背中が盛り上がる・・・肩甲骨が飛び出るって感じだ、
そして盛り上がった部分が唇がめくれるみたいに割れて、舌が出るみたいに翼が・・・
肩甲骨の中に折りたたまれていたみたいだ、それがどんどんどんどんと広がっていく・・・
バサバサバサバサバサ・・・・・
黒く大きい翼・・・その迫力だけで圧倒される、
と同時に地味な感じだった織畑さんが凄く色っぽく見える、
肌が艶々になるというか、サキュバスに変身すると不思議な化粧がかかるというか・・・
織畑「はいこんな感じです」
僕「あ・・・はい、ありがとう・・ございます・・・」
織畑「しっぽもちゃんと、ほら」
長いスカートの中からしっぽがめくって出てきた、
思ってたより器用に動かせられるんだな、霧子さんのよりちょっと長め?
そしてチラリと見えたスカートの中のストッキングやガーターも、凄い・・・
久喜「満足していただけたようです、織畑さんありがと」
織畑「では仕事に戻りますねー、邪魔ですので仕舞います」
僕「わざわざすみませんでした、ごめんなさい・・・」
丁寧に折りたたまれていく翼、
さっきの逆回転みたいだ、そして肩甲骨に収納、格納されて・・・
割れた皮膚も何事も無いようにスッキリ閉じて、はい元通り、と。
久喜「もうお一人くらい呼びましょうか?」
僕「い、いえいえ、もう、わかりましたから・・・」
霧子「仕組みが見たいのでしたら私がいくらでもお見せしますから」
織畑「さ、上げてくださいな」
僕「え、僕が!?・・・はいっ!んしょ・・・ありがとうございました」
・・・地味な感じに戻った織畑さん、
やっぱり翼が出ると雰囲気も、容姿も変わるんだなぁ・・・
変身にエネルギーがいるとか無いのかな?
あるならお礼に僕の精を・・・って迂闊な事は言えない。
何事も無かったように仕事を再開してる、僕も書類の続きをしよう。
僕「生命保険は入っておこう・・・」
・・・
・・・
・・・
霧子「あの、こちらの書類に名前と実印を・・・」
僕「あ!2人が書かないといけない書類ですね」
霧子「6枚ほどあります、私はすでに全て記入しましたから」
まずはサキュバスのパートナー登録証、
インキュバスの欄に僕の名前と実印と、顔写真スペース・・・
久喜「写真は後で撮りますから、こちらで貼っておきます」
僕「どうも・・・そういえば僕だけが書いた種類にも写真欄が必要なのが何枚か・・・」
霧子「私の写真は待っている間に終わりましたから」
すらすら、ぽんっ、と・・・
次は淫魔施設区域入場証申請、こことかさっきの所かな?
そういえばみんな胸に社員証みたいなの付けてるよな、ICカード兼用みたいなの。
僕「淫魔住民登録変更追加届け・・・あ、僕が住む事になるから追加されるのか・・・あとは・・・これとこれと・・・」
霧子「・・・・・最後に、これを・・・」
僕「はい、これが全部のラストかな・・・この書類は、婚姻届・・・えええええ!?」
間違いない、普通の、人間用のだ!!
久喜「何かおかしな所でも?」
僕「いえ、そういう訳では・・・」
霧子「一応、人間の世界でもサキュバスは皆、人間としての戸籍をそれなりに持っていますので」
僕「う、うん・・・わかった、じゃあ・・・書くよ」
久喜「証人は私たちの方で書いておきますね」
そっか、結婚するんだ・・・
そりゃそうだ、冷静に考えたら当然の事かも?
僕そのものをあげる訳だから、結婚して責任とってもらわないと。
僕「・・・・・・・・はい、終わりました!」
霧子「うれ・・・・しぃ・・・・・」
僕「な、涙を拭いてください!」
やっと実感してくれたみたいだ。
久喜「5時に間に合いましたね、では書類は出しておきます」
僕「はい、ってどこへ?役所とかあるんですか?淫魔用の」
久喜「ええ、ここです、ここがその役所になります」
そうだったのか・・・
通りで役所っぽいと思ったら役所そのものだった。
これで手続き上、問題は無くなった訳だな、うん。
霧子「あの、今でしたらまだ、まだ間に合いますから、書いたものを全て破棄してもらうことも出来ますから」
僕「引き返さないさ、大丈夫、僕はずっと、霧子さんのものだから」
霧子「本当に、本当の本当の本当に・・・よろしいの・・・です・・ね・・・あなた・・・・・」
あなた、か・・・胸がドキドキする嬉しい呼び方だ。
久喜「では写真を撮影して、あとは映写室で案内映像を見ていただきます」
僕「あ、案内映像!?それって、どういうものなんですか?」
久喜「インキュバスになっていただくにあたっての、映像での説明です」
僕「そんなのがあるんだ・・・へえ」
久喜「あと大事なことを忘れる所でした、結婚式はいかがなさいますか?」
・・・そうだ、結婚するんだから、それがあった!
