「・・・・・あれ?ここは・・・どこだ?」

 

意識が戻ると、開いた窓から見える夕日・・・

そして僕は綺麗なベッドに寝かされている、

お布団もふかふか・・・医務室か何かか?と思ったが、

外をよく見ると海が見渡せる事からここがかなり高い場所である事がわかる、

そうだ、ここは・・・灯台だ!きっと有人灯台の仮眠室か宿直室なんだろう。

 

ガチャッ

 

「ん〜・・・あ、起きてる起きてる!」

「えっと、君は・・・ええっとぉ・・・」

「かすみよ、夕前香澄(ゆうまえかすみ)」

 

ポニーテールが風に軽くなびいている。

 

「ええっと、それで僕は・・・」

「大変だったんだから、放送があって慌ててみんなで運んで」

「あ、ありがとう・・・」

「安心して、私たちは引き分け狙い、準優勝目当てのグループだから」

「そっかそっか・・・ありがとう、助かったよ」

 

ぎゅるるるるる・・・

 

「ご、ごめん、お腹が鳴っちゃった」

「待ってて!いま泉ちゃんが料理作ってるから」

「泉ちゃんっていうと・・・・・う〜〜〜ん・・・」

「温泉チェーンのお嬢様よ、私とは育ちも違うし料理の腕前もばっちり」

「そっかそっか、じゃあ期待してもいいかな」

 

限られた材料でがんばってくれそうだ。

 

「はいお水」

「ありがとう・・・おいしい」

「灯台の電気とか水道が繋がってて助かったわ」

「・・・かすみちゃんは・・・本当に引き分けでいいの?」

「ええ、私はみんなほど借金とかないし・・・私たち灯台篭城組は借金の額が少ない集まりよ」

 

じゃあ、クラスメイトってみんな、借金を背負ってるのか!?

 

「私は養護施設グループ会長の娘だから、賞金がいくらであっても受け取った分は全部寄付するの」

「偉いんだね・・・それより、借金って話、初耳だけど?」

「知らなかったの?クラスメート、あの転校生は知らないけど、みんな菱大路家に大なり小なり借金がある子ばっかりよ」

「そうだったんだ・・・だから賞金をできるだけ多く稼ごうと」

「そういう子も多いけど、ほら、あなたと結婚できれば借金チャラなうえ菱大路グループの系列になれるから、色んな夢が叶うのよ」

 

なるほど、たしかにウチは美麗家だけど菱大路家と太いパイプがある、

その資金力を使えばどんな事業も、研究も、夢も大概は成功するだろう。

まさに一発大逆転・・・玉の輿サバイバルだ、ほんと、運よく引き分け狙いの子に拾ってもらえて良かった。

 

「助けてくれてありがとう、でもここ、ほんとに安全?」

「ええ、まず入口はひとつでしっかり守ってるし、それに・・・ちょっと窓から下を見て」

「どれどれ・・・あ、下の窓から銃を構えた子がいる!」

「反対側にもいるわ、灯台を利用して上から狙ってるの」

「なるほど、近づいてきても狙い撃ちできるね、じゃあほんと安全地帯だ」

 

とはいえ4時間毎に一度出なきゃいけないルールなんだよな。

 

「あと1時間したら一緒に出てもらうけどね」

「どこへ行くの?灯台はここしかないんだったよね」

「さっきまでみんなで相談してたんだけど、発電所とかどうかなあって」

 

・・・・・なんだか料理のいい匂いがしてきた。

 

「あ、できたみたいね、じゃああなたの分も持ってくるから待っててね」

「いいの?ありがとう」

「大事な大事な人質なんだから!」

 

あう・・・引き分け狙いだと、そういう使い方もできるのか。

ポニーテールをなびかせながら出て行った香澄ちゃん・・・家庭的なお姉さんって感じだ。

ええっと今の時間は・・・僕の荷物は?あったあったベッドの下だ、ええっと・・・あれ?あれれ??

 

「ない!ないぞ!銃が・・・僕の銃が、僕のじゃなくても、銃がひとつもない!!」

 

取り上げられたか!?

僕を回収するとき、一緒に持ってきてくれてもいいのに・・・

いや、きっと拾いはしたんだろう、でも僕には持たせたくなかったんじゃないか?

