僕「今日は遅くなっちゃったなぁ・・・」

 

いつもなら夕焼け空を合図に戻るのに、

細かい部分に熱が入ってしまい、暗くなるまで粘ってしまった。

結局、本当に描けなくなったのは日が沈んでから・・・危なっかしい帰り道を気をつけて歩く。

 

僕「体もすっかり冷えちゃった・・・あれ?あそこにいるのは・・・?」

 

ペンションの玄関、その前で立っているメイド服!

まさか霧子さんが、表へ出て待ってくれている!?

慌てて、急いで走る!画材道具をガチャガチャいわせながら!

 

僕「・・・霧子さん!」

霧子「おかえりなさいませ、寒いでしょう?さあ中へ」

僕「それはこっちの台詞です!どうして寒い外へ・・・」

 

カランコロンカラン・・・

 

入ると暖かな甘酒が用意されている、

その匂いだけで体が芯まで温まりそうだ。

 

霧子「はいどうぞ、いきなりですと熱いですから、ふ〜ふ〜しますねー」

僕「わ!霧子さんの眼鏡すっかり曇っちゃって・・・霧子さんも寒いでしょう」

霧子「平気ですの、寒さには・・・それよりも心配でしたから、とはいえ邪魔してもいけないと思いまして」

僕「だからって・・・どのくらい玄関の前に立っていたんですか!?あ、いただきます」

霧子「ほんの2・・・1時間半程です、さあ、お風呂とお夕食、どちらを先になさいますか?」

 

やっぱり霧子さんも、こんなに僕の事を・・・!

 

僕「霧子さんの体を温めたいから、お風呂を、い、一緒に・・・」

 

ぐうぅ〜〜〜・・・

 

霧子「あらまあ、お腹はご飯が先とおっしゃってますわよ?」

僕「じゃあ、お風呂に入りながらご飯、はさすがに無理ですよね・・・」

霧子「考えておきますわ、今日の所はテーブルでいただきましょう」

 

今夜の食事はロビーみたいだ、

こたつでは乗り切らないメニューなのかな?

色々と準備してくれてる、その間に荷物を部屋へ運び、戻ってインターネットをする。

 

僕「・・・・・砂丘病院、と・・・わ!全国にある!」

 

さすがに47都道府県全てに、とはいかないか・・・

でも砂丘病院が無い地域でも、提携病院として大きい病院が載ってる、

全国にいる?サキュバスが何かあったらここへ行けばいいのか・・・北海道は札幌と、提携が室蘭・・・

 

霧子「紅茶をお入れしますねー」

僕「はい・・・北海道は東側に砂丘病院は無いんですね」

霧子「ええ、稚内や旭川、網走あたりに提携病院を置きたいそうなのですが」

僕「砂丘病院のホームページを見てるんですが、普通の大きい総合病院ですね」

霧子「もちろん一般の、人間の方も診察いたしますから・・・同族だけでは経営が成り立ちませんもの」

 

なるほどなるほど・・・

って霧子さん、僕が終わるの待ってるみたいだ、

服部先生のグラビアページでも探そうかと思った手を止めテーブルへ着く。

 

霧子「今日はホタテとかぼちゃのパイ包みに、ガーリックチキンステーキにオイスタースープです!」

僕「わぁ、レストランのメニューみたい」

霧子「明日からはしばらく家庭的な料理にする予定ですから、今夜は頑張ってみましたわ」

僕「なるほど、だからロビーで食べるんですね」

霧子「はい、それとこちらのハムサラダには和風ソースを・・・さあどうぞ」

 

かなりの力作、これを食べて欲しくて玄関の外で待つ気持ちが伝わるよ!

 

僕「いただきまーっす!・・・あれ?霧子さんは?」

霧子「今日はお店風にしたいので、後でいただきますわ」

僕「そっか・・・んぐんぐ・・・美味しい!コクがあって、濃厚で、素晴らしい!」

 

よく見ると牛肉は無いんだ、でも体に良さそう・・・

栄養バランスとか、献立の偏りが無いように気を使ってくれてるのだろう、

でも今夜は『あ〜ん』が無いのがちょっと寂しいかな?そこまで贅沢言っちゃ駄目か。

 

霧子「お客様、お水もどうぞ」

僕「ありがとう・・・なるほど、今日は客と店員って感じでいくんだ」

霧子「ええ、土日と従業員のように働いてくださったので、今日は完全にお客様としてのおもてなしを・・・」

 

お金を払っている以上、今月いっぱいは、そうだよな。

あらためて今現在の関係を確認されてるみたいだ、じゃあ来月からは?

