

こういう部分はリアリズム・・・それがまた霧子さんらしい。

サキュバスとか淫魔なんていう現実離れしたものが本当にあったんだ、

僕だって絵空事や話の種に虚勢張ってるんじゃないって事を、証明していかなくっちゃ。

 

僕「ん・・・ワイン頼もうかな、霧子さんは?」

霧子「そうですわね、一口でしたら・・・ご一緒に呑みましょう」

僕「うん、じゃあ注文するよ、乾杯したいからグラスは2つで」

 

・・・うん、やっぱりこういう、落ち着いた大人の新婚であるべきだな、霧子さんとは。

ちょっとほわほわでぼけぼけな部分もたまにあるけど、それも含めて完璧な女性だと思う、

そりゃあ100年200年も生きていれば人間を遙かに凌駕できる学習時間を持っているだろうけど・・・

 

僕「・・・そうだ!霧子さん」

霧子「はい?なんでしょうか」

僕「今度は僕が、あ〜んしてあげるよ」

 

さあ、完璧な霧子さんなら、どう返す!?

 

霧子「まあ、嬉しいですわぁ、はい、あ〜〜〜」

 

・・・あんぐり口をあけて待ってる!

戸籍上は26歳のお姉さんが、実際は淫魔が!!

このまま待たせるのは晒してるみたいで可哀想・・・ハンバーグを一切れ・・・ぽいっ

 

霧子「ん〜〜〜・・・ソースがもう少し・・・デミグラスの仕上がりがもう一息ですわね」

僕「そ、そうですか、厳しいですね」

霧子「では次を・・・あ〜〜〜ん」

 

また大口あけて待ってる!

ガーリックチキンを切って入れて・・・

は、はっ、はずかしいっ、自分でやっておいて何だけど、

見事に返り討ちにでもあったような・・・やっぱり霧子さんが何枚も上手だ!

と同時に、霧子さんって、本当に、完璧なだけじゃなく、やさしい、かわいい人なんだなぁ・・・

 

僕「時間も無いので、これくらいで・・・」

霧子「あら残念ですわ、では続きは帰ってから・・・」

僕「は、はい、人前じゃなければ、いくらでも・・・」

 

サキュバスといえど、純粋な人なのかなぁ?

逆に人間社会で生きていくために、純粋さを持っているのかも?

何も魔物だからって人間を貶めたりしないのは、それこそ過去の反省なのかも知れない。

 

僕「じゃ、急いで食べます」

霧子「良く噛んで食べましょう」

僕「んー・・・コーンに醤油かけちゃお」

 

ワインが来た!2人のこれからに・・・・・乾杯!

 

 

 

 

僕「食べたぁ〜」

霧子「お風呂入れますわね、ご一緒します?」

僕「んー・・・狭そうだからいいや」

 

って、この場合、断って良かったんだろうか?

服部先生の教えだと、命令口調をされなければ我が侭言っていいんだよな?

これが『一緒にお風呂に入りなさい!』とかだったら絶対断っちゃいけないし断れない、

なんだか便利な暗黙の了解だ、これも先人の知恵ってやつかも?鼻歌交じりにお湯を出す霧子さん、

あー洗ってあげたい気もするけど、広さがなぁ・・・東京でもう一泊、自腹でいいからラブホに泊まるべきだったかも?

 

霧子「では・・・」

 

服を脱ぎ始めた、背中を下ろすの手伝ってあげなきゃ。

 

僕「・・・・・」

 

息を呑むくらい綺麗な背中・・・

あ、熱くなってくる、さっきのワインのせいかな?

