羽田空港に着きモノレールで浜松町まで出た、

東京はやっぱり暖かい、いや、もちろん11月下旬なんだから、

寒いかといえば気温は寒いけど、道東の寒さは極端だし、それにやっぱり東京は、

人の多さとビルから出る換気で暖かく感じる、ずっと東京だけに住んでるとこれには気付かない。

JRに乗るのかと思ったら霧子さんは裏手へ・・・確か大江戸線の大門駅の方だ、地下鉄に乗るのかな?

 

霧子「時間通りですわ・・・来ました」

 

ブッブー!

 

紫色のワゴン車が僕らの前に止まった!

運転席から顔を出したのは眼鏡をかけた色っぽい女性・・・

 

霧子「久喜さん、お久しぶりです」

久喜「鏡さんこそ!さあ、お乗りください」

僕「はい、後ろでいいんですよね」

 

ドアには英語?が書いてある・・・なんだこれ?

 

僕「てぃす・・・ちぇっす・・・すてくうす・・・ふぇねす・・・わかんないや」

霧子「Tissus chers structures fines フランス語ですわ」

僕「へー・・・その下に大きくJaponって書いてある」

 

内装はおしゃれ・・・しかもいい匂い。

これって何と表現したらいいんだろ?豪華な生地の匂いっていうか、

高級な布とか、香水とか・・・霧子さんや服部先生からも少し感じたような匂いだ。

 

ブロロロロ・・・

 

久喜「遠いところからご苦労様です、すぐに着きますから」

僕「どこへ行くんですか?ここから近いんですよね?」

霧子「青山の表参道ですわ、そこに東京砂丘病院があります」

 

それはまた地価の高い所に・・・

まあ病院なんだから警察署や消防署みたいに、

土地の値段よりも位置が大事なんだろうからおかしくは無い。

 

僕「時間は・・・午後4時ちょっと前か、思ったより早く着いて良かった」

久喜「勤務定時は5時ですから、今の時間なら皆さんいらっしゃいますわ」

霧子「そうですね、インキュバスになる手続きに、間に合いますから・・・」

 

なんだかはじめて霧子さんの方から、

僕がインキュバスになる事への前向きな言葉が聞こえた気がする、

でも、まだ浮かない声・・・インキュバスになっても喜ばれないなら、嫌だな。

 

僕「・・・・・」

 

運転席を覗く、

やっぱりこの久喜さんもサキュバスなのかな、

インキュバスどうこうって話を車内で普通にできるって事は。

ごく普通の綺麗な眼鏡のお姉さんって感じだけど・・・

UFOキャッチャーで取れるようなぬいぐるみも置いてあるし・・・って、あれは!

 

僕「ぶはっ!」

霧子「どうしたのですか?」

僕「いえ、あれ見てちょっと笑っちゃって・・・」

 

吊り下げられてるモリガンとリリスのぬいぐるみ、

格闘ゲームのやつだ、確かこれがサキュバスとかいうのだったはず。

サキュバスがサキュバスのぬいぐるみをぶらさげてて、ちょっと面白かった。

 

久喜「もうすぐです・・・ここを曲がって・・・あちらです」

僕「ほんとだ、すんごい大きい!東京砂丘総合病院・・・って通り過ぎちゃった」

霧子「その隣です、建物が見えてきました、ほらそこ・・・」

 

うわ!8階建てくらいの大きなビル、

Tcsf Japonって看板が出てて、

1階にはウィンドウがあって、そのに並んでいるのは・・・・・!

 

僕「すんごく高そうな、女性の、下着!」

霧子「ええ、フランスの高級ランジェリーメーカーTissus chers structures finesの日本支店ですわ」

僕「うわー、うわー、すっご!この4点セット、20万円だって、下着なのに!!」

久喜「中にはもっとお値段が高いのも豊富にあります、見ていかれますか?」

僕「と、とりあえず、用事を済まさないと・・・って正面から入るんですか!?」

 

は、はずかしい・・・

 

女性従業員「いらっしゃいませ」

 

スーツを着た眼鏡美人が丁寧におじぎ・・・

それを制してエレベーターへ、ボタンは・・・4階まで?