忙しいから勝手に食べて!とかなるんだろうか?もしくは僕が作る・・・別に嫌じゃないけど。

 

もぐもぐもぐ・・・

むしゃむしゃむしゃ・・・

ぱくぱくごくごくずずずずず・・・・・

 

僕「おかずが美味いと、ご飯もおいしい!おかわり!」

霧子「はい、どうぞ・・・あら汚れて、お口を拭きますね」

僕「あ・・・ありが、とう・・・つい夢中で食べてたから」

 

さすがにちょっと恥ずかしいな、

あーん、とかしてくれてる時ならそうでもないのに。

・・・12月から従業員状態になると、もうここまではしてもらえないのかな?

でも、この間みたいな新婚さん状態に切り替わるなら、それはそれで嬉しいかも?

どういうスタンスで、どう線引きをすればいいのか、霧子さんも迷ってる状況かも知れない。

 

むぐむぐむぐ・・・

はむはむはむはむ・・・

くちゃくちゃがぶがぶ・・・・・ごっくん!

 

僕「ふぅ〜お腹いっぱい!」

霧子「まあ綺麗に!腕によりをかけた甲斐がありましたわ」

僕「ごちそうさまでした、いいのかな〜僕1人のためにこんなに」

霧子「実はクリスマスメニューの試作もかねておりまして」

僕「なるほど・・・じゃあ最後にケーキか何かが?」

 

言った傍から持ってきたのは、大き目のプリンだ!

 

霧子「はいどうぞ」

僕「ありがとう!生クリームまで乗って」

霧子「最初はケーキにしようかと思ったのですが、余ってしまうと困るので・・・」

僕「自家製ですよね?いただきます・・んぐ・・・甘すぎなくって、おいしい!」

霧子「あっさりした方が胃に、もたれないと思いまして」

 

最後まで完璧なフルコース・・・

変にデコレーションケーキとかフルーツパフェとか持ってこずに、

手作りプリンで〆る所なんかは霧子さんらしいうえ、僕の好みに凄く合っている。

 

僕「・・・もう食べ終わっちゃった!本当にごちそうさまでした!」

霧子「おそまつさまでした・・・」

僕「じゃあ僕は食器を洗う・・・のはお客様だから駄目かな」

霧子「私の食事もありますので、あとでまとめてさせていただきますわ」

僕「だったら部屋で落ち着いてから、露天風呂に入ります!」

 

自室に戻ってテレビをつける・・・

雪が止んでるからBSデジタルもちゃんと見れる、

日によっては大雪でNHK地上波すら大変な日があるからなぁ・・・

 

僕「スカパーとか入ればいいのに・・・有料放送中心だから無理か」

 

ベットで大の字になりながら考える、

今夜、ちゃんとした話し合いをするんだっけか、

これからの僕と霧子さんに関する・・・そうか、きっと今夜、

僕をインキュバスにするから、あれだけの料理を食べさせてくれたんだよな?

それで精をつけて、吸い尽くしてインキュバスに・・・インキュバスってどうやって、なれるんだろう?

 

僕「儀式とかあるのかな?免許制だったりして、そんな馬鹿な」

 

痛いのとか苦しいのとかだったら、頑張って耐えないと。

で、インキュバスになってからはどうなるのか、普通の人と基本的には変わらないみたいな事を言ってたけど、

じゃあ基本的以外の細かい部分は?とか気になるよな、僕にも翼やしっぽが生えるんだろうか?出し入れできるんだろうか?う〜ん・・・

 

僕「細かい疑問はいっぱいある、山のように」

 

精が欲しいなら、入れずに出した精を注入する、とかは駄目なんだろうか?

挿入しなければインキュバスにならずに済むんなら、挿入しないで入れる方法・・・

あっ、それがあの薬として注射したり飲んだりしているやつなのかも?どうだろう?

 

僕「医療が発達してるなら色々解決できそうだけど・・・うむう・・・」

 

あとの疑問は・・・サキュバスはどうして生まれたか、

日本にはどのくらいいるのか、霧子さんは何歳なのか、

サキュバスだけじゃない、インキュバスもどれくらいいるのか、

子供は作れるのか、戸籍は?資金源は?あの薬の精液以外の成分は?

あの翼でどうやって空を飛んでいるのか、しっぽは自分でどのくらい動かせられるのか・・・

 

僕「疑問を箇条書きしたら100は超えそうだ」

 

こんな時はお風呂でのんびりしよう、

霧子さんのモデルはどうしようかな・・・

大事な話が長くなったら無しでいいかな?

でも話の前にモデルしてもらうのもいいかも?

モデルしてもらいながら話、はさすがに集中できないか、まあ、とりあえずは・・・

 

僕「よし、体を芯から暖めよう!!」

 

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