ナレーター「しかし彼女は1431年、イングランド軍により魔女として火あぶりにされる事となります、

 人間の歴史ではこの時点でジャンヌ・ダルクの生涯は尽きてしまいますが、実際はそうではありませんでした。

 彼女は表向きの裁判で有罪を受けた裏で、敵側の将や裁判官をサキュバスの力で虜にし、処刑を免れていたのです」

 

ほ、ほんとかなぁ・・・じゃあ燃やされたのは、替え玉?

 

ナレーター「しかし、いかに淫魔の力でかどわかしたといえど、無罪放免でフランスへ帰れた訳ではありません、

 結局、ジャンヌ・ダルクに下された本当の刑は『遠い砂漠の真ん中へ置き去りにする事』これならば生きながらにして

 長時間の火あぶりをするのと同じであると納得させ、放置されたのです、人間ならば2日ももたないのですが、

 生命力の高いサキュバスは2週間も生きながらえました、しかしそれも限界・・・という所へ現れた救世主、それが日本人だったのです」

 

僕「ば、ばかなぁ!」

 

15世紀に、タクラマカンだかシリアだかの砂漠に、日本人が!?

 

ナレーター「当時、日本では食物がネズミの被害で深刻になり、

 室町幕府将軍・足利義教の命によりヨーロッパへネズミ捕りに長ける良質な猫を大量に買いに行った帰りに、

 日本人の一行が砂漠を横断中、ジャンヌ・ダルクを見つけて水や食料、そして精を提供したのです」

 

トンデモない話だ・・・

 

ナレーター「命を救われたジャンヌ・ダルクは恩を返すためそのまま一行についていき、

 日本へ『猫の取り扱い説明・飼育係り』として入国、永住の道を選ぶこととなったのです。

 その後、時代は江戸へ移りサキュバスも増え、日本の書物にも雪女や蛇女、濡女、人魚、牡丹燈篭などの作品として描かれています」

 

なるほど、日本に伝わる精を吸う妖怪は、みんな実際にいたサキュバスが元になってるのか。

 

ナレーター「江戸時代となるとすっかり日本に溶け込んだ彼女は大奥へ身を置いていました、

 さらには呉服問屋『金襴緞子』も仲間のサキュバスと開業し、やがて明治・大正・昭和・・・

 戦後には病院やレジャー産業にも進出し、現在の日本砂吸舎グループとなったのです、

 そのトップこそ、砂漠で日本人に救われたジャンヌ・ダルクこと、現在の鈴崎会長その人なのです!!」

 

ええええええええええええええ!!!!!

 

僕「ぶわっははは!あはは!あひぃ!そ、そんな落ちって!あはははは!!」

霧子「・・・あなた、落ち着いて」

僕「はははっ・・ひいぃー・・・ちょっと、涙まで出てきた・・・」

 

鈴崎会長がサキュバス界のジャンヌダルクなんじゃなくって、

ジャンヌダルクがサキュバスで鈴崎会長だなんて、笑わせるにも程があるよ!

 

僕「もうこれ、嘘でも本当でも、どっちだっていいや」

 

映像は次の話に行くみたいだ。

 

♪ジャンジャジャジャッジャッジャーン

 

『サキュバスの生態』

 

ナレーター「サキュバスは精を吸う種族です、

 子宮に精の消化器があり、そこで蓄えたエネルギーで、

 空を飛んだり治癒の力を放ったり脳波で人に強い暗示をかけたりします」

 

サキュバスが翼と尻尾を出す連続写真が出てきた。

 

ナレーター「精が尽きた状態のサキュバスは大きな飢餓感と全身の血管に苦痛を感じます、

 その状態そのものではショック死するような事はありませんが、事故や動けなくなっての餓死など、

 間接的に命を脅かすことになります、それを避けるためにも一定の精の補充は必要不可欠なのです」

 

・・・さすがに精を吸うシーンは出てこないみたいだな、

スクリーンには棒グラフが出てきた、サキュバスの人口と出生数と死亡者数・・・

 

ナレーター「日本におけるサキュバスの人口は30万2809人、これに対しインキュバスは6202人となっています」

 

しっかり『2008年3月末現在』って書かれてる。

 

ナレーター「サキュバスはインキュバスの精を大量に子宮へ蓄えた後、消化吸収しきれず残った精から妊娠する事が可能です、

 しかしそれは長期間、同じ精で慣らしたうえにかなりの量で満たした場合のみで、そこからさらに受胎する確率はかなり低いものです、

 ちなみにサキュバスからは原則、サキュバスしか産まれません、インキュバスが産まれた記録もあるにはありますが、日本では過去3例のみです」

 

まるで三毛猫のオスみたいだ。

 

ナレーター「よって精の確保と子孫を残すためにサキュバスは人間を襲いインキュバスにしてしまうのですが、

 中世ヨーロッパの魔女狩りなどの反省を踏まえ、江戸初期からサキュバス同士で協定を作り、

 『無闇やたらにインキュバスを作らないこと』という血の掟を徐々に厳しくしていったのです、その結果、

 現代の日本ではサキュバスの姿を隠したうえで相思相愛になった人間に、厳格な審査と手続きを踏まえた上でしか

 インキュバスになれません、これにより精の捕獲は厳しくなりますが、サキュバスという種族を後世に残す最善の方法だと信じています」

 

へーーーーー

 

僕「大変なんだなぁ・・・感動した、ってちょっと大げさか」

 