だって撃たれても即アウトにはならない僕と撃ち合いにでもなったら女の子が圧倒的不利だ、

僕が灯台にいるみんなを撃たない保障なんてどこにもない・・・だから丸腰にしてしまえばいいって判断だろう。

 

「ほんとにないよな?・・・うん、部屋のどこにもない」

 

あと、僕を助けるにあたっても銃を使ったのかも知れない、

この場所を守るのだって銃は、玉はいくらあっても足りないだろう、

まあ、やっちゃおうと思えばチャンスはいくらでもあったはずだから、

引き分け狙いなのは信じて良さそう・・・かな?少なくとも香澄ちゃんの場合、

ついさっき2人きりになったときに犯そうと思えば犯せたんだし・・・さて、これまでを整理しよう。

 

「電子手帳を出して・・・」

 

1日目午後5時56分の情報

 

「さっき相打ちさせた2人って、猪頭 克奈(いのがしら かつな)と早瀬 秋(はやせ あき)だよな?」

 

うまく頭を下げたと同時にトリガーを押せてよかった。

知ってるだけで8人も失格、実際にはもっと行ってるかも知れない。

名簿の一番下、転校生2人だって派手に撃ち合ってたから、どっちか負けたか、それとも・・・

 

「このまま終わるまで、いっそ全員相打ちしてくれれば・・・」

 

そう都合よくは行かないか、

さっきの廃校だって相打ちというよりは、

ちゃんと2人同時に倒したんだから。

 

「いや、倒したと思ったら撃たれて・・・あ、やっぱり相打ちか」

 

夜になったら大変そうだな、

4時間同じエリアにいちゃ駄目って事は熟睡できないって事だ。

でも僕は、僕だけは時間切れ射精しても、居場所がばれるだけでそのままいてもいいのでは?

灯台を守ってくれるみんながローテーションでも組んで1人ずつ4時間毎に出て、

ここで篭城し続ければ・・・駄目だ、灯台にいるって派手にばれたら取り囲まれて、

守ってくれる女の子がエリア外へ出られなくなるかも!

 

「ほんっと、良く出来たルールだなぁ・・・あ、だからさっき、みんなで発電所へ行こうと・・・」

 

♪キンコンカンコ〜ン

 

『6時の定時放送ざーます、失格者を退場順に発表するざーます』

 

お!これで知らない失格者がわかるぞ!

 

『出席番号5番、大鳴 夏海(おおなき なつみ)さん』

『出席番号34番、目鎌 乙女(めかま おとめ)さん』

『出席番号39番、雷光 射夢(らいこう いむ)さん』

『出席番号29番、辺見 静歌(へんみ しずか)さん』

『出席番号6番、唐城 玉穂(からしろ たまほ)さん』

『出席番号38番、予納 司(よな つかさ)さん』

『出席番号28番、房後 晶(ふさご あきら)さん』

『出席番号40番、若蔦 宝子(わかつた ほうこ)さん』

『出席番号1番、閼伽砂 美実(あかさ みみ)さん』

 

読み上げるのが早くてチェックが追いつかない・・・

ええっと失格した所を見てない子は・・・5番、34番、あと・・・

 

『以上ざます、なお私はもう寝るざますから、朝までに勇人さん射精の場合は位置を私の合成音声で、自動で流すざます!』

 

うわ、ずるい!自分はこんな早い時間にとっとと寝るのかよ!

まあいいや、失格はさっきのアナウンスだと9人、42人いてもう9人・・・

あれ?何かおかしくないか?僕のデータと食い違いがあるような気が・・・?

 

ズキューーーーン!!

 

「うわ!?」

 

下からだ、しかも近い下!

つまり、この灯台の中だ!

敵が入り込んできたのか?

 

「いや、それならもっと騒がしいはず・・・」

 

とりあえず様子を見に行こう。

武器が無いのは不安だけど・・・

 

「う、まだ足に力が入りにくい」

 

痺れた後みたいだけど・・・

なんとか大丈夫だ、扉を開けて・・・

螺旋になっている灯台内の階段を降りると、

1階分下の部屋から灯りと怒号が漏れ聞こえる。

 

「ちょっとどういう事よ」

「知らないわよ、私じゃないわよ!!」

「そ、それより何とかしないと、イッちゃうかも」

「それはまずいわ、兵士が来る前に表へ出してしまいましょ」

「ひ、ひどい・・いいっ・・い、いっちゃいそう、いっちゃうううぅぅ・・・」

 

中は5人いるみたいだぞ?

ドアがちょっとだけ開いてる、

そこから覗き込んでみると・・・

 

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