「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

なんだかよくわからないけど山を登ってしまった、

でも、ここからなら下を見渡せるから、みんなの動きがわかる・・・

海には船や瀬戸内海の他の島が見え、森では木の陰に兵隊さんが構えてる。

 

「あの・・・兵隊さん・・・」

「・・・・・・・・・」

「誰にやとわれて、どういう・・・あ!」

 

ヘルメットに自衛隊と書いてあったのは見なかった事にしよう・・・おそるべし菱大路財閥!!

 

「そうだ!荷物、荷物・・・」

 

リュックの中をさぐる・・・

あった、拳銃だ、とはいっても出るのは性的興奮ビーム、

しかもほんとに残り17発・・・それより僕用の武器って何だろ?

 

ガサゴソガサゴソ・・・

 

「・・・これか?違う、これはルールブックだ」

 

ええっと・・・あった、バームクーヘン3切れ・・・これは食料だ、違う違う・・・

 

「・・・・・あれ?ジャージのズボンの中に何か入ってるぞ?これは・・・」

 

形は大きめの電卓みたいだけど、取り出すと・・・

 

「電子辞書?というより、電子メモ帳・・・いや、モバイル?」

 

スイッチを入れるとパネルに3年0組のクラス名簿が現れた。

 

「ふむ・・・わかった、これに情報を打ち込んでいけばいいんだな・・・よし」

 

僕はとりあえず、今わかっている情報を適当に打ち込んだ。

 

1日目午前11時55分の情報

 

「駄目だ、いつも竹刀持ってる曾根崎(そねざき)さん以外、

 情報がこんがらがってさっき体育館で回想した情報しか打ち込めない・・・」

 

こんな事ならもっとクラスメートとスキンシップしておくべきだった、

変に避けてたからなぁ、こんな仕掛けがあるなんて思いもよらなかったから・・・

さて、どうしよう・・・とりあえず学生服から動き易いジャージに着替えるかな。

 

「んしょ、んしょ、んしょ・・・」

 

脱いだ学生服もちゃんとリュックに詰めて・・・

お、体育館からみんな出てきた、やっぱりジャージが多い、

中で着替えたんだろうな、でも何人かはセーラー服あと私服も・・・

 

「・・・あれ?あれれ?まっすぐこっちへ向かってくるぞ?」

 

どうして?

・・・・・・・・そうか!わかったぞ、

ここから僕がみんなを見下ろせるってことは、みんなが見上げれば簡単に僕を見つけられるってことだ!

 

「なるほど、これは盲点だった・・・・・やば!逃げなきゃ!!」

 

1時間は撃たれないとわかってても、取り囲まれたらおしまいだ!

 

「どこかに身を隠さないと!!」

 

そうだ、地図、地図!

リュックをあさりながら走る・・・

どこだどこだ・・ないぞないぞ・・・・・

 

☆地図☆

「あった!ルールブックに挟んであった!!」

 

このまま真っ直ぐ行くと神社・・・

右は港、左は廃墟の村・・・ここは廃墟かな・・・

 

「村なら隠れ場所もいっぱいありそうだ!」

 

全速力で山を左に駆け下りた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・・・・・・・

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・」

 

時間は・・・12時36分、

もし見つかっても撃たれる事は無い、

ボロボロの廃墟の村・・・でも中央に井戸がある。

 

「中は・・・綺麗そうだぁ」

 

ロープを引っ張って、桶の水を・・

ごく・・ごく・・ごくごくごくごく・・・

 

「あんまり飲むと逃げる時、脇腹が痛くなるわよ」

「!!??」

 

慌てて井戸に桶を落とす!

振り返るとそこには・・・ばかでかい眼鏡にセーラー服、背が低めの少女だ。

胸のネームプレートに目をやると幌月 世衣と書いてある、クラスメート、だっけ。

 

「えっと、その・・・」

「まともに話するのは初めてね、ほろつき・よいっていうの、みんなには『ほろよいちゃん』とか呼ばれてるわ」

「その・・・お酒が好き、とか?」

「ううん、化学に酔ってるの、ウチは代々理系学者なの・・・あ、身構えないで!私は愛とか恋とか興味無いから」

「ほんとう?・・・じゃ・・・じゃあ、味方になってくれる・・・の?」

 

くるっ、と僕に背を向ける幌月さん。

 

「それは利口じゃないわ、私は何もせず、ずっと隠れてるから・・・逃げ切ってね」

「ええー?じゃあ・・・準優勝狙いだけど、まったく何もしないってこと?」

「そ、このクラス入ったのも研究に打ち込むためだし・・・愛や恋に興味無いから私は逃げるわ」

「それで、僕が逃げ切ったら漁夫の利で・・・でも、なぜそれを僕に?」

「敵と間違われて撃たれたらもったいないでしょ、何もしないから何もしないでって事が言いたいだけよ」

 

釘を刺しに来たのか・・・後でメモっとこう。

 

「そうそう、もうすぐここに8人くらい来るから逃げたほうがいいわよ」

「ど、どこへ!?」

「そうね・・・どこも危険だけど、とりあえず思いっきり遠くへ行った方がいいわ、30分は稼げるから」

 

素直に信じて良さそうだよ・・・な?

 

「わかった、ありがとう!頑張って生き延びるよ」

「はいはい、自分の身は自分で守るのよ、じゃーね」

 

僕は廃墟を捨てて島の奥へ奥へと足を速めた。

 

「勇人くん・・・・・ほんとに、逃げ延びてね・・・・・最後まで」

 

 

 

 

 

ウ〜〜〜ウ〜〜〜ウ〜〜〜〜〜〜

 

サイレンが島中に鳴り響く、

腕時計は午後1時だ、いよいよ今からバトルが始まる・・・

僕はとりあえず、小川で水を飲みながらリュックからバームクーヘンを取り出した。

 

「お昼ご飯取らないと、逃げられないよな・・・」

 

バームクーヘンが御飯かどうかの問題は別にして、

急いでパクつく・・・味は普通だけど、1個じゃ物足りない・・・

 

「んぐ・・・もっと食べたければ他の子を倒して、ってことか・・・」

 

さあ、もっと奥へ行こう・・・

一応、これからは銃を持ちながらにした方がいいよな?

 

ズキューン!!

 

「わ!?」

 

森に響く銃声・・・

でも、かなり遠くみたいだ。

 

バシュッ!バシューッ!!

 

撃ち合ってる・・・

みんな闘わず、全員で山分けすればいいのに。

 

パンパン!パンパンパン!!

 

単発の銃声もあるんだな・・・

あれ?銃にボリュームみたいな装置がついてる?

何だろう?マニュアル、マニュアル・・拳銃の項目は・・・あった。

 

・催淫銃のビームは強弱の調整がつきます、

 最大にすれば威力は大きくなりますが発射速度が遅くなります、

 最小にすれば威力は弱まりますが発射速度が最速となり相手は避けられません

 

なるほど、ビームの放出を変えられるのか、

でも弾数は変わらないみたいだ、よし、真ん中に調整して、と・・・

音の短い銃声はビームが速く、長い銃声は遅いかわりに当たるとダメージ大・・・

大きいダメージなら多少急所を外れても相手をイカせられるかも知れない、

逆に小さいダメージのビームでも急所をうまく狙い済ませば一発で・・・マニュアルは読んでおくもんだ。

 

「さあ、逃げよう」

 

でも島の端へ行くと逃げ場が無いよな、

海岸沿いに走られてたら待ち伏せしてるだろうし・・・

どこかに身を潜められる場所は・・・4時間なら同じエリアにいられるんだよな?

 

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