建物は8階建てくらいなのに・・・しかも4階の所にはVIPって書かれてる。

 

僕「略してTcsfはわかるんですが、どういう意味なんですか?」

久喜「簡単に言うとbrocartです」

霧子「英語にするとbrocadeですわね」

 

ああブロケードね。

 

チーン♪

 

エレベーターが開き、

今度はボディガードも兼ねてるような、

大柄で宝塚の男役みたいな眼鏡美女従業員2人がレッドカーペットの両側で深々とお辞儀をしている。

 

久喜「上への用事ですから」

 

観音開きの重々しい、王室のような扉を両方から開く従業員、

中は・・・マダム御用達、ゴージャス姉妹がうろついていそうな店内だ!

もう空気からいって違う!僕一人でぶらっと入ったら間違いなく摘まみ出されるな。

 

僕「し、下着が凄すぎて目がチカチカする・・・こんなのはじめて・・・」

久喜「鏡さんいかがですか?このお安いので170万円とリーズナブルになっております」

霧子「いえ、今日はお買い物ではありませんから」

僕「・・・・・そっか、車の中の匂いがわかった、高級下着の匂いだったんだ」

久喜「ええ、確かに運ぶのにあの車をいつも使いますから」

 

下着なのに宝石がいっぱいついてるなんて、どういうことだ!

こっちのなんか、変な所にチャックがあるし・・・ショーツなのに、けしからん!!

歩いて行くと奥の奥に、従業員用の通路がある、その突き当たりに従業員更衣室、って入っていいのか!?

 

コンコン

 

久喜「上へのお客様をお入れします・・・誰もいないみたいですね」

 

ガチャッ

 

中はロッカーというより洋服ダンスの豪華版が並んでる、

居心地悪く感じながらまだまだ奥へ・・・やがて突き抜けるようにまたドアだ、

くぐるとエレベーターホール、裏口みたいだな、非常階段やトイレもある。

 

久喜「鏡さんは6階でヒアリングを受けてください、あなたは8階の会長室へ」

僕「僕一人で、ですか?わかりました・・・」

霧子「・・・私は、結果がどうなっても、その、かまいませんので・・・」

 

結果・・・霧子さんのヒアリング結果の事かな?

それとも僕が会長に会っての結果・・・ちょっと怖いな、

インキュバス不適合者はその場で食べちゃうぞー、とかなければいいけど・・・エレベーターに乗る。

 

僕「こっちのエレベーターは地味ですね、大きいけど」

 

あ、こっちにはちゃんと8階までフロア表示が書いてある!

B1〜4FがTissus chers structures fines Japon、

5F〜8Fが日本砂吸舎・・・砂丘病院とはキュウの字が違うのか。

 

チーン♪

 

霧子「では、私はこの階で・・あの・・・その・・・」

僕「霧子さん、がんばってください!」

霧子「は、はいっ!!」

 

逆に僕が励ましてエレベーターは閉じられた。

そして8階へ・・・久喜さんも霧子さんと似た雰囲気だけど、

違うタイプで美人だよなぁ、霧子さんはメイド服や洋服が、久喜さんはチャイナドレスが似合いそうだ。

 

チーン♪

 

久喜「こちらです」

 

静かだ・・・この雰囲気、

大きな会社へ絵を売りに行った時の、

社長室があるフロアを思い出す、豪華な絵も飾ってある、

こういう所に飾る絵を描くのも僕の仕事なんだけど、ここは毛色が違う、

悪魔とか夜のお城とか、タロットカードの絵柄みたいなのばっかり・・・これはこれで高そうだ。

 

久喜「こちらの先に会長がおられます、失礼の無いように・・・」

 

コンコン

 

ガチャッ

 

中は・・・秘書室だ、

秘書の皆さんはパソコンとにらめっこしてたり、

書類を色々と整理してるみたい、もちろんみんな眼鏡美人・・・

 

久喜「お連れいたしました」

 

さらに奥の扉が勝手に開いた!

大きな窓ガラスを背に、明るい陽射しの中、

いかにもなテーブルに座って両肘をつき、手を組んで待ち構えていたのは・・・

 

久喜「こちらが鈴崎会長です」

鈴崎「ようこそいらっしゃいました」

 

僕が見た、その会長の姿は・・・・・!!

 

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