バシュ!バシュ!バシューーーン!!

 

・・・・・急に現れた僕らの前に立つ影、

それは・・・背中をむいている!?

その向こうに大塔さん・・・にらみ合ってるみたいだ。

 

「・・・・・・・・・・」

 

無表情のまま、大塔さんは足を後ろずさりし・・・

 

タタタタタッ!!!

 

・・・逃げていった。

 

「あなたたち、大丈夫かしら?」

 

くるりと振り向いた影、

大小様々な銃を迷彩服に身につけた少女・・・

たしか彼女って、大塔さんとは別の、もう1人の転校生・・・!?

 

「・・・助けてあげたのにその態度は何かしら?」

「え?あ!・・・あかさ、さん・・・」

 

あかささんが震えながら銃を転校生に向けてる、

しかも、僕の背中に隠れながら・・・って僕を盾にするなー!

震えた声で武器だらけの転校生に言い放つ。

 

「ちょ・・ちょっとー・・・勇人くんからー・・はなれてよー・・・」

「あら、私と撃ち合うのかしら?いいわよ、そのかわり・・・」

 

転校生が持っていた銃をくるりと回転させ、

銃口を持って僕らのほうに差し出した・・かと思ったらそれを放り投げた!?

 

くるくるくる・・・

 

ガスッ!!

 

「いたぁーーー!!」

「え?え?え?」

 

何があったんだ?

って、あかさサンの手が転校生に思いっきり蹴られ、

銃が弾き飛ばされ、くるくる落ちてきた銃をパシッ、と受け取って、あかさサンに向ける!!

 

「・・・撃てるものならね!」

 

なんという早業・・・

真上へ放り投げた銃に見とれているうちに・・・

あかさサンは尻餅ついて両手あげちゃってる、降参するしかないよな・・・

 

「もうそれぐらいで許してあげてくれないかな、その・・・」

「禅華 小豆(ぜんか あずき)よ、あらためまして初めまして、美麗勇人くん」

 

銃口を下ろす・・・

そうか、禅華さんって名前だったっけか・・・

 

「ありがとう、禅華さん、助けてくれて・・・」

「助けたのはこれで2度目よ、隙がありすぎるわよ?」

「ご、ごめん・・・え?2度目って・・・?」

 

あかさサンは弾かれた銃を探してウロウロしてる。

僕は禅華さんに差し出された腕を掴んで立ち上がった。

 

「洞窟で助けてあげたわ、あやうくヤられちゃうとこをね」

「え?・・・じゃあ、あの時、入り口から撃ってくれたのは・・・?」

「そう、私よ。暗視スコープのある銃があって助かったわ」

「だ、だったら言ってくれてもよかったのに・・・」

「銃声に気付いた他の子が来たからね、だから君が奥へ行くように威嚇したわ」

 

そっか、だからあのとき、僕にも撃ってきたのか・・・

案外、その後から来た3人が相打ちしてたのも、

実は彼女が遠くからアシストして撃ってくれてたのかもしれない。

 

「もー泥ついちゃったー」

 

あかさサンが銃を見つけて戻ってきた。

 

「はやくいこーよー」

「あ、そうだったね、うん、急ごう」

「私もついていっていいかしら?護衛は多い方がいいでしょ?」

「う・・・うん、じゃあお願いしようかな」

「あーーー!消えてるーーー!!」

 

あかさサンの指さす方・・・

そっちは確か、房後さんがイカされちゃった場所だ。

そういえばいない・・・まさかイッてなかったとか!?

 

「あら、彼女ならさっさと兵隊さんが運んで行ったわよ?」

「いつのまに・・・」

「彼らは私達の邪魔をしないよう、最低限の事しかしないかわりに仕事はスムーズよ」

「えー、じゃーあの子の荷物はー?」

「大塔って子が逃げる際に掴んで行ったわよ?惜しいけど君たちの無事が第一ですもの」

 

凄い洞察力だなぁ・・・

味方になってくれたら百人力だ。

 

「で、どこに行くのかしら?」

「別荘です、あかさサンの・・・」

「あー、あそこかしら・・・場所は見当ついたわ、行きましょう」

 

禅華さんを先頭にしてついていく・・・

あれれ?あかさサンが僕を引っ張って・・・?

