頭痛も特に出なかったのは、霧子さんの念入りなマッサージのおかげだろう。
僕「働きながら2年、じっくり描くのもいいかも知れないな・・・」
ちゃんと「出来る」所を見せないと、それこそペンションのヌシか、
霧子さんのヒモみたいな状況になりかねな・・・ん?なんだろう?何か動いてるぞ!?
回収は明日だし・・・うっぷ、結構な量があるな、く、くさい・・・
中が丸見え・・・一番奥にあったであろうソレが特に変な匂いを放っている。
よーく見るとこれは・・・見覚えがあるぞ?そうだ、メイド服だ!
霧子さんがいつも着てるタイプの・・・うっぷ、何かついてカビカビになってる。
僕「この浪人生の押入れにあるような匂いは・・・・・まさか!」
僕「ないな・・・ガラスは燃えないというより別の区分なのかな」
律儀に外して分別してるんだ・・・その一番奥に何かある・・・針金っぽい?これは・・・
ううぅ・・・散らかしたゴミ捨て場を片付けなきゃいけないのに、頭がぁ・・・
さあ、元に戻そう・・・そして後で霧子さんに聞かなきゃ、本当のことを・・・
でも、夢の中で見た霧子さんが、これと同じ破損してたっていう証拠はなんだ!?
今、夢でそう見たから間違いない、っていう確信さえデジャヴだとしたら・・・見つけてしまってからでは、そう思えてしまう。
頭痛が無理に「やっぱり夢だったんだよ」って事にしようとしてるみたいだ、
見つけた眼鏡はかなりの証拠なのに、その証拠を見つけた自信さえ急に流れていった、
結局、僕はおかしな一人芝居を延々と続けているのでは?という気に・・・う〜ん、わけがわからなくなってきた。
どうせ回収は明日の朝だし・・・わざとゴミ捨て場の裏に隠すように置いてその場を離れる。
霧子「今日もお背中を・・・あとマッサージもさせていただきたくて」
それとは違うゾクゾクとしたものが背筋を走り抜けた、これは・・・恐怖心!!
逆にすたすたと近づいてくる、あいかわらず眼鏡をかけたまま・・・
ちゃぷん、と足を湯に入れた!さらに恐怖心が強くなる!こんな感覚、今までなかったのに!
霧子「そんなに逃げなくても・・・別に食べようとしている訳ではないんですから」
僕「で、でもその、ほら、ま、まだ明るいし、それに、まだゆっくり浸かっていたいから・・・あう」
霧子「背中が端っこについてしまいましたわ、もう逃げられませんよー・・・ふふふ」
その迫力も確かに凄いけど、この何とも表現し辛い怖さは何だろう?
とんでもない事をされてしまいそうな、取り返しがつかない状態にされそうな恐怖・・・!!
心臓がバクバク・・・でも、そのまま肩をもみもみされると、一気に力が抜けていく・・・
いざ揉まれはじめると、とろけるような快感に浸ってしまう・・・
不思議だ、魔法みたいだ、そしてその変化が逆に、さらなる怖さを感じる・・・
僕「ゴミ置き場、キタキツネが荒らしてましたから・・・片付けておきました・・・」
霧子「まあ、それは、わざわざ、ありがとうございます!はい、後ろへ反らしてください」
僕「んぐっ・・・それで、ビリビリに破かれた、メイド服があったんですが、あれは、いったい・・・」
あああ、首の両サイド、頚動脈のあたりを指でグリグリされると、気持ちよすぎるぅっ!!
霧子「あれでしたら、灯油を運んでいる時につまずいて被ってしまいまして、古かった事もあって捨てましたわ」
僕「そ、それであんな変な感じに汚れていたんですか・・・ああう・・・こめかみのマッサージも、気持ちいい・・・」
霧子「あのまま捨てては燃えるゴミとしては出せないんですよー、ちゃんと切り刻まないと、大きなゴミと扱われて回収されませんから」
僕「律儀なんですね、ボタンとか金具も外してあったみたいですし・・・んあぁ・・・コリがやわらかくなってきてるぅ・・・」
霧子「それと、あのままで捨てると拾って何に使われるかわかりませんから、下着も捨てるときは裂いてからなんですよ」
説得力のある説明、気持ちいい事をされながら聞かされてるからか、妙に納得できてしまう。
僕「なるほど・・・あと壊れた眼鏡も捨てちゃうんですね、ちょっともったいな・・あっ・・・耳の下のツボも、いいいぃぃぃぃぃ」
霧子「眼鏡も度が合わなくなってきてましたから、今のこの眼鏡が丁度いいんですわよ」
そうなのか・・・あれ?その眼鏡って、さらに古い眼鏡だったんじゃ!?
いつ、いつつ・・・偏頭痛がぶり返してきた!・・・あ、そうか、レンズだけ代えたのか、きっとそうだ。
納得して自分に言い聞かせると頭痛も治まっていった・・・この頭痛もおかしいよな、なぜか推理を邪魔してるみたいだ。
僕「あ・・・・・あっ!そうだ、もう出なきゃ!ごめんなさい!じゃ!」
霧子「んもう・・・夕食のお鍋は私の部屋ですから、後でお呼びしますねー」
僕「あ、ありがとうございます、前は、自分でやりますから・・・」
そうだな、あんまり深刻に考えるより、今はせっかくのこのペンションを楽しもう、
絵も再開できたんだし・・・鍋かぁ、石狩鍋かな?すきやきって可能性もある、想像しただけでお腹が空いてきた!