寒いかといえば気温は寒いけど、道東の寒さは極端だし、それにやっぱり東京は、
人の多さとビルから出る換気で暖かく感じる、ずっと東京だけに住んでるとこれには気付かない。
JRに乗るのかと思ったら霧子さんは裏手へ・・・確か大江戸線の大門駅の方だ、地下鉄に乗るのかな?
僕「てぃす・・・ちぇっす・・・すてくうす・・・ふぇねす・・・わかんないや」
霧子「Tissus chers structures fines フランス語ですわ」
これって何と表現したらいいんだろ?豪華な生地の匂いっていうか、
高級な布とか、香水とか・・・霧子さんや服部先生からも少し感じたような匂いだ。
僕「時間は・・・午後4時ちょっと前か、思ったより早く着いて良かった」
久喜「勤務定時は5時ですから、今の時間なら皆さんいらっしゃいますわ」
霧子「そうですね、インキュバスになる手続きに、間に合いますから・・・」
僕がインキュバスになる事への前向きな言葉が聞こえた気がする、
でも、まだ浮かない声・・・インキュバスになっても喜ばれないなら、嫌だな。
UFOキャッチャーで取れるようなぬいぐるみも置いてあるし・・・って、あれは!
格闘ゲームのやつだ、確かこれがサキュバスとかいうのだったはず。
サキュバスがサキュバスのぬいぐるみをぶらさげてて、ちょっと面白かった。
僕「ほんとだ、すんごい大きい!東京砂丘総合病院・・・って通り過ぎちゃった」
1階にはウィンドウがあって、そのに並んでいるのは・・・・・!
霧子「ええ、フランスの高級ランジェリーメーカーTissus chers structures finesの日本支店ですわ」
僕「うわー、うわー、すっご!この4点セット、20万円だって、下着なのに!!」
久喜「中にはもっとお値段が高いのも豊富にあります、見ていかれますか?」
僕「と、とりあえず、用事を済まさないと・・・って正面から入るんですか!?」
建物は8階建てくらいなのに・・・しかも4階の所にはVIPって書かれてる。
僕「略してTcsfはわかるんですが、どういう意味なんですか?」
大柄で宝塚の男役みたいな眼鏡美女従業員2人がレッドカーペットの両側で深々とお辞儀をしている。
中は・・・マダム御用達、ゴージャス姉妹がうろついていそうな店内だ!
もう空気からいって違う!僕一人でぶらっと入ったら間違いなく摘まみ出されるな。
僕「し、下着が凄すぎて目がチカチカする・・・こんなのはじめて・・・」
久喜「鏡さんいかがですか?このお安いので170万円とリーズナブルになっております」
僕「・・・・・そっか、車の中の匂いがわかった、高級下着の匂いだったんだ」
こっちのなんか、変な所にチャックがあるし・・・ショーツなのに、けしからん!!
歩いて行くと奥の奥に、従業員用の通路がある、その突き当たりに従業員更衣室、って入っていいのか!?
久喜「上へのお客様をお入れします・・・誰もいないみたいですね」
居心地悪く感じながらまだまだ奥へ・・・やがて突き抜けるようにまたドアだ、
くぐるとエレベーターホール、裏口みたいだな、非常階段やトイレもある。
久喜「鏡さんは6階でヒアリングを受けてください、あなたは8階の会長室へ」
霧子「・・・私は、結果がどうなっても、その、かまいませんので・・・」
インキュバス不適合者はその場で食べちゃうぞー、とかなければいいけど・・・エレベーターに乗る。
B1〜4FがTissus chers structures fines Japon、
5F〜8Fが日本砂吸舎・・・砂丘病院とはキュウの字が違うのか。
違うタイプで美人だよなぁ、霧子さんはメイド服や洋服が、久喜さんはチャイナドレスが似合いそうだ。
こういう所に飾る絵を描くのも僕の仕事なんだけど、ここは毛色が違う、
悪魔とか夜のお城とか、タロットカードの絵柄みたいなのばっかり・・・これはこれで高そうだ。
久喜「こちらの先に会長がおられます、失礼の無いように・・・」
いかにもなテーブルに座って両肘をつき、手を組んで待ち構えていたのは・・・