 

「ちょっとー、勇人くんー、信じていいのー?」

「だって僕を2度も助けてくれたし・・・」

「罠かもしれないよー?よく考えてー、あの人、優勝した事あるって話だよー」

 

・・・・・そういえばそうだ。

過去の優勝者なのに参加しているという不思議・・・

でも、あれだけの腕前なら僕を瞬殺してしまう事など、容易いはず・・・

 

「きっとー、何かたくらんでるよー」

「そうかなー・・・」

「油断しちゃだめだよー」

 

そうだな、完全に気を許すのは危険かも知れない。

 

「あら、何を相談中かしら?」

「な、なんでもないです・・・」

「私の別荘、もうすぐだよー」

 

誰かいないか警戒しつつ山を下りると、

遠くの海岸で撃ち合っている音が聞こえる・・・

相当な大金が懸かってるとはいえ、みんなで山分けすればいいのに。

 

「・・・・・この家かしら?」

「そうだよー、ちょっと待っててねー・・・」

 

暗証番号を押して警備カメラを覗き込む、あかさサン。

 

・・・・・ピッ!ガシャッ!!

 

「あいたよー、はやく入ってー」

「うん・・・網膜認証か」

「はやくはやくーーー」

 

・・・僕が入ったところで、あかさサンが扉を閉めにかかる!!

 

ガキッ!!

 

隙間に入れられた銃口・・・

それは真っ直ぐ、あかさサンに向けられている・・・

 

「私を閉め出そうというのかしら?」

「あ・・・あー、忘れてたー、ごめんねー、ぜんかさーん」

「禅華さんも早く!誰も来ないうちに」

 

3人が入ったところでガチャリとオートロックがかかる。

中は空調がきいていて快適だ、しかも広い・・・天国みたいな所だ。

 

「電気はちゃんと通ってるんだね」

「大丈夫みたーい、誰も入ってこれないからここに隠れてたら勝てるよー」

「そうかしら?少なくとも私とアナタは時間が来たら他のエリアへ行かないと失格よ」

 

・・・そういうルールだったんだっけ。

 

「勇人くんが助かればいいもーん、ねー?」

「う、うん・・・ありがとう・・・」

「あら、山分け狙いじゃないとすれば、何が狙いなのかしら?」

「・・・勇人くーん、お風呂の用意するねー、ベッドも保存食もあるからー」

「そういえば喉がかわいた・・・水道は出るのかな」

「だったらコーヒーいれるー、そこで待っててー」

 

ふかふかのソファーに座る、

禅華さんは・・・窓ガラスのブラインドを降ろしはじめた。

 

「どうして・・・?この別荘、頑丈そうだし、それに鍵が・・・」

「勇人くん、自分の立場わかってるのかしら?君は莫大な賞金首なのよ?」

「そう、かも知れないけど、でも命までは・・・」

「そうね、命は取っちゃいけないルール、でも荒っぽい事してもいいルールなのよ」

「じゃあ、この別荘を、例えばショベルカーかな何かで壊すとか・・・?」

「私が参加した過去の大会ではアイテムに手榴弾を貰ってる子とかもいたわ」

 

・・・・・声を小さくしよう。

 

「コーヒーできたよー」

「こ・・・声が、おおき・・・い!」

「えー?どうしたのー?はいー勇人くんのー、そしてこっちが禅華さーん・・・」

「・・・・・・・・伏せて」

「え?」「えー!?」

 

窓の横に立って銃を構える禅華さん!

僕とあかさサンは言われた通りに伏せる・・・

 

・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・行ったみたいだわ・・・もういいわよ」

「・・・・・・・・・ほっ」

「ほんとにー?よかったーーー」

 

落ち着いてコーヒーを飲む、あさかサン。

 

「・・・おいしー・・・みんなも飲んでー、自信あるのー」

「じゃあ僕も、いただきまー・・・」

「待って!・・・・そのまま、動かないで!!」

 

え?戻ってきたのか!?

・・・・・いや違う、禅華さんが見てるのは・・・・・あかさサン!!

 

「あぁーーーっ!!」

 

ガシャン!!

 

コーヒーカップが落ちる!

そして、あかさサンが・・・身悶えている!?

 

もどる すすむ