ナレーター「インキュバスになっていただいた方には、こういった経緯も踏まえ、

 精液をサキュバスという『種族』に提供する義務が生じます、もちろん限りある命と精をパートナーにふんだんに捧げていただくのですが、

 それと同時にインキュバスの精を砂丘病院などで年齢に応じ年12回〜24回徴収いたします、これはパートナーのいないサキュバスを助ける行為であり、

 すでにパートナーとなっているサキュバスもその前は提供された精を配給されていた訳ですし、パートナーを吸い尽くした後、また提供を受けなくては

 ならなくなるからです、またこうする事でサキュバスが無闇に人間を襲わないための歯止めになったり、インキュバスの状態管理もできます」

 

なるほど、これがきっとあの地下で見たプレイルームなんだろうな。

 

ナレーター「提供を受けた精液は製薬工場で粉末剤・液体剤の両方に加工され体内に吸収されます。

 もちろんインキュバスに余力があれば、そのままの精を直接、パートナー以外のサキュバスへ提供する事も推奨いたします」

 

他のサキュバス・・・服部先生とか!?

砂丘病院などで、って事は札幌にもあのプレイルームはあるんだろうか、

浮気にはなっちゃわないのかな・・・霧子さんが嫉妬で燃えたら凄いことされそうだ。

 

♪ジャンジャジャジャッジャッジャーン

 

『サキュバスの仕事』

 

もう次の話か、20分上映だからかなり編集されてるんだろうな。

 

ナレーター「サキュバスは人間社会、日本の社会に古くから溶け込んできました、

 これは人間をインキュバスにし消費するという罪深い種族であるがゆえのつぐないでもあり、

 人間に様々な形で『生かせていただいているお礼』を還元しているのです」

 

仕事をしているサキュバス(翼なし)が次々と映し出されている、

病院で女医とナースが並んでいたり、ランジェリーショップは隣のか。

スイミングスクールの講師、IT関連企業っぽいの、結婚式場、ケーキ工場、女子高の先生も・・・

 

僕「あ、霧子さんが映った!ホテルのフロントだ」

霧子「ええ、昔のですわ、まだあのホテルが現役だった頃の」

 

・・・あれ?急に海の上が映し出されたぞ?

雲の切れ間から何か来る、鳥か?ハングライダーか?違う、あれは・・・

迷彩服に身を包みライフルを手にしたサキュバスだ!翼を羽ばたかせて何十人も!

 

ナレーション「ご覧ください、日本の秘密兵器、自衛隊サキュバス部隊です!!」

 

あ、あんなのが飛んできたら、びっくりするだろうなぁ・・・

 

ナレーション「まあこれは冗談ですけど」

 

がくっ、ネタだったのか、騙されてちょっと悲しい。

 

ナレーション「私たちはこれからも人間を第一に考え尊重し、貢献していきます、精を吸わせていただく限り・・・」

 

画面が切り替わって神社になった、

和服でお祈りする女優・栗河原千尋・・・

 

栗河原「日本には昔から『人柱』という文化があります、命を捧げ人々を助ける尊い魂・・・

 その魂を私たちは背負い、生きていかなくてはなりません、貴方の魂は、私たちの中で生き続けます、

 ですからどうか、インキュバスとして生きている間を、どうぞ有意義に過ごしてくださいませ、

 それを手助けする事こそが、私たちの喜びでもあるのですから・・・・・」

 

バサッ、と和服を脱ぎ落とすと中は黒い水着、

そして背中から翼、お尻からしっぽが出て、羽根を広げ飛び上がり、

空へと飛んでいった・・・あの女優さん、人間離れした美しさとは思ってたけど、サキュバスだったとは・・・!

 

僕「・・・あ、スタッフロールだ」

 

ナレーター宮森ゆま子・・・あ!有名な声優さんだ!七色のセクシーボイスで有名な・・・

真面目に声をあててたから気付かなかった、きっと彼女もサキュバスだったのだろう。

あとは総監修・鈴崎ルーク、医療監修・砂丘病院・・・たくさんの名前が流れて最後は製作著作・日本砂吸舎・・・

 

♪ジャンジャンジャ〜〜〜〜〜ン

 

『終わり』

 

僕「・・・・・(ぽかーん)」

 

フィルムが終わり室内が明るくなった。

 

霧子「・・・その、わかっていただけましたでしょうか?」

僕「う・・・・・うん、まあ・・・」

久喜「喜怒哀楽が見られて楽しかったですわ」

 

・・・怒ってはいなかったと思うけど・・・

 

僕「20分はちょっと短かったかも・・・」

久喜「日本砂吸舎の特設ホームページから長い動画が配信されてますので帰って観ていただければと」

霧子「45分くらいですと、もう少し色々な説明がまんべんなくありますから」

 

背伸びして立ち上がる・・・

 

僕「さて、次はどうすればいいんだっけ」

久喜「砂丘病院で健康診断と、インキュバスになる手順の説明です、私ももう少しお供しますから」

霧子「では裏口から行きましょう」

 

エレベーターに乗って1階へ・・・

時間はさすがに5時を過ぎている、

下着の詰まったダンボールが並ぶ裏口を出るとそこは・・・

 

僕「あれ?ここ、公園?」

久喜「はい、東京砂丘病院の庭です」

僕「そっか・・・あ、だから直接裏口に来ず、玄関からあんな手間のかかった入り方を」

 

セキュリティとかもあるんだろうな、あと駐車場の問題とか。

幼女たちが無邪気に遊んでる、暗くなりはじめてるのに元気だなぁ。

 

僕「さて、保険証を・・・」

霧子「札幌砂丘病院で作っていただいた診察券だけで入れますから」

久喜「もしもし・・・今から・・・はい、よろしくお願いします」

 

携帯のストラップがなぜか目玉の親父・・・まあこれは趣向の問題か。

 

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