
「・・・・・どこだ・・べ?」
朝、オラは宝玉を手に洞窟へ戻ってきた。
このへんで宿は一件しかねえからお侍さんを見つけるのは簡単で、
おまけに大怪我で寝込んでたからちょっくら失敬するのは容易かったべ。
「・・・焚き火の跡はある・・・でも・・・」
化け物の姿がどこにもないべ?
あれは夢だったのか・・・でも・・・確かにこの手に宝玉はある・・・
「お〜い、持ってきたぞー」
きたぞーきたぞーきたぞー・・・・・
声は響けど姿が見えねえ、
留守にしてるだか、ひょっとしてもう死んじまっただか?
ずずずずず・・・・・
ん?なんか這いつくばってる音がするべ?
だけんど地面は何も変わりはない・・・いや・・・・・上!?
「ふふふ・・・本当に持ってきたんだねぇ?」
洞窟の、天井の裂け目から這い出てきた!
うにょうにょとした蛇のしっぽか蛸の足みたいなので動いて・・・
横壁を器用に這いつくばって降りてきた、その動きは蛇というより蜘蛛みたいだべ。
「オラ、忍び込んで・・・盗んできただ」
「よくやったわぁ、さあ、それを割るのよ」
「えっ!?割る、だか!?もったいねえ!!」
「何を言ってるんだい!それがあるとあたしは封い・・・とにかく困るんだよっ!」
「はあ・・・わかっただ」
オラは力いっぱい洞窟の壁にぶつけた!
ガインッ!!
「わっ!あぶねっ!跳ね返ってきただ!」
「そうやるんじゃないの!両手で挟んで、割れろって念じるんだよ!」
「・・・・・やってみるべ」
今度は慎重に・・・
あれだけ跳ね返ったのに傷一つついてない、
本当にオラで割れるんだべか・・・よ〜し・・・
「・・・・・割れろ割れろ割れろ割れろ割れろ・・・・・割れるべ!!」
パリィーン!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・割れただ」
ニターリと微笑む魔物。
「ほほほ、これで私は自由・・・でもまぁだ安心できないわ・・・ねえアナタ」
「な・・・なんだべ」
「・・・・・これを代わりに置いてきてくれないかい?」
うにょうにょしたしっぽの集まりの中から出したのは・・・
「それも・・・宝玉だべか?」
「の、偽物よ・・きっと宝玉がなくなった事にあせって、新しい手を打ってくるかも知れないからねぇ」
「すりかえるだか!」
「そうすれば偽物と知らずのこのこと持ってきて・・・ふふふ・・・」
「・・・・・ど、どうするだ・・・どうなるんだべか・・・」
ひょっとしてオラ、とんでもねえ事をしようとしてるのじゃあ・・・
「ほら、はやく行ってらっしゃい!」
「あ・・・ああ」
「裏切るんじゃないわよ?一応、監視をつけておくから」
「見張り・・・だか?」
「ええ・・・裏切ったら承知しないからね!」
ゴトリ、と落とされた宝玉を持って、
オラは逃げるように洞窟を後にした・・・・・
「まだ、あのお侍さんは寝てるだべか・・・」
かなりの深い傷だったべ、
ひょっとしたらあのままもうすでに死んじまってるかも・・・
それよりあの魔物、本当はとんでもねえ敵じゃないかと不安になってきただべ、
そもそもあの社は・・・神様を祭ってたんじゃなくて、悪い魔物を封印していかも知れないべ?
言われたまま侍さんのとこへ行くより、村の長老にでも聞いて・・だけんど見張りがいるって言ってたべな?
まわりをきょろきょろ見回すと・・・
「・・・・・?」
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めくる |