僕「ええっと・・・したほうが、いいの・・かな」
久喜「されたいのでしたら、同族経営の結婚式場がありますので格安で・・・」
僕「霧子さんは、どうしたいんですか?」
霧子「・・・お任せします、あなたのなさりたいように」
僕「う〜〜〜ん、してもいいっていえば、いいんだけど・・・」
なんとなく、霧子さんには辛いような気がする。
だって今までも僕のような餌を食べてきたんだろうから、
何度も何度も結婚式をするのは・・・過去を引きずらせるのも嫌だし。
僕「とりあえずは、いいです」
久喜「そうですか、お二人のウェディング姿を写真撮影するだけという選択もありますが」
・・・それはドライでいいかも知れない、最低限の記念は残る訳だから。
僕「霧子さんに任せます、って言ったら霧子さん困りますよね」
霧子「はい、私の意志は、あなたのお好きなように、ですから」
久喜「撮っておいた方が・・・普通の体型での最後の写真になると思いますから」
う・・・じゃあインキュバスになったら痩せる一方なのか・・・
僕「わかりました、じゃあ写真だけ・・・」
久喜「でしたら6階の撮影室で撮れますから、その後、7階の映写室へ」
霧子「・・・結婚式、したくなったらいつでもできますから」
僕「・・・霧子さん、もし僕との写真を処分したくなったら、僕の棺桶にでも入れてください」
霧子「そんな!今からそのような話・・・でも・・・わかりましたわ」
まあ、そんなにすぐ死んじゃう訳じゃないけどね。
証明写真と2ショット撮影を終え7階映写室へ向かう。
霧子さんのブーケ姿、綺麗だった・・・借り物のウェディングドレスも。
逆に僕のタキシード姿が滑稽になってないか心配だけど、2人の心に残るものならそれでいい。
久喜「こちらが映写室です」
僕「わぁ、広い・・・座席も結構ある・・・」
久喜「80席あります、一番良い席へどうぞ」
ミニシアター、いや、もうこれはミニじゃないかも?
ちょうど良い段差がある真ん中あたりへ霧子さんと並んで座る。
久喜「ではインキュバスになるにあたってのフィルムを観ていただきますが・・・」
僕「あ、携帯電話は切った方がいいですね」
久喜「それで上映時間はいかがなさいましょう?20分、30分、45分、1時間、一番長いので鈴崎会長の半生をドラマ化した3時間50分の・・・」
僕「み、短いのでいいです!会長のドラマは今度ゆっくり・・・」
霧子「では20分のにしましょう、お願いします」
・・・・・部屋が暗くなった、
真っ暗になったと同時にスクリーンに映写される数字、
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・綺麗な女性の声がスピーカーから響き渡る。
ナレーター「ようこそサキュバス・インキュバスの世界へ!!」
着物の女性が出てきた、髪の長い綺麗な・・・あ!
僕「この人、知ってる!女優の、栗河原千尋!」
確か少女のときにヌード写真集出したり、
ハリウッド映画で鉄球のついた鎖を振り回してた、
日本人形っぽくも女王様っぽい女優だ、深々とお辞儀してる。
栗河原「このたびはインキュバスになられるという事で、誠にありがとうございます。
それではインキュバスになられるにあたって、サキュバスの歴史、サキュバスの現在、
インキュバスの役割について簡単にではありますが、ご説明させていただきます」
♪ジャンジャジャジャッジャッジャーン
『サキュバスの歴史』
おどろおどろしい外国の墓場が映し出される。
ナレーター「サキュバスはどこでどのようにして生まれたか?
一番古く資料として残っているのは10世紀フランス・クリュニー修道院に残されていた書物で、
それによればすでに8世紀のローマ帝国にサキュバスと呼べるような魔女の存在が確認されていました」
次々と流れる資料映像・・・教会とか絵画とか。
ナレーター「最初のサキュバスの誕生はまだ特定されておりませんが、サキュバスという種族については2種類の説があります、
まず1つは人間が突然変異・進化して生まれたもの、もう1つは見えないサキュバスウィルスのようなものが遺伝するというもの、
科学が発達した21世紀といえど完全にその種族の謎を解明するには未だ至っていないのです」
へーーー・・・猿が進化して人間になったように、人間が進化してサキュバスになったりしてるかもって事か。
ナレーター「続いて日本におけるサキュバスの歴史です」
お、あの絵はフランス革命・・・違う、百年戦争か。
ナレーター「1412年1月6日、フランスのある農村で1人のサキュバスが産まれました、
彼女は淫魔の両親やサキュバスの姉、引き取られた人間である義理の兄の元で育ったのち、
10代後半の少女でありながら、騎士としてイングランド軍と戦いシャルル7世をフランス国王に導いた、ジャンヌ・ダルクです」
僕「ええええええええ!!」
ジャンヌ・ダルクが、サキュバスだった!?
もどる |
めくる |