緊張する・・・もちろん霧子さんの裸を見るって事が緊張だけど、
それよりも、あの大きく黒い翼を、また見る事ができるのが、緊張する。
この心臓、よく無事だったと思う、ナイフが刺さっていたのに・・・
うまく奇跡的に急所を外れたんだろう、今にして思えばそんなに深く刺さってなかった気もするし。
僕「あの痛さは現実だったよな、でも霧子さんのおかげで夢に『してもらった』感じだ」
命の恩人・・・その霧子さんのお願いなんだから、2年住むくらいは平気だ、
逆に我侭言ってモデルまでしてもらう、ちょっと戸惑ったけど引き受けてくれた・・・
そんな霧子さんのためにも、本当に良い絵を作って、売ってこのペンションに、霧子さんに還元しなきゃ。
脱ぐんだからそこまで気にする必要は・・・はっ!もしかして、冷静に考えたらやっぱり嫌です、とか!?
霧子「すみません、薬を服用していて、時間がかかってしまいまして」
僕「あ・・・それは逆に僕が申し訳ないです、急がせてしまったみたいで」
霧子「いえ・・・注射の痕がまだ残っていますが、よろしいでしょうか?」
僕「それは構いませんが、時間を置かなくても平気ですか?その、変身するんですし・・・」
霧子「・・・できれば変身、という言い方は、控えていただけると嬉しいですの」
あっちゃー、失敗しちゃった、モデルさんを怒らせるのは最大のタブーだ。
僕「ごめんなさい、もう言いません・・・では、カーテンを閉めます」
って覗いてちゃいけない!準備、準備・・・もうほとんど終わってるけど。
僕「ではこの椅子に・・・背もたれをサイドにしてもらって、座ってください」
精神を集中してる・・・わ!みるみるうちに黒い翼が広がって、、
黒い、しなやかなしっぽもニョキニョキと・・・完全なサキュバスになった。
霧子「それと眼鏡だけは申し訳ありませんが、外せませんので・・・」
僕「いいですいいです、その、霧子さんの、好きなように・・・」
ちゃんと計算して、翼の角度や、しっぽの位置を・・・まあ、どうでもいいか。
僕「座っていただいたら楽にしてください、辛くなったらいつでも言ってくださいね」
僕「ええ・・・じゃあちょっと、揃えて斜めに・・・そうそう、そんな感じで」
風も無いのに翼が少し揺れている、この程度なら問題ないけど・・・
僕「・・・・・・・・・・・・・あ、トイレや水は遠慮なく言ってください」
ひょっとしたら、あの姿で生まれたのかも知れないし、人間からああなったって事もありえる。
あの大きさで空を飛べる秘密、サキュバスって何人くらいいるのか、
どうやって生まれるのか、インキュバスとかいうのも謎なままで教えてもらってない。
精を吸う魔物、って、じゃあ普段の食事は意味があるのだろうか?
そして、魔物が飲んでる薬、打ってる注射はどういう物か、サキュバス以外にも魔物はいるのか・・・
でも、知っちゃいけないような、深みにはまってしまいそうな・・・
さっきからすでに背筋がゾクゾクする、霧子さんが美しすぎて、というのもあるんだろうけど、
何と表現していいか・・・サファリパークで遠くにライオンが寝てるからってバスを降りちゃうような感じだ、
安心、安全と思ってても、向かってきたらバスに逃げ込めばいいだけだと思っても、神経がピリピリして恐怖心を拭えないような・・・
僕「いえ、寒い訳ではありませんから!霧子さんは寒くありませんか?」
その白さとは対照的な、黒い翼やしっぽ、このコントラストが素晴らしい、
脱ぐときにちらっと見えた黒い下着やストッキングも付ければ、もっと良いバランスになるんだろうな・・・
僕「・・・・・とりあえず今日はこれでいいかな・・・霧子さん、ありがとう」
僕「ご、ご飯は、遅くていいですから、先にお風呂に入ってきます」
一方、霧子さんは・・・しゅるしゅると黒い羽根がしぼんでいった、
しっぽも掃除機のコンセントみたいに、しゅるしゅると・・・そして脱いだ下着をつけはじめてる。
霧子「はい・・・いっその事、お昼は外の絵、夜は私の絵、というのはいかがでしょう?」
ホテルでメイドやってた時も、仕事が早かったんだろうなあ・・・
霧子「そうですかー?ラム肉が届いたのでジンギスカンはいかがでしょうか」
モデルも夢中になってたって・・ぼーっとしてる事が夢中なんだろうか?
積もってはいどうだけど・・・温度差が激しそうだから、気をつけて入らなきゃ。
あと・・・2年間お世話になる記念に、このペンションにも、何か絵を1枚、プレゼントしたい。
視点を変えてというか、サキュバスの持つ『怖さ』を全面に出した・・・
普通にしてもらってるだけなのに、ひとこすりが極上のマッサージみたいに気持ちいい。
急に頭がのぼせて聞けない、何を聞こうとしたかすら瞬時に忘れてしまった。
僕「・・・霧子さん、お、お礼に、霧子さんの背中、流しても・・・いいです・・・か?」
霧子「私ですか?まあ嬉しい!では私も一緒に入らせていただきますね」