それとも霧子さんがサキュバスで僕がインキュバスだからか・・・

 

霧子「ありがとうございますの」

 

ぶるんっ、と弾む大きな乳房、

それだけじゃない、大きなお尻も凄い・・・

魅力的を通り越して、こういうのを淫靡と言うのだろう。

 

僕「・・・・・」

 

ぽーーーっと裸の後姿だけを眺めてしまう、

あのラインはやっぱり絵にする時に描きたい部分だ、

女性のラインというよりも、もっとこう・・・あ、ドアが閉じられちゃった。

 

僕「追いかけて一緒に・・・は、やめておこう」

 

ベッドへ横になる、

満腹でちょっとお酒も入って、

おまけに新婚さんで、心も体も満ち足りている・・・

 

僕「これで、本当に残りの寿命が半分になってるのかなぁ?」

 

まあ、この期に及んで嘘でした、だったら嬉しいけど、

あの感じだと本当だろう、今はまだ全細胞がインキュバスの完全体になってないだけで、

徐々に実感させられていくのかな、インキュバスになる体の変化、

敏感になる詳しい説明は霧子さんに聞けって言われたんだっけ?

もう僕は霧子さんに身を任せるだけだ、心配してもしょうがない、成る様にしか成らない。

 

ジャーーー・・・

 

シャワーの音が響く、

多分、あそこに入って行っても霧子さんは喜んで受け入れるだろう、

そしてラブラブのまま・・・新婚さんだから当然だ、普通ならそういう流れになるだろう、普通なら。

 

僕「でも・・・・・怖い」

 

自分から霧子さんに犯されに行くのが、怖い・・・

あのインキュバスにされた初夜が、トラウマとでも言うべきか、

とてつもない恐怖と快感で犯される感覚を植えつけられて、とても自分からはできない!

だからといって、されないのも我慢できなさそう、まさに危険な感覚、禁断の実に毒された体だ、

するのはできない、でもされずにはいられない、インキュバスとはそいうもの、そう教えられてるようだ。

 

霧子「〜〜♪」

 

鼻歌で機嫌良さそう・・・

こういう時に、背中流そうか?とか、

君の笑顔を見に、とか言って入るのが男なんだろうけど、

魔物と餌なら話は違う、いや、餌なら餌らしく獲物にされに飛び込んで行かなきゃって気もするけど、

インキュバスになって間もない、いや、まだ100%なっていない僕では、何ともはや・・・でも、でも、行かなきゃ・・・まずい?

 

僕「無理する事ないか・・・でも・・・う〜ん・・・」

 

ほんっとうに来て欲しかったら命令形になるはず、

そうなれば僕だって迷うことなく足を震えさせながらも飛び込むだろう、

でも何も言ってこないって事は任せると・・・試すとかじゃなく、僕の好きなようにって事か。

 

僕「命令じゃない場合は、我が侭言ってもいいんだよな?」

 

だったら、まだ怖いから行けません、というのも我が侭?

いや、本当の我が侭を言うなら、自分からじゃ行けませんから襲ってください、かな?

あー、うだうだ悩むくらいなら霧子さんに直接聞こう!そろりそろりとお風呂の方へ・・・

 

僕「き、きっ、霧子さ〜ん?」

霧子「はいー、もう少しで出ますから待っていてくださいませ」

僕「は、はいっ!」

 

良かった・・・一緒に入らなくて本当にいいみたいだ。

そうなったらなったで、ほんのちょっと残念というか寂しいのは、それこそ我が侭なんだろうな。

 

僕「ほっとしたら喉が渇いちゃった・・・」

 

お水を飲もう、落ち着こう、お酒でちょっと神経質になってる。

 

・・・

・・・

・・・

 

ガチャッ

 

霧子「上がりましたわ」

僕「は、はいっ」

霧子「どうぞ・・・では私は先に眠らせていただきますわ、朝も早いですし」

僕「そ・・・そうですよね」

霧子「あなたも夜更かしはいけませんから、早く寝てくださいませ」

 

・・・・・今夜は何も無いか。

 

僕「わかりました、おやすみなさい」

霧子「はい・・・おそらくあなたにとって、今夜は1人で眠る最後の夜でしょうから」

僕「えっ!?それって・・・ま、まあ、お風呂入ります」

 

1人で・・・ツインベッドだから、まあ、1人で、だ。

ということは明日夜からは、必ず霧子さんと抱き合って・・・

そう考えると、確かに今夜は何も無い方がいいな、はは、ははははは・・・・・